MA導入を検討するとき、ツール選定だけで終わっていないか
多くの人が見落としがちですが、MA導入は、ツール選定だけでなく、SFA連携の設計と営業・マーケ横断での運用体制構築まで含めて検討することで、導入後の活用不全を防げます。
「MAを導入したが、結局使われなくなった」——BtoB企業でこのような失敗例は少なくありません。ある調査によると、日本企業のDX(MAを含むデジタルツール導入)成功率は5%以下とされており、システム先行導入とデータ活用不足が主因として挙げられています。
一方、MA市場自体は拡大を続けています。しかし、上場企業のMA導入率は14.6%、全体平均は1.5%と低く、中小企業への浸透はまだこれからの段階です。導入率が低いということは、これから検討する企業にとっては先行者の失敗事例を学び、同じ轍を踏まないチャンスがあるとも言えます。
この記事で分かること
- MAの基本機能と導入メリット
- MA導入でよくある失敗パターンと対策
- 自社にMAが必要かを判断する基準
- 導入から運用定着までのステップ
MAとは何か|基本機能と導入メリット
MA(マーケティングオートメーション) とは、リード獲得から育成までのマーケティング活動を自動化・効率化するツール・仕組みを指します。
日本のMA市場規模は2024年時点で612億円とされ、2033年には1,272億円に成長する見込みです(CAGR 8.5%)。市場が拡大している背景には、BtoB企業における営業効率化のニーズと、デジタルマーケティングの重要性の高まりがあります。
MAの主要機能は以下の通りです:
- スコアリング: 見込み客の行動(資料ダウンロード、Web閲覧等)に点数を付与し、購買意欲を数値化する仕組み
- ナーチャリング(リード育成): 見込み客に継続的に情報提供し、購買意欲を高めるプロセス
- メール配信自動化: 条件に応じたメール配信のトリガー設定
- リード管理: 見込み客情報の一元管理とセグメント分け
MAが解決する課題と期待される効果
MAを導入することで、以下のような課題解決が期待できます:
- 見込み客への手動フォローの工数削減
- 購買意欲の高いリードを営業に引き渡す仕組みの構築
- 見込み客の行動履歴に基づくパーソナライズされたコミュニケーション
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購買に至るまでの行動・心理の流れを可視化したフレームワークです。MAを活用することで、このカスタマージャーニーの各段階に応じた適切なアプローチが可能になります。
ただし、MAを入れればすぐに成果が出るわけではありません。効果は運用体制やコンテンツの準備状況に大きく依存します。
MA導入でよくある失敗パターンと対策
MA導入で最も多い失敗は、ツール選定だけで満足し、運用体制やコンテンツ準備を後回しにするパターンです。これはよくある誤解であり、この考え方では成果が出ません。
ある調査によると、コンテンツ不足により50%以上のMA導入企業が「高級メールツール化」しているとされています。つまり、高額なMAツールを導入したにもかかわらず、結局メール配信にしか使っていない状態です。
MAツールを比較検討して導入すれば成果が出ると考え、運用体制やSFA連携の設計を後回しにして、結局ツールが使われなくなる——これは典型的な失敗パターンです。
【チェックリスト】MA導入検討チェックリスト
- MA導入の目的を明文化している
- 月間リード獲得数を把握している
- 配信できるコンテンツ(ホワイトペーパー等)が準備できている
- MQL(マーケティングリード)の定義を営業と合意している
- SFA/CRMとの連携要件を整理している
- MA運用の担当者をアサインしている
- 営業部門との定例ミーティング体制を設計している
- 導入後の成果指標(KPI)を設定している
- スモールスタートの範囲を決めている
- PoC(実証実験)の実施計画を立てている
- 導入後のシナリオ設計の方針を決めている
- コンテンツ制作の体制・予算を確保している
- ベンダーサポートの範囲を確認している
- 社内承認のプロセスを整理している
- 運用開始後のレビュー体制を設計している
「高級メールツール化」を防ぐために必要なこと
MA導入の成否を分けるのは、ツール選定よりもコンテンツと運用体制の準備です。
導入前に確認すべきこととして:
- 配信するコンテンツ(ホワイトペーパー、事例記事、メールマガジン等)が十分にあるか
- コンテンツを継続的に制作できる体制があるか
- シナリオ設計の知見があるか、または外部支援を活用するか
シナリオ設計だけでなく、配信するコンテンツの準備が成否を分けます。導入前にコンテンツ資産の棚卸しを行い、不足しているものは導入と並行して準備する計画を立てることが重要です。
自社にMAは必要か|導入判断の基準
MA導入の判断は、「流行りだから」ではなく、自社の状況に基づいて行うべきです。判断基準は主に3つあります。
先述の通り、上場企業のMA導入率は14.6%、全体平均は1.5%と低く、中小企業への浸透余地は大きい状況です。しかし、導入すれば成果が出るわけではないため、以下の観点で自社の準備状況を確認してください。
1. リード数: ナーチャリングの対象となる見込み客が一定数存在するか
2. コンテンツ資産: 配信するコンテンツ(ホワイトペーパー、事例、ブログ等)が準備できているか
3. 運用体制: MA運用を担当できるリソースがあるか、営業との連携体制が構築できるか
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動により獲得・育成され、営業に引き渡す基準を満たした見込み客を指します。導入前にMQL定義を営業と合意しておくことが、連携成功の鍵となります。
スモールスタートでリスクを抑える方法
失敗リスクを低減するには、スモールスタートが有効です。
具体的には、メール配信自動化から開始し、成果を確認しながら機能を拡張していく方法が推奨されます。多くのMAツールでは無料トライアルやPoCを提供しているため、本格導入前に自社での運用イメージをつかむことができます。
「流行りだから」で導入すると目的が曖昧化し、結局ツールが使われなくなるリスクがあります。まずは小さく始めて、効果を検証しながら拡大していく姿勢が重要です。
MA導入から運用定着までのステップ
導入検討から運用定着までの全体像を把握することで、見通しを持った計画が立てられます。
一例として、MOps(マーケティングオプス)導入でMA/SFA連携を強化した旭化成グループでは、商談数20%増加を達成したケースが報告されています(ただし、すべての企業で同様の成果が出るわけではありません)。
また、MAシナリオ稼働後、早ければ3ヶ月程度でデータの変化が見え始めるとされています。効果測定までには一定期間が必要であることを理解しておくことが大切です。
【フロー図】MA導入から運用定着までのステップ
flowchart TD
A[目的・KPI設定] --> B[コンテンツ棚卸し]
B --> C[MQL定義の合意]
C --> D[ツール選定・PoC]
D --> E[SFA連携設計]
E --> F[シナリオ設計]
F --> G[運用開始・スモールスタート]
G --> H[効果測定・改善]
H --> I[運用定着・拡大]
I --> H
SFA連携と営業・マーケ横断の運用体制構築
導入成功の鍵は、SFA連携と部門横断の運用体制構築にあります。
MOps(マーケティングオプス) とは、MAツールの運用体制・プロセスを専門的に管理する機能または組織を指します。近年、MOpsという運用体制専門の概念が浸透しつつあり、MA活用の成熟度が高い企業では専任チームを設置するケースも増えています。
営業・マーケ横断で取り組むべきポイント:
- MQL定義の合意と定期的な見直し
- リード引き渡し基準の明確化
- 商談結果のフィードバックループ構築
- 週次または月次での共同レビュー会議
これらを仕組み化することで、「ツールを入れたが使われない」という事態を防ぐことができます。
まとめ|MA導入検討で押さえるべきポイント
本記事では、MA導入検討から運用定着までの全体像を解説しました。
要点の整理
- 日本企業のDX成功率は5%以下とされ、システム先行導入が失敗の主因
- 50%以上のMA導入企業が「高級メールツール化」している
- 導入判断はリード数、コンテンツ資産、運用体制の3軸で判断
- SFA連携と部門横断の運用体制構築が成功の鍵
次のアクション
まずは本記事のチェックリストで自社の状況を確認してください。MQL定義の営業との合意、コンテンツ資産の棚卸し、運用体制の確認から着手することをおすすめします。スモールスタートでPoCを実施し、効果を検証しながら本格導入を進めることで、失敗リスクを低減できます。
MA導入は、ツール選定だけでなく、SFA連携の設計と営業・マーケ横断での運用体制構築まで含めて検討することで、導入後の活用不全を防げます。
