HR Techインサイドセールスで成果が出ない組織の共通課題
実はHR Tech業界のインサイドセールスで成果を出すには、人事課題の本質を引き出すヒアリング設計と、MA/SFAを活用した再現性のあるプロセス構築が鍵となります。
HR Tech市場は成長を続けています。ある調査によると、日本のHR Tech市場規模は2024年に20億米ドル(約2,800億円)、2033年には39億米ドルへ成長が予測されています(CAGR 6.94%)。また、HR Techクラウド市場は2023年度1,077億円(前年比134.4%)、2024年度見込1,385億円(同128.5%)と報告されています。なお、市場規模予測値は調査機関により差がある点にご注意ください。
この成長市場において、インサイドセールス組織の構築・強化を進める企業は増えています。しかし、「商談化率が上がらない」「組織が属人化してブラックボックス化している」といった課題を抱える企業も少なくありません。
この記事で分かること
- HR Techインサイドセールスの基礎知識(SDR・BDRの役割と違い)
- インサイドセールス組織の立ち上げと体制構築のポイント
- 陥りやすい失敗パターンとその回避方法
- HR Tech業界向けのKPI設計と商談獲得プロセス
- 人事課題を引き出すヒアリング設計の考え方
本記事では、HR Tech業界でインサイドセールス組織を構築・強化するための実践的なガイドを提供します。
HR Techインサイドセールスの基礎|SDR・BDRの役割と違い
インサイドセールスには主にSDRとBDRの2つの役割があり、HR Tech業界では自社の状況に応じた使い分けが重要です。なお、SDR/BDRの役割は企業によって定義が異なる場合があり、ここでは一般的な定義として紹介します。
SDR(Sales Development Representative) とは、インバウンド中心で問い合わせ対応・リード育成を通じて商談化を進める役割です。
BDR(Business Development Representative) とは、アウトバウンド中心で新規開拓やコールドコールによるターゲット企業アプローチを担う役割を指します。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得し、一定の条件を満たした見込み顧客です。SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業がアプローチ可能と判断した、商談化可能性の高い見込み顧客を指します。インサイドセールスの役割は、MQLをSQLへ転換し、営業チームへ引き渡すことにあります。
HubSpot Japanの調査によると、BtoB法人営業組織の31.0%が顧客管理方法を「明確ではない・わからない」と回答しています(2023年度)。このようにリード管理が不明確な状態では、SDR・BDRどちらの役割も十分に機能しにくい傾向があります。
SDRの役割|インバウンドリードの商談化
SDRの主な業務は、Webサイトからの問い合わせや資料請求など、インバウンドで獲得したリードへの対応です。問い合わせに対する迅速な対応(即レス)が商談化率向上に効果的と言われており、リードの温度感が高いうちにアプローチすることが重要です。
SDRに求められるスキルとしては、傾聴力と課題発見力が挙げられます。顧客が抱える人事課題を正確に把握し、適切なソリューションを提案できる能力が必要です。
BDRの役割|アウトバウンドによる新規開拓
BDRの主な業務は、ターゲット企業リストに基づくコールドコールやメールによるアウトバウンドアプローチです。まだ接点のない企業に対してアプローチするため、仮説構築力と粘り強さが求められます。
HR Tech業界では、ターゲット企業の人事課題を仮説立てし、それに基づいた価値提案を行うことが重要です。単なるアポイント獲得ではなく、顧客の課題を引き出す姿勢が成果につながります。
HR Techインサイドセールス組織の立ち上げと体制構築
インサイドセールス組織の立ち上げでは、内製・外注・ハイブリッドの選択肢があり、自社のリソースと目標に応じた体制構築が必要です。
参考事例として、Sales Robotics社はSDR主軸のインサイドセールス16名体制でサービス導入企業5,000社を達成したと報告されています。ただし、成功事例は参考情報であり、再現性は企業の状況により異なります。
以下のチェックリストを活用して、自社の組織立ち上げを進めてください。
【チェックリスト】HR Techインサイドセールス組織立ち上げチェックリスト
- ターゲット顧客(業種・規模・人事課題)を定義した
- リード獲得チャネル(Web、展示会、紹介など)を整理した
- SDR/BDRの役割分担を決定した
- 内製・外注・ハイブリッドの体制を決定した
- 必要な人員数を見積もった
- 採用・育成計画を策定した
- MA(マーケティングオートメーション)ツールを選定した
- SFA/CRMツールを選定した
- リードの定義(MQL/SQL)を明文化した
- リードスコアリングの基準を設計した
- 商談化の定義と基準を明確化した
- KPI(架電数、接続率、商談化率など)を設定した
- 営業チームへの引き渡しルールを定めた
- トークスクリプトを作成した
- ヒアリングシートを準備した
- 定例ミーティングの頻度と内容を決定した
- パフォーマンスレビューの仕組みを構築した
- ナレッジ共有の仕組み(ドキュメント、録音共有など)を整備した
組織体制の選択肢|内製・外注・ハイブリッド
組織体制には内製・外注・ハイブリッドの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
内製のメリットは、自社のプロダクトや顧客に対する深い理解、ノウハウの蓄積、柔軟な対応が可能な点です。一方で、採用・育成コストと時間がかかる点がデメリットとなります。
外注のメリットは、立ち上げスピードの速さと、専門ノウハウの活用が挙げられます。ある調査によると、インサイドセールス外注相場は70〜75万円/人/月(SDR/BDR運用)、テレマーケティングは50万円/人/月〜とされています。ただし、成果連動型など契約形態により大きく変動するため、参考値としてご確認ください。外注のデメリットとしては、自社へのノウハウ蓄積が進みにくい点があります。
ハイブリッド型は、コア業務は内製、補完的な業務は外注という使い分けを行う方法です。自社の状況に応じて、適切なバランスを検討することが重要です。
HR Techインサイドセールスで陥りやすい失敗パターン
架電数・アポ数だけを追うテレアポ型の運用では成果が出ません。これはHR Techインサイドセールスでよくある失敗パターンです。
リードナーチャリングとは、見込み顧客を育成し、購買意欲を高めて商談化につなげるプロセスを指します。テレアポ型運用では、このナーチャリングの視点が欠如しがちです。
前述の通り、BtoB法人営業組織の31.0%が顧客管理方法を「明確ではない・わからない」と回答しています。顧客管理が不明確な状態でインサイドセールスを運用すると、リードの状態把握ができず、適切なアプローチのタイミングを逃してしまいます。
失敗例|架電数を追うテレアポ型運用
よくある失敗パターンとして、以下のような運用が挙げられます。
- 架電数やアポイント数だけをKPIとして追う
- 顧客の人事課題を深掘りせず、表面的なアポ獲得に終始する
- リードの質を評価せず、すべてのリードに同じアプローチをする
- 商談化後のフィードバックを受けず、改善が進まない
このようなテレアポ型運用では、アポイントが取れても商談化率・受注率が上がりません。インサイドセールスの本質は、単なるアポイント獲得ではなく、顧客の課題を引き出し、受注につながる機会を創出することにあります。
属人化・ブラックボックス化も深刻な問題です。特定のメンバーのみが成果を出し、その手法が共有されない状態では、組織としての再現性が確保できません。MA/SFAを活用したプロセスの可視化と、ナレッジ共有の仕組み構築が必要です。
HR Tech業界向けインサイドセールスのKPI設計と商談獲得プロセス
KPI設計では、架電数だけでなく、商談化率や受注貢献度まで含めた指標設計が重要です。以下の表を参考に、自社の状況に応じたKPIを設計してください。
【比較表】HR Tech業界向けインサイドセールスKPI設計例
| KPI項目 | 定義 | 目安・備考 |
|---|---|---|
| 架電数 | 1日あたりの発信コール数 | 活動量の基本指標 |
| 接続率 | 架電数に対する通話成立の割合 | 業界・時間帯により変動 |
| 有効会話率 | 接続のうち、有意義な会話ができた割合 | 課題ヒアリングまで到達した件数 |
| MQL数 | マーケティングから引き渡されたリード数 | インバウンド施策の成果指標 |
| SQL数 | 商談化可能と判断したリード数 | SDR/BDRの成果指標 |
| 商談化率 | SQL数 ÷ アプローチ数 | プロセス効率の指標 |
| 商談貢献金額 | インサイドセールス経由の商談総額 | 売上貢献度の指標 |
| 受注貢献件数 | インサイドセールス経由の受注件数 | 最終成果指標 |
※コンバージョン率の参考として、B2B SaaS(HR Techセグメント)のWebサイト訪問者からトライアル登録は8-12%、トライアルから有料化は19%前後という調査があります。ただし、これは業界平均であり、個社の状況により大きく変動する点にご注意ください。
参考事例として、rakumoは契約社数2,473社、月間契約更新率99%を達成しています。高い継続率は、インサイドセールス段階での適切な顧客選定と課題ヒアリングが寄与していると考えられます。
人事課題を引き出すヒアリング設計のポイント
HR Tech業界のインサイドセールスでは、人事課題の本質を引き出すヒアリング設計が成果を左右します。
ヒアリング設計のポイント
- 顧客の人事部門が抱える課題(採用、育成、評価、労務など)を体系的に把握する
- 課題の背景(組織規模、成長フェーズ、業界特性)を理解する
- 現状の対応方法と、その課題・不満を聞き出す
- 意思決定プロセス(決裁者、予算、導入時期)を確認する
問い合わせに対する迅速な対応も重要です。リードの温度感が高いうちにアプローチすることで、商談化率の向上が期待できます。
また、HR Tech SaaSでは無料トライアルよりも、ROI試算から稟議ドラフト提供まで支援するアプローチが有効と言われています。顧客の社内承認プロセスを支援することで、合意形成を加速させる考え方です。
まとめ|HR Techインサイドセールスで成果を出すために
本記事では、HR Tech業界のインサイドセールス組織構築について、基礎知識から実践的なポイントまで解説しました。
本記事のポイント
- SDRはインバウンド、BDRはアウトバウンドが主な役割。自社の状況に応じた使い分けが重要
- 組織立ち上げでは、チェックリストを活用して抜け漏れを防ぐ
- 架電数だけを追うテレアポ型運用は失敗パターン。顧客の課題を引き出す姿勢が必要
- KPI設計は商談化率・受注貢献度まで含めた指標設計を行う
- 人事課題の本質を引き出すヒアリング設計が成果を左右する
HR Tech業界のインサイドセールスで成果を出すには、人事課題の本質を引き出すヒアリング設計と、MA/SFAを活用した再現性のあるプロセス構築が鍵となります。本記事で紹介したチェックリストとKPI設計例を活用し、自社の組織構築・強化を進めてください。組織の状況に応じた適用を行い、継続的な改善を重ねることで、成果につなげていただければ幸いです。
