MQLとSQLの違いを理解しリード管理を改善する
MA/SFAツールは導入済みだが、マーケティング部門が獲得したリードの質が低いと営業部門から不満が出ている、部門間でのリード引き渡しルールやKPIが統一されておらず連携がうまくいっていない――こうした課題を抱える企業は少なくありません。最も重要なのは、MQL/SQLの違いを理解するだけでなく、MA/SFA設定と部門間連携の運用体制整備を通じて、リード管理を実際に機能させることで営業成果に繋がることです。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動により購買意欲が高いと判断された育成段階の見込み顧客です。SQL(Sales Qualified Lead) は、営業またはインサイドセールスが商談化可能と判定した案件化に近いリードを指します。しかし、日本のBtoB企業ではMAツール導入率が全企業中わずか1.5%(9,444社/約62.6万社)にとどまり、上場企業でも14.6%(562社/3,850社)という現状があります(2025年調査)。導入済み企業でも、MQL/SQLの定義が曖昧で、リード管理が体系化されていないケースが一般的です。
この記事で分かること
- MQLとSQLの定義と基本的な違い(資格判定段階、責任部門、判断材料)
- MQL/SQLを明確に定義し運用することで得られるメリット(営業効率化・売上向上)
- MQLからSQLへスムーズに移行する具体的な方法(スコアリング・ナーチャリング・SLA設定)
- MA/SFA設定と部門間データ連携・KPI統一の実装方法
- MQL/SQL運用を実際に機能させるための準備チェックリスト
MQLとSQLの基本的な違い
MQLとSQLの最も基本的な違いは、資格判定段階と責任部門にあります。MQLはマーケティング部門が行動履歴や属性でスコアリングし判定する「育成段階の見込み顧客」であり、SQLは営業またはインサイドセールスがBANT確認で商談化可能と判定した「案件化に近いリード」です。
具体的には、MQLは興味・情報収集段階のリードであり、ナーチャリング(育成)が必要です。一方、SQLは導入検討段階のリードで、即商談可能な状態にあります。判断材料も異なり、MQLは資料ダウンロードやウェビナー参加などの行動履歴と企業規模・役職などの属性スコアで判定されるのに対し、SQLは営業またはインサイドセールスが直接ヒアリングしたBANT情報(予算・権限・ニーズ・時期)で判定されます。
MQL(マーケティング認定リード)とは
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動により購買意欲が高いと判断された育成段階の見込み顧客です。行動履歴や属性をスコアリングし、一定の基準を満たしたリードをMQLと定義します。
リードスコアリングとは、見込み顧客の行動履歴や属性に点数を付け、購買意欲を定量化する手法です。MA(Marketing Automation) ツールを活用し、リード獲得・育成・商談化を効率化します。
MQL判定の具体的な行動例としては、資料ダウンロード、ウェビナー参加、価格ページ閲覧、メール開封・クリック、複数回のサイト訪問などが挙げられます。これらの行動に点数を付与し、合計スコアが一定基準(目安として50点以上)を超えた場合にMQLと判定されます。ただし、この基準は目安であり、自社の商談化率を見て調整することが重要です。業界や企業規模により適切なスコア基準は異なるため、自社検証を推奨します。
SQL(営業認定リード)とは
SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業またはインサイドセールスが商談化可能と判定した案件化に近いリードです。BANT(Budget:予算、Authority:決裁権、Need:ニーズ、Timeline:導入時期)の4つの基準で判定されます。
MQLとの違いを明確にすると、MQLは「育成対象」であるのに対し、SQLは「即商談可能」な状態にあります。MQLがマーケティング部門の管轄であるのに対し、SQLは営業部門またはインサイドセールスの管轄となります。
インサイドセールスの役割は、MQLからSQLへの移行時にBANTを簡易確認し、営業にパスする前にリードの質を担保することです。予算が確保されているか、決裁権を持つ担当者と接触できているか、具体的なニーズがあるか、導入時期が明確かを確認することで、営業工数の無駄を削減し、成約率を高めることができます。
MQL/SQLの重要性とメリット
MQL/SQLを明確に定義し運用することで、営業効率化と売上向上という2つの大きなメリットが得られます。2025年の調査では、課題解決策としてデータ分析強化が22.1%で上位に挙がる一方、マーケティング・営業連携の言及は少なく、部門間データ共有の遅れが反映されています(サンプルサイズ小(n=87)のため全体傾向としての限界があります)。MQL/SQL定義の明確化は、この部門間連携の課題を解決する鍵となります。
MQLからSQLへの理想的なコンバージョン率は13%とされており(2025年指標)、これを達成することで営業パイプラインが安定し、売上予測精度が高まります。ただし、この数値はグローバルデータ中心であり日本市場特化ではないため、自社規模に応じた検証が必要です。
営業効率化のメリット
MQL/SQL定義の明確化により、営業工数削減と商談化速度向上が実現します。よくある誤解として、MQL全件を営業にパスすれば商談数が増えると考えるケースがありますが、実際には営業工数過多で成果が低迷し、部門対立を招くことになります。
SQL基準でフィルタリングすることで、営業は質の高いリードのみに集中でき、無駄なフォローアップを削減できます。インサイドセールスを活用し、MQL到達後5分以内にコール対応することで、商談化速度が大きく向上する事例も増加しています。これにより、営業担当者1人あたりの処理リード数が向上し、成約率も改善する傾向があります。
売上向上のメリット
MQL-SQLコンバージョン率の改善により、売上予測精度とマーケティングROIが向上します。2025年指標では、理想的なMQL-SQLコンバージョン率は13%とされており、これを達成することで営業パイプラインが安定します(ただしグローバルデータ中心で日本市場特化ではないため、自社規模に応じた検証が必要です)。
AI活用によるMQL識別精度向上で、マーケティングROIが向上する傾向も見られます(2025年)。マーケティング・営業間で共通KPI(MQL-SQL移行率、SQL受注率)を設定し、週次レビューで改善を継続することで、組織全体の売上向上に繋がります。
MQLからSQLへスムーズに移行する方法
MQLからSQLへの移行をスムーズに行うためには、リードスコアリング基準の設定、リードナーチャリング施策の実施、SLA(サービスレベル契約)の設定という3つの要素が重要です。
リードスコアリングとは、見込み顧客の行動履歴や属性に点数を付け、購買意欲を定量化する手法です。リードナーチャリングは、見込み顧客を育成し、購買意欲を高めるマーケティング活動を指します。SLA(Service Level Agreement) は、マーケティング・営業間でのリード引き渡しルールやレスポンス時間を明確化する合意です。
【比較表】MQL/SQL基準設定例
以下は、MQL/SQL判定の具体的な基準設定例です。自社の商談化率を見て調整してください。
| 項目 | MQL基準 | SQL基準 |
|---|---|---|
| スコア | 属性スコア + 行動スコア = 50点以上(目安) | BANT 4項目中3項目以上を満たす |
| 属性スコア | 業種(10-20点)、企業規模(10-20点)、役職(5-15点)、予算規模(5-10点) | - |
| 行動スコア | 資料DL(10点)、ウェビナー参加(15点)、価格ページ閲覧(20点)、問い合わせ(30点) | - |
| BANT: 予算 | - | 予算が確保されている、または予算申請中 |
| BANT: 権限 | - | 決裁権を持つ担当者、または決裁者への接触ルートがある |
| BANT: ニーズ | - | 具体的な課題・ニーズが明確 |
| BANT: 時期 | - | 3-6ヶ月以内の導入を検討 |
| 責任部門 | マーケティング部門 | 営業部門 / インサイドセールス |
| 判定方法 | MAツールの自動スコアリング | インサイドセールスによるヒアリング |
| 次のアクション | ナーチャリング施策(メール配信、ウェビナー案内)でSQL移行を促進 | 営業にパスし、商談化 |
スコアリング基準の設定
リードスコアリングの基準設定は、属性スコアと行動スコアの2軸で行います。属性スコアは、業種(ターゲット業界であれば10-20点)、企業規模(従業員数や売上規模で10-20点)、役職(決裁権に近いほど高得点で5-15点)、予算規模(5-10点)などで構成されます。
行動スコアは、資料ダウンロード(10点)、ウェビナー参加(15点)、価格ページ閲覧(20点)、問い合わせフォーム送信(30点)など、購買意欲の高さを反映する行動に点数を付与します。合計50点以上をMQL基準とする目安がありますが、自社の商談化率を見て調整することが重要です。
よくある誤解として、MQLスコア80点以上など高基準を設定すれば質が上がると考えるケースがありますが、実際には移行率が低下し機会損失が発生するリスクがあります。スコア基準は、MQL-SQL移行率と最終的な受注率のバランスを見ながら、定期的に見直すことが推奨されます。
リードナーチャリング施策
リードナーチャリング施策により、MQL育成からSQL移行を促進します。具体的な施策としては、ウェビナー開催(業界トレンドや課題解決方法を紹介)、事例紹介メール配信(同業種・同規模企業の導入事例を送付)、ホワイトペーパー提供(詳細な課題解決ガイドを提供)、定期的なニュースレター配信(製品アップデート情報や活用Tipsを共有)などが挙げられます。
MQL-SQL変換に1-3ヶ月かかる場合、ナーチャリング施策の強化が必要です。特に、BtoB企業では検討期間が長いため、継続的な接触を保ちながら、購買意欲を段階的に高めることが重要です。
AI活用によるMQL識別精度向上の最新トレンドも注目されています(2025年)。AIがリードの行動パターンを分析し、適切なタイミングでナーチャリング施策を自動配信することで、MQL-SQL移行率の向上が期待できます。
MA/SFA設定とマーケティング・営業間の運用体制整備
MQL/SQLの定義を理解すれば自動的に営業効率が向上すると考え、MA/SFA設定や部門間データ連携、KPI統一などの運用体制整備を後回しにしてしまう――これは大きな誤解です。MAツール導入率が全企業中1.5%、上場企業でも14.6%という現状(2025年調査)が示すように、導入済み企業でも活用不全のケースが一般的です。
MA(Marketing Automation) とは、マーケティング活動を自動化し、リード獲得・育成・商談化を効率化するツールです。しかし、ツール導入だけではMQL/SQLは自動で管理できません。定義設定と運用体制整備が不可欠です。
データ分析強化が課題上位(22.1%)に挙がる一方、マーケティング・営業連携の言及は少なく、部門間データ共有の遅れが反映されています(2025年調査、サンプルサイズ小(n=87)のため全体傾向としての限界があります)。MA/SFA設定、部門間データ連携、KPI統一の3軸で運用体制を整備することが、MQL/SQL運用を実際に機能させる鍵となります。
【チェックリスト】MQL/SQL運用準備チェックリスト
以下のチェックリストで、MQL/SQL運用の準備状況を確認してください。
- MA/SFA設定: MQL定義設定 - 属性スコアと行動スコアの配点を設定した
- MA/SFA設定: MQLスコア閾値設定 - MQL判定の基準点(目安50点)を自社の商談化率に基づき設定した
- MA/SFA設定: カスタムフィールド追加 - MQLスコア、SQL判定フラグ、BANT確認状況のフィールドを追加した
- MA/SFA設定: ワークフロー自動化 - スコア50点到達でインサイドセールスに通知するワークフローを設定した
- MA/SFA設定: SQL判定後の自動パス - SQL判定後に営業へ自動パスするワークフローを設定した
- MA/SFA設定: ナーチャリングシナリオ - MQL育成のためのメール配信シナリオを設計した
- データ連携: 共通KPI設定 - マーケティング・営業間でMQL-SQL移行率、SQL受注率の共通KPIを設定した
- データ連携: SLA合意 - MQL引き渡し後24時間以内に初回コンタクトを行うSLAを合意した
- データ連携: 週次レビュー体制 - マーケティング・営業間で週次レビューミーティングを設定した
- データ連携: ダッシュボード共有 - MQL-SQL移行状況を可視化するダッシュボードを両部門で共有した
- KPI設計: MQL-SQL移行率の目標設定 - 理想値(13%)を参考に、自社の目標移行率を設定した
- KPI設計: SQL受注率の目標設定 - SQL→受注の転換率目標を設定した
- KPI設計: 改善PDCAサイクル - KPI未達時の改善プロセスを定義した
- 運用体制: インサイドセールス配置 - MQL→SQL移行を担当するインサイドセールスをアサインした
- 運用体制: BANT確認マニュアル - インサイドセールスがBANT確認するためのヒアリングマニュアルを作成した
- 運用体制: 定期見直し - スコアリング基準、SLA、KPIを四半期ごとに見直す体制を構築した
MA/SFAでのMQL/SQL管理設定
MA(Marketing Automation) ツールでの具体的な設定方法を解説します。カスタムフィールド設定では、MQLスコア(数値型)、SQL判定フラグ(真偽値型)、BANT確認状況(選択肢型:予算確認済み、権限確認済み、ニーズ確認済み、時期確認済み)などのフィールドを追加します。
ワークフロー自動化の設定例としては、MQLスコアが50点に到達した際にインサイドセールスにメール通知を送信する、SQL判定フラグがTrueになった際に営業担当者にリード情報を自動パスする、MQLに到達したリードに対してナーチャリングメールを自動配信するなどが挙げられます。
特定のツール名を推奨することは避けますが、一般的なMA/SFAツールには上記の機能が標準搭載されています。自社のツールのマニュアルを参照し、具体的な設定方法を確認してください。
部門間データ連携とKPI統一
マーケティング・営業間のデータ連携とKPI設計が、MQL/SQL運用成功の鍵です。共通KPI設定では、MQL-SQL移行率(MQLのうち何%がSQLに移行したか)、SQL受注率(SQLのうち何%が受注したか)を両部門で共有し、週次レビューで改善を継続することが重要です。
SLA(Service Level Agreement) 設定では、「MQL引き渡し後24時間以内に初回コンタクトを行う」という基準を標準とし、部門間の責任を明確化します。これにより、マーケティング部門が獲得したリードを営業部門が放置するリスクを防ぎます。
よくある課題として、営業が「マーケのリードは質が低い」と批判するだけで終わるケースがありますが、これでは解決しません。MQL/SQL定義を共同で設計し、SLAで合意することが重要です。週次レビューで「なぜMQL-SQL移行率が低いのか」「SQL受注率が低い原因は何か」を両部門で分析し、スコアリング基準やナーチャリング施策を改善し続けることで、リード管理が実際に機能するようになります。
まとめ|MQL/SQL運用を実際に機能させるために
MQL/SQLの違いを理解し、リード管理を改善するための要点を整理します。
- MQLはマーケティング部門が行動履歴や属性でスコアリングし判定する育成段階のリード、SQLは営業がBANT確認で商談化可能と判定した案件化に近いリード
- 資格判定段階(MQL: 興味・関心 → SQL: 検討・選定)と責任部門(MQL: マーケティング → SQL: 営業/IS)が異なる
- MQL-SQL理想コンバージョン率13%達成で営業パイプライン安定と売上予測精度向上(グローバルデータ中心のため自社検証を推奨)
- スコアリング基準設定(属性+行動、目安50点以上)、ナーチャリング施策(ウェビナー、事例紹介)、SLA設定(24時間以内コンタクト)でMQL→SQL移行を促進
- MA/SFA設定、部門間データ連携、KPI統一の運用体制整備が不可欠
MQL/SQLの違いを理解するだけでなく、MA/SFA設定と部門間連携の運用体制整備を通じて、リード管理を実際に機能させることで営業成果に繋がります。
次のアクションとして、まずは本記事のチェックリストを使ってMA/SFA設定の現状を確認し、部門間でSLAを設定し、共通KPI(MQL-SQL移行率、SQL受注率)を設計することが推奨されます。自社でのリソース不足や専門知識不足を感じる場合、外部支援を活用する選択肢もあります。MA/SFA設定からフルスクラッチ開発まで一気通貫で実装・納品する支援を受けることで、定義から実行までスムーズに進めることが可能です。
