マーケティング責任者採用が難しくなっている背景
マーケティング組織を強化したいが、どんな人材を採用すべきか分からないという課題を解決したいなら、マーケティング責任者の採用成功は、採用活動の前に「自社のマーケティング組織のミッションと期待する成果」を明確に定義し、それを基準に候補者を評価することで実現できます。
日本の労働市場は逼迫しており、人材獲得競争が激化しています。2025年7月時点で就業者数は6,850万人(前年比+55万人)、完全失業率は2.3%(6か月連続低下)、正規雇用者は3,720万人(前年比+78万人)と、優秀な人材の確保がますます難しくなっています。
このような環境下で、マーケティング専門人材へのニーズは高まり続けています。87.7%の人事担当者がマーケティング専門人材の確保を必要と回答しており、マーケティング責任者の需要は前年比131.8%増という予測もあります。
CMO(Chief Marketing Officer) とは、最高マーケティング責任者を指し、マーケティング戦略の立案・実行を統括する経営幹部です。成長企業にとって、適切なマーケティング責任者を採用できるかどうかは、事業成長に直結する重要な課題といえます。
この記事で分かること
- マーケティング責任者に求められる役割と管理職との違い
- 採用前に整理すべき組織設計とミッション定義
- 採用プロセスの設計と選考方法
- 年収相場の目安と採用失敗パターンの回避策
マーケティング責任者の役割と求める人材像
マーケティング責任者に求められるのは、単なる施策実行者ではなく、事業成長を牽引するリーダーとしての役割です。マーケティング戦略の立案から組織マネジメント、経営層との連携まで、幅広い領域をカバーする必要があります。
SDR/BDRとは、SDR(Sales Development Representative)がインバウンドリード対応を、BDR(Business Development Representative)がアウトバウンド開拓を担当する営業開発職種です。マーケティング責任者は、こうした営業組織との連携も含めて事業全体を俯瞰できる人材が求められます。
経営視点と実務スキルの両立
マーケティング責任者には、経営視点と実務スキルの両立が求められます。具体的には以下のようなスキルセットが必要です。
- 戦略立案力: 市場分析に基づく中長期的なマーケティング戦略の策定
- 組織マネジメント: チームビルディングとメンバー育成
- データ分析力: KPI設計と効果測定、データに基づく意思決定
- 事業連携力: 営業部門・プロダクト部門との協働と目標共有
- 予算管理: マーケティング投資の最適化とROI管理
BtoB企業で求められる経験・知見
BtoB企業のマーケティング責任者には、BtoC企業とは異なる経験・知見が求められます。
- リード獲得からナーチャリング、商談化までのファネル設計経験
- MA(マーケティングオートメーション)やSFA/CRMの活用経験
- 営業部門との連携によるリード品質向上の実績
- 長期的な購買検討プロセスを理解したコンテンツマーケティングの知見
- ABM(アカウントベースドマーケティング)の設計・実行経験
採用前に整理すべきこと
採用活動を始める前に、社内で組織設計・ミッション定義・期待値のすり合わせを行うことが、採用成功の鍵となります。「マーケティングに詳しい人を採用すれば何とかなる」という考え方は誤りです。社内の組織設計やミッション定義を曖昧にしたまま採用を進めると、入社後に期待と実力のミスマッチが生じ、短期離職や成果が出ない状況に陥るケースが少なくありません。
【チェックリスト】マーケティング責任者採用前チェックリスト
- マーケティング組織のミッションを明文化している
- 期待する成果(定量目標)を設定している
- レポートライン(CEO直下/事業部長下など)を決定している
- マーケティング予算規模を把握している
- 現在のチーム構成と今後の採用計画を整理している
- 営業部門との連携方針を明確にしている
- 短期(半年〜1年)の成果目標を設定している
- 中期(1〜3年)の成果目標を設定している
- 評価指標(KPI)を定義している
- 権限範囲(予算執行、採用権限など)を明確にしている
- 必要なスキル・経験の優先順位をつけている
- 年収レンジを決定している
- 選考プロセスと担当者をアサインしている
- オンボーディング計画を策定している
- 入社後のサポート体制を整えている
組織設計とミッション定義
マーケティング責任者を採用する前に、マーケティング組織の位置づけと責任者のミッションを明確にすることが重要です。以下の項目を事前に定義しておくことを推奨します。
- レポートライン: CEO直下なのか、事業部長の下なのか
- 組織の範囲: マーケティングのみか、広報・PRを含むか
- 予算規模: 年間マーケティング予算の規模感
- チーム構成: 既存メンバーの有無と今後の採用計画
- 期待する成果: リード数、商談数、売上貢献など
期待値と評価基準の明確化
採用後のミスマッチを防ぐためには、期待値と評価基準を事前に明確化することが不可欠です。
- 短期目標(入社後半年〜1年): 組織立ち上げ、施策基盤の構築など
- 中期目標(1〜3年): リード獲得数の増加、商談化率の改善など
- 評価指標: 定量(KPI達成度)と定性(組織貢献度)の両面
- 権限範囲: 予算執行権限、採用権限、意思決定範囲など
採用プロセスの設計と選考方法
採用プロセスは、候補者の発掘から内定承諾まで一貫した設計が必要です。調査によると、従業員500名以上の企業ではRPO(採用代行)利用率が54.4%と最も多く、採用マーケティングの新規手法の必要性を87.2%の担当者が感じているという結果があります。
RPO(Recruitment Process Outsourcing) とは、採用代行のことで、企業の採用活動の一部または全部を外部専門企業に委託するサービスです。ダイレクトリクルーティングは、企業が候補者に直接アプローチする採用手法で、LinkedInやスカウト型媒体を活用します。採用マーケティングは、マーケティング手法を採用活動に応用し、候補者への認知・興味喚起から応募獲得までを設計する手法です。
【フロー図】マーケティング責任者採用プロセスフロー
flowchart TD
A[採用要件定義] --> B[採用チャネル選定]
B --> C[候補者発掘・スカウト]
C --> D[書類選考]
D --> E[カジュアル面談]
E --> F[一次面接・人事]
F --> G[二次面接・現場責任者]
G --> H[最終面接・経営層]
H --> I[リファレンスチェック]
I --> J[オファー面談]
J --> K[内定承諾・入社準備]
採用チャネルの選択肢
マーケティング責任者の採用では、複数のチャネルを組み合わせることが効果的です。
- 人材紹介会社: エグゼクティブ専門のエージェントを活用
- ダイレクトリクルーティング: LinkedInやビズリーチなどでの直接アプローチ
- RPO: 採用活動全体を外部に委託
- リファラル採用: 社内外の人脈を活用した紹介
- 採用広報: オウンドメディアやSNSでの情報発信
選考プロセスの設計ポイント
選考は複数のステップで多角的に候補者を評価することが重要です。
- カジュアル面談: 相互理解と期待値のすり合わせ
- 一次面接(人事): 基本的な適性とカルチャーフィットの確認
- 二次面接(現場責任者): 実務スキルと経験の深掘り
- 課題提出: 戦略立案力や思考プロセスの確認
- 最終面接(経営層): ビジョン共有と意思決定
- リファレンスチェック: 過去の実績と人物評価の確認
年収相場と採用失敗パターンの回避
マーケティング責任者の採用では、適切な年収設定と失敗パターンの回避が重要です。年収相場を把握した上で、自社にとって適切な条件を設定しましょう。
年収相場の考え方
2022年度の調査によると、マーケティング職全体の平均年収は511万円(前年度比+45万円)、30代平均では525万円という結果があります。一方、2025年の日本ビジネスパーソン全体の平均年収は429万円(男性487万円、女性370万円)であり、マーケティング職は全体平均を上回る傾向にあります。
マーケティング責任者クラスは、一般のマーケティング職よりも高水準となるのが一般的です。経験・企業規模・業界によって大きく変動するため、複数の情報源を参考にして自社に適した年収レンジを設定することを推奨します。なお、年収データは調査により異なるため、あくまで目安として捉えてください。
採用失敗パターンと回避策
マーケティング責任者採用でよくある失敗パターンと、その回避策を整理します。
- ミッション不明確: 採用前に組織のミッションと期待する成果を明文化する
- 期待値ミスマッチ: 選考段階で具体的な目標と評価基準を共有する
- オンボーディング不足: 入社後90日間の立ち上げ計画を策定する
- 権限不明確: 予算執行権限や意思決定範囲を事前に定義する
- サポート体制不足: 経営層との定期的なコミュニケーション機会を設ける
まとめ:マーケティング責任者採用を成功させるために
本記事では、マーケティング責任者の採用について、採用前の準備から選考プロセス、失敗パターンの回避策までを解説しました。
87.7%の人事担当者がマーケティング専門人材の確保を必要と回答しているように、マーケティング責任者へのニーズは高まっています。しかし、採用を成功させるためには、単に「マーケティングに詳しい人」を探すのではなく、自社にとって最適な人材像を明確にすることが重要です。
重要なポイントを整理します。
- 採用前に組織のミッションと期待する成果を明確に定義する
- マーケティング責任者は「施策実行者」ではなく「事業成長を牽引するリーダー」として位置づける
- 複数の採用チャネルを組み合わせ、選考は多角的に実施する
- 年収相場を参考にしつつ、自社の状況に適した条件を設定する
- オンボーディング計画を策定し、入社後のサポート体制を整える
マーケティング責任者の採用成功は、採用活動の前に「自社のマーケティング組織のミッションと期待する成果」を明確に定義し、それを基準に候補者を評価することで実現できます。本記事のチェックリストを活用し、自社に合ったマーケティング責任者採用を計画的に進めていただければ幸いです。
