セグメント別ナーチャリングが効果を発揮しない企業の共通点
意外かもしれませんが、セグメント別ナーチャリングの成功には、MAツールの機能活用だけでなく、自社の顧客理解に基づいたセグメント設計と、マーケ・営業が連携できる運用体制の構築が不可欠です。これが本記事の結論です。
「MAを導入してセグメント配信を始めたが、思ったほど効果が出ない」「セグメントの分け方が適切かわからない」——こうした課題を抱えるマーケティング担当者は少なくありません。2025年の調査によると、戦略的ナーチャリング設計を実行している企業は46.1%にとどまり、残り約4割は設計のみで未実行の状態にあります(BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査2026)。一方で、戦略的ナーチャリング設計を実行した企業の約80%が商談転換率やリード質の改善を実感しているというデータもあります(同調査)。
この差はどこから生まれるのでしょうか。本記事では、セグメント設計の基本から運用体制構築まで、セグメント別ナーチャリングを成功に導くための実践的なアプローチを解説します。
この記事で分かること
- セグメント別ナーチャリングの基本概念と2つの軸(属性情報・行動情報)
- 自社に合ったセグメント設計のプロセスとチェックリスト
- セグメント×購買ステージ別のコンテンツ設計の考え方
- マーケ・営業が連携できる運用体制の構築方法
セグメント別ナーチャリングの基本概念と重要性
セグメント別ナーチャリングとは、見込み顧客をグループ分けし、各グループに最適化されたコンテンツを配信することで、商談化率や顧客エンゲージメントを高める施策です。一斉配信と比較して、より高い反応率が期待できます。
セグメンテーションとは、見込み顧客を業種、企業規模、役職、関心テーマ、行動履歴などの共通点でグループ分けすることを指します。セグメンテーションには大きく2つの軸があります。
属性情報(デモグラフィック/ファーモグラフィック) は、企業規模、業界、役職、地域などの静的な顧客データです。セグメンテーションの基本軸の一つであり、取得が比較的容易という特徴があります。
行動情報(ビヘイビアル) は、コンテンツダウンロード履歴、メール開封率、Web訪問頻度などの動的な顧客行動データです。見込み顧客の関心度や購買意欲をより直接的に反映します。
2023年5月時点の調査によると、BtoB MA導入率は全体で1.5%(9,444社)、上場企業では14.6%(562社/3,850社)となっています(Nexal調査、626,003社対象)。業種別では情報通信・広告・マスコミが31%、製造業が17.9%と差があります。MAを導入している企業においても、セグメント機能を効果的に活用できていないケースは少なくありません。
属性情報と行動情報の使い分け
属性情報と行動情報は、それぞれ特性が異なるため、目的に応じた使い分けが重要です。
属性情報は、リード獲得時点で取得しやすく、すぐにセグメント分けに活用できるという利点があります。一方で、見込み顧客の「今の関心度」を示すものではないため、属性情報だけでは商談可能性を正確に判断しにくいという課題があります。
行動情報は、見込み顧客の関心度をより直接的に反映しますが、蓄積に時間がかかります。また、行動データが十分に蓄積されていないリードに対しては、行動ベースのセグメント分けが難しいという制約があります。
リードスコアリングとは、見込み顧客の属性や行動に点数を付け、商談可能性を数値化する手法です。MA活用の基本機能として、多くのツールで提供されています。属性情報でベースとなる適合度を判定し、行動情報で関心度を加点するという組み合わせが効果的です。
自社に合ったセグメント設計のプロセス
セグメント設計を始める前に、自社の現状を把握することが重要です。MAツールのセグメント機能を導入すれば自動でナーチャリングが最適化されるという考え方は誤りです。セグメント設計の根拠や運用ルールを整備しないまま施策を始めてしまうと、結局「一斉配信と変わらない」状態に陥るリスクがあります。
以下のチェックリストで、セグメント設計を始める前の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】セグメント設計前の確認チェックリスト
- ターゲット顧客像(業種・規模・役職・課題)を明文化している
- 現在保有しているリード数を把握している
- リードの属性情報(業種・企業規模・役職など)を取得できている
- リードの行動情報(メール開封・Web訪問など)を追跡できている
- セグメント別に配信するコンテンツを用意できる制作体制がある
- 営業部門とリード引き渡しの基準を合意している
- MAツールでセグメント配信の設定ができる環境が整っている
- セグメント別の効果測定指標を定義している
- 定期的にセグメント見直しを行う運用ルールがある
- マーケティング・営業間で定例レビューの場がある
セグメントの粒度とリソースのバランス
セグメントは細かく分ければ良いというわけではありません。セグメント数を増やすほど、各セグメント向けのコンテンツが必要になり、制作リソースが不足するリスクが高まります。
推奨されるアプローチは、まず全体共通のナーチャリングシナリオを構築し、その後で優先度の高いセグメントから分岐を追加していく方法です。最初から複数のシナリオを同時に運用しようとすると、コンテンツ不足になりやすいため注意が必要です。
初期段階では、業種や企業規模などの属性軸で基本セグメントを設定し、行動スコアで優先度を付けるという組み合わせが現実的です。セグメント数の目安は一概には言えませんが、コンテンツ制作リソースとのバランスを考慮して設定することが重要です。
セグメント×購買ステージ別のコンテンツ設計
セグメント別ナーチャリングでは、セグメントだけでなく購買ステージも考慮したコンテンツ設計が効果的です。同じセグメントの見込み顧客であっても、認知段階と検討段階では求める情報が異なります。
ナーチャリングシナリオとは、見込み顧客の状態に応じて、いつ・どのコンテンツを配信するかを設計した一連の流れを指します。セグメントと購買ステージを掛け合わせることで、より精度の高いシナリオ設計が可能になります。
【比較表】セグメント×購買ステージ別コンテンツマトリクス
| セグメント | 認知段階 | 興味段階 | 検討段階 | 商談段階 |
|---|---|---|---|---|
| 大企業・高関心 | 業界トレンド記事 | 導入事例(大企業向け) | ROI試算資料 | 個別相談案内 |
| 大企業・低関心 | 課題喚起コンテンツ | 基礎知識ホワイトペーパー | 比較検討ガイド | セミナー招待 |
| 中小企業・高関心 | 成功事例ブログ | 導入事例(中小企業向け) | 費用対効果資料 | 無料診断案内 |
| 中小企業・低関心 | 入門コンテンツ | 業務改善ヒント集 | 導入ステップガイド | ウェビナー案内 |
| 製造業セグメント | 製造業向け課題記事 | 製造業事例集 | 製造業向け提案書 | 工場見学案内 |
| IT業界セグメント | IT業界トレンド | IT企業導入事例 | 技術仕様書 | デモ環境案内 |
高関心セグメントへの優先シナリオ設計
リードスコアリングで高いスコアを獲得した見込み顧客には、優先的にアプローチすることが重要です。高関心セグメントへの対応が遅れると、検討熱が冷めてしまうリスクがあります。
高関心セグメントへの優先シナリオとしては、以下のような流れが効果的とされています。
- 資料請求や問い合わせ後、即日でお礼メールを送信
- 関連する事例コンテンツを案内
- 個別相談や具体的な提案への誘導
具体的なタイミングや配信間隔は、商材特性やターゲット企業の意思決定プロセスによって異なります。自社の商談データを分析し、最適なシナリオを見つけていくことが重要です。
マーケ・営業連携によるセグメント運用体制の構築
セグメント別ナーチャリングを成功させるためには、マーケティング部門と営業部門の連携が不可欠です。2025年の調査では、戦略的ナーチャリング設計を実行した企業の約80%が商談転換率やリード質の改善を実感しています(BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査2026)。この効果を得るためには、設計だけでなく実行・定着まで進めることが重要です。
マーケティング・営業連携のポイントは以下の通りです。
- リード引き渡し基準の合意: どのようなスコア・行動をもってSQLとするか、両部門で基準を明確にする
- フィードバックループの構築: 営業部門からマーケティング部門へ、リード品質に関するフィードバックを定期的に行う
- 共通KPIの設定: 商談化率や受注率など、両部門が共通で追いかける指標を設定する
効果測定と継続改善のポイント
セグメント別ナーチャリングの効果を測定し、継続的に改善していくことが重要です。主な測定指標としては、以下のようなものが挙げられます。
- セグメント別メール開封率・クリック率: コンテンツの適合度を測る指標
- セグメント別商談化率: ナーチャリングの最終成果を測る指標
- 平均ナーチャリング期間: リード獲得から商談化までの期間
- セグメント別離脱率: どのセグメントで離脱が多いかを把握
定期的なレビューでは、これらの指標を確認し、パフォーマンスが低いセグメントの原因分析と改善施策の検討を行います。セグメント定義自体が適切でない場合は、セグメントの再設計も検討が必要です。
まとめ|セグメント設計と運用体制でナーチャリング効果を高める
本記事では、セグメント別ナーチャリングの基本概念から運用体制構築までを解説しました。要点を整理します。
- セグメンテーションには属性情報と行動情報の2つの軸があり、両者を組み合わせることが効果的
- セグメント設計を始める前に、ターゲット定義・リード状況・コンテンツ制作体制・営業連携体制を確認することが重要
- セグメントは細かく分けすぎず、コンテンツ制作リソースとのバランスを考慮する
- セグメント×購買ステージでコンテンツマトリクスを設計し、各状態に最適なコンテンツを配信する
- マーケ・営業連携による運用体制構築と、定期的なレビュー・改善が定着の鍵
2025年の調査では、戦略的ナーチャリング設計を実行している企業は46.1%にとどまる一方、実行した企業の約80%が効果を実感しています(BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査2026)。設計だけで終わらせず、実行・定着まで一貫して取り組むことが成果につながります。
まずは本記事のチェックリストを活用して、自社のセグメント設計の準備状況を確認してみてください。セグメント別ナーチャリングの成功には、MAツールの機能活用だけでなく、自社の顧客理解に基づいたセグメント設計と、マーケ・営業が連携できる運用体制の構築が不可欠です。
