業務ツール内製化で行き詰まる企業の共通課題
意外かもしれませんが、業務ツールの内製化は、ノーコードで対応可能な範囲は社内で進め、複雑な連携やフルスクラッチ開発が必要な部分は実装まで支援できる外部パートナーと組み合わせることで、コスト効率とスピードを両立できます。
「ノーコードツールを導入したが思うように活用できていない」「内製化を進めたいがどこまで自社でやれるか判断がつかない」という課題を抱える企業は少なくありません。DX推進実態調査2025によると、デジタル人材不足を課題とする企業は68.4%に達しています。一方で、FNN大企業調査によると内製化意欲は約80%と高く、このギャップが内製化を難しくしている背景にあります。
内製化(IT) とは、外部ベンダー依存から脱却し、社内リソースで業務システムを開発・運用する取り組みを指します。しかし、すべてを内製化しようとして行き詰まるケースも多く、外部支援との適切な組み合わせが成功のポイントとなります。
この記事で分かること
- 業務ツール内製化の基本概念とローコード・ノーコード活用の現状
- 内製化のメリット・デメリットと判断基準
- 両極端なアプローチが失敗する理由とハイブリッドアプローチの考え方
- 内製化を成功させるための進め方とチェックリスト
業務ツール内製化とは|ローコード・ノーコード活用の現状
業務ツール内製化の推進において、ローコード・ノーコード開発の活用が広がっています。ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2023によると、国内ローコード/ノーコード開発市場は2021年度611億6,000万円、2026年度には1,300億円超と予測されています(年間成長率16.8%)。
ローコード開発とは、最小限のコーディングでアプリケーションを開発する手法です。GUIベースの設計とカスタマイズ可能なコード記述を組み合わせることで、従来のフルスクラッチ開発より短期間での開発が可能になります。
ノーコード開発とは、コードを書かずにGUIのみでアプリケーションを開発する手法です。非IT人材でも業務アプリを作成できるため、内製化の入り口として活用されるケースが増えています。
ただし、市場規模の成長率については調査機関により異なる可能性がある点に留意が必要です。
市民開発者の役割と可能性
市民開発者とは、IT部門以外の業務部門で、ローコード/ノーコードツールを使ってアプリ開発を行う非IT人材を指します。業務を熟知した担当者が直接ツールを開発することで、要件定義のズレを減らし、現場ニーズに即したツールを作れる点がメリットです。
ただし、「ノーコードなら誰でもできる」という考え方は誤りです。ツールの習熟やデータ設計の基礎知識は必要であり、市民開発者の育成には一定の投資が求められます。
内製化のメリット・デメリットと判断基準
内製化には自社ニーズに合わせた柔軟な対応ができるメリットがある一方、人材確保や品質管理の課題も伴います。FNN大企業調査によると、DXの半分以上をITベンダー委託する企業は約40%であり、内製化意欲は高くても完全な内製化は難しい現実があります。
以下の比較表で、内製と外部支援の判断基準を確認してください。
【比較表】内製vs外部支援の領域別判断基準表
| 開発領域 | 内製向き | 外部支援向き | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| データ入力・管理アプリ | ○ | △ | シンプルな構造ならノーコードで対応可能 |
| 業務フロー自動化 | ○ | △ | 定型業務の自動化は内製で着手しやすい |
| 外部システム連携 | △ | ○ | API連携やデータ変換は専門知識が必要 |
| 基幹システム連携 | × | ○ | セキュリティ・可用性の要件が高い |
| カスタムダッシュボード | △ | ○ | 複雑な集計・可視化は外部支援が効率的 |
| MA/SFA連携 | △ | ○ | ツール間連携の設計・実装は専門性が必要 |
| フルスクラッチ開発 | × | ○ | 要件定義から開発まで専門チームが必要 |
※ 企業の人材状況やツールの習熟度によって判断は異なります。
ノーコードで対応可能な範囲の見極め
ノーコードツールで対応可能な範囲は、シンプルなデータ入力・管理系の業務アプリが中心です。顧客管理、案件管理、日報入力など、定型的なデータを扱う業務には適しています。
一方で、複数システムとのAPI連携、複雑な条件分岐を伴う自動化、高度なセキュリティ要件が求められるケースでは、ノーコードだけでは限界があります。このような領域では、ローコード開発や外部支援を組み合わせる判断が必要になります。
両極端なアプローチが失敗する理由
すべてを社内で内製化しようとして人材確保や品質管理で行き詰まる、または逆にすべてを外注して社内にノウハウが残らない、という両極端なアプローチは失敗パターンです。 この考え方は誤りであり、どちらか一方に振り切るのではなく、適切な組み合わせを設計することが重要です。
デジタル人材不足を課題とする企業は68.4%に達しており、すべてを内製化するには人材確保のハードルが高いのが現実です。一方で、すべてを外注すると、ビジネス要件の変化に柔軟に対応できない、ベンダー依存度が高まる、社内にノウハウが蓄積されないといった問題が生じます。
ハイブリッドアプローチの考え方
現実的なアプローチは、上流工程(企画・要件定義)を自社主導にし、下流工程(開発・運用)で複雑な部分は外部支援と組み合わせるハイブリッド型です。
具体的には以下のような役割分担が考えられます。
- 自社で担う領域: 業務課題の特定、要件定義、優先順位付け、ノーコードで対応可能な範囲の開発、運用・改善
- 外部支援を活用する領域: 複雑なシステム連携の設計・実装、フルスクラッチ開発、技術的な課題の解決、ナレッジトランスファー
このアプローチにより、自社にノウハウを蓄積しながら、専門性が必要な領域は効率的に外部支援を活用できます。
業務ツール内製化の進め方とチェックリスト
内製化を成功させるには、小さく始めて段階的に拡大するアプローチが効果的です。PoC(Proof of Concept) とは、本格導入前に概念実証を行う検証段階であり、小規模な試験導入で有効性を確認することを指します。PoCから本格導入への移行が成功のカギとなります。
中小製造業8社が共同でオリジナル生産管理ソフトを導入した事例では、売上高/人+8.6%、労働時間-15.9%、不良率-97%という成果が報告されています(2017-2021年、中小企業白書2025)。ただし、これは特定8社の事例であり、一般化には注意が必要です。
以下のチェックリストで、内製化の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】業務ツール内製化の判断チェックリスト
- 内製化したい業務ツールの対象範囲を明確にしている
- 現状の業務フローを可視化し、課題を特定している
- 内製化の目的(コスト削減・スピード向上・ノウハウ蓄積など)を明確にしている
- ノーコードで対応可能な範囲と外部支援が必要な範囲を切り分けている
- 社内で担当できる人材がいるか確認している
- 市民開発者として育成する候補者を選定している
- ノーコードツールの候補を比較検討している
- 外部支援が必要な領域のパートナー候補を検討している
- PoC(概念実証)の範囲とスケジュールを計画している
- PoCの成功基準を定義している
- 本格導入時の運用体制を想定している
- 既存システムとの連携要件を整理している
- セキュリティ・アクセス権限の要件を確認している
- 予算(初期費用・運用費用)を見積もっている
- 経営層・関係部門の合意を得ている
- 導入後の効果測定方法を決めている
小さく始めて定着させるポイント
内製化を定着させるには、「最初から完璧を目指さない」方針が重要です。入力項目を最小限に絞り、習慣化を優先することで、現場への定着率が高まります。
PoCで小さな成功体験を積み重ね、段階的に対象範囲を拡大していくアプローチが効果的です。最初から大規模なシステムを構築しようとすると、要件の膨張や開発期間の長期化を招きやすくなります。
まとめ|業務ツール内製化は適切な組み合わせで成功させる
本記事では、業務ツール内製化の進め方とノーコード・外部支援の組み合わせ方について解説しました。
要点を整理します。
- 内製化の背景: デジタル人材不足が深刻な中、内製化意欲は高いがギャップがある
- ローコード・ノーコードの活用: 市場は拡大しており、市民開発者の育成がポイント
- 判断基準: シンプルな業務アプリは内製向き、複雑な連携は外部支援向き
- 失敗パターン: すべて内製・すべて外注の両極端は避ける
- 成功のポイント: ハイブリッドアプローチで上流を自社主導、下流で外部支援を活用
- 進め方: PoCから小さく始めて段階的に拡大する
繰り返しになりますが、業務ツールの内製化は、ノーコードで対応可能な範囲は社内で進め、複雑な連携やフルスクラッチ開発が必要な部分は実装まで支援できる外部パートナーと組み合わせることで、コスト効率とスピードを両立できます。
まずは本記事のチェックリストで自社の状況を確認し、内製化の対象範囲と外部支援が必要な領域を整理することから始めてみてください。
