シリーズA段階のリード獲得で多くの企業が陥る課題
多くの人が見落としがちですが、シリーズA段階のスタートアップがリード獲得で成果を出すには、限られたリソースの中でMA/SFAを活用した再現性のあるプロセスを早期に構築し、属人的な営業から脱却することが成長の鍵です。
シリーズAとは、PMF達成後のスタートアップが成長資金を調達するラウンドで、日本では5〜20億円程度が相場とされています。Stripe調査(2025年更新)によると、シード/プレシード調達スタートアップの3社に1社(約33%)がシリーズA以降へ進み、100万ドル以上調達時は50%以上が成功するというデータがあります(ただしグローバル推計であり、日本市場への直接適用には地域差を考慮する必要があります)。
シリーズAに到達した企業が次に直面するのは、「調達した資金をどのようにマーケティングに投資すべきか」という課題です。創業期は経営者や営業担当者の人脈・属人的なスキルで受注できていたとしても、成長フェーズでは再現性のあるリード獲得プロセスがなければ、持続的な成長は困難になります。
この記事で分かること
- シリーズA段階のスタートアップが直面するリード獲得の課題
- 限られたリソースで優先すべきリード獲得施策の選び方
- リード質向上と属人化を防ぐ仕組み化のポイント
- MA/SFAを活用した再現性あるプロセス構築の方法
この記事では、シリーズA段階のスタートアップ(SaaS/HR Tech)のマーケティング責任者・経営者を主な対象として、限られたリソースで再現性あるリード獲得プロセスを構築するための具体的なステップを解説します。
シリーズAの定義とマーケティングにおける優先課題
シリーズA段階では、PMF達成を前提に成長資金を活用した市場開拓が求められますが、多くの企業がリード質とコスト効率の両立に苦戦しています。
PMF(Product Market Fit) とは、製品・サービスが市場のニーズに適合している状態を指し、シリーズA調達の前提条件とされています。PMFを達成した企業は、次に「どのようにリードを獲得し、商談・受注につなげるか」というマーケティング課題に直面します。
CPA(Cost Per Acquisition) とは、顧客1件(またはリード1件)を獲得するのにかかるコストで、リード獲得単価とも呼ばれます。2025年のIDEATECH調査によると、BtoB企業でリード質が理想未達と感じる企業は48.6%に達しており、2024年比で+7.6ポイント上昇しています(ただしn=93の民間調査であり、統計誤差が大きい可能性があります)。
さらに、CPA高騰を実感している企業は44.5%で、そのうち6割でリード質も低下しているという調査結果があります(自己申告ベースの調査であり、高騰実感の定義は回答者により異なる可能性があります)。リードを獲得するコストが上がる一方で、質も下がるという二重苦に陥る企業が増えているのが現状です。
PMF達成後に求められるリード獲得の再現性
PMF達成後は、「たまたま売れた」状態から「狙って売れる」状態への移行が必要です。創業期に経営者の人脈や属人的な営業力で獲得できた顧客と同じ方法では、成長フェーズでのスケールは困難です。
再現性のあるリード獲得プロセスを構築するためには、以下の要素を明確にする必要があります。
- ターゲット顧客の定義: どのような企業・担当者がプロダクトの価値を最も感じるか
- リードの定義と商談化基準: どのような行動をとった見込み顧客を「商談対象」とするか
- 獲得チャネルの選定: 限られたリソースでどのチャネルに注力するか
シリーズA段階で優先すべきリード獲得施策
限られたリソースで成果を出すためには、コスト効率と立ち上がり速度を考慮した施策選定が重要です。
2025年のIDEATECH調査によると、BtoBマーケティングの目標CPAは5,000〜10,000円未満が21.8%で最多となっています(ただしn=326の民間調査であり、業種・企業規模により大きく変動します)。シリーズA段階では、この目標CPAを参考にしつつ、自社の商材単価やLTVを踏まえた設定が必要です。
SNS施策を実施している企業は36.4%で、効果実感でも1位という調査結果があります。また、KPI達成企業でSEO成果を実感している割合は41.3%で、未達企業と比較して+25.1ポイント高いことが報告されています(2023年度調査のため、最新トレンドとの乖離がある可能性があります)。短期的な広告だけでなく、中長期でリードを獲得できるSEOやSNS施策も検討に値します。
【比較表】シリーズA段階のリード獲得施策優先度マトリクス
| 施策 | 初期コスト | 立ち上がり速度 | リード質 | 優先度(シリーズA) |
|---|---|---|---|---|
| SEO/コンテンツマーケティング | 中 | 遅い(3-6ヶ月) | 高 | ◎(中長期基盤として) |
| SNS運用 | 低 | 中程度 | 中〜高 | ◎(ブランディング含む) |
| リスティング広告 | 高 | 速い | 中 | ○(初期検証用) |
| ホワイトペーパー施策 | 中 | 中程度 | 高 | ◎(リード育成含む) |
| ウェビナー | 中 | 中程度 | 高 | ○(ターゲット適合時) |
| 展示会・イベント | 高 | 速い | 中〜高 | △(リソース確保時) |
※優先度はシリーズA段階(従業員10-50名規模)を想定。業種・プロダクト特性により最適な施策は異なります。
生成AI活用による効率化
限られたリソースを補う手段として、生成AIの活用が広がっています。2025年調査によると、BtoB企業の生成AI活用率は66.7%で、活用領域としてはコンテンツ作成が27.1%で最多となっています(ただしn=93の民間調査であり、サンプルが小規模なため一般化には注意が必要です)。
シリーズA段階では、マーケティング担当者が限られていることが多いため、コンテンツ作成やクリエイティブ最適化における生成AIの活用は効率化に寄与する可能性があります。ただし、自社のプロダクトやターゲットに合わせた調整は人間が行う必要があり、生成AIはあくまで業務効率化のツールとして位置づけることが重要です。
リード質向上と仕組み化のポイント
調達した資金で広告費を大量投下したり、営業人員を急拡大したりすることは、一見すると成長を加速させるように見えます。しかし、リードを商談・受注につなげるプロセスを整備しないままスケールしようとすると、コストだけが膨らみ成果が出ないケースが多いのが実態です。これはシリーズA段階で陥りやすい失敗パターンです。
2025年調査によると、BtoB企業でリード質が理想未達と感じる企業は48.6%に達しています。リード数を増やすことよりも、質を高めることが重要であり、そのためには仕組み化が欠かせません。
リードナーチャリングとは、見込み顧客を継続的なコミュニケーションで育成し、商談化につなげるプロセスを指します。獲得したリードをすぐに商談対象とするのではなく、関心度や購買意向を見極めながら適切なタイミングでアプローチすることで、商談化率を高めることができます。
スケール前に整備すべきプロセス
広告投下や人員拡大の前に、以下のプロセスを整備しておくことが重要です。
- ターゲット定義の明確化: 理想的な顧客像(ICP)を言語化し、社内で共有する
- リード定義の統一: 「リード」とは何か、どの段階を指すかを明確にする
- 商談化基準の明文化: どのような条件を満たしたリードを商談対象とするかを定義する
- ナーチャリングシナリオの設計: リード獲得から商談化までのコミュニケーション設計
- 成果指標の設定: 各段階のKPIを設定し、改善サイクルを回せる状態にする
これらのプロセスが整備されていない状態で広告費を増やしても、リード質の低下やコスト効率の悪化を招くリスクがあります。
MA/SFAを活用した再現性あるプロセス構築
リード獲得から商談化までの一連のプロセスを再現性のある形で構築するためには、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)の活用が有効です。
ホワイトペーパーとは、課題解決ノウハウを提供するコンテンツで、BtoBリード獲得の主要施策の一つです。ホワイトペーパーダウンロードをトリガーにしたナーチャリングフローをMAで自動化することで、少人数でも効率的にリード育成を行うことができます。
以下のチェックリストを活用して、現状のプロセス整備状況を確認してください。
【チェックリスト】シリーズAリード獲得プロセス構築チェックリスト
- ターゲット顧客像(ICP)を明文化している
- 理想的なリードの条件を定義している
- 商談化基準(BANT等)を明文化している
- リード獲得チャネルの優先順位を決めている
- 各チャネルの目標CPAを設定している
- ホワイトペーパー等のリード獲得コンテンツを用意している
- MA/SFAツールを導入(または導入計画)している
- リードスコアリングの基準を設計している
- ナーチャリングメールのシナリオを設計している
- リード獲得から商談化までのフローを可視化している
- 商談化後の営業プロセスも定義している
- KPIダッシュボードを構築している
- 週次/月次でKPIレビューを行う体制がある
- マーケティングと営業の連携フローが明確になっている
- リード情報の一元管理ができる状態になっている
商談化までのデータ一元管理
リード獲得から商談化までのデータを一元管理することで、どのチャネルから獲得したリードが商談・受注につながりやすいかを把握できます。これにより、効果の高いチャネルへの投資を増やし、効果の低いチャネルを見直すという改善サイクルを回すことが可能になります。
MA/SFAを連携させることで、以下のデータを一元管理できます。
- リード獲得チャネル・日時
- リードの行動履歴(ページ閲覧、資料ダウンロード、メール開封等)
- 商談進捗状況
- 受注/失注理由
これらのデータを蓄積・分析することで、属人的な営業から脱却し、再現性のあるプロセスを構築することができます。
まとめ|シリーズA段階でリード獲得プロセスを構築する
シリーズA段階のスタートアップが持続的な成長を実現するためには、限られたリソースの中でリード獲得プロセスを早期に構築することが重要です。
本記事のポイントを整理します。
- 課題の認識: シリーズA段階では、属人的な営業からの脱却と再現性あるプロセス構築が課題
- 施策の優先順位: コスト効率と立ち上がり速度を考慮し、SEO/SNS/ホワイトペーパーを軸に検討
- 仕組み化の重要性: 広告費投下や人員拡大の前に、商談化までのプロセスを整備する
- MA/SFAの活用: データの一元管理と自動化により、少人数でも効率的な運用が可能
今日から取り組めるアクションとして、まずは上記のチェックリストで現状を確認し、未整備の項目から優先的に取り組むことをお勧めします。
シリーズA段階のスタートアップがリード獲得で成果を出すには、限られたリソースの中でMA/SFAを活用した再現性のあるプロセスを早期に構築し、属人的な営業から脱却することが成長の鍵です。シリーズBに向けた持続的成長の基盤を、今から構築していきましょう。
