営業部長に求められるスキルが変わっている背景
実は、営業部長には従来のリーダーシップ・マネジメントスキルに加え、データ活用による意思決定力とマーケ・インサイドセールスとの部門連携力が求められており、この2つのスキルが組織成果を左右します。
総務省「就業構造基本調査 2022年」によると、管理的職業従事者は就業者全体の約7.3%とされています。営業部長はこの管理職層に位置しますが、求められるスキルは年々変化しています。
従来の営業部長像は「営業成績トップのエースがそのまま昇進する」というものでした。しかし現在のBtoB企業では、個人の営業力だけでは組織成果を最大化できません。デジタル化の進展により、データに基づいた意思決定や、マーケティング部門・インサイドセールス部門との連携が不可欠になっているためです。
この記事で分かること
- 営業部長の役割と定義(経営代行者としての立ち位置)
- 営業部長に必要なスキルと課長との違い
- データ活用による営業マネジメントの進化
- 営業部長スキルのセルフチェックリスト
営業部長の役割と定義|経営代行者としての立ち位置
営業部長とは、経営戦略を営業戦略に翻訳し、組織として売上・利益を再現性高く生み出す役割を担う管理職です。単なる営業課長の上位職ではなく、「経営代行者」としての視点が求められます。
リクルートマネジメントソリューションズ調査(2023年)では、営業マネジャーの約7割が「戦略・戦術の設計」と「部下育成」を最重要業務に挙げています(民間調査のため、母集団代表性は限定的です)。この調査からも、営業部長に求められる役割が「自ら売る」から「組織で売れる仕組みをつくる」に変化していることがわかります。
よくある失敗パターン:課長時代の延長でプレイングマネージャーを続ける
営業課長時代の延長線上でプレイングマネージャーとして自ら案件を追いかけ続けると、組織全体の仕組みづくりやデータ活用に手が回らなくなります。この失敗パターンは多くの企業で見られ、結果として組織成果が伸び悩む原因となっています。
営業部長の役割は、個人で案件を取ることではなく、組織全体が継続的に成果を出せる体制を構築することです。そのためには、戦略立案、人材育成、プロセス設計といったマネジメント業務に時間を割く必要があります。
営業部長に必要なスキル|主要な能力と課長との違い
営業部長に必要なスキルは、大きく分けて「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分類できます。これに加え、現代ではデータ活用スキルと部門連携スキルが不可欠です。
テクニカルスキルとは、業務遂行に必要な専門的技能です。営業部長では売上管理、目標設定、SFA/CRM活用などが該当します。
ヒューマンスキルとは、対人関係能力です。リーダーシップ、コミュニケーション、コーチングなどを含みます。
コンセプチュアルスキルとは、概念化・戦略思考能力です。組織の方針を理解し、自部門の戦略に落とし込む力を指します。
ソフトブレーン調査(2022年)では、予算達成企業の約80%が「営業プロセスを定義・可視化している」と回答しています。一方、未達成企業では同割合が5割未満です(民間調査のため、サンプルに偏りがある可能性があります)。この結果からも、営業プロセスを設計・可視化するスキルが組織成果に直結していることがわかります。
【比較表】営業部長と営業課長のスキル比較
| 項目 | 営業課長 | 営業部長 |
|---|---|---|
| 役割 | 実務統率者 | 経営代行者 |
| 視点 | 戦術(How) | 戦略(What/Why) |
| 時間軸 | 年間 | 中長期 |
| 目標 | 自部署の成果最大化 | 全体最適・事業成長 |
| マネジメント | 直接指導・プレイング | 課長を通じた間接マネジメント |
| 意思決定範囲 | 担当領域内 | 部門横断・経営連携 |
| 求められるスキル | 営業スキル、チーム管理 | 戦略立案、組織設計、データ活用 |
データ活用による営業マネジメントの進化
現代の営業部長には、データに基づいた意思決定力が求められます。勘や経験だけに頼るマネジメントでは、組織全体の成果を再現性高く出し続けることが難しくなっています。
営業プロセスとは、見込み客発掘から受注までの営業活動を標準化した手順です。可視化・定義することで再現性を高めます。
前述のソフトブレーン調査(2022年)で示された「予算達成企業の約80%が営業プロセスを定義・可視化している」という結果は、データ活用の重要性を裏付けています。営業部長がデータを活用することで、以下のような改善が期待できます。
- 営業活動の可視化: SFA/CRMを活用し、各営業担当者の活動状況をリアルタイムで把握
- ボトルネックの特定: 商談ステージごとの歩留まりを分析し、改善すべきポイントを特定
- 予実管理の精度向上: データに基づいた売上予測と対策立案
- 人材育成の効率化: 成果を出している営業担当者の行動パターンを分析し、育成に活用
データ活用スキルが組織成果を左右する時代において、営業部長には「数字を見る力」だけでなく「数字から打ち手を導き出す力」が求められています。
営業部長のスキルを高めるポイントとセルフチェック
営業部長として成果を出すためには、自身のスキルを客観的に把握し、強化すべき領域を特定することが重要です。以下のチェックリストを使って、現在のスキル習得状況を確認してください。
スキル要件は企業規模・業種によって異なるため、すべての項目が必須というわけではありません。自社の状況に合わせて、優先的に強化すべき領域を判断してください。
【チェックリスト】営業部長スキルセルフチェック
- 経営戦略を理解し、営業戦略に落とし込んでいる
- 中長期の営業目標と達成計画を策定できる
- 営業プロセスを定義・文書化している
- KPIを設定し、定期的に進捗を確認している
- SFA/CRMを活用したデータ分析ができる
- データに基づいた意思決定を行っている
- 課長・マネージャーを通じた間接マネジメントができている
- 部下の育成計画を立て、実行している
- 1on1やフィードバックを定期的に実施している
- マーケティング部門と連携してリード獲得施策を推進している
- インサイドセールスとの連携ルールを整備している
- 他部門との調整・交渉ができている
- 経営層への報告・提案ができている
- 市場動向・競合情報を把握している
- 自部門の課題を構造的に整理し、解決策を立案できている
チェックが付かない項目が多い場合は、まずその領域のスキル強化に取り組むことをおすすめします。特に「営業プロセスの定義」「データ活用」「部門連携」は、現代の営業部長に不可欠なスキルとして優先的に強化すべき領域です。
まとめ:成果を出す営業部長になるために
本記事では、営業部長に求められるスキルについて、従来のマネジメントスキルに加え、データ活用と部門連携の観点から解説しました。
本記事のポイント
- 営業部長は「経営代行者」として、戦略・全体最適・中長期の視点が求められる
- 営業課長との違いは、視点の転換(戦術→戦略、自部署→全体最適)にある
- データ活用スキル(営業プロセス可視化、KPI管理)が組織成果に直結する
- 従来のリーダーシップスキルに加え、部門連携力が不可欠
次のステップとして、本記事で紹介したセルフチェックリストを活用し、自身のスキル習得状況を確認してください。チェックが付かない項目を優先的に強化することで、成果を出す営業部長に近づくことができます。
営業部長には従来のリーダーシップ・マネジメントスキルに加え、データ活用による意思決定力とマーケ・インサイドセールスとの部門連携力が求められており、この2つのスキルが組織成果を左右します。
