営業とマーケでKPIが異なる問題と本記事の目的
営業とマーケのKPI統一で成功するには、部門別KPIを残しつつ共通KPI(商談数・商談化率・受注金額)を設定し、MA/SFAでデータを連携して可視化することが重要です。
KPI(Key Performance Indicator) とは、重要業績評価指標を指します。目標達成度を測定するための定量的な指標であり、営業部門とマーケティング部門ではそれぞれ異なるKPIが設定されているケースが多く見られます。
BtoBマーケティング施策で重視するKPIを調査した結果によると、「新規リード獲得数」が32.1%で1位、「受注率」は11.1%で2位となっています(SalesZine調査2024年、n=190、マーケティング担当者中心の回答)。一方で、2025年の調査では営業担当者の47.0%がマーケティングリードの品質に不満足と回答しており(FNN調査)、両部門間での認識のギャップが生じています。
このような状況では、マーケティング部門は「リード数は確保している」と主張し、営業部門は「質の低いリードが多い」と感じるという対立構造が生まれやすくなります。
この記事で分かること
- 営業とマーケでKPIが異なる構造的な理由
- KPIの違いによって生じる具体的な対立と弊害
- 共通KPI設計の考え方と具体例
- MA/SFAを活用した共通KPIの実装・運用方法
本記事では、MA/SFA導入済みのBtoB企業(従業員50-300名規模)を対象に、両部門が共通の目標に向かえるKPI設計と、データ連携の方法を解説します。
営業とマーケでKPIが異なる構造的な理由
営業とマーケティングでKPIが異なるのは、各部門が「コントロールできる範囲」が異なるためです。マーケティングは施策の上流(認知・獲得)を担当し、営業は下流(提案・クロージング)を担当するという役割分担が背景にあります。
調査によると、新規リード獲得数を優先する理由として「マーケティング施策でコントロールできるKPIだから」が58.0%、「経営側から最も求められている」が43.5%と報告されています(SalesZine調査2024年)。マーケティング部門にとって、自部門の活動で直接影響を与えられる指標をKPIとするのは合理的な判断です。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得した見込み客のうち、一定基準を満たした有望リードを指します。SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業がアプローチ可能と判断した見込み客で、MQLからさらに絞り込んだリードを指します。
このMQL→SQLへの変換プロセスにおいて、マーケティングと営業の評価基準が一致していないと、「数は多いが質が低いリード」が営業に渡されるという状況が発生します。
CPA(Cost Per Acquisition) とは、顧客獲得単価を指します。マーケティング部門がCPAを下げようとリード数を増やす施策に注力すると、リードの質が低下するリスクがあります。
よくある失敗:部門別KPIだけを追い続ける
営業とマーケがそれぞれ自部門のKPI(営業は売上、マーケはリード数)だけを追い、部門間でデータが分断されたまま対立が続くという失敗パターンがあります。
「リード数を増やせば売上が上がる」という考え方は誤りです。リードの量だけを追求しても、営業部門が対応できなければ商談化率は低下し、結果として売上にはつながりません。
この失敗パターンでは、以下のような悪循環が生じます。
- マーケティングはリード数を増やすことに注力
- 営業はリードの質に不満を持ち、対応の優先度を下げる
- 商談化率が低下し、マーケティングの成果が見えにくくなる
- 両部門の対立が深まり、協力関係が構築できない
部門ごとに最適化すれば全体最適になるわけではなく、部分最適は全体最適につながらない場合があります。
共通KPI設計の考え方|部門別KPIと共通KPIの両立
共通KPIは、部門別KPIを廃止するのではなく、両部門が共有できる指標を「追加」するアプローチが効果的です。商談数・商談化率・受注金額などを共通KPIとして設定し、マーケティングと営業が同じ目標に向かえる仕組みを作ります。
KPIツリーとは、KGI(最終目標)を達成するためのKPIを階層構造で分解・可視化した図を指します。売上(KGI)を起点に、受注件数→商談数→SQL数→MQL数→リード獲得数と逆算することで、各部門のKPIがどのように売上につながるかを明確にできます。
前述の調査で「受注率」は11.1%と重視度が低いことがわかりましたが(SalesZine調査2024年、n=190)、これを共通KPIに設定することで、両部門が「リードが最終的にどれだけ受注につながったか」を共有できるようになります。
【比較表】営業・マーケKPI比較と共通KPI設計表
| 項目 | マーケティング部門 | 営業部門 | 共通KPI候補 |
|---|---|---|---|
| 主要KPI | 新規リード獲得数、MQL数、Webサイト訪問数 | 売上、受注件数、成約率 | 商談数、商談化率、受注金額 |
| 評価軸 | リードの「量」 | 売上の「金額」 | リードから受注への「転換」 |
| コントロール範囲 | 認知・獲得(上流) | 提案・クロージング(下流) | MQL→SQL→商談→受注の全プロセス |
| 課題 | 質より量になりやすい | マーケリードの質に不満 | 部門間でデータが分断 |
| 共通KPI設定のポイント | リード数に加え、商談化率もKPIに追加 | 売上に加え、商談化率をKPIに追加 | MA/SFAでファネル全体を可視化 |
KPIの違いによって生じる対立と弊害
KPIの違いは、単なる指標の問題ではなく、組織全体のパフォーマンスに影響を与える課題です。両部門の対立が続くと、商談機会の損失や営業リソースの非効率な配分につながります。
調査によると、新規リード獲得数をKPIにしている企業の課題として「リード数の頭打ち」46.4%、「コスト集中」46.4%、「営業からの温度感低さ指摘」40.6%が挙げられています(SalesZine調査2024年)。
「営業からの温度感低さ指摘」が40.6%に上るという結果は、マーケティングが獲得したリードに対して営業が「購買意欲が低い」「アプローチしても成約しにくい」と感じているケースが多いことを示しています。
また、2025年の調査では営業担当者の47.0%がマーケティングリードの品質に不満足と回答しています(FNN調査)。この数字は、約半数の営業担当者がリードの質に課題を感じていることを意味しています。
このような対立が続くことで生じる弊害は以下のとおりです。
- コミュニケーションの断絶: 両部門の情報共有が減り、顧客理解が分断される
- リソースの無駄遣い: マーケティングは質の低いリード獲得にコストをかけ、営業は成約しにくいリードへの対応に時間を費やす
- 目標未達の責任転嫁: 売上未達時に「マーケのリードが悪い」「営業の対応が遅い」と互いに責任を押し付け合う
重要なのは、この問題を「どちらの部門が悪いか」という視点で捉えるのではなく、構造的な課題として解決することです。
MA/SFAを活用した共通KPI実装と運用
MA/SFAを活用することで、MQL→SQL→商談化→受注という一連のファネルデータを連携し、両部門が同じデータを見ながら改善活動を行える環境を構築できます。
調査によると、受注率向上のための取り組みとして「発信するコンテンツの見直し」が50.5%で最上位、「営業部門への詳細な顧客情報の提供」が34.7%と報告されています(SalesZine調査2024年)。
「営業部門への詳細な顧客情報の提供」が上位に挙がっている点は、データ連携の重要性を示しています。MAで取得したリードの行動履歴(閲覧ページ、ダウンロード資料、メール開封状況など)をSFAに連携し、営業担当者が商談時に活用できるようにすることで、リードの質に対する理解が深まります。
【チェックリスト】共通KPI設計チェックリスト
- 売上(KGI)から逆算したKPIツリーを作成している
- マーケティングと営業で共通のKPI(商談数・商談化率・受注金額など)を設定している
- MQLからSQLへの転換基準が両部門で合意されている
- MA/SFAでリードから受注までのデータが連携されている
- 共通ダッシュボードで両部門がリアルタイムにデータを確認できる
- 定期的な部門間ミーティングでKPI進捗を共有している
- リードの質について営業からマーケティングへフィードバックする仕組みがある
- マーケティングから営業へ顧客の行動履歴を提供している
- 商談化しなかったリードの理由を分析している
- 受注したリードの獲得チャネルを追跡している
- KPIの見直しを定期的(四半期ごとなど)に実施している
- 両部門のKPI達成状況を経営層に報告している
- KPI未達時の原因分析を両部門で協力して行っている
- 成功事例(商談化率が高いリードの特徴など)を共有している
- KPI設計の改善提案を両部門から受け付ける仕組みがある
まとめ:共通KPIで営業とマーケの連携を強化する
本記事では、営業とマーケティングでKPIが異なる構造的な理由と、共通KPIを設計・運用するための方法を解説しました。
本記事の要点
- マーケティングKPIは「新規リード獲得数」が32.1%で1位、営業との間にギャップが生じやすい
- 営業担当者の47.0%がマーケティングリードの品質に不満を持っている
- 「リード数を増やせば売上が上がる」という考えは誤りであり、部門別KPIだけを追い続ける失敗を避ける必要がある
- 共通KPI(商談数・商談化率・受注金額)を設定し、KPIツリーで売上から逆算する設計が有効
- MA/SFAでデータを連携し、共通ダッシュボードで可視化することで両部門の協力体制を構築できる
まずは本記事で紹介した比較表とチェックリストを活用し、自社の現状を整理してみてください。
営業とマーケのKPI統一は、部門別KPIを残しつつ共通KPI(商談数・商談化率・受注金額)を設定し、MA/SFAでデータを連携して可視化することで実現できます。両部門が同じデータを見ながら改善活動を行える環境を構築することが、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
