なぜアトリビューション分析が必要なのか
実は、アトリビューション分析を成果につなげるには、モデル選定だけでなくMA・SFAとの連携設計と継続的な運用体制の構築が不可欠です。
日本の広告市場は2024年に約577億ドル、2033年には828億ドルに達する見込みで、拡大を続けています。総務省「サービス産業動態統計」によると、2025年4月の日本の広告業売上高は7,835億円で、前年同月比1.4%増と緩やかな拡大基調にあります。
広告投資が拡大する一方で、「どのチャネルが商談・受注に貢献しているのか分からない」「広告施策の効果が見えない」という課題を抱えるBtoB企業は少なくありません。
アトリビューションとは、コンバージョンに至るまでの複数タッチポイントに対して貢献度を割り振る分析手法です。間接効果とも呼ばれ、最後のクリックだけでなく、認知・検討段階での接触の価値を可視化することで、広告予算の最適配分につなげられます。
この記事で分かること
- アトリビューション分析の基本概念と代表的なモデルの特徴
- ラストクリック測定の限界と間接効果の重要性
- BtoB企業向けのMA・SFA連携アトリビューションの設計方法
- アトリビューション分析の導入手順と運用体制の作り方
アトリビューションの基本概念と代表的なモデル
アトリビューション分析では、複数のモデルから自社に適したものを選択する必要があります。各モデルには特徴があり、ビジネスモデルや検討期間によって適切な選択は異なります。
ラストクリックモデルは、最後の接点に成果を100%付与するアトリビューションモデルです。シンプルで導入しやすい一方、上流施策の貢献を過小評価しやすいという特徴があります。
タイムディケイモデルは、コンバージョンに近い接点ほど高い貢献度を与えるアトリビューションモデルです。検討期間が長いBtoB企業に適しているケースが多いです。
ポジションベースモデルは、最初と最後の接点に高い貢献度を与え、中間の接点は残りを均等に配分するモデルで、U字型モデルとも呼ばれます。認知獲得と成約直前の施策を重視する場合に有効です。
データドリブンアトリビューション(DDA) は、ユーザー行動データから各タッチポイントの貢献を統計的・機械学習的に推定するモデルです。データが蓄積されれば精度の高い分析が可能ですが、一定のデータ量が必要になります。
【比較表】アトリビューションモデル比較表
| モデル名 | 貢献度の割り振り方 | メリット | デメリット | 適した場面 |
|---|---|---|---|---|
| ラストクリック | 最後の接点に100% | シンプルで導入しやすい | 上流施策の貢献を過小評価 | 短期的な刈り取り施策の評価 |
| ファーストクリック | 最初の接点に100% | 認知獲得施策を評価できる | 成約直前の施策を過小評価 | 認知拡大施策の評価 |
| 線形モデル | 全接点に均等配分 | 全施策を公平に評価 | 重要度の差が見えにくい | タッチポイントが少ない場合 |
| タイムディケイ | CV近い接点ほど高い | 検討期間の長さを反映 | 認知施策を過小評価しがち | BtoBの長期検討サイクル |
| ポジションベース | 最初と最後に各40%、中間に20% | 認知と成約を両方重視 | 中間施策の貢献が見えにくい | マルチチャネル運用時 |
| DDA(データドリブン) | データに基づき自動算出 | 精度が高い | 一定のデータ量が必要 | データが蓄積された環境 |
ラストクリック測定の限界と間接効果の重要性
ラストクリック依存から脱却できていない企業は、「分析しているつもり」で終わっていることが多いです。アトリビューションモデルを導入しただけで、MA・SFAとの連携やデータ設計を整備しないまま運用している場合、実質的にはラストクリックと変わらない評価になりがちです。この失敗パターンを避けることが重要です。
ラストクリックモデルの最大の問題は、認知・検討段階で貢献した上流施策(ディスプレイ広告、コンテンツマーケティング、展示会など)の価値を見逃してしまうことです。
国内広告会社の事例では、ラストクリックからデータドリブンアトリビューション(DDA)に変更したところ、広告経由の獲得数は5%減少したが、Web全体の獲得数は20%増加したという報告があります。これは、間接効果を考慮した予算配分により、上流施策への投資が最適化された結果と考えられます。
重要なのは、広告経由の指標だけでなく、全体のCV数や商談創出数で評価するという視点です。ラストクリックで広告成果が落ちたように見えても、全体CVが改善していれば事業成果は向上している可能性があります。
BtoB企業のためのMA・SFA連携アトリビューション
BtoB企業のアトリビューション分析では、MA(マーケティングオートメーション)・SFA(営業支援システム)との連携が成果の鍵を握ります。広告クリックからリード獲得、商談化、受注までを一気通貫で追跡することで、BtoB特有の長い検討期間に対応できます。
データ主導型マーケティングを採用し高度なアナリティクスを使っている企業は、競合より5〜8%マーケティングROIが高いとされています(ただし、グローバルの調査結果であり、日本BtoB市場では異なる可能性があります)。
BtoBでは、Webコンバージョン(資料請求、問い合わせ)だけでなく、その後の商談化率や受注率まで追跡することで、真に貢献しているチャネルを特定できます。
広告からリード獲得、商談化までの追跡設計
MA・SFAを活用した追跡設計のポイントは以下の通りです。
UTMパラメータの統一
広告・メール・SNSなど全チャネルでUTMパラメータのルールを統一し、MAに自動取り込みされる仕組みを構築します。これにより、リードソースの正確な把握が可能になります。
MAのリードソース管理
MAでリードの初回接触チャネルを記録し、その後のナーチャリング履歴と紐付けます。どの施策がリード獲得に貢献し、どの施策が育成に効果的だったかを分析できます。
SFAとの商談紐付け
MAのリード情報をSFAの商談に引き継ぎ、商談化・受注までのデータを一気通貫で追跡します。BtoB特有の複数人意思決定・長期検討にも対応できる設計にすることが重要です。
アトリビューション分析の導入手順と運用体制
アトリビューション分析を導入し、成果につなげるには、データ基盤の整備から運用体制の構築まで段階的に進めることが重要です。
アトリビューションソフトウェア市場は、2025〜2032年に年平均成長率(CAGR)14.8%で拡大すると予測されています(グローバル市場の予測)。導入を検討する企業が増えていることがうかがえます。
導入事例では、アトリビューションAIの導入により月額広告費1,000万円を700万円で同じ売上を維持し、実質30%の広告費削減を達成したケースがあります(ただし、これは成功事例であり、すべての企業で同様の成果が得られるとは限りません)。
【チェックリスト】アトリビューション分析導入チェックリスト
- 広告プラットフォームのコンバージョン計測が正しく設定されている
- UTMパラメータのルールが統一されている
- MAにリードソース情報が自動取り込みされる仕組みがある
- MAとSFAのデータ連携が設定されている
- 商談・受注情報がリードソースと紐付けられている
- アトリビューションモデル(ラストクリック、タイムディケイ等)が選定されている
- レポート作成の責任者が決まっている
- レポートのレビュー頻度(週次、月次等)が決まっている
- 広告予算の「停止・増額」の判断基準が明確になっている
- 分析結果を施策改善に反映するプロセスが定義されている
- データの信頼性を担保するための検証体制がある
- 関係者(マーケ、営業、経営)への報告フローが整備されている
運用体制のポイント
週次でアトリビューションレポートをレビューし、「停止・増額の閾値」を明確化することで、分析結果を実際の施策改善につなげる運用体制を構築できます。
まずはラストクリックで運用を開始し、データが蓄積されたら段階的にデータドリブンアトリビューション(DDA)へ移行するステップが現実的です。
まとめ|成果につなげるアトリビューション分析のポイント
本記事では、アトリビューション分析の基本概念から、BtoB企業向けのMA・SFA連携設計、導入手順までを解説しました。
ポイントの整理
- アトリビューション分析は、複数のタッチポイントの貢献度を可視化し、広告予算の最適配分につなげる手法
- ラストクリック依存では上流施策の価値を見逃しがち。間接効果を考慮した評価が重要
- BtoB企業では、MA・SFA連携で商談・受注までを一気通貫で追跡する設計が効果的
- 導入チェックリストを活用して自社の準備状況を確認し、段階的に進める
まずは本記事で紹介した導入チェックリストを活用して、自社のデータ基盤・運用体制の準備状況を確認してみてください。シンプルなモデルから始めてデータを蓄積し、段階的にDDAへ移行していくことをおすすめします。
アトリビューション分析を成果につなげるには、モデル選定だけでなくMA・SFAとの連携設計と継続的な運用体制の構築が不可欠です。
