営業パイプライン可視化でボトルネックが見えない課題
結論から言えば、営業パイプラインの可視化で成果を出すには、営業部門内の管理だけでなく、マーケティングからのリード流入を含めた一貫した設計と、MA/SFAの連携によるデータ統合が不可欠です。
パイプライン管理とは、営業案件の進行状況を可視化し、リード獲得から成約までの流れを分析・改善するマネジメント手法です。しかし、多くの企業が「営業パイプラインは管理しているが、リードがどこで停滞しているか分からない」という課題を抱えています。
BtoB購買担当者は購買プロセスの約57%を営業担当者に会う前に完了しているというデータがあります(主にオンライン情報収集)。つまり、営業部門だけでパイプラインを管理していても、購買プロセスの半分以上が見えていない状態なのです。
この記事で分かること
- パイプライン管理とファネル(TOFU/MOFU/BOFU)の基本概念
- マーケから営業までの一貫したパイプライン設計方法
- 営業部門だけのパイプライン管理が失敗する理由
- MA/SFA連携によるパイプライン可視化の実践ステップ
なお、本記事は営業パイプライン(営業案件管理)を対象としています。データエンジニアリング分野のデータパイプラインとは異なりますのでご注意ください。
パイプライン管理とファネルの基本を理解する
パイプライン管理を効果的に行うためには、ファネル(漏斗)の構造を理解することが重要です。ファネルはTOFU・MOFU・BOFUの3段階に分けて考えるのが一般的です。
TOFU(Top of Funnel) とは、ファネル上部の認知・リード獲得段階です。Web検索やコンテンツダウンロードなど、見込み顧客との初期接触が行われるフェーズです。
MOFU(Middle of Funnel) とは、ファネル中部のリード育成・ナーチャリング段階です。セミナーや事例共有などを通じて、インサイドセールスへ移行する準備を行うフェーズです。
BOFU(Bottom of Funnel) とは、ファネル下部のリード選別・商談・クロージング段階です。対面営業や最終提案を行い、成約に至るフェーズです。
TOFU・MOFU・BOFUの役割と連携
ファネル各段階には、主に担当する部門が異なります。TOFUはマーケティング部門が主導し、BOFUは営業部門が主導します。MOFUはインサイドセールスが担当することが多く、マーケティングと営業の連携が特に重要なフェーズです。
この連携がうまくいかないと、リード情報が途中で途切れ、パイプライン全体を可視化できない状態に陥ります。
マーケから営業までの一貫したパイプライン設計
パイプライン可視化を成功させるためには、TOFUからBOFUまで一貫した設計が必要です。BtoB購買者の約57%が営業に会う前に購買プロセスを完了している現状を踏まえると、TOFU段階でのコンテンツ強化と情報収集が成果を左右します。
リードスコアリングとは、リードの行動履歴や属性に基づいて点数を付け、商談化可能性を評価する手法です。パイプライン可視化の基盤となる重要な仕組みです。
【フロー図】マーケ→営業パイプライン可視化の全体設計フロー
flowchart TD
A[TOFU: リード獲得] --> B[Web訪問・資料DL]
B --> C[MA: 行動履歴記録]
C --> D[リードスコアリング]
D --> E[MOFU: リード育成]
E --> F[セミナー・メール配信]
F --> G[スコア閾値判定]
G --> H[MQL: 営業引き渡し]
H --> I[SFA: 商談管理]
I --> J[BOFU: 商談・クロージング]
J --> K[受注/失注]
K --> L[データ分析・改善]
L --> A
ステージ定義とKPI設計のポイント
各ステージの定義を明確にし、KPIを設定することがパイプライン可視化の前提条件です。リード確度が一定の基準に達したタイミングで、インサイドセールスから営業へハンドオフするルールを設計します。
なお、ハンドオフの基準は自社の商材特性により異なります。過去の商談データを分析し、自社にとって最適な基準を見つけることが重要です。
営業部門だけのパイプライン管理が失敗する理由
**よくある失敗パターンとして、営業部門だけでパイプライン管理を始め、マーケティングからのリード情報やMA上の行動履歴が引き継がれないケースがあります。**この場合、リードの質や停滞原因が分析できないまま、属人的な管理に戻ってしまいます。
「パイプライン管理は営業部門だけの仕事」という考え方は誤りです。マーケティングからのリード流入を含めた一貫した設計がなければ、パイプライン全体を可視化することはできません。
製造業に関する調査によると、営業利益率が低い企業ではボトルネック分析が不足していることが要因の一つとされています(経済産業省 製造産業分科会資料、2022年)。パイプライン全体を可視化し、どこで案件が停滞しているかを把握することが、経営成果に直結します。
リード情報が途切れる構造的問題
MA(マーケティングオートメーション)とSFA(営業支援システム)が連携していない場合、MAで記録したリードの行動履歴(Web閲覧、資料ダウンロード、メール開封など)がSFAに引き継がれません。
この場合、営業担当者はリードの背景情報を把握できないまま商談に臨むことになり、適切なアプローチが困難になります。また、口頭やメールでの属人的な情報共有には限界があり、組織全体でのパイプライン可視化は実現できません。
MA/SFA連携によるパイプライン可視化の実践
MA/SFAを連携させることで、リード獲得から商談化までのデータを一元管理し、パイプライン全体を可視化できます。以下のチェックリストを活用して、自社の導入状況を確認してください。
【チェックリスト】パイプライン可視化導入チェックリスト
- パイプラインの対象範囲を定義している(TOFU〜BOFUのどこまでを可視化するか)
- 各ステージの定義を明文化している
- ステージ間の移行条件(スコア閾値等)を設定している
- マーケティングと営業のハンドオフルールを定めている
- MAツールでリードの行動履歴を記録している
- リードスコアリングの基準を設計している
- SFAで商談ステージを管理している
- MA/SFA間のデータ連携を設定している
- ダッシュボードで主要KPIを可視化している
- 各ステージのリード数を把握している
- ステージ間の変換率(コンバージョン率)を計測している
- 滞留案件(一定期間ステージが進まない案件)を把握している
- 定期的にKPIをレビューする体制がある
- ボトルネックを特定し改善策を検討する仕組みがある
- マーケティングと営業が連携してパイプラインを改善する体制がある
ダッシュボードで見るべき指標
パイプライン可視化のダッシュボードでは、以下の指標を追うことが重要です。
- 各ステージのリード数: TOFU・MOFU・BOFUそれぞれに何件のリードが存在するか
- ステージ間の変換率: 各ステージから次のステージへ移行する割合
- 滞留日数: 各ステージにリードが留まっている平均日数
- 商談化率: MQLから商談に至る割合
- 成約率: 商談から受注に至る割合
これらの指標をリアルタイムで可視化することで、ボトルネックとなっているステージを迅速に特定し、改善策を講じることができます。
まとめ:パイプライン可視化で営業成果を向上させるために
本記事では、営業パイプライン可視化の基本概念から、マーケ連携の重要性、MA/SFA連携による実践方法までを解説しました。
重要なポイントを整理します。
- パイプライン管理はTOFU・MOFU・BOFUの3段階で構成される
- BtoB購買者の約57%は営業に会う前に購買プロセスを完了しているため、TOFU段階からの可視化が重要
- 営業部門だけでパイプラインを管理すると、リード情報が途切れて全体像が見えなくなる
- MA/SFAの連携により、リード獲得から商談化までのデータを一元管理できる
- ダッシュボードで変換率や滞留日数を可視化し、ボトルネックを特定して改善する
営業パイプラインの可視化で成果を出すには、営業部門内の管理だけでなく、マーケティングからのリード流入を含めた一貫した設計と、MA/SFAの連携によるデータ統合が不可欠です。本記事のチェックリストを活用し、自社のパイプライン可視化の状況を確認してみてください。
