レイターステージのマーケティングに求められる変革
実はレイターステージのスタートアップは、IPO/M&Aを見据えてマーケティング組織の標準化と再現性のある仕組みづくりに取り組むことで、持続的な成長基盤を構築できます。
日本の成長型スタートアップ総数は2025年1月時点で612社とされています(自己申告・登録ベースの推計値)。また、スタートアップ数は2021年から2024年にかけて16,100社から約25,000社へ1.5倍に増加しており、国内のスタートアップエコシステムは拡大傾向にあります。
しかし、成長フェーズが進むにつれて、創業期の属人的なマーケティング体制では対応しきれなくなるケースが増えています。「これまでのやり方が通用しなくなった」「組織が大きくなるほど成果が見えにくくなった」といった課題を抱える企業も少なくありません。
この記事で分かること
- レイターステージの定義とスタートアップ成長ステージの全体像
- レイターステージ特有のマーケティング課題と戦略的アプローチ
- IPOに向けたマーケティング体制整備のチェックポイント
- 成長ステージ別のマーケティング特徴比較
レイターステージの定義とスタートアップ成長ステージの全体像
レイターステージとは、スタートアップの成長プロセスにおける最終段階で、事業が軌道に乗り安定的な収益基盤を確立し、IPOやM&Aを検討するフェーズです。なお、レイターステージの定義・基準は業界や投資家により異なり、統一された公的基準がない点に留意が必要です。
スタートアップの成長は一般的に、シード→アーリー→ミドル→レイターという流れで進みます。2014年から2019年のデータによると、レイターステージの投資件数割合は21-25%で、アーリーステージ(30-49%)に次ぐ規模となっています。
【比較表】成長ステージ別マーケティング特徴比較表
| 成長ステージ | 主な特徴 | マーケティングの焦点 | 組織体制 | 資金調達ラウンド |
|---|---|---|---|---|
| シード | アイデア検証段階 | ターゲット仮説の検証 | 創業者中心 | シード・プレシリーズA |
| アーリー | PMF達成を目指す段階 | 初期顧客の獲得・事例づくり | 少人数チーム | シリーズA |
| ミドル | 事業拡大段階 | リード獲得の仕組み化 | 機能別チーム編成 | シリーズB |
| レイター | IPO/M&A準備段階 | 組織の標準化・再現性確保 | 専門部門の設置 | シリーズC/D以降 |
PMF(プロダクトマーケットフィット) とは、製品やサービスが市場ニーズに適合し、持続的な成長が見込める状態を指します。アーリーステージでの達成が目標とされています。
シリーズC/Dは、レイターステージにおける資金調達ラウンドで、機関投資家中心の大型調達が一般的です。
レイターステージの特徴と到達基準
レイターステージに到達した企業は、事業が軌道に乗り安定的な収益基盤を確立している状態にあります。イグジット(スタートアップの出口戦略であるIPOまたはM&A)を本格的に検討するフェーズです。
売上・従業員規模の目安は業種により大きく異なるため、一概には言えません。共通しているのは、事業モデルが確立し、組織としての実行力が問われる段階であるという点です。
ベンチャーデットは、スタートアップ向けの融資形態で、レイターステージでエクイティ調達と併用される傾向があります。複数の資金調達手段を組み合わせることで、希薄化を抑えながら成長投資を行う選択肢が広がっています。
レイターステージ特有のマーケティング課題と戦略
レイターステージでは、属人的なマーケティング体制から組織的な体制への移行が最重要課題です。VCの39%が投資判断で「経営チームの質」を最優先基準としているというデータからも、経営陣のスキルセット強化と組織としての実行力が重視されていることがわかります。
よくある失敗パターンとして、アーリー/ミドル期と同じ属人的なマーケティング体制のまま拡大しようとするケースがあります。創業期に成功した手法をそのまま続けても、組織規模が大きくなるほど効果が薄れ、むしろボトルネックになることが少なくありません。この考え方は誤りであり、成長フェーズに応じた体制変革が不可欠です。
BtoBスタートアップでは、営業効率化(ABM活用)やパートナーエコシステム構築が成長の鍵となる傾向があります。単発のリード獲得施策ではなく、再現性のある仕組みとしてマーケティング活動を設計することが求められます。
アーリー・ミドルとの違い
アーリーやミドルステージで効果的だった施策が、レイターステージでも同様に機能するとは限りません。組織規模が拡大するにつれて、以下のような変化が生じます。
- 意思決定の複雑化: 関係者が増えることで、施策の承認や調整に時間がかかる
- データ管理の重要性増大: 属人的な顧客管理から、組織としてのデータ基盤整備が必須に
- ブランド管理の必要性: IPOを見据えた一貫したメッセージングと品質管理が求められる
- KPI設計の高度化: 単純な獲得数だけでなく、LTVや投資対効果の精緻な測定が必要に
これらの変化に対応するためには、マーケティング組織の標準化と、誰が担当しても一定の成果を出せる再現性のある仕組みづくりが重要です。
レイターステージ企業の成長事例
レイターステージでの急成長事例として、メルカリの成長推移が参考になります。売上高は2015年の123億円から2017年には596億円へ約5倍に増加し、従業員数も2015年の329人から2017年には1,826人へ約5.6倍に増加しています。
このような急成長を支えるためには、マーケティング組織も同様のスピードで拡大・成熟させる必要があります。属人的な体制のままでは、人員が増えるほど非効率が蓄積していくことになります。
なお、事例は参考情報であり、業種・市場環境により再現性は異なります。自社の状況に応じたアプローチを検討することが重要です。
IPOに向けたマーケティング体制整備のチェックポイント
IPOに向けては、マーケティング組織の標準化と再現性のある仕組みづくりが不可欠です。上場審査では事業の継続性や成長性が問われるため、特定の個人に依存しない体制を構築しておく必要があります。
具体的には、以下のような準備項目があります。
- 管理部門の創設: 経営管理室や法務部など、コーポレート機能の整備
- 人事制度整備: 評価制度や等級制度の標準化
- データ基盤整備: マーケティングKPIの可視化と継続的なモニタリング体制
- プロセスの文書化: 業務フローやノウハウの形式知化
【チェックリスト】レイターステージのマーケティング体制チェックリスト
- マーケティング戦略が文書化され、経営陣と共有されている
- マーケティングKPIが定義され、定期的にレビューしている
- リード獲得から商談化までのプロセスが標準化されている
- 顧客データがCRM/MAツールで一元管理されている
- マーケティング活動の投資対効果を測定する仕組みがある
- コンテンツ制作のガイドラインが整備されている
- ブランドガイドラインが策定され、運用されている
- マーケティング予算の策定・管理プロセスが確立している
- 外部パートナー(代理店等)との契約・管理体制が整っている
- マーケティング組織の役割分担と責任範囲が明確である
- 新メンバーのオンボーディングプログラムがある
- マーケティング施策の承認フローが整備されている
- 競合分析を定期的に実施する体制がある
- 顧客の声を収集・分析する仕組みがある
- マーケティングと営業の連携プロセスが定義されている
- PR・広報活動のガイドラインが整備されている
- 危機管理対応のプロセスが文書化されている
- マーケティング活動に関する法務チェック体制がある
- 個人情報保護・データプライバシーの対応が完了している
- IPO後を見据えたIR連携の準備ができている
まとめ:レイターステージはマーケティング組織の標準化が成功の鍵
レイターステージのマーケティングでは、アーリー・ミドル期とは異なるアプローチが求められます。属人的な体制のまま拡大しようとすると、組織の成長に伴って非効率が蓄積し、IPO準備の障壁となることがあります。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社のマーケティング体制の現状を棚卸ししてみてください。すべての項目を一度に整備する必要はありませんが、優先度の高いものから段階的に取り組むことで、持続的な成長基盤を構築できます。
社内リソースだけでは対応が難しい場合は、設計から実装まで支援できる専門家の活用も選択肢の一つです。
レイターステージのスタートアップは、IPO/M&Aを見据えてマーケティング組織の標準化と再現性のある仕組みづくりに取り組むことで、持続的な成長基盤を構築できます。
