Marketo APIとは?本記事の目的
Marketo APIを活用して外部CRM/SFA/BIツールとの連携を実現し、業務を効率化するために必要なのは、仕様理解だけでなく業務フローを考慮した設計・実装・運用定着まで一気通貫で行うことです。
MA/SFA導入済み企業のマーケティング責任者やエンジニアの方から、「Marketoを導入したがAPI連携が進まない」「外部システムとの統合がうまくいかない」「実装したが運用が定着しない」という声をよく聞きます。これらの課題の多くは、API仕様の理解だけで終わってしまい、業務フローとの整合性や運用体制構築まで考慮されていないことが原因です。
REST APIとは、HTTPリクエストでデータの取得・操作を行うAPIで、Marketoではリード管理やアセット操作を提供しています。OAuth 2.0は、アクセストークンを使用した認証プロトコルで、MarketoではクライアントIDとシークレットでトークンを取得します。
この記事で分かること
- Marketo REST APIの基本構造と認証方法(OAuth 2.0、Authorizationヘッダー方式)
- 主要なエンドポイント(Lead Database API、Asset API等)と使用例
- API利用制限(1日50,000回、1呼び100リード上限)と対策
- 外部システム連携の具体的なユースケース(kintone、Salesforce等)
- 業務フロー整合性を考慮した実装設計と運用定着方法
本記事では、実装チェックリストとAPI連携パターン比較表を提供し、読者の皆様が自社の業務フローに合わせたAPI実装を設計・実行できるようサポートします。
Marketo REST APIの基本構造と認証方法
Marketo REST APIの認証は、2-legged OAuth 2.0方式で行われます。クライアントIDとクライアントシークレットを使用してアクセストークンを取得し、Authorizationヘッダーで送信する方式が標準です。
従来、URL内にaccess_tokenをクエリパラメータとして含める認証方式も使用されていましたが、この方法は非推奨となっており、2025年10月31日以降は使用できなくなります。新規開発では必ずAuthorizationヘッダー方式を使用し、既存システムも早期に移行する必要があります。
エンドポイントとは、API呼び出し先のURLで、Marketoではリード、プログラム、アセット、アクティビティ等のカテゴリ別に提供されています。各エンドポイントは用途に応じて使い分けることで、効率的なデータ連携が可能になります。
OAuth 2.0認証の仕組み
アクセストークンとは、API呼び出し時にAuthorizationヘッダーで送信する認証情報で、有効期限があり定期的な再取得が必要です。
Marketo REST APIの認証フローは以下の手順で進みます。
- Marketo管理画面の「Admin」→「Launch Point」→「Custom」サービスで、クライアントIDとクライアントシークレットを生成
- 「Admin」→「Integration」→「Web Services」のREST APIエンドポイントでベースURL(Identity URL)を確認
- Identity URLに対してクライアントIDとシークレットを含むHTTP GETまたはPOSTリクエストを送信し、アクセストークンを取得
- 取得したアクセストークンをAuthorizationヘッダーに含めて、各APIエンドポイントにリクエストを送信
アクセストークンには有効期限があるため、期限切れ時には再取得が必要です。実装時にはトークンの有効期限管理とエラーハンドリングを組み込むことが推奨されます。
クエリパラメータ認証の廃止とAuthorizationヘッダー方式
クエリパラメータ認証方式(URL内にaccess_tokenを含める方法)は、2025年10月31日以降使用できなくなります。これは、セキュリティ上の理由からAdobeが段階的に廃止を進めているためです。
既存システムでクエリパラメータ認証を使用している場合、2025年10月31日までにAuthorizationヘッダー方式への移行が必須となります。移行を怠るとAPI呼び出しが失敗し、システム停止のリスクがあります。
Authorizationヘッダー方式では、以下のようにHTTPヘッダーでトークンを送信します。
Authorization: Bearer <Access Token>
Sandbox環境で必ずテストを行い、本番環境への移行前に動作確認を完了させてください。
主要なエンドポイントと使用例
Marketo APIには、用途別に複数のエンドポイントが用意されています。主要なエンドポイントは、Lead Database API、Asset API、Activities API、Custom Objects APIなどです。それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。
Lead Database APIとは、Marketoの人物レコードや、オポチュニティ・企業などの関連オブジェクトタイプを取得・操作するAPIです。Asset APIは、メール、フォーム、ランディングページなどのマーケティング資産を作成・更新するAPIを指します。
API利用には制限があり、1日あたり50,000回のAPI呼び出しが割り当てられます。また、1呼び出しあたりのリード取得上限は100件で、プログラム別に複数回の呼び出しが必要です。大量データ取得時は、この制限を考慮した設計が不可欠です。
Lead Database APIとAsset API
Lead Database APIは、リード情報の取得・更新・削除、リードスコアリング、セグメント管理などに使用されます。BtoBマーケティングで最も頻繁に使用されるAPIの一つです。
主な操作:
- リード検索・取得(フィルタ条件指定可能)
- リードの新規作成・更新
- カスタムフィールドの追加・編集
- リードスコアリングの自動化
- セグメントの動的変更
Asset APIは、マーケティング資産の管理に使用されます。メールテンプレートの作成、フォームのカスタマイズ、ランディングページの生成などが可能です。
主な操作:
- メールテンプレートの作成・更新
- フォームフィールドの編集
- ランディングページの生成
- プログラムの作成・管理
Activities APIは、サイト行動ログ(ページビュー、クリック、動画再生等)を取得でき、リードの行動分析に活用できます。Custom Objects APIは、独自のデータオブジェクトを作成し、柔軟なデータ連携を実現します。
Data Ingestion APIは、大量データのバルク取り込みに特化したエンドポイントです。このAPIではアクセストークンを「X-Mkto-User-Token」ヘッダー経由で渡す必要があり、クエリパラメータ経由での受け渡しはできません。REST APIとは異なる認証ヘッダー名を使用する点に注意が必要です。
API利用制限と対策
Marketo APIには、以下の利用制限があります。
- 1日あたり50,000回のAPI呼び出し上限
- 1呼び出しあたり100件のリード取得上限
- プログラム別に複数回の呼び出しが必要(例: 100プログラムで100回APIコール)
これらの制限を超えると、API呼び出しが失敗し、データ同期遅延やシステム停止の原因となります。
対策:
- バッチ処理の活用: 夜間バッチで大量データを処理し、リアルタイム処理の負荷を軽減
- 呼び出し頻度の最適化: 必要最低限の呼び出し頻度に調整(例: 5分間隔→15分間隔)
- エラーハンドリングの実装: レート制限超過時のリトライ処理を組み込む
- キャッシュの活用: 頻繁にアクセスするデータをローカルキャッシュに保存
- データフィルタリング: 必要なデータのみを取得するフィルタ条件を設定
設計段階でこれらの対策を組み込むことで、安定した運用が可能になります。
外部システム連携の具体的なユースケース
Marketo APIを活用した外部システム連携は、マーケティング業務の効率化に大きく貢献します。kintoneやSalesforceとの連携事例を紹介します。
Marketoとkintoneの連携では、新規リードをトリガーにkintoneレコード追加、ボタンで逆更新(putLeads API使用)を実現しています。在庫・問い合わせ同期でメール自動化し、運用負荷軽減が可能です。
Salesforce連携では、商談進展でMarketoキャンペーンを絞り込み、スコア高リードをSFAへ連携するパターンが一般的です。双方向データ同期により、マーケティングと営業の部門間連携がスムーズになります。
【比較表】API連携パターン比較表
以下は、バッチ同期、リアルタイム同期、Webhookの3つの連携方式を比較した表です。自社の業務フローに合わせて最適な方式を選択してください。
| 方式 | メリット | デメリット | 適用シーン |
|---|---|---|---|
| バッチ同期 | API呼び出し回数を抑えられる、大量データ処理に適している、システム負荷が低い | データ反映に遅延が発生する、リアルタイム性が低い | 夜間の大量データ同期、日次レポート生成、月次集計処理 |
| リアルタイム同期 | データ即時反映、最新状態を常に維持 | API呼び出し回数が増加、レート制限超過リスク、システム負荷が高い | 商談ステータスの即時更新、リードスコア自動反映、緊急アラート通知 |
| Webhook | イベント駆動で効率的、API呼び出し不要、サーバー負荷が低い | 設定が複雑、エラー時の再送処理が必要、セキュリティ考慮が必要 | フォーム送信トリガー、リード行動通知、ステータス変更検知 |
バッチ同期は定期的なデータ更新に適しており、リアルタイム同期は即時性が求められる業務に適しています。Webhookはイベント駆動で効率的ですが、設定とエラーハンドリングに注意が必要です。
複数の方式を組み合わせることも可能です。例えば、基本的な同期はバッチで行い、緊急性の高い商談情報のみリアルタイム同期するハイブリッド方式も有効です。
業務フロー整合性を考慮した実装設計と運用定着方法
API実装だけで終わらせず、業務フローとの整合性、運用体制構築、モニタリング設計まで一気通貫で行うことが、Marketo API活用で成果を出す鍵です。
多くの企業で、API仕様を理解し実装だけして終わり、業務フローとの整合性や運用体制を考慮せずに放置してしまうという失敗パターンが見られます。これでは、せっかく実装したAPIが活用されず、期待した効果が得られません。
実装から運用定着までのプロセスを計画的に進めることで、持続的な業務効率化が実現できます。
【チェックリスト】Marketo API実装チェックリスト
以下は、認証設定から本番運用までの実装チェックリストです。各項目を確認しながら進めてください。
- クライアントIDとクライアントシークレットの生成(Admin → Launch Point → Custom)
- ベースURL(Identity URL)の確認(Admin → Integration → Web Services)
- Authorizationヘッダー方式での認証実装(クエリパラメータ方式は使用しない)
- アクセストークンの有効期限管理とエラーハンドリングの実装
- 必要なエンドポイントの選定(Lead Database API、Asset API等)
- API利用制限の確認(1日50,000回、1呼び100リード上限)
- バッチ処理または呼び出し頻度の最適化設計
- データフロー設計(マーケティング→営業のリード引き渡しフロー等)
- データ同期頻度の決定(リアルタイム vs バッチ)
- エラーハンドリングとリトライ処理の実装
- Sandbox環境でのテスト実施
- テストデータでの動作確認(認証、データ取得、データ更新)
- レート制限超過時の挙動確認
- 本番環境への移行計画策定
- 運用マニュアルの作成(担当者向け手順書)
- モニタリング項目の設定(API呼び出し回数、エラー発生率、データ同期遅延)
- 定期的なモニタリング体制の構築
- エラー対応フローの策定(エラー検知→担当者通知→対応手順)
- 保守担当者の役割分担(一次対応、エスカレーション)
- ドキュメント整備(API仕様書、設定手順書、トラブルシューティングガイド)
このチェックリストを活用することで、実装の抜け漏れを防ぎ、スムーズな運用開始が可能になります。
データフロー設計のポイント
BPR (Business Process Reengineering) とは、業務プロセスの根本的な見直しと再設計を指し、Marketo API活用では業務フロー最適化とデータフロー設計が中心となります。
業務BPRを考慮したデータフロー設計では、以下のポイントが重要です。
マーケティング→営業のリード引き渡しフロー
- リードスコアが一定値を超えたタイミングでSalesforceに自動連携
- 営業担当者にアラート通知
- 商談ステータスをMarketoに逆同期し、マーケティングで追跡
スコアリング自動化
- Webページ閲覧、資料ダウンロード、セミナー参加などの行動に基づきスコアを自動加算
- スコア変動をトリガーにナーチャリングメールを自動配信
セグメント動的変更
- リード属性(業種、役職、企業規模等)に基づきセグメントを自動更新
- セグメント別にパーソナライズされたコンテンツを配信
データ同期の頻度設計も重要です。リアルタイム同期は即時性が高い一方、API呼び出し回数が増加します。バッチ同期は呼び出し回数を抑えられますが、データ反映に遅延が発生します。業務の性質に応じて最適な頻度を選択してください。
運用定着のための体制構築
実装後の運用定着には、モニタリング体制とエラー対応フローの整備が不可欠です。
定期的なモニタリング項目
- API呼び出し回数(日次・週次での推移確認)
- エラー発生率(認証エラー、レート制限超過、タイムアウト等)
- データ同期遅延(期待値との乖離確認)
- システムパフォーマンス(レスポンスタイム、処理時間)
エラー対応フロー
- エラー検知(自動監視ツールでアラート)
- 担当者への通知(メール・Slackなど)
- 一次対応(マニュアルに基づく復旧処理)
- エスカレーション(解決困難な場合は上位者に報告)
- 事後対応(原因分析、再発防止策の策定)
保守担当者の役割分担
- 一次対応担当: 定型エラーの復旧処理、ログ確認
- 二次対応担当: 原因分析、設定変更、パッチ適用
- エスカレーション先: システム設計者、外部ベンダー
ドキュメント整備
- API仕様書(エンドポイント一覧、認証方法、リクエスト・レスポンス例)
- 設定手順書(初期設定、環境構築、テスト手順)
- トラブルシューティングガイド(よくあるエラーと対処法)
- 運用マニュアル(日次・週次・月次の定期作業手順)
これらの体制を整備することで、担当者の異動や休暇時にも安定した運用が継続できます。
まとめ:Marketo API活用は一気通貫プロセスで成果を出す
Marketo API活用は、仕様理解だけでなく業務フローを考慮した設計・実装・運用定着まで一気通貫で行うことで成果が出ます。
本記事で紹介した主要なポイントを以下にまとめます。
- 認証方式の移行: クエリパラメータ認証は2025年10月31日以降使用不可。Authorizationヘッダー方式への早期移行が必須
- API制限対策: 1日50,000回、1呼び100リード上限を考慮し、バッチ処理や呼び出し頻度の最適化を設計段階で検討
- 実装チェックリスト活用: 認証設定からSandbox環境テスト、本番運用移行まで、チェックリストを活用して抜け漏れを防ぐ
- 運用体制構築: 定期的なモニタリング、エラー対応フロー、保守担当者の役割分担、ドキュメント整備を行い、運用定着を図る
次のアクションとして、以下を推奨します。
- Sandbox環境でのテスト開始(Authorizationヘッダー方式での認証確認)
- Adobe公式ドキュメントで最新情報の確認(API仕様変更、新機能リリース)
- 実装チェックリストの活用(自社の状況に合わせてカスタマイズ)
- API連携パターン比較表を参考に、自社に最適な連携方式を選定
API仕様を理解するだけでは成果は出ません。業務フローとの整合性、運用体制構築、モニタリング設計まで含めた一気通貫アプローチで、Marketo APIの真価を引き出してください。
