Salesforceフローで業務自動化を成功させるために必要なこと
Salesforceフローは作成手順を覚えるだけでなく、自社の業務プロセスのどこを自動化すべきかを明確にし、運用体制まで設計することで効果を最大化できる——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
フロー(Flow) とは、Salesforceでビジネスプロセスを自動化する処理をまとめた機能です。ノーコードで直感的に作成でき、プログラミング知識がなくても業務の自動化を実現できます。
Salesforceのワークフロールールは2025年12月にサポート廃止開始予定であり、全自動化をフローへ移行することが推奨されています。この背景から、フローの基本を理解し、自社の業務に適用する方法を学ぶことは、Salesforce導入済み企業にとって急務となっています。
しかし、フローの作成手順を学ぶだけでは不十分です。どの業務をどう自動化すべきかという「What」の視点と、作成したフローを適切に管理・運用する体制の設計が成功の鍵となります。
この記事で分かること
- フローの基本定義とフロービルダーの概要
- フローの種類(レコードトリガー、画面、スケジュールトリガー)と使い分け
- フロー作成の基本手順と最新機能(AI生成機能など)
- 業務プロセス視点でのフロー設計と運用のポイント
- フロー乱立を防ぐための管理方法
Salesforceフローとは|定義と基本概念
Salesforceフローは、業務プロセスを自動化するためのノーコードツールです。複雑なビジネスロジックをプログラミングなしで実装でき、Salesforce管理者やビジネスユーザーでも直感的に作成できます。
フロービルダー(Flow Builder) とは、フローを作成・編集するツールです。ドラッグ&ドロップの操作でビジネスプロセスを視覚的に構築でき、コーディングの知識がなくても自動化の仕組みを作ることができます。
フローが従来のワークフロールールと大きく異なる点は、複数の条件分岐、ループ処理、ユーザーとの対話など、より複雑な業務プロセスを自動化できることです。ワークフロールールでは対応できなかった高度な自動化も、フローであれば実現可能です。
フロービルダーの基本操作と構成要素
フロービルダーでは、フロー要素と呼ばれるコンポーネントを組み合わせてフローを構築します。フロー要素は、データ操作・ロジック・ユーザーインタラクションなどの処理を担う部品です。
主なフロー要素には、以下のようなものがあります。
- 要素の追加: 処理のステップを追加(レコード取得、レコード作成、決定など)
- 決定要素: 条件分岐を設定し、異なるパスに処理を分ける
- ループ要素: 複数レコードに対して繰り返し処理を実行
- 画面要素: ユーザーに入力画面を表示して情報を収集
これらの要素をドラッグ&ドロップで配置し、線で接続することでフローを構築します。視覚的に処理の流れを確認できるため、複雑なロジックも把握しやすいのが特徴です。
Salesforceフローの種類と使い分け
Salesforceフローには複数の種類があり、それぞれ異なる用途に適しています。フローを作成する前に、どの種類のフローが自社の業務に適しているかを理解することが重要です。
【比較表】Salesforceフロー種類別比較表
| フロー種類 | 実行タイミング | 主な用途 | 適した業務例 |
|---|---|---|---|
| レコードトリガーフロー | レコード作成・更新・削除時 | リアルタイム自動化 | リードスコア自動計算、承認依頼メール送信、項目の自動入力 |
| 画面フロー | ユーザー操作時 | 対話型入力・ウィザード | リード登録フォーム、複数ステップの承認フロー、データ入力ガイド |
| スケジュールトリガーフロー | 指定日時・定期実行 | バッチ処理・定期タスク | 月次レポート自動生成、休眠リード抽出、定期リマインダー |
| 自動起動フロー | 他のフローやApexから呼び出し | 再利用可能な処理 | 共通処理のモジュール化、サブフローとしての呼び出し |
| プラットフォームイベントトリガーフロー | プラットフォームイベント発生時 | 外部システム連携 | 外部サービスからの通知受信、リアルタイムデータ同期 |
レコードトリガーフロー|リアルタイム自動化に適用
レコードトリガーフローは、レコードの作成・更新・削除時に自動実行されるフローです。リアルタイムで処理が実行されるため、データ入力直後に関連する処理を自動化したい場合に適しています。
活用例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- リードレコード作成時に、条件に基づいてスコアを自動計算
- 商談ステージが更新されたタイミングで、関係者に通知メールを送信
- 取引先の情報が変更された際に、関連する取引先責任者レコードも自動更新
レコードトリガーフローを設計する際は、処理のタイミング(レコード保存前/後)と、処理が他のレコードにも影響するかを考慮する必要があります。
画面フロー・スケジュールトリガーフロー|対話型と定期実行
画面フローは、ユーザーが操作時に画面を表示するタイプのフローです。ウィザード形式の入力フォームや、複数ステップにわたる承認プロセスなど、ユーザーとの対話が必要な処理に適しています。
画面フローの活用例:
- 新規リード登録時に必要情報をステップバイステップで入力するウィザード
- 見積作成時に条件を選択しながら自動計算するフォーム
- 複数の承認者を経由する承認ワークフロー
スケジュールトリガーフローは、指定した日時や定期的に実行されるフローです。バッチ処理や定期レポートの自動化に適しています。
スケジュールトリガーフローの活用例:
- 毎月末にキャンペーン実績を集計してレポートを生成
- 90日間アクションのない休眠リードを抽出してリスト化
- 契約更新日の30日前にリマインダーを自動送信
フロー作成の基本手順と具体例
フローの作成は、フロービルダーを使って直感的に行えます。ここでは基本的な作成手順と、最新機能について解説します。
2025年10月のWinter'26リリースでフローの2バージョン差分比較機能が追加され、バージョン管理が標準化されました。これにより、フローの変更履歴を追跡し、問題が発生した際に以前のバージョンと比較することが容易になっています。
また、Spring'26(2026年リリース)ではAI機能が正式リリースされ、自然言語指示からドラフトフローを自動生成できるようになりました。レコードトリガーフローやスケジュールフローに対応しており、フロー作成の効率化が期待できます。
フロー作成の基本ステップ
フロー作成は以下のステップで進めます。
- フローの種類を選択: 設定画面から「フロー」を選択し、新規作成。業務要件に合ったフロー種類を選択
- 開始要素の設定: トリガー条件(レコードトリガーの場合はオブジェクトと実行タイミング)を設定
- フロー要素の追加: 必要な処理(レコード取得、決定、レコード更新など)を追加
- 条件分岐の設定: 決定要素で条件を設定し、異なるパスに処理を分岐
- テスト実行: デバッグ機能を使って動作確認。入力値を変えて複数パターンをテスト
- 有効化: テスト完了後、フローを有効化して本番環境で動作開始
最新のAI機能を活用する場合は、「自然言語で説明」機能から業務要件を日本語で入力すると、ドラフトフローが自動生成されます。生成されたフローを確認・修正して完成させることで、作成時間を短縮できます。
業務プロセス視点でのフロー設計と運用のポイント
フローを効果的に活用するには、操作方法を覚えるだけでなく、業務プロセス全体を見据えた設計と運用体制の構築が必要です。
よくある失敗パターンとして、フロービルダーの操作方法だけを学んで闇雲にフローを作成し、業務プロセス全体の設計なしに進めた結果、フローが乱立して管理できなくなるケースがあります。これは避けるべきアプローチです。
フローが乱立すると、以下のような問題が発生します。
- 同じ処理を行う重複フローが存在し、メンテナンスコストが増大
- どのフローがどの業務に対応しているか把握できなくなる
- フロー同士の競合により、予期しない動作が発生
- 担当者が異動・退職した際に引き継ぎが困難
これらの問題を防ぐために、フロー作成前に業務プロセスを整理し、計画的に設計することが重要です。
【チェックリスト】フロー作成前チェックリスト
- 自動化したい業務プロセスを明確に定義している
- その業務がフローで自動化すべき対象か確認している(手動のままで良い業務ではないか)
- 使用するフローの種類(レコードトリガー、画面、スケジュールなど)を決定している
- トリガー条件(いつ実行されるか)を明確にしている
- 処理対象のオブジェクトと項目を特定している
- 条件分岐のロジックを整理している
- 既存のフローと処理が重複しないか確認している
- フローの命名規則に従った名前を決めている
- テストケース(正常系・異常系)を洗い出している
- フローの管理者・担当者を決めている
- ドキュメント(フローの目的・処理内容)を作成する予定がある
- 将来の変更・拡張の可能性を考慮している
フロー乱立を防ぐための命名規則と管理方法
フローの命名規則を統一し、管理方法を標準化することで、フロー乱立を防ぐことができます。
命名規則の例:
[オブジェクト名]_[処理内容]_[フロー種類]- 例:
Lead_ScoreCalculation_RecordTrigger(リードスコア計算・レコードトリガーフロー) - 例:
Opportunity_StageNotification_RecordTrigger(商談ステージ通知・レコードトリガーフロー) - 例:
Campaign_MonthlyReport_Schedule(キャンペーン月次レポート・スケジュールフロー)
管理のポイント:
- フローの一覧と目的を管理するドキュメントを作成・維持
- 新規フロー作成時は既存フローとの重複がないか確認するプロセスを設ける
- 定期的にフローの棚卸しを行い、不要なフローを無効化・削除
- フロー作成・変更の権限を適切に制限し、無秩序な作成を防止
まとめ:フロー活用を成功させる業務プロセス設計の重要性
本記事では、Salesforceフローの基本概念から種類の使い分け、作成手順、そして運用のポイントまで解説しました。
記事の要点:
- フローはノーコードで業務自動化を実現できるSalesforceの標準機能
- ワークフロールールは2025年12月にサポート廃止開始予定のため、フローへの移行が必要
- フローの種類(レコードトリガー、画面、スケジュールなど)を業務要件に応じて使い分ける
- 最新のAI機能を活用することで、フロー作成の効率化が可能
- フロー乱立を防ぐには、命名規則の統一と管理体制の整備が重要
Salesforceフローは作成手順を覚えるだけでなく、自社の業務プロセスのどこを自動化すべきかを明確にし、運用体制まで設計することで効果を最大化できます。本記事のチェックリストを活用しながら、計画的にフロー活用を進めていきましょう。なお、Salesforceの機能は年3回のリリースサイクルで頻繁にアップデートされるため、最新情報は公式リリースノートで確認することをおすすめします。
