Marketing Cloud Account Engagement導入前に知っておくべきこと
最も重要なのは、Account EngagementはSalesforceと一体化したBtoB向けMAツールですが、導入前にSalesforce側のリード管理フロー・データ整備・運用プロセスを定義し、必要なら実装支援を受けることで真の連携効果を発揮できるということです。
Marketing Cloud Account Engagementとは、Salesforce社のBtoB向けマーケティングオートメーションツールで、旧称Pardotとして知られています。Salesforce Sales Cloudとネイティブ連携し、リード獲得・育成・選別を自動化する機能を提供します。
Salesforceを既に導入している企業、または導入を検討している企業にとって、Account Engagementは有力な選択肢です。しかし、「Account Engagementという名前は聞いたが、自社に適しているか」「Salesforce連携のメリットは何か」「導入前に何を準備すべきか」という疑問を持つマーケティング責任者や事業部長も多いのではないでしょうか。
この記事では、Account Engagementの基本情報に加えて、Salesforce連携を活かすための導入前準備まで解説します。特に、Salesforce側のデータやプロセスが整備されていないまま導入すると、高額なツールを導入しても期待した連携効果が得られない可能性があります。導入前に何を整備すべきかを理解し、真の連携を実現するための準備を支援します。
この記事で分かること
- Account Engagementの基本情報(旧Pardotとの関係、BtoB向けMAツールとしての位置づけ)
- 主要機能(Webトラッキング、スコアリング、グレーディング等)とSalesforce連携のメリット
- Marketing Cloud EngagementとAccount Engagementの違い
- 導入前に整備すべきSalesforce環境・データ・プロセス(リード管理フロー、データクレンジング)
- Account Engagement導入前のSalesforce環境診断チェックリスト
Marketing Cloud Account Engagementとは|旧Pardotの基本情報
Account Engagementは、Salesforce社が提供するBtoB向けマーケティングオートメーション(MA)ツールであり、旧称Pardotの名称変更後の正式名称です。
2023年の国内BtoBマーケティングオートメーション(MA)市場規模は753億円で、前年比11.2%増と推計されており、MA市場全体が成長を続けています。この成長する市場の中で、Account Engagementは上場企業で利用されているマーケティングオートメーションツールランキングNo.1(DataSign社調べ)という地位を確立しています。
Account Engagementは、Salesforce Marketing Cloudファミリーへの統合に伴い、旧Pardotから名称変更されました。機能的には旧Pardotと同じですが、Salesforceエコシステム全体での位置づけが明確化され、Marketing Cloud Engagement(BtoC向け)と区別されるようになりました。
BtoB向けMAツールとしてのAccount Engagementの特徴は、Salesforce Sales Cloudとのネイティブ連携にあります。Salesforce Sales Cloudとは、Salesforce社のSFA(営業支援システム)で、商談管理・進捗追跡・受注化を支援し、Account Engagementと統合することで営業とマーケティングのデータ共有を実現します。この連携により、マーケティング部門が獲得・育成したリードを営業部門にシームレスに引き渡し、商談化から受注までを一気通貫で管理できます。
Salesforce一体化の意味とメリット
Salesforce Sales Cloudとのネイティブ連携は、単なるデータ連携以上の価値を提供します。
「ネイティブ連携」とは、Account EngagementとSales Cloudが同じSalesforceプラットフォーム上で動作し、データが自動同期され、リアルタイムで共有されることを意味します。外部ツールをAPI連携で接続する場合と比べて、以下のメリットがあります:
- リアルタイムデータ共有: リードの行動履歴(Webページ閲覧、メール開封、資料ダウンロード等)がSales Cloudに自動同期され、営業担当者がリアルタイムで確認できる
- 一元管理: マーケティング活動と営業活動のデータが同じプラットフォーム上で管理され、レポーティングやダッシュボードで統合的に分析できる
- スムーズなリード受け渡し: MQL(Marketing Qualified Lead)(マーケティング活動によって一定の基準を満たしたリード)が自動的にSales Cloudに引き渡され、営業担当者に通知される
実際の導入事例として、Web訪問履歴・閲覧時間をトラッキングし、Sales Cloudと連携した結果、お取引量が約2倍に増加した企業があります。この事例では、営業担当者がリードの関心度をリアルタイムで把握し、適切なタイミングでアプローチすることで商談化率が向上しました。
Account Engagementの主要機能とSalesforce連携のメリット
Account Engagementは、BtoB企業のマーケティング活動を支援する多様な機能を提供しており、Salesforce連携によってその効果を最大化できます。
主要機能は以下の6つです:
- Webトラッキング: 見込み客のWebサイト訪問履歴・閲覧ページ・滞在時間を追跡し、関心度を把握します。
- スコアリング: 見込み客の行動(Webページ閲覧、メール開封等)に点数を付けて購買意欲を数値化する手法です。スコアリングは、Account Engagementの主要機能の一つです。
- グレーディング: 見込み客の属性(企業規模、役職等)を評価してリードの質を判定する手法です。グレーディングは、スコアリングと組み合わせてMQL定義に利用されます。
- Engagement Studio: シナリオベースのナーチャリング自動化機能で、リードの行動に応じて適切なコンテンツを自動配信します。
- フォーム/LP作成: リード獲得のためのフォーム・ランディングページを簡単に作成できる機能です。
- レポート: マーケティング活動の効果測定・ROI分析をダッシュボードで可視化します。
これらの機能により、実際の導入効果として、メールアドレス登録率が60%から90%以上に改善した事例があります(企業提供事例で独立検証はされていませんが、データ品質向上の効果を示す事例として参考になります)。
【比較表】MAツール比較表
| ツール | ターゲット | Salesforce連携 | 主要機能 | 適用ケース |
|---|---|---|---|---|
| Account Engagement | BtoB | ネイティブ連携(自動同期) | Webトラッキング、スコアリング、グレーディング、Engagement Studio、Sales Cloud連携 | Salesforce Sales Cloud導入済み、またはBtoB商談型ビジネス |
| Marketing Cloud Engagement | BtoC | 連携可能 | メール、SNS、広告等のマルチチャネルキャンペーン、集客型施策 | BtoC向け、集客型マーケティング |
| 他社MAツール(汎用) | BtoB/BtoC | API連携 | メール配信、フォーム作成、シナリオ設計 | Salesforce以外のSFAを使用、または特定の業界特化機能が必要 |
主要機能の詳細
Account Engagementの主要機能をより詳しく見ていきましょう。
Webトラッキングでは、見込み客がどのページを閲覧し、どれくらいの時間滞在したかを追跡します。例えば、料金ページを複数回閲覧しているリードは購買意欲が高いと判断でき、営業担当者はそのリードを優先的にフォローできます。
スコアリングは、見込み顧客の行動に点数を付けて購買意欲を数値化します。例えば、メール開封で+5点、Webページ閲覧で+10点、資料ダウンロードで+20点といった配点を設定し、合計スコアが一定値(例: 50点)を超えたリードをMQL(Marketing Qualified Lead) として定義します。
グレーディングは、見込み客の属性を評価してリードの質を判定します。例えば、企業規模が50-300名でグレードA、役職が部長以上でグレードA、といった基準を設定します。スコアリングと組み合わせることで、「スコアが高く、グレードもA」のリードを最優先で営業に引き渡す、といった運用が可能になります。
Engagement Studioでは、リードの行動に応じた自動シナリオを設計できます。例えば、「ホワイトペーパーをダウンロードしたリードに対して、3日後にフォローアップメールを送信し、メールを開封した場合はセミナー案内を送信する」といったシナリオを自動化できます。
フォーム/LP作成機能では、コーディング不要でリード獲得フォームやランディングページを作成できます。取得した情報は自動的にSales Cloudに同期されるため、手動でのデータ入力が不要になります。
レポート機能では、メール開封率、クリック率、MQL数、商談化率などのKPIをダッシュボードで可視化し、マーケティング活動の効果を測定できます。Sales Cloudとの連携により、マーケティング経由のリードがどれだけ商談化・受注に至ったかを追跡し、マーケティングROIを正確に測定できます。
Marketing Cloud EngagementとAccount Engagementの違い
Marketing Cloud Engagement(BtoC向け)とAccount Engagement(BtoB向け)は、ターゲット市場とマーケティングアプローチが大きく異なります。
Marketing Cloud Engagementは、BtoC向けの集客型MAツールです。メール、SNS、広告、Webサイト、モバイルアプリなどのマルチチャネルキャンペーンを統合的に管理し、大量の顧客に対してパーソナライズされたメッセージを配信します。EC事業者や小売業、旅行業など、BtoC企業で広く利用されています。
一方、Account Engagementは、BtoB向けの商談型MAツールです。リード育成・スコアリング・営業連携に特化しており、長い検討期間(数ヶ月〜1年以上)と複数の意思決定者が関与するBtoB取引に最適化されています。
BtoB企業にAccount Engagementが適している理由は以下の通りです:
- 長い検討期間: BtoB取引では即時購買が見込めないため、継続的なナーチャリング(育成)が必要です。Account Engagementは、Engagement Studioでシナリオベースの長期育成を自動化できます。
- 複数意思決定者: BtoB取引では、担当者・マネージャー・決裁者など複数の関係者が関与します。グレーディング機能で役職や決裁権を評価し、適切なアプローチができます。
- Sales Cloud連携による商談管理: BtoB企業では、リード獲得から商談化、受注までの一連のプロセスをSales Cloudで管理します。Account EngagementとSales Cloudのネイティブ連携により、マーケティングと営業のデータが一元化され、リード受け渡しがスムーズになります。
Account Engagement導入前に整備すべきSalesforce環境とプロセス
Account Engagementの導入効果を最大化するには、導入前にSalesforce側のリード管理フロー・データ・プロセスを整備することが不可欠です。
よくある誤解は、「Account Engagementを導入すれば自動的にMA/SFA連携が実現する」と考え、Salesforce側のデータ整備や運用プロセス定義を怠ることです。実際には、Salesforce Sales Cloudの基本的な運用が確立されていない状態でAccount Engagementを導入しても、データが同期されるだけで、マーケティングと営業の連携体制が構築されず、高額なツールを導入しても期待した効果が得られないという失敗パターンに陥ります。
導入前に整備すべき項目は以下の通りです:
- リード管理フローの整備: リード獲得→育成→選別→営業引き渡しのフロー定義
- MQL基準の策定: 営業・マーケティング合同でMQL基準(スコア・グレード)を策定
- データクレンジング: 重複リード排除、不正確なメールアドレス・企業名の修正
- 営業プロセスの標準化・可視化: Sales Cloudでの商談管理プロセスを標準化
これらを事前に整備することで、Account Engagement導入後の連携効果を最大化できます。
【チェックリスト】Account Engagement導入前のSalesforce環境診断チェックリスト
- Salesforce Sales Cloudが導入済みで、基本的な運用が確立されている
- 営業プロセス(リード管理→商談管理→受注管理)がSales Cloud上で標準化されている
- リードステータスの定義が明確(新規リード、育成中、ホットリード、商談化など)
- 営業・マーケティング合同でMQL基準(スコア・グレード)が策定されている
- スコアリング基準案が明確(例: 料金ページ閲覧で+10点、資料DLで+20点)
- グレーディング基準案が明確(例: 役職がマネージャー以上でグレードA)
- リード受け渡しルールが明確(MQLスコア達成時に営業に自動通知)
- Sales Cloud内のリードデータがクレンジング済み(重複排除、不正確データ修正)
- メールアドレスの品質が一定水準以上(バウンス率が低い)
- 企業名・役職・業種などの属性情報が整備されている
- Sales Cloudのカスタムフィールドが整理されている(不要なフィールド削減)
- 営業担当者がSales Cloudを日常的に使用している(活用率の確認)
- 営業とマーケティングの定期情報共有会が設定されている(週次または月次)
- マーケティング活動のKPI(リード獲得数、MQL数、商談化率)が定義されている
- 営業活動のKPI(商談数、受注数、受注率)が定義されている
- 既存の名刺管理ツールやSAP等のシステムとの連携方針が決まっている
- Account Engagement導入後の運用体制(担当者、役割分担)が明確
- 導入後のトレーニング計画(営業・マーケティング向け)が策定されている
- 導入予算と期待ROI(投資対効果)が明確
- 必要に応じて外部の実装支援を受ける準備がある
リード管理フローの整備
リード獲得→育成→選別→営業引き渡しのフロー整備は、Account Engagement導入成功の鍵です。
MQL定義の重要性は特に強調されるべきポイントです。MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動によって一定の基準を満たしたリードで、スコアリングやグレーディングで定義され、営業に引き渡される見込み顧客です。営業・マーケティング合同でMQL基準を策定することで、両部門が共通の目標(質の高いリードを営業に引き渡す)に向かって動けるようになります。
具体的なMQL定義の例として、以下が挙げられます:
- スコアリング基準: 料金ページ閲覧で+10点、資料ダウンロードで+20点、セミナー参加で+30点、合計50点以上をMQL候補とする
- グレーディング基準: 役職がマネージャー以上でグレードA、企業規模が50-300名でグレードA、グレードA以上をMQL候補とする
- MQL定義: スコア50点以上かつグレードA以上のリードをMQLとして営業に引き渡す
この定義を営業・マーケティング合同で策定し、Sales Cloud上でリード受け渡しルールを設定することで、適切なタイミングで適切なリードが営業に引き渡されます。
データクレンジングと品質管理
導入前のデータクレンジング(重複排除、不正確データ修正)は、Account Engagementの効果を左右する重要な準備です。
Sales Cloud内に重複リードや不正確なメールアドレス・企業名が存在すると、Account Engagementで配信するメールがバウンス(不達)したり、スコアリング・グレーディングの精度が低下したりします。導入前にデータクレンジングを実施し、以下を確認してください:
- 重複リード排除: 同じメールアドレス・同じ氏名が複数登録されている場合、統合して1件にする
- 不正確なメールアドレス修正: タイポや無効なドメインのメールアドレスを修正または削除
- 企業名・役職の標準化: 表記ゆれ(例: 「株式会社」と「(株)」)を統一し、グレーディング精度を向上
実際の導入事例として、メールアドレス登録率が60%から90%以上に改善した企業があります(企業提供事例で独立検証はされていませんが、具体的な年度は非明記)。この事例では、名刺管理ツール連携やSAP等既存システムとの連携により契約情報を集約し、データ品質を向上させました。
まとめ|Account EngagementはSalesforce連携を活かす準備が成功の鍵
Account Engagementは、Salesforce Sales Cloudとネイティブ連携するBtoB向けMAツールとして、上場企業で利用率No.1という実績があります。
この記事で解説した要点をまとめます:
- Account Engagementの基本情報: 旧Pardotから名称変更されたSalesforce純正のBtoB向けMAツールで、国内MA市場は753億円規模(前年比11.2%増)と成長中です。
- 主要機能とSalesforce連携のメリット: Webトラッキング、スコアリング、グレーディング、Engagement Studioなどの機能により、リード獲得から育成、商談化までを自動化します。Sales Cloudとのネイティブ連携により、リアルタイムデータ共有と一元管理が実現し、お取引量が約2倍に増加した事例もあります。
- Marketing Cloud Engagementとの違い: Marketing Cloud EngagementはBtoC向けの集客型MAツール、Account EngagementはBtoB向けの商談型MAツールです。BtoB企業には、長い検討期間と複数意思決定者に対応するAccount Engagementが適しています。
- 導入前の準備: リード管理フローの整備、MQL基準の策定、データクレンジング、営業プロセスの標準化・可視化が必要です。「Account Engagementを導入すれば自動的にMA/SFA連携が実現する」という誤解を避け、Salesforce側のデータ整備や運用プロセス定義を事前に行うことが成功の鍵です。
Account EngagementはSalesforceと一体化したBtoB向けMAツールですが、導入前にSalesforce側のリード管理フロー・データ整備・運用プロセスを定義し、必要なら実装支援を受けることで真の連携効果を発揮できます。
次のアクション:
本記事で提供した【チェックリスト】を使って、自社のSalesforce環境の準備状況を診断してください。特に、「リード管理フロー」「MQL基準」「データクレンジング」の3つが整備されているかを確認し、不足している部分は導入前に整備することを強くお勧めします。必要に応じて、外部の実装支援を受けることで、導入後の連携効果を最大化し、投資対効果を高めることができます。
