営業部門の業務棚卸が形骸化してしまう課題
結論から言えば、営業部門の業務棚卸は自社内だけで完結させようとすると形骸化しやすいため、SFA/MA実装まで含めた業務改善を一気通貫で支援できる専門家を活用することで、棚卸しから改善実行までを着実に進められます。
経済産業省の発表によると、2025年11月の卸売業販売額は39兆8350億円で前年同月比▲1.7%減少しており、販売プロセスの最適化が求められています。また、2025年1-11月の全国企業倒産件数は9,372件(前年同期比+2.2%増加)と、人手不足やコスト上昇を背景に厳しい経営環境が続いています。
このような状況の中、営業組織の業務が属人化していて効率化が進まない、SFA/MAを導入したが活用できていないという課題を抱える企業は少なくありません。
この記事で分かること
- 業務棚卸とは何か、営業部門における意味と目的
- 営業業務の具体的な棚卸項目と整理のポイント
- 業務棚卸の進め方と成功事例
- 棚卸から改善実行へつなげる方法とチェックリスト
業務棚卸とは何か|営業部門における意味と目的
業務棚卸とは、組織内の全業務をゼロベースで洗い出し、無駄・重複・属人化を特定して効率化を図る手法です。「棚卸」という言葉から在庫管理を連想される方もいらっしゃいますが、ここでいう業務棚卸は、商品在庫ではなく業務プロセスそのものを対象としています。
ゼロベース業務棚卸は、前例や慣習にとらわれず、すべての業務をゼロから見直して必要性・効率性を再評価する手法です。「今までこうやってきたから」という理由だけで続けている業務を見直すことで、本質的な改善につなげられます。
業務棚卸を進める際には、コア業務とノンコア業務の区別が重要です。コア業務は顧客獲得・提案など直接価値を生む業務を指し、ノンコア業務は事務作業など間接的な業務を指します。この仕分けにより、どの業務に注力すべきかが明確になります。
営業部門で業務棚卸が必要な理由
営業部門では、業務の属人化やプロセスの可視化不足が大きな課題となっています。Ask One社の2025年調査によると、BtoB企業でマーケティング施策の受注金額まで追跡しているのは30.2%のみという結果が出ています。つまり、約70%の企業が営業プロセス全体を可視化できていない状況です。
ROI追跡とは、マーケティング施策の投資対効果を案件化から受注金額まで一貫して測定・追跡することです。このROI追跡ができていないと、どの施策が成果に貢献しているのか、どの業務に無駄があるのかを把握することが困難になります。
業務棚卸によって営業プロセス全体を可視化することで、属人化した業務の発見、非効率な作業の特定、コア業務への集中といった改善が可能になります。
営業業務の棚卸項目一覧と整理のポイント
営業業務を体系的に整理するためには、カテゴリ別に棚卸項目を洗い出すことが効果的です。以下に、営業部門でよく見られる業務をカテゴリ別に整理しました。
【比較表】営業業務の棚卸項目一覧(カテゴリ別)
| カテゴリ | 業務項目 | 分類 |
|---|---|---|
| リード獲得 | 展示会対応 | コア業務 |
| リード獲得 | 問い合わせ対応 | コア業務 |
| リード獲得 | リスト作成・整備 | ノンコア業務 |
| リード獲得 | テレアポ | コア業務 |
| 商談 | 初回訪問・ヒアリング | コア業務 |
| 商談 | 提案書作成 | コア業務 |
| 商談 | 見積書作成 | ノンコア業務 |
| 商談 | 契約書作成 | ノンコア業務 |
| 事務・報告 | 日報・週報作成 | ノンコア業務 |
| 事務・報告 | 営業会議資料作成 | ノンコア業務 |
| 事務・報告 | CRM/SFAへのデータ入力 | ノンコア業務 |
| 事務・報告 | 経費精算 | ノンコア業務 |
| 顧客管理 | 既存顧客フォロー | コア業務 |
| 顧客管理 | クレーム対応 | コア業務 |
| 顧客管理 | 顧客情報更新 | ノンコア業務 |
コア業務とノンコア業務の仕分け方
業務を仕分けする際の基準は、「その業務が直接的に売上や顧客満足度に貢献するか」という点です。
コア業務の例としては、顧客との商談、提案活動、クレーム対応などが挙げられます。これらは営業担当者でなければ対応が難しい業務です。一方、ノンコア業務の例としては、報告書作成、データ入力、見積書の作成などがあります。これらは標準化やツール活用により効率化しやすい業務です。
仕分けの際には、「この業務は自分でなければできないか」「標準化できないか」「ツールで自動化できないか」という視点で検討すると、改善対象が明確になります。
営業業務棚卸の進め方と成功事例
業務棚卸を成功させるためには、体系的なアプローチと改善実行までのコミットメントが必要です。
よくある失敗パターンとして、業務棚卸シートを作成して満足してしまい、改善施策の実行に至らないまま放置するケースがあります。 また、自社だけで進めようとして客観的な視点が欠け、本質的な課題に気づけないまま終わってしまうことも少なくありません。
業務棚卸は一度やれば終わりではなく、定期的なPDCAで継続改善が必要です。
成功事例として、損害保険ジャパン日本興亜は「ゼロベース業務棚卸」により45万時間を創出し、全社100業務以上の効率化を実現しました(2017年度)。また、神戸製鋼所では業務管理ツールの導入により紙台帳からデジタル化を進め、週3.7時間、棚卸業務で7.75時間の削減を達成しています。高島屋グループでは業務のマルチタスク化・外部委託の内製化により、国内百貨店売上高+9.6%(既存店+3.4%)、BtoB外商顧客+5.7%を達成しています(2025年2月期)。
ただし、これらの成功事例は個別企業の状況に依存するため、業種・規模により再現性は異なる点に留意が必要です。
棚卸の進め方|ステップごとの解説
業務棚卸は以下のステップで進めることが効果的です。
全業務の洗い出し: 営業部門で行われているすべての業務をリストアップします。漏れがないよう、担当者へのヒアリングや業務日報の分析を行います。
分類・仕分け: 洗い出した業務をコア業務とノンコア業務に分類します。前述の棚卸項目一覧を参考に、自社の業務を当てはめていきます。
課題の特定: 各業務について、時間がかかりすぎている、属人化している、重複しているなどの課題を特定します。
改善優先度の決定: 課題の影響度と改善の難易度を考慮し、取り組む優先順位を決定します。効果が大きく、比較的取り組みやすい業務から着手することが推奨されます。
棚卸から改善実行へつなげる方法とチェックリスト
業務棚卸の成果を出すためには、棚卸しで終わらせず改善実行までつなげることが重要です。
棚卸結果を改善につなげるためのポイントとして、まず改善の担当者と期限を明確にすることが挙げられます。また、定期的な進捗確認の場を設けることで、改善が放置されることを防げます。
必要に応じて、SFA/MA実装まで含めた業務改善を一気通貫で支援できる専門家を活用することも選択肢の一つです。客観的な視点を取り入れることで、自社だけでは気づきにくい課題の発見につながります。
【チェックリスト】営業業務棚卸の実施チェックリスト
- 棚卸の目的と範囲を明確にした
- 関係者(営業担当者、マネージャー)へのヒアリングを実施した
- 全業務をリストアップした
- 各業務の所要時間を把握した
- 各業務の担当者を明確にした
- コア業務とノンコア業務に分類した
- 属人化している業務を特定した
- 重複している業務を特定した
- 時間がかかりすぎている業務を特定した
- 課題の影響度を評価した
- 改善の優先順位を決定した
- 改善施策を具体化した
- 改善の担当者と期限を設定した
- 進捗確認の場を設定した
- 定期的な見直しのサイクルを決めた
SFA/MAを活用した営業業務改善への接続
業務棚卸の結果をSFA/MAの導入・活用につなげることで、改善効果を高められます。
前述の通り、BtoB企業でマーケティング施策の受注金額まで追跡しているのは30.2%のみです(Ask One 2025年調査)。SFA/MAを活用してROI追跡の仕組みを構築することで、営業プロセス全体の可視化と継続的な改善が可能になります。
具体的には、ノンコア業務のうちデータ入力や報告書作成などをSFA/MAで効率化し、営業担当者がコア業務に集中できる環境を整えることが重要です。ツール導入だけでは効果は限定的で、業務フローの見直しとセットで進める必要があります。
まとめ:営業業務棚卸は改善実行までが成功の鍵
本記事では、営業部門の業務棚卸について、その意味と目的、具体的な進め方、成功事例、そして改善実行へつなげるポイントを解説しました。
ポイントを整理すると、以下の通りです。
- 業務棚卸は全業務をゼロベースで洗い出し、効率化を図る手法
- コア業務とノンコア業務の仕分けが改善の第一歩
- 棚卸シート作成だけで満足せず、改善実行までつなげることが重要
- SFA/MAを活用したROI追跡で継続的な改善が可能
人手不足・コスト意識の高まりにより、業務棚卸によるプロセス効率化の重要性は増しています。本記事のチェックリストを活用し、まずは自社の営業業務の現状把握から始めてみてください。
営業部門の業務棚卸は自社内だけで完結させようとすると形骸化しやすいため、SFA/MA実装まで含めた業務改善を一気通貫で支援できる専門家を活用することで、棚卸しから改善実行までを着実に進められます。
