インサイドセールス研修が注目される背景と研修だけでは成果が出ない理由
結論から言えば、インサイドセールス研修は、学んだスキルを活かせる社内体制(MA/SFA活用・KPI設計・マネジメント体制)と合わせて導入することで初めて成果につながります。
コロナ禍以降、BtoB営業のあり方は大きく変わりました。2020年3月以降(外出自粛期以降)にインサイドセールスを導入した企業は34.9%に上るという調査結果があります(ただし、オンライン調査のためサンプルに偏りがある可能性があります)。また、インサイドセールスを導入している企業は前年から6.1ポイント増加しており、急速な普及が進んでいます。
インサイドセールスとは、オンラインツール(電話・メール・WEB会議)を活用し、非対面でリード育成・商談化を行う内勤型営業を指します。従来の訪問営業と異なり、効率的に多くの見込み顧客と接点を持てることから、THE MODEL(マーケ・インサイド・フィールド・CSの分業と連携による営業プロセスモデル)を採用する企業を中心に導入が進んでいます。
こうした背景から、インサイドセールス研修へのニーズも高まっています。しかし、研修を受ければすぐに成果が出るわけではありません。研修内容を実践できる環境が整っていなければ、学んだスキルは定着せず、元の自己流に戻ってしまうケースが少なくありません。
この記事で分かること
- インサイドセールス研修で学ぶべき主要スキル
- 研修の種類と費用相場
- 研修効果を最大化するための社内体制の整え方
- 研修選び・導入前に確認すべきチェックリスト
インサイドセールス研修で学ぶべき主要スキル
インサイドセールス研修で習得すべきスキルは、大きく「対話スキル」と「ツール活用スキル」の2つに分けられます。これらを理解しておくことで、自社に必要な研修を選ぶ基準が明確になります。
よくある誤解として「テレアポ=インサイドセールス」と捉えるケースがありますが、これは正確ではありません。インサイドセールスの本質は、リード育成と案件化です。単なるアポイント獲得ではなく、見込み顧客の課題を把握し、適切なタイミングで商談につなげる役割を担います。
リード育成・案件化のための対話スキル
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得し、一定の基準を満たした見込み顧客を指します。SQL(Sales Qualified Lead) は、営業がBANT等の要件を確認し、商談化が見込める状態に達した見込み顧客のことです。
インサイドセールス担当者には、MQLをSQLへと引き上げるための対話スキルが求められます。具体的には以下のようなスキルです。
- 課題発見のためのヒアリング力
- BANT(Budget、Authority、Needs、Timeline)を確認するフレームワークの活用
- 見込み顧客の検討状況に合わせた情報提供
- フィールドセールスへの適切な引き継ぎ
MA・SFAを活用した業務遂行スキル
現代のインサイドセールスは、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)を活用して業務を行うことが前提となっています。研修では、ツールの操作方法だけでなく、データを活用した優先順位付けや、活動履歴の記録方法なども学ぶことが重要です。
研修で学んだスキルを実務で活かすには、研修内容とツール活用がセットで設計されていることが望ましいです。
インサイドセールス研修の種類と費用相場
インサイドセールス研修には、公的機関が提供する低コストの研修から、民間研修会社によるカスタマイズ型研修まで、さまざまな選択肢があります。自社の課題や予算に応じて選択することが重要です。
OFF-JTとは、職場を離れて行う教育訓練のことで、集合研修や外部研修などが該当します。厚生労働省の令和5年度能力開発基本調査によると、企業が従業員1人あたりに投じるOFF-JT費用は年間37,700円(企業規模100人以上、2022年度実績)です。また、OFF-JTを実施した事業所割合は71.1%に上ります。
| 研修タイプ | 費用目安 | 期間 |
|---|---|---|
| 公的機関・業界団体 | 2万円程度〜 | 2日間程度 |
| 民間カスタマイズ型 | 1日30〜80万円/クラス | 企業により異なる |
公的機関・業界団体の研修プログラム
中小機構では「インサイドセールスの進め方」研修を提供しており、2日間・合計12時間で受講料は22,000円(税込)です。基礎を学びたい場合や、まず少人数で試してみたい場合には、こうした低コストの選択肢も検討に値します。
民間研修会社のカスタマイズ型研修
民間の研修会社が提供する企業向けカスタマイズ型研修は、1日あたり30〜80万円/クラスが一般的なレンジです。自社の商材や営業プロセスに合わせたカリキュラムを設計できる点がメリットです。
なお、「外部研修は高いから社内研修で」という判断をする場合もありますが、社内研修であっても専任マネージャーの工数を換算すると、短期の外部研修と同等、あるいはそれ以上のコストがかかるケースがあります。費用対効果を正しく比較するには、見えないコストも含めて検討する必要があります。
研修効果を最大化する社内体制の整備
研修効果を最大化するには、研修だけでなく、学んだスキルを実践できる社内体制の整備が不可欠です。研修導入企業で商談数が平均25%増加、成約率が15%以上向上したという調査結果もありますが、これは民間調査ベースであり、研修と社内体制整備の両輪があって初めて得られた成果です。
よくある失敗パターンとして、研修を受ければメンバーのスキルが上がると期待し、研修受講だけで終わってしまうケースがあります。しかし、研修後の実践環境が整っていなければ、学んだことが定着せず、結局元の自己流に戻ってしまいます。これでは研修への投資が無駄になりかねません。
KPI設計とマーケ・フィールドとの連携
研修効果を最大化するための前提条件として、MA/SFAで「MQL」「SQL」「商談」「受注」の定義をマーケティング部門・インサイドセールス・フィールドセールスで統一することが挙げられます。
THE MODELのような分業体制を敷いている場合、部門間でリードの定義やKPIが異なると、研修で学んだスキルを適切に評価・改善できません。研修導入前に、以下の点を確認・整備しておくことが重要です。
- MQL/SQLの明確な定義
- 各部門のKPIと目標値
- リードの引き継ぎ基準
- 商談化率・成約率の測定方法
週次・月次の振り返りとフィードバック体制
研修内容を定着させ、継続的にスキルを向上させるには、定期的な振り返りの仕組みが必要です。ダッシュボードを使った週次・月次の振り返り会議を行い、研修で学んだ内容と実績を照らし合わせることで、改善点を明確にできます。
また、フィールドセールスからインサイドセールスへの「質の高いリード条件」「失注理由」のフィードバックループを構築することも効果的です。現場の声を研修内容や日々の業務に反映することで、組織全体のスキル向上につなげられます。
研修選びと導入前に確認すべきチェックリスト
研修を選ぶ前に、自社の現状を把握し、研修効果を最大化できる体制が整っているかを確認することが重要です。以下のチェックリストを活用して、導入準備の状況を確認してください。
【チェックリスト】インサイドセールス研修効果を最大化する社内体制チェックリスト
- インサイドセールス組織の目的・役割が明確になっている
- MA/SFAツールが導入済み、または導入予定がある
- MQL(マーケ部門からの引き継ぎ基準)が定義されている
- SQL(フィールドへの引き継ぎ基準)が定義されている
- 商談化率・成約率などのKPIが設定されている
- KPIの測定・可視化の仕組みがある
- マーケティング部門との連携体制がある
- フィールドセールスとの連携体制がある
- 週次または月次の振り返り会議を実施している
- フィールドからのフィードバックを受ける仕組みがある
- 研修受講者のスキルレベルを把握している
- 研修後のフォローアップ計画がある
- 研修効果の測定方法(研修前後の比較)が決まっている
- 研修に充てられる予算が確保されている
- 研修受講のためのスケジュール調整ができる
チェックが少ない項目があれば、研修導入と並行して体制整備を進めることをおすすめします。
まとめ:研修と社内体制の両輪で成果を出す
インサイドセールス研修を検討する際は、研修内容だけでなく、研修後の実践環境も含めて設計することが成果への近道です。
本記事のポイントを整理します。
- インサイドセールス研修で学ぶべきスキルは「対話スキル」と「ツール活用スキル」の2つ
- 費用は公的機関なら2万円程度から、民間カスタマイズ型は1日30〜80万円が相場
- 研修効果を最大化するには、KPI設計やフィードバック体制など社内体制の整備が不可欠
- 導入前にチェックリストで自社の準備状況を確認する
研修を受ければ成果が出るという考え方は誤りです。インサイドセールス研修は、学んだスキルを活かせる社内体制(MA/SFA活用・KPI設計・マネジメント体制)と合わせて導入することで初めて成果につながります。研修選びと社内体制整備の両面から、準備を進めてみてください。
