Adobe CRM製品の選び方|Experience Cloud連携とMarketo活用法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/14

Adobe製品とCRMの連携で顧客体験を高めたいが、何から始めればいいか分からない

B2B企業でAdobe Creative CloudやExperience Cloudを活用している企業の多くが、CRM(顧客関係管理)との連携に課題を抱えています。「AdobeにはCRM機能があるのか?」「Salesforceとどう統合すればいいのか?」「導入コストはどれくらいか?」といった疑問は尽きません。

この記事では、Adobe Experience CloudとMarketo Engageを軸としたCRM連携の基礎知識から、Salesforce・Microsoft Dynamicsとの統合手法、導入事例、コスト・ROIまで詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • AdobeはCRMそのものではなく、既存CRM(Salesforce、Microsoft Dynamics等)と統合するインテリジェンスレイヤーとして機能する
  • Adobe Experience CloudはCRMデータを活用し、Adobe AnalyticsやTargetでパーソナライゼーションを実現
  • Marketo EngageはSalesforce、Microsoft、Veeva CRMとのネイティブ統合を提供
  • HENNGE株式会社の事例では、MAとCRM連携で商談創出を2.5倍に増加
  • Forrester調査では、Adobe導入により120%のROIと3ヶ月のペイバック期間を実現
  • 料金は非公開でカスタム見積もりが必要、統合には実装パートナーの支援が推奨される

なぜAdobe製品とCRM連携が重要なのか

B2B企業がマーケティング活動と営業活動を統合する上で、Adobe製品とCRMの連携は重要な役割を果たします。

マーケティングと営業の情報断絶がもたらす機会損失

マーケティング部門がAdobe製品で顧客のWebサイト訪問履歴やコンテンツ閲覧行動を把握している一方、営業部門はCRMで商談情報や契約状況を管理している企業は少なくありません。この情報の断絶により、以下の機会損失が発生します:

  • 見込み客の関心度が可視化されない: マーケティングが獲得したリードの優先順位が不明確
  • 営業アプローチのタイミングを逃す: 顧客のWebサイト訪問が急増しても営業が気づかない
  • パーソナライズされた提案ができない: 顧客の関心領域に応じた提案資料を用意できない

Adobe製品ユーザーが直面するCRM課題

Adobe Creative CloudやExperience Cloudを利用している企業が、CRMとの連携で直面する主な課題は以下の通りです:

  • データの分断: マーケティングデータと営業データが別々のシステムに存在
  • 重複作業の発生: 顧客情報を複数システムに手動入力する必要がある
  • ROI測定の困難: マーケティング施策が売上にどう貢献したか測定できない

統合による顧客体験の向上とビジネス効果

Adobe製品とCRMを統合することで、以下のビジネス効果が期待できます:

  • 統合された顧客プロファイル: 販売、マーケティング、行動データを単一ビューで管理
  • パーソナライズされた体験: 顧客の関心に応じたコンテンツやオファーを提供
  • 商談創出の加速: マーケティングと営業の連携により、見込み客へのアプローチが迅速化

HENNGE株式会社の事例では、MAとCRMの連携により商談創出を2.5倍に増やすことに成功しています。

Adobe CRM連携の基礎知識:Experience CloudとMarketoの位置づけ

Adobe製品とCRM連携を理解するには、Adobe Experience CloudとMarketo Engageの役割を正しく把握することが重要です。

Adobe Experience CloudはCRMではなくインテリジェンスレイヤー

Adobe Experience Cloudは、CRMを置き換えるものではなく、Salesforce、HubSpot、Microsoft Dynamics 365などの既存CRMシステムと統合して、インテリジェンスレイヤーとして機能します。

具体的には:

  • CRMデータの活用: CRMデータベースから取得したエンタープライズ顧客データをExperience Cloudの顧客属性データソースにアップロード
  • 分析とパーソナライゼーション: Adobe AnalyticsとAdobe Targetでデータを活用し、顧客行動の分析とパーソナライゼーションを実現

このアプローチにより、既存のCRM投資を活かしながら、マーケティング施策の高度化が可能になります。

Marketo EngageのCRM統合機能

Marketo Engage(Adobeが2018年に買収)は、MAツールとして以下のCRMとのネイティブ統合を提供しています:

  • Salesforce: セールスとマーケティングの取り組みを効率化
  • Microsoft Dynamics 365: リード情報の双方向同期
  • Veeva CRM: ライフサイエンス業界向けのCRM連携

Marketo Engageを活用することで、マーケティング部門が獲得したリードを営業部門にスムーズに引き渡し、リードスコアリング(見込み客の関心度を数値化)に基づいた優先順位づけが可能になります。

Adobe Experience Platformの顧客データ統合の仕組み

Adobe Experience Platformは、顧客データを統合し、リアルタイムプロファイルとAI支援機能を提供するデータ基盤です。主な機能は以下の通りです:

  • リアルタイム顧客プロファイル: 複数のデータソース(CRM、Webサイト、モバイルアプリ等)から顧客データを統合
  • AI支援機能: 顧客行動の予測や推奨機能を提供
  • データガバナンス: 顧客データのプライバシー管理とコンプライアンス対応

これにより、マーケティングメールから購入後サポートまで、全顧客インタラクションを接続した体験を提供できます。

CRM市場におけるAdobeの位置づけ(2024年最新動向)

2024年のグローバルCRM市場規模は1,014億ドル、2029年までに1,059億ドルに達すると予測されています(Fortune Business Insights)。日本国内のCRM市場は2022年度に2,174億円規模(前年度比17.0%増)に達し、2026年には2,917億円に成長する見込みです(IDC Japan)。

この市場において、Adobeはクリエイティブとマーケター向けツールで強みを持つ一方、純粋なCRM機能ではSalesforceなど専門ツールに劣ると言われています。SalesforceとAdobeの両社がAIに大きく投資しており、Salesforceは「Einstein」AI機能でリードしています(2025年)。

Adobe Experience CloudとCRMの統合アーキテクチャ

Adobe Experience CloudとCRMを統合する具体的な仕組みを解説します。

顧客属性データソースによるCRMデータのアップロード

CRMデータベースで取得したエンタープライズ顧客データを、Experience Cloudの顧客属性データソースにアップロードします。このプロセスにより:

  • 顧客IDの統合: CRMの顧客IDとAdobe Experience CloudのVisitor IDを紐付け
  • 属性データの同期: 企業名、業種、契約状況などの属性データをExperience Cloudに反映

Adobe AnalyticsとTargetでのCRMデータ活用

アップロードされたCRMデータは、Adobe AnalyticsとAdobe Targetで活用できます:

Adobe Analytics:

  • セグメント分析: CRM属性(業種、企業規模等)別のWebサイト行動分析
  • コンバージョン分析: 商談化率や受注率の可視化

Adobe Target:

  • パーソナライゼーション: 顧客の契約状況に応じたコンテンツ表示
  • A/Bテスト: セグメント別の最適なメッセージの検証

リアルタイム顧客プロファイルの構築と更新

Adobe Experience Platformは、リアルタイムで顧客プロファイルを更新します:

  • データ更新頻度: CRMデータの変更(商談ステージの進展等)を即座に反映
  • 統合ビュー: 販売、マーケティング、行動データを単一ビューで管理

これにより、営業担当者はリアルタイムで顧客の最新状況を把握し、適切なタイミングでアプローチできます。

MAとCRMの連携による商談創出フロー

Marketo EngageとCRMを連携させた商談創出フローの例:

  1. リード獲得: Webサイト訪問者がホワイトペーパーをダウンロード(Marketoに記録)
  2. リードスコアリング: 訪問履歴やコンテンツ閲覧行動に基づきスコアを付与
  3. リード引き渡し: スコアが基準値を超えたリードをCRM(Salesforce等)に自動転送
  4. 営業フォロー: 営業担当者がCRMでリード情報を確認し、アプローチ
  5. 商談化: 商談ステージの進展をCRMに記録、MarketoとCRMで双方向同期

主要CRM(Salesforce・Dynamics等)との連携実装と事例

主要CRMとの具体的な統合手法と導入事例を紹介します。

Salesforceとの統合:ネイティブ連携とデータ同期

Marketo EngageはSalesforceとのネイティブ統合を提供しており、以下のデータ同期が可能です:

  • リード情報: Marketoで獲得したリードをSalesforceに自動転送
  • 商談情報: Salesforceの商談ステージをMarketoに同期し、マーケティング施策の効果測定
  • キャンペーン情報: MarketoのキャンペーンデータをSalesforceのキャンペーンオブジェクトに紐付け

注意点: Adobe Marketing CloudはSalesforce Sales Cloudとの統合が限定的との指摘もあり、既にSalesforceを使用している企業は事前に統合範囲を確認することが推奨されます。

Microsoft Dynamics 365との統合手法

Marketo EngageはMicrosoft Dynamics 365とのネイティブ統合も提供しています:

  • 双方向同期: リード・連絡先・アカウント情報の双方向同期
  • リードライフサイクル管理: Marketoのリードステージ変更をDynamics 365に反映
  • カスタムフィールド同期: 企業固有のカスタムフィールドも同期可能

HubSpot・Veeva CRMとの連携オプション

Adobe Experience Cloudは、HubSpotやVeeva CRMとも統合可能です:

  • HubSpot: 中小企業向けCRMとして人気、Marketo Engageとの連携により高度なマーケティング施策が可能
  • Veeva CRM: ライフサイエンス業界向けのCRM、Marketoとのネイティブ統合を提供

導入事例:HENNGE株式会社の商談創出2.5倍増の実績

HENNGE株式会社は、MAとCRMの連携により以下の成果を実現しました:

  • 商談創出: 顧客のWebサイト訪問履歴と営業情報を組み合わせ、商談創出を2.5倍に増加
  • 営業効率化: リードスコアリングにより、優先度の高い見込み客に営業リソースを集中

また、ライフネット生命はMA導入でアプローチ率75%改善、キャンペーン数1.5倍増を達成しています。

導入コスト・ROIと実装時の注意点

Adobe Experience CloudとCRM連携の導入コストとROIについて解説します。

Adobe Experience Platformの料金体系(カスタム見積もり)

Adobe Experience Platformの具体的な料金は非公開であり、以下の要素に基づくカスタム見積もりが必要です:

  • データ量: 管理する顧客データの規模
  • 必要な機能: 分析、パーソナライゼーション、AI機能等
  • 展開規模: 利用ユーザー数、対象地域

導入を検討する際は、Adobe公式サイトからデモ予約を通じて個別見積もりを取得する必要があります。

※2025年11月時点の情報です。最新の料金情報は公式サイトをご確認ください。

導入によるROI:Forresterレポートの120%とペイバック期間

Forrester Consultingの調査では、Adobe導入により以下のROIが実証されています:

  • ROI: 120%
  • ペイバック期間: 3ヶ月

このROIは、マーケティング施策の効率化、商談化率の向上、営業活動の生産性向上により実現されたものです。

統合の複雑性と実装パートナーの必要性

Adobe Experience CloudとCRMの統合は技術的に複雑であり、以下の点で実装パートナーの支援が推奨されます:

  • 初期設計: 顧客IDの統合ルール、データ同期の範囲を設計
  • データ設計: CRM属性とExperience Cloud属性のマッピング
  • 統合テスト: データ同期の精度検証、パフォーマンステスト

ABeam Consultingなどの実装パートナーを活用することで、導入期間の短縮と品質の向上が期待できます。

Adobe vs Salesforce:それぞれの強みと制約

AdobeとSalesforceの比較では、それぞれの強みと制約を理解することが重要です:

Adobeの強み:

  • クリエイティブとマーケター向けツールが豊富
  • Adobe Creative Cloudとの統合により、コンテンツ制作とマーケティングをシームレスに連携

Adobeの制約:

  • 純粋なCRM機能はSalesforceなど専門ツールに劣る可能性がある
  • Salesforce Sales Cloudとの統合が限定的との指摘もあり

Salesforceの強み:

  • CRM市場でのリーダー的地位
  • Einstein AIなど高度なAI機能を提供

Salesforceの制約:

  • クリエイティブツールとの統合はAdobeに劣る

既存のツールスタックと目的に応じて選定することが適切です。

まとめ:目的別のAdobe CRM活用シナリオ

Adobe製品とCRMの連携では、企業の目的に応じた活用シナリオを明確にすることが重要です。

Adobe製品を既に活用している企業:

  • Adobe Experience CloudとCRMを統合し、マーケティングデータと営業データを統一
  • Marketo Engageを導入してMAとCRMを連携、リードスコアリングと商談創出を加速

Salesforceを中心としたエコシステムを構築している企業:

  • Salesforce Marketing CloudとAdobe Creative Cloudを組み合わせ、クリエイティブとマーケティングを統合
  • Adobe Experience Cloudのインテリジェンスレイヤーでパーソナライゼーションを強化

新規にCRMとマーケティングツールを導入する企業:

  • 目的と予算に応じてAdobeとSalesforceを比較検討
  • 実装パートナーと相談し、初期設計とデータ設計を慎重に行う

次のアクション:

  • 自社の既存ツールスタック(Adobe製品、CRM)を整理する
  • Adobe公式サイトでデモ予約し、個別見積もりを取得する
  • 導入事例(HENNGE、ライフネット生命等)を参考に、期待効果を試算する
  • 実装パートナー(ABeam Consulting等)に相談し、統合アーキテクチャを設計する

自社に合ったAdobe CRM連携シナリオで、マーケティングと営業の統合と顧客体験の向上を実現しましょう。

よくある質問

Q1AdobeはCRMシステムを提供しているのか?

A1Adobe自体はCRMを提供していません。Experience CloudやMarketo Engageは既存CRM(Salesforce、Microsoft Dynamics等)と統合するインテリジェンスレイヤーとして機能します。CRMデータを活用して、Adobe AnalyticsやTargetでパーソナライゼーションを実現できます。

Q2Adobe Experience Platformの導入コストは?

A2料金は非公開でカスタム見積もりが必要です。データ量・機能・展開規模に応じて変動します。Forrester調査では120%のROIと3ヶ月のペイバック期間を実証しており、中長期的な投資対効果が期待できます。

Q3どのCRMと統合できるのか?

A3Salesforce、Microsoft Dynamics 365、HubSpot、Veeva CRMなど主要CRMとのネイティブ統合が可能です。Marketo Engageは特にSalesforce・Microsoft・VeevaとのCRM連携が強く、リード情報の双方向同期やリードスコアリングが実現できます。

Q4Adobe製品とSalesforceどちらを選ぶべきか?

A4Adobeはクリエイティブ・マーケター向けツールが強み、SalesforceはCRM機能とEinstein AI機能が強みです。既存のツールスタック(Adobe Creative Cloud利用中か、Salesforce Sales Cloud利用中か)と目的に応じて選定するのが適切です。

Q5統合には専門的な支援が必要か?

A5統合は技術的に複雑なため、ABeam Consultingなどの実装パートナーの支援が推奨されます。初期設計(顧客IDの統合ルール)とデータ設計(CRM属性とExperience Cloud属性のマッピング)が成功の鍵となります。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。