リード獲得施策が形骸化する理由
リード獲得の施策数や予算を増やしても成果が出ない。そんな悩みを抱えているなら、施策実行と並行してMA/SFA設定と運用体制構築を同時に進めることが不可欠です。
よくある失敗パターンとして、施策リストを見て実行すれば自動的に成果が出ると思い込み、MA/SFA設定や運用体制の構築を後回しにするケースがあります。しかし実際には、施策を実行しても、獲得したリードをスコアリングで優先順位付けし、ナーチャリングで育成し、適切なタイミングでフォローする仕組みがなければ、リードは放置され商談化に至りません。
2025年の調査では、理想的なリード獲得数に達しない原因のトップは「施策がターゲットに刺さっていない」が40.9%、次いで「施策数/頻度不足」が27.3%、「フォロー不十分」が25.0%でした。施策選定のミスマッチとフォロー体制の不備が、リード獲得施策を形骸化させる主な要因と言えます。
リード獲得の定義と目的
リード獲得とは、自社の製品・サービスに関心を持つ見込み顧客(企業担当者)の連絡先情報を収集するプロセスです。BtoB企業にとって、リード獲得は売上を生み出すための起点となる重要な活動ですが、単に連絡先を集めるだけでは意味がありません。
リード獲得を「ゴール」と捉える誤解がありますが、実際にはコミュニケーションの「スタート」です。獲得したリードを育成し、商談化・受注につなげるまでの一連のプロセス(リード管理)が不可欠です。
リード管理は大きく3つのフェーズに分かれます。
- リードジェネレーション(獲得): Web広告、SNS、展示会などの施策で見込み顧客の連絡先を収集する
- リードナーチャリング(育成): メール配信、コンテンツ提供、ウェビナーなどで購買意欲を高める
- リードクオリフィケーション(選別): スコアリングで優先順位を付け、商談化の可能性が高いリードを営業に引き渡す
この3フェーズを一貫して運用することで、リードは単なる名刺情報から、LTV(顧客生涯価値) を生み出す顧客へと育っていきます。LTVとは、1顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を指します。短期的なリード獲得数だけを追うと、LTV最大化が損なわれ、組織分断を生む原因にもなります。
リード管理の基本フロー
リードを獲得した後の基本フローは、スコアリング→ナーチャリング→クオリフィケーションの順で進みます。
スコアリングとは、リードの行動履歴や属性に基づいて購買意欲の高さを点数化し、優先順位を付ける手法です。例えば、資料ダウンロード+10点、価格ページ閲覧+15点、メール開封+5点といった基準で自動計算し、合計点が高いリードを優先的にフォローします。
業界標準の即時フォロー体制としては、以下のタイミングが推奨されています。
- サンクスメール即時送信(自動化)
- 1時間以内にスコア計算(MA設定)
- 24時間以内に架電またはパーソナライズメール送信
- 3日以内にフォローメール送信
このフローを実現するには、MA/SFAの設定と連携が必須です。単なる名刺情報止まりでトラッキング不足の場合、リードの行動履歴が取得できず、スコアリングやナーチャリングが機能しません。
リードナーチャリングとは、見込み顧客(リード)を育成し、購買意欲を高めて商談化・売上につなげるプロセスです。スコアが一定以上に達したリードには、営業から直接アプローチを行い、商談化を目指します。
リード獲得施策の種類と費用目安
リード獲得施策は、オンライン施策とオフライン施策に大きく分かれます。2025年のBtoB企業経営者向け調査(n=107)によると、リード獲得施策の実施率はSNSが36.4%でトップ、次いで広告が29.0%、展示会が27.1%でした。一方、効果実感施策としてはSNSが33.3%(前年比+11.9ポイント)でトップとなっており、実施率と効果実感率が一致しています。
CPA(リード獲得単価) とは、1件のリード(見込み顧客)を獲得するためにかかった広告費用を指します。2025年のBtoBマーケティング調査(n=326)では、目標CPAは5,000〜10,000円未満が21.8%で最多、次いで10,000〜15,000円未満が15.3%でした。ただし、業界や企業規模により大きく変動するため、自社での検証が必須です。
CPA高騰を実感している施策としては、セミナー/ウェビナーが53.1%で最多となっています。近年、オンラインセミナーの普及により競合が増え、集客コストが上昇している傾向がみられます。
以下は、主要なオンライン/オフライン施策の比較表です。
【比較表】オンライン/オフライン施策比較
| 施策名 | CPA目安 | 向いている企業 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| Web広告(リスティング・ディスプレイ) | 5,000〜15,000円 | 予算が確保できる企業、短期で成果を出したい企業 | 即効性が高い、ターゲティング精度が高い | 費用がかかる、運用ノウハウが必要 |
| SNS(X・LinkedIn・Facebook) | 低〜中程度 | 認知拡大を狙いたい企業、コンテンツ発信力がある企業 | 低コストで始められる、エンゲージメントが高い | 成果が出るまで時間がかかる、運用負荷が高い |
| オウンドメディア(SEO) | 低〜中程度 | 中長期で資産化したい企業、コンテンツ制作体制がある企業 | 資産として蓄積される、信頼性が高い | 成果が出るまで時間がかかる、継続的な更新が必要 |
| ウェビナー | 高騰傾向 | 専門性を訴求したい企業、講師リソースがある企業 | エンゲージメントが高い、質の高いリードが獲得できる | 集客コストが上昇、企画・運営の負荷が高い |
| 展示会・カンファレンス | 高〜非常に高い | 大規模に認知拡大したい企業、出展予算がある企業 | 一度に多数のリードを獲得できる、対面で関係構築できる | 費用が非常に高い、準備・運営の負荷が大きい |
| ホワイトペーパー配布 | 低〜中程度 | 専門知識を訴求したい企業、コンテンツ資産がある企業 | 質の高いリードが獲得できる、再利用可能 | 制作に時間がかかる、ダウンロード後のフォローが必須 |
| パートナー連携・共催ウェビナー | 低〜中程度 | ネットワークを活用したい企業、単独集客が難しい企業 | 相互集客で新規リードにアプローチできる、低コスト | パートナー選定が難しい、協力体制の構築が必要 |
オンライン施策の特徴
オンライン施策の中で、特にWeb広告とSNSは効果実感率が高く、2025年度は予算増額の傾向が続いています。BtoB Web広告予算は約6割が増額予定(大幅増額16.1%+やや増額43.3%=59.4%)で、増額理由のトップは「リード獲得効果が高い」が55.8%でした。
一方、Web広告運用の課題としては「費用対効果向上」が47.2%、「質の高いリード獲得」が46.2%と、コスト効率と質の両立が求められています。
SNSに関しては、効果実感率33.3%(前年比+11.9ポイント)と大きく向上しており、今後強化意向も高い傾向があります。特にX(旧Twitter)やLinkedInを活用したBtoB企業が増えており、専門的なコンテンツ発信や業界インフルエンサーとの連携が成果につながっています。
また、生成AI活用も進んでおり、コンテンツ作成や広告クリエイティブ最適化に活用する企業が増えています。
オフライン施策の特徴
展示会やセミナーなどのオフライン施策は、対面で関係構築ができるため、質の高いリードを獲得しやすいメリットがあります。一方で、費用が高く、準備・運営の負荷が大きいため、実施企業は限られています。
共催カンファレンスの事例では、参加者の30%が商談進展し、リード獲得目標150%を達成、マーケティング費用70%削減を実現したケースがあります。ただし、この事例は企業PR寄りの報告であり、再現性検証は不十分です。他の要因(既存の認知度、パートナーのネットワーク等)も含む可能性があるため、自社で同様の成果が出るとは限りません。
また、ホワイトペーパー施策で直近12カ月の導入決定率71%を達成した事例もあります。この事例は、コンテンツ最適化とデータ分析を徹底した結果ですが、業種や提供内容によって効果は大きく異なります。
リード獲得施策の選び方
リード獲得施策は、ターゲット、予算、体制の3軸で選定することが重要です。2025年の調査では、理想的なリード獲得数に達しない原因のトップが「施策がターゲットに刺さっていない」40.9%であることから、施策選定前にペルソナ・ICP(Ideal Customer Profile)を明確化することが不可欠です。
以下のチェックリストを活用して、自社に合った施策を選定してください。
【チェックリスト】リード獲得施策選定チェックリスト
- ターゲットペルソナを明確化した(役職、業種、企業規模、課題)
- ICP(Ideal Customer Profile)を定義した
- ターゲットがよく利用する情報源を把握した(Web、SNS、展示会等)
- 目標CPA(リード獲得単価)を設定した
- 月間/年間のリード獲得目標数を設定した
- 施策実行に必要な予算を確保した
- 施策実行に必要な人員体制を確認した(マーケ、IS、営業)
- MA/SFAの設定状況を確認した(スコアリング、ワークフロー等)
- リード獲得後の即時フォロー体制を整備した
- 効果測定のためのダッシュボードを準備した
- 施策実行後のPDCAサイクルを設計した
ターゲットがWeb検索を頻繁に行う層であれば、Web広告やSEOが有効です。一方、業界イベントに積極的に参加する層であれば、展示会や共催ウェビナーが適しています。
予算については、目標CPA 5,000〜10,000円を基準に、月間リード獲得目標数を掛け合わせて算出します。例えば、月間100件のリード獲得が目標で、CPA 8,000円の場合、月間予算は80万円となります。ただし、業界や企業規模により大きく変動するため、自社での検証が必須です。
体制面では、マーケティング部門が施策を実行し、IS(インサイドセールス)部門がリードをフォロー・育成し、営業部門が商談化するという役割分担が一般的です。この連携がうまく機能しないと、リードが放置され、成果が出ません。
MA/SFA設定と運用体制構築の重要性
施策を実行してリードを獲得しても、MA/SFA設定と運用体制が整っていなければ、リードは放置され商談化に至りません。2025年の調査では、Web広告運用課題のトップが「費用対効果向上」47.2%、次いで「質の高いリード獲得」46.2%となっており、リードの質を高め、効率的にフォローする仕組みが求められています。
ホワイトペーパー施策で導入決定率71%を達成した事例では、コンテンツ最適化とデータ分析を徹底し、リードの行動履歴を細かくトラッキングしていました。単にリードを獲得するだけでなく、MA/SFAで行動データを収集・分析し、効率なタイミングでフォローすることが成果につながります。
スコアリングとは、リードの行動履歴や属性に基づいて購買意欲の高さを点数化し、優先順位を付ける手法です。スコアリング設定が適切に行われていれば、優先度の高いリードに集中してリソースを投入でき、商談化率が向上します。
リードナーチャリングとは、見込み顧客(リード)を育成し、購買意欲を高めて商談化・売上につなげるプロセスです。ナーチャリングを自動化するワークフローをMA上で構築することで、リードを放置せず継続的にエンゲージメントを維持できます。
施策実行前に整備すべきMA/SFA設定
MA/SFA設定では、以下の3点を施策実行前に整備しておくことが重要です。
1. スコアリング基準の設計
リードの行動履歴(資料ダウンロード、価格ページ閲覧、メール開封等)と属性(役職、企業規模、業種等)に基づいて、点数を付けるルールを設計します。例えば、以下のような基準が一般的です。
- 資料ダウンロード: +10点
- 価格ページ閲覧: +15点
- メール開封: +5点
- 役職が部長以上: +20点
- 従業員数100名以上: +10点
合計点が一定以上(例: 50点以上)に達したリードを「ホットリード」として優先的にフォローします。
2. 自動フォローワークフローの設定
業界標準のフォロータイミングは、1時間以内にスコア計算、24時間以内に架電またはパーソナライズメール送信、3日以内にフォローメール送信です。これをMA上で自動化し、リードを放置しない仕組みを作ります。
3. ダッシュボード構築
リード獲得数、スコア分布、商談化率、受注率などのKPIをリアルタイムで可視化するダッシュボードを構築します。これにより、施策の効果を即座に把握でき、PDCAを回しやすくなります。
運用体制構築のポイント
運用体制では、マーケティング部門、IS部門、営業部門の連携が不可欠です。
部門間連携の役割分担
- マーケティング部門: 施策実行、リード獲得、コンテンツ制作
- IS部門: リードフォロー、ナーチャリング、スコアリング管理
- 営業部門: ホットリード商談化、受注
この役割分担を明確にし、定期的に会議を開いてリードの状況を共有します。SDR型(インバウンド施策) とは、マーケティング起点で顧客から問い合わせを引き寄せるリード獲得手法を指します。マーケティングが獲得したリードをIS部門が育成し、営業部門に引き渡すフローが確立されていれば、リードの取りこぼしを防げます。
KPI設定とダッシュボード可視化
リード獲得数、商談化率、受注率、CPAなどのKPIを設定し、ダッシュボードで可視化します。ただし、短期的な数値(今月のリード獲得数)だけで追うと、LTV最大化が損なわれる可能性があります。リードの質(商談化率、受注率、LTV)も併せて評価することが重要です。
PDCAサイクル
施策実行後は、効果を測定し、改善点を洗い出してPDCAを回します。例えば、Web広告のCPAが高騰している場合は、ターゲティング設定やクリエイティブを見直します。ウェビナーの集客が伸び悩んでいる場合は、テーマや集客チャネルを変更します。
まとめ:MA/SFA設定と運用体制を整備して成果を出す
リード獲得施策は、MA/SFA設定と運用体制構築を同時に進めることで初めて成果を出せます。
この記事で分かること
- リード獲得施策が形骸化する理由(ターゲットミスマッチ40.9%、フォロー不十分25.0%)
- オンライン/オフライン施策の種類と費用目安(CPA 5,000〜15,000円が目安)
- 施策選定の3軸(ターゲット、予算、体制)とチェックリスト
- MA/SFA設定(スコアリング、ワークフロー、ダッシュボード)の重要性
- 運用体制構築のポイント(部門間連携、KPI設定、PDCAサイクル)
施策を実行する前に、チェックリストを活用して自社に合った施策を選定し、MA/SFA設定と運用体制を整備してください。リードを獲得した後の即時フォロー体制(1時間以内スコア計算、24時間以内架電、3日以内フォローメール)を整えることで、リードを放置せず、商談化率を高めることができます。
施策を実行すれば自動的に成果が出るわけではありません。MA/SFA設定、運用体制構築、PDCAサイクルの3つを同時に進めることが、継続的にリードを獲得・育成できる状態を作る鍵です。
