Pardot(Account Engagement)導入後に成果が出ない原因
実はPardotの成果は「機能の多さ」ではなく「Salesforceとの連携設計」と「運用プロセスの標準化」によって決まるのです。これが本記事の結論です。
国内MA市場規模は2023年に753億円(前年比11.2%増)に達し、2026年には865億円へ成長すると予測されています(矢野経済研究所)。また、Account Engagement(旧Pardot)の国内MAツールシェアは13.4%(DataSign調査、2026年1月時点)となっています。
Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot) とは、Salesforceが提供するBtoB向けMAツールです。リード獲得・育成・商談化をSalesforce CRM/SFAとネイティブ連携で支援します。なお、2022年以降「Pardot」から「Account Engagement」へ名称変更されていますが、本記事では両方の名称を使用します。
多くの企業がMAツールを導入していますが、「リードは溜まるが商談化につながらない」という課題を抱えているケースが少なくありません。この原因は、ツールの機能ではなく、Salesforceとの連携設計やMQL定義が曖昧なまま運用を始めていることにあります。
この記事で分かること
- Account Engagement(旧Pardot)の基本機能と特徴
- Salesforce連携で実現できることと導入企業の活用事例
- Pardot活用不全を解消するための運用改善チェックリスト
- マーケ・営業連携を実現するための設定項目一覧
Account Engagement(旧Pardot)の基本機能と特徴
Account Engagement(旧Pardot)は、BtoB企業のマーケティング活動を自動化し、営業との連携を効率化するためのツールです。国内CRMアプリケーション市場は2023年に前年比13.4%増の2,497億円に達しており(IDC調査)、Salesforce Sales/Service/Marketing Cloudは国内CRMシェア3割強で1位を占めています(NORK Research 2025年調査)。
Account Engagementの主要機能は以下の通りです。
- リード情報の一元管理と行動トラッキング
- スコアリング・グレーディングによるリード評価
- メールマーケティングの自動配信
- ランディングページ・フォームの作成
- Salesforce CRMとのネイティブ連携
リードスコアリングとは、リードの行動(メール開封・Web閲覧等)に基づきスコアを付与し、購買確度を数値化する手法です。グレーディングは、リードの属性(業種・企業規模・役職)に基づき成約可能性を評価する手法を指し、スコアリングと併用して優先リードを抽出します。
なお、同じSalesforce製品であるMarketing Cloud Engagementは、大量の顧客に対するメール・SMS配信に強みを持つBtoC向けのツールです。BtoB企業がMAツールを選定する際は、Account Engagementが適しているケースが一般的です。
リードスコアリングとグレーディングの仕組み
スコアリングとグレーディングは、それぞれ異なる軸でリードを評価する仕組みです。
スコアリング(行動ベース) は、リードがどのような行動をとったかで評価します。例えば、メールの開封、Webサイトの閲覧、資料のダウンロード、セミナーへの参加などの行動に点数を付与します。価格ページの閲覧やデモ依頼など、購買意欲の高い行動には高い点数を設定することが効果的です。
グレーディング(属性ベース) は、リードの属性情報で評価します。業種、企業規模、役職、所在地などの情報をもとに、自社のターゲットにどれだけ合致しているかをA〜Fなどのランクで表します。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門がスコアリング等で一定基準を満たすと判断し、営業に引き渡す準備が整ったリードのことです。スコアとグレードを組み合わせることで、「興味も高く、属性も合致している」優先度の高いリードを効率的に抽出できます。
具体的なスコア閾値は業種・商材・ターゲット企業規模により異なるため、自社の過去データを分析して設定することが重要です。
Salesforce連携で実現できること
Salesforceとの連携により、マーケティングと営業のデータを一元化し、投資対効果の可視化が実現できます。ある調査では、Salesforce連携によりマーケティング投資対効果が平均34%向上したという結果が報告されています(ITトレンド年間ランキング2024)。
連携によって得られる主なメリットは以下の通りです。
- リード情報・行動履歴をSalesforceで一元管理できる
- スコア閾値を超えたリードを営業に自動で引き渡せる
- マーケティング施策ごとの商談化率・受注率を追跡できる
- 営業からのフィードバックをマーケティングにも反映できる
この連携により、マーケティング部門と営業部門が同じデータを見ながら活動できるようになり、手作業でのリード引き渡しや情報転記の工数を削減できます。
導入企業の活用事例
実際にAccount Engagement(Pardot)を活用している企業の事例を紹介します。
淵本鋼機の事例 淵本鋼機はSales Cloud導入後にAccount Engagementを追加導入し、売上高が37%増加しました(30億円から41億円、2017年5月期から2019年5月期)。ただし、この成果はPardot単独の効果ではなく、営業プロセス全体の改善など他要因も混在している可能性がある点には注意が必要です。
日本経済新聞社の事例 日本経済新聞社はPardot+Sales Cloudでスコアリング自動化を実現し、新規リード年間1,600件、案件数2倍を達成しました。この事例も企業公称値であり、他施策との複合効果が含まれている可能性があります。
これらの事例から、Salesforceとの連携設計を適切に行い、運用プロセスを標準化することで成果につながることがわかります。
Pardot活用不全を解消するための運用改善
Pardotを導入したものの成果が出ない場合、多くはツールの問題ではなく運用設計に課題があります。
よくある失敗パターンとして、「Pardotは高機能だから導入すれば成果が出る」と考え、Salesforceとの連携設計や運用ルールを曖昧にしたまま使い始めるケースがあります。この場合、リードは溜まるものの商談化せず、活用不全に陥ることが少なくありません。
また、「スコアリングは設定すれば自動で最適化される」という考え方も誤りです。スコアリングの閾値や重み付けは、定期的な見直しとA/Bテストによって改善していく必要があります。
ドリップキャンペーンとは、スコア閾値に達したリードに対し、段階的にメールやコンテンツを自動配信するナーチャリング手法です。
以下のチェックリストを活用し、自社の運用状況を確認してみてください。
【チェックリスト】Pardot運用改善チェックリスト
- スコアリングの重み付けを見直した(価格ページに高スコア付与など)
- グレーディング基準を自社ターゲットに合わせて設定した
- MQL定義をマーケと営業で共有・合意した
- スコア閾値を過去の成約データから設定した
- メールオプトアウトにマイナススコアを設定した
- ドリップキャンペーンのシナリオを設計した
- Salesforceとの同期設定を確認した
- 営業への引き渡しタイミングを明確にした
- 引き渡し後のフォロー状況を追跡できる仕組みを作った
- 月次でスコアリング効果をレビューしている
- 商談化率・受注率をKPIとして追跡している
- 営業からのフィードバックをスコア設定に反映している
- フォーム項目を見直し必要な属性情報を取得している
- 非アクティブリードの除外ルールを設定している
- A/Bテストを実施し配信内容を改善している
スコアリング設定の見直しポイント
スコアリング設定を見直す際は、単純に1ページ1点のような均一な設定ではなく、行動の重要度に応じた重み付けが効果的です。
高スコアを付与すべき行動の例:
- 価格ページの閲覧
- デモ・お問い合わせフォームの送信
- 導入事例ページの閲覧
- 製品資料のダウンロード
マイナススコアを設定すべき行動の例:
- メールのオプトアウト(配信停止)
- 一定期間のアクティビティなし
具体的な点数設定は企業により異なりますが、過去の成約リードの行動パターンを分析し、どの行動が商談化につながっているかを基準に設定することが重要です。
マーケ・営業連携を実現するSalesforce連携設計
マーケティング部門と営業部門の連携を実現するには、Salesforceとの連携設定を適切に行う必要があります。単にツールを連携するだけでなく、引き渡し基準やSLA(対応期限)を明確にすることが重要です。
最近では、AI機能(Einstein)によるPredictive Lead Scoringで成約確率を自動予測する機能も提供されており、スコアリング精度の向上に活用されています。
以下の表で、連携設定の確認項目を整理しています。
【比較表】Pardot×Salesforce連携設定の確認項目一覧
| 確認項目 | 内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 同期設定 | PardotとSalesforceのデータ同期 | 双方向同期か片方向か確認 |
| フィールドマッピング | 項目の対応関係 | 必要項目が正しくマッピングされているか |
| MQL定義 | 営業引き渡し基準 | スコア・グレードの閾値を両部門で合意 |
| SLA設定 | 営業の対応期限 | 引き渡し後何時間以内に対応するか |
| 所有者ルール | リード割り当て | 地域・業種別の担当者割り当てルール |
| キャンペーン連携 | Salesforceキャンペーン紐付け | 施策ごとの成果追跡が可能か |
| 通知設定 | 営業へのアラート | MQL到達時の通知方法(メール等) |
| フィードバック | 営業からの情報返し | 商談結果をPardotに反映する仕組み |
| レポート設定 | 成果の可視化 | 商談化率・受注率のダッシュボード |
| 権限設定 | アクセス権限 | 各担当者の閲覧・編集権限 |
引き渡し基準とSLAの設定
営業への引き渡し基準(MQL定義)は、マーケティング部門と営業部門の両方で合意することが重要です。マーケ側が「このリードは引き渡しOK」と判断しても、営業側が「まだ早い」と感じている場合、効率的なフォローができません。
MQL定義に含めるべき要素の例:
- スコア閾値(行動スコアが一定以上)
- グレード閾値(属性がターゲットに合致)
- 必須アクション(特定ページの閲覧、資料ダウンロードなど)
SLA(対応期限)については、「MQL到達後○時間以内に初回コンタクト」といった形で明確に設定し、対応状況を追跡できる仕組みを整えることが効果的です。引き渡し後の営業からのフィードバック(商談化の可否、失注理由など)をマーケティングに返す仕組みも、MQL定義の継続的な改善に役立ちます。
まとめ:Pardot活用成功の鍵は連携設計と運用標準化
本記事では、Account Engagement(旧Pardot)導入後の活用改善について、運用チェックリストとSalesforce連携設定の確認項目を中心に解説しました。
重要なポイントを整理すると、以下の通りです。
- 国内MA市場は成長を続けており、2026年には865億円へ拡大予測
- 導入後に成果が出ない原因は、ツールの機能ではなく連携設計・運用設計の不足
- スコアリング・グレーディングは定期的な見直しが必要
- Salesforce連携でマーケティング投資対効果の可視化が実現できる
- MQL定義とSLAはマーケと営業の両部門で合意が必要
「Pardotは高機能だから導入すれば成果が出る」という考え方では、活用不全に陥るリスクがあります。本記事のチェックリストと設定項目一覧を活用し、自社の運用状況を点検してみてください。
改めて結論として、Pardotの成果は「機能の多さ」ではなく「Salesforceとの連携設計」と「運用プロセスの標準化」によって決まります。ツールの導入はスタートに過ぎません。マーケティングと営業が連携できる仕組みを構築し、継続的に改善していくことが活用成功の鍵です。
