マーケティングKPIを設定したのに形骸化する理由
PDCAを高速化するために必要なのは、KPI一覧から選ぶだけでなく、設定後にMA/SFA連携で自動測定・ダッシュボード化し、週次レビューの仕組みを作ることです。
マーケティング責任者の多くが「KPI一覧から指標を選んで設定したが、数ヶ月後には誰も見なくなった」という経験を持っています。週次レビューが属人化し、Excelで手作業集計するため工数がかかり、結果的にPDCAが回らず形骸化するケースが一般的です。
この記事で分かること
- KPIとKGIの違いと、KPIツリーの考え方
- 集客・行動・コンバージョン別の主要マーケティングKPI一覧
- BtoB特有のKPI(MQL、SQL、CAC、LTV)とベンチマーク値
- KPI形骸化を防ぐ運用仕組み化の方法
- MA/SFA連携による自動集計とダッシュボード化の実践ステップ
本記事では、KPI一覧に加えて、設定後の運用仕組み化チェックリストとMA/SFA連携ダッシュボードシート(コピペ可能)を提供します。
KPIとKGIの違いと関係性
KGI(Key Goal Indicator) とは、最終的な成果(例:売上高1億円達成)を測る重要目標達成指標です。一方、KPI(Key Performance Indicator) は、そのKGI達成に向けた過程(例:商談数や受注率)を測る重要業績評価指標です。
KGIとKPIは階層関係にあり、1つのKGIに対し複数のKPIが紐づく「KPIツリー」として設計されます。
KGI(重要目標達成指標)とは
KGIは、企業の最終目標を数値化した指標です。BtoB企業では「今期売上高1億円達成」「新規受注数15件」などが代表的です。
(例)BtoB SaaS企業のKGI例
- 年間売上高: 1億2,000万円
- 新規契約企業数: 50社 ※実際の目標値は企業規模や業種により異なります
KPI(重要業績評価指標)とは
KPIは、KGI達成に向けた中間指標で、短期(月単位・週単位)で追跡可能な指標です。BtoB企業では「MQL数」「商談数」「受注率」などが代表的です。
(例)BtoB企業のKPI例
- 月間MQL数: 120件
- 月間商談数: 60件
- 受注率: 20% ※実際の目標値は企業規模や業種により異なります
KPIツリーの考え方
「KPIは多ければ多いほど良い」という誤解がありますが、実際は3-5個に絞り、KGIとの因果関係が明確なものだけを選定すべきです。KPIが多すぎると週次レビューで誰も見なくなり形骸化するリスクが高まります。
KPIツリーの例:
- KGI: 年間売上高1億円
- KPI1: 月間新規リード獲得数 100件
- KPI2: 商談化率 15%
- KPI3: 受注率 20%
- KPI4: 平均受注単価 100万円
主要なマーケティングKPI指標一覧
マーケティングKPIは、集客・行動・コンバージョンの3つのフェーズに分類されます。2025年のBtoB企業調査では、新規リード獲得数が最重要KPI(32.1%が1位)とされています。
以下の表は、BtoB企業が重視するマーケティングKPIの優先度を示しています。
| 分類 | KPI | BtoB優先度(2025年調査) | 説明 |
|---|---|---|---|
| 集客 | 新規リード獲得数 | 1位(32.1%) | マーケティング活動で獲得した新規見込み顧客数 |
| 集客 | ウェブサイト訪問件数 | 同率3位(7.9%) | 自社サイトへの訪問セッション数 |
| 行動 | コンバージョン率 | 同率3位(7.9%) | リード獲得フォーム等の転換率 |
| コンバージョン | 受注率 | 2位(11.1%) | 商談から受注に至った割合 |
集客フェーズのKPI
集客フェーズでは、新規リード獲得数とウェブサイト訪問件数が主要なKPIです。
新規リード獲得数は、2025年のmanamina BtoB調査で最重要KPI(32.1%が1位)とされています。理由として「マーケティング施策でコントロールできる」(58.0%)、「経営側から求められている」(43.5%)という点が挙げられます。
ウェブサイト訪問件数は、同調査で同率3位(7.9%)のKPIです。トラフィックソース(自然検索、SNS、広告等)別に分析することで、施策の効果を測定できます。
行動フェーズのKPI
行動フェーズでは、コンバージョン率やエンゲージメント率が主要なKPIです。
コンバージョン率は、2025年調査で同率3位(7.9%)のKPIです。リード獲得フォームや資料ダウンロードページの転換率を追跡し、LP(ランディングページ)の改善に活用されます。
コンバージョンフェーズのKPI
受注率は、2025年調査で2位(11.1%)のKPIです。商談から受注に至った割合を示し、営業プロセスの効率性を測定します。
「新規リード獲得数だけ追えば良い」という誤解がありますが、受注率や商談化率も同時追跡しないと、質の低いリードが大量に営業に流れ、営業-マーケ間の信頼崩壊を招くリスクがあります。量と質の両面でKPIを設定することが重要です。
BtoB特有のKPI(MQL、SQL、CAC、LTV)
BtoB企業が特に重視すべきKPIとして、MQL(Marketing Qualified Lead)、SQL(Sales Qualified Lead)、CAC(Customer Acquisition Cost)、LTV(Lifetime Value)の4つがあります。
2025年のBtoB市場では「量から質へ」のシフトが加速しており、CPA高騰対策としてSNS強化(55.9%)、SEO強化(52.4%)、CRM強化(47.6%)が優先されています。
MQL/SQLとは
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得した、一定の関心度合いを示したリードです。資料ダウンロードやウェビナー参加など、特定のアクションを起こしたリードがMQLに分類されます。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門が商談対象として認定した、購入意欲の高いリードです。MQLからSQLへの転換率(スコアリング精度)を向上させることで、営業効率が高まります。
CAC/LTVとは
CAC(Customer Acquisition Cost) とは、1顧客を獲得するためにかかったマーケティング費用の総額です。2025年のBtoB広告運用調査(n=326)では、CPA目標値は5,000~10,000円未満が最多(21.8%)、10,000~15,000円未満が15.3%でした。
LTV(Lifetime Value) とは、1顧客が取引期間全体を通じて企業にもたらす利益の総額です。LTV/CAC比が3:1以上であることが推奨されており、マーケティング投資効率の判断基準とされています。
「CPA目標5,000~10,000円は全業界共通」という誤解がありますが、IT/SaaSは低め、製造業は高めなど業界差が大きいため、自社のLTV/CAC比で判断すべきです。
BtoB企業のベンチマーク値
商談化率とは、SQLから実際の商談に進んだ割合を示すBtoB特有のKPIです。2025年のferret one調査(n=330)では、11~20%がボリュームゾーンで、15%を目標値に推奨されています。5%未満の場合はターゲティングやLP訴求の見直しが必要です。
CPA(顧客獲得単価) は、前述の通り5,000~10,000円未満が最多(21.8%)です。CPA高騰対策として、SNS強化(55.9%)、SEO強化(52.4%)、CRM強化(47.6%)の3本柱で「量から質へ」のシフトを進める企業が増えています。
(例)商談化率改善シナリオ
- 現状: 商談化率5%(SQL 100件 → 商談5件)
- ターゲティング見直し後: 商談化率15%(SQL 100件 → 商談15件) ※実際の改善幅は施策内容や業種により異なります
ただし、これらの平均値は回答分布ベースで厳密な全国平均ではなく、業界差(IT/SaaS vs 製造業)や企業規模で大きく変動するため、自社業種・規模での検証が必須です。
KPI設定後の運用仕組み化とMA/SFA連携
KPI設定後の形骸化を防ぐためには、MA/SFA連携で自動測定・ダッシュボード化し、週次レビューの仕組みを作ることが不可欠です。
「週次レビューが属人化し、Excelで手作業集計するため工数がかかり、数ヶ月後には誰も見なくなる」という失敗パターンを避けるため、本セクションでは運用仕組み化の具体的な方法を提示します。
KPI形骸化を防ぐポイント
KPI形骸化を防ぐためには、以下の3つのポイントが重要です。
KPIを3-5個に絞る: KGIとの因果関係が明確なものだけを選定します。KPIが多すぎると週次レビューで誰も見なくなるリスクが高まります。
MA/SFA連携で自動集計: 手作業Excel集計を排除し、MA/SFAツールからKPIデータを自動取得します。
週次レビューの仕組み化: 属人化を排除し、定例会議でKPIダッシュボードをレビューする仕組みを構築します。
2025年のトレンドとして、MA/SFA連携でKPI自動集計・週次レビュー自動化が標準化しており、手作業Excel集計からダッシュボードPDCA高速化への移行が進んでいます。
MA/SFA連携による自動集計
新規リード獲得数は「コントロール可能」(58.0%)という特性を活かし、MA/SFA連携で自動集計・週次レビュー自動化を実装すると運用定着しやすいと言われています。
MA/SFA連携で追跡できるKPIの例:
- MQL数(マーケティングオートメーションから自動取得)
- SQL数(SFAのリードステータスから自動取得)
- 商談化率(SFAの商談データから自動計算)
- 受注率(SFAの受注データから自動計算)
最近では、MQL/SQL/CAC/LTVの4指標セット追跡が主流となっており、特にLTV/CAC比(3:1推奨)でマーケティング投資効率を経営層に定量報告する企業が増えています。
運用仕組み化チェックリストとダッシュボードシート
以下のチェックリストとダッシュボードシートを活用し、KPI設定から運用定着までを確実に進めましょう。
【チェックリスト】KPI設定後の運用仕組み化チェックリスト
- KGIを明確に定義した(売上高、受注数等)
- KGIに紐づくKPIを3-5個に絞った
- 各KPIの目標値を設定した(ベンチマーク参考)
- MA/SFAツールからKPIデータを自動取得できる環境を構築した
- KPIダッシュボードを作成した(Looker Studio、Tableau等)
- ダッシュボードを関係者全員に共有した
- 週次レビュー会議を定例化した(曜日・時間固定)
- レビュー会議の参加者を明確にした(マーケ責任者、営業責任者等)
- KPI未達時のアクションプランを事前に決めた
- 月次でKPI設定の妥当性を見直す仕組みを作った
- 手作業Excel集計を廃止した
- MA/SFA連携の定期メンテナンス担当者をアサインした
【管理シート】MA/SFA連携KPIダッシュボードシート
KPI名,目標値,実績値,達成率(%),前週比(%),データソース,レビュー頻度,担当者
新規リード獲得数,120,96,80,-5,MAツール,週次,マーケ担当A
商談化率(%),15,12,80,-3,SFAツール,週次,マーケ担当B
受注率(%),20,18,90,+2,SFAツール,週次,営業担当C
CPA(円),8000,9500,94,-6,広告管理ツール,週次,マーケ担当A
LTV/CAC比,3.0,2.8,93,+1,SFA+会計,月次,マーケ責任者
計算列の定義:
- 達成率(%) = (実績値 / 目標値) × 100
- 前週比(%) = ((今週実績値 - 前週実績値) / 前週実績値) × 100
まとめ:KPI一覧から選び、運用仕組みを作ることでPDCAが回る
本記事の要点を整理します。
- KPIとKGI: KGIは最終目標、KPIは中間指標。3-5個に絞り、KPIツリーで管理する
- 主要KPI一覧: 集客(新規リード獲得数、訪問件数)、行動(CVR)、コンバージョン(受注率)の3分類
- BtoB特有のKPI: MQL、SQL、CAC、LTVの4指標セット。商談化率15%、CPA 5,000-10,000円がベンチマーク
- 運用仕組み化: MA/SFA連携で自動集計し、週次レビューを定例化することで形骸化を防ぐ
- deliverables活用: チェックリストとダッシュボードシートを使い、自社KPI運用を仕組み化する
マーケティングKPIは、一覧から選ぶだけでなく、設定後にMA/SFA連携で自動測定・ダッシュボード化し、週次レビューの仕組みを作ることで初めてPDCAが回ります。
次のアクションとして、本記事で提供したチェックリストとダッシュボードシートを使って、自社KPI運用を仕組み化することを推奨します。ただし、ベンチマーク値は業界差や企業規模で大きく変動するため、自社での検証を必ず行ってください。
