CRMツール選定で失敗しないために押さえるべきポイント
CRMツール選定で重要なのは機能や価格の比較だけでなく、自社の営業プロセスとの適合性、MA/SFAとの連携、そして導入後に活用できる運用体制を見据えて選ぶことです。これが本記事の結論です。
CRM(Customer Relationship Management) とは、顧客情報を一元管理し、顧客との良好な関係を構築・維持するための経営手法およびITシステムを指します。営業活動の効率化から顧客満足度向上まで、幅広い効果が期待できるため、多くの企業で導入が進んでいます。
国内CRMアプリケーション市場規模は2023年に2,497億8,600万円で前年比13.4%増と拡大しています(IDC Japan調査)。また、2022〜2027年のCAGRは10.1%、2027年には3,510億7,400万円に達すると予測されています(IDC Japan)。市場の成長に伴い選択肢が増え、「どのツールを選べばよいか分からない」という課題を抱える企業も増えています。
さらに、「以前CRMを導入したが活用できなかった」という経験を持つ企業も多いのではないでしょうか。CRM選定では、機能や価格の比較だけでなく、導入後の活用までを見据えた視点が欠かせません。
この記事で分かること
- CRM・SFA・MAの違いと基本機能の整理
- 主要CRMツールの特徴と選び方の視点
- CRM導入でよくある失敗パターンとその回避方法
- 導入後の活用を見据えた選定ポイントとチェックリスト
CRM・SFA・MAの違いと基本機能を理解する
CRMを選定する前に、CRM・SFA・MAの役割の違いを理解しておくことが重要です。これら3つのシステムは相互に関連しながらも、それぞれ異なる目的を持っています。
SFA(Sales Force Automation) は、営業活動を効率化し、商談開始から受注までのプロセスを管理・可視化する営業支援システムです。商談管理、案件進捗管理、営業日報などの機能を持ち、営業担当者の活動を支援します。
MA(Marketing Automation) は、見込み顧客の獲得・育成・分類を自動化し、商談機会を増やすマーケティング支援システムです。リードスコアリングやメール配信自動化などの機能で、MQL(Marketing Qualified Lead) と呼ばれる営業に引き渡す基準を満たした見込み顧客を育成します。
CRMは顧客情報を一元管理するプラットフォームとして、SFAやMAと連携して活用されることが多いです。BtoB企業では営業起点でCRM/SFAを導入し、マーケティング部門やカスタマーサクセス部門へ活用を広げていく使い方が一般的です。
CRMの基本機能と活用領域
CRMの主要機能は、大きく5つの領域に分類できます。
顧客管理は、顧客の基本情報、取引履歴、コミュニケーション履歴を一元管理する機能です。営業担当者が変わっても顧客情報を引き継げるメリットがあります。
商談管理は、商談の進捗状況、受注確度、予想売上などを管理する機能です。パイプライン管理により、営業活動の可視化が可能になります。
マーケティング支援は、キャンペーン管理やリード管理を行う機能です。MA連携により、マーケティングから営業への引き渡しがスムーズになります。
分析・レポートは、売上分析、顧客分析、営業活動分析などを行う機能です。データに基づく意思決定を支援します。
カスタマーサポートは、問い合わせ管理やFAQ管理を行う機能です。LTV(Life Time Value) と呼ばれる顧客生涯価値の向上に貢献します。
主要CRMツールの比較|特徴と選び方の視点
主要CRMツールの選定にあたっては、市場シェアを参考にしつつ、自社の要件に合った特徴を持つツールを選ぶことが重要です。
IDC Japanの2024年8月発表によると、国内CRMアプリケーション市場ではSalesforceがシェア22.1%で1位を獲得しており、2位との差は15.7ポイントと大きな開きがあります。また、BOXIL調査(導入経験者1,829人対象)によるCRMツール導入シェアは、Salesforce Sales Cloudが38.82%、Sansanが16.13%、eセールスマネージャーが11.21%となっています。
なお、世界市場で見ると、2022年時点でSalesforceが22.1%で首位、2位Microsoftが5.7%、3位Oracleが4.7%となっています(IDCベース)。
シェアの高いツールには実績とエコシステムの充実という強みがありますが、シェアだけで選ぶのは避けるべきです。自社の規模、業種、既存システムとの連携要件に合ったツールを選ぶことが重要です。
【比較表】主要CRMツールの特徴と価格帯
以下の比較表は、CRMツール選定の参考情報としてご活用ください。特定ツールの優劣を示すものではなく、それぞれの特徴を中立的に整理しています。
| ツールタイプ | 主な特徴 | 価格帯(目安) | 向いている企業規模 |
|---|---|---|---|
| グローバル大手型 | 高機能・拡張性が高い、グローバル対応 | 月額1〜2万円超/ユーザー | 中堅〜大企業 |
| 国産SFA一体型 | 営業支援に強い、日本語サポート充実 | 月額数千円〜1万円台/ユーザー | 中小〜中堅企業 |
| 名刺管理連携型 | 名刺情報の自動取込、人脈可視化 | 月額数千円〜/ユーザー | 営業主体の企業 |
| MA一体型 | マーケティング機能が充実 | 月額1万円〜/ユーザー | マーケ重視の企業 |
| 無料・エントリー型 | 基本機能を無料〜低価格で提供 | 無料〜月額数千円/ユーザー | スタートアップ・小規模企業 |
※価格帯は公的統計ではなく、複数ベンダーの公開情報からの目安です。ユーザー数・オプション・カスタマイズにより大きく変動します。
CRM導入でよくある失敗パターンと回避方法
CRM導入で最も多い失敗パターンは、機能の多さや価格の安さだけで選び、導入後に「使いこなせない」「データが入力されない」「MA/SFAと連携できない」状態になってしまうことです。この考え方は誤りです。
海外の調査(CIO調査)によると、中規模企業の約90%がCRMを導入済みとされています。ただし、これは海外データであり、日本市場では導入率が異なる可能性があります。重要なのは、導入率が高いからといってすべての企業でCRMが有効活用されているわけではないという点です。
よくある誤解として、「高機能なCRMを導入すれば業績が上がる」「安いCRMでも機能は同じ」と考えて機能や価格だけで選んでしまうケースがあります。しかし、CRMは運用・定着してこそ効果を発揮するものであり、ツール選定と同時に運用体制を整えなければ形骸化します。
導入後に「使われない」CRMになる原因
CRMが形骸化する典型的な原因を整理します。
運用体制の不備は、最も多い形骸化の原因です。CRM運用の責任者が不明確、入力ルールが統一されていない、活用状況をモニタリングする仕組みがないなどの状態では、徐々に利用率が低下していきます。
要件定義不足も失敗の大きな要因です。自社の営業プロセスを十分に分析せずにツールを選ぶと、「本当に必要な機能がない」「使わない機能ばかり」という事態になります。
データ入力の習慣化失敗は、営業現場でよく起こる問題です。入力が面倒、入力するメリットが感じられない、二重入力が発生するなどの状況では、データが蓄積されず、CRMの価値が発揮されません。
MA/SFAとの連携不備は、データのサイロ化を招きます。CRM・SFA・MAを別々に導入するとデータ連携に課題が生じやすく、「マーケティングと営業で顧客情報が分断される」という問題が発生します。
導入後の活用を見据えたCRM選定のポイント
導入後に活用できるCRMを選ぶためには、機能比較だけでなく、自社の営業プロセスとの適合性、MA/SFA連携、運用体制を見据えた選定が必要です。
営業プロセスとの適合性を確認するには、まず自社の営業フローを可視化します。リード獲得から商談、受注、フォローまでの流れを整理し、CRMで管理すべき情報と管理方法を明確にしてからツールを選定します。
MA/SFA連携は、マーケティングから営業への引き渡しをスムーズにするために重要です。既にMAやSFAを導入している場合は、連携実績のあるCRMを選ぶか、統合プラットフォームを検討します。
運用体制を事前に設計することも欠かせません。CRM運用の責任者、入力ルール、活用状況のモニタリング方法を導入前に決めておくことで、形骸化を防ぎます。
【チェックリスト】CRMツール選定時の確認項目
以下のチェックリストで、CRMツール選定前の準備状況を確認してください。
- CRM導入の目的(顧客管理強化/営業効率化/売上向上等)が明確になっている
- 目的に対応するKPI(商談数/受注率/顧客単価等)が設定されている
- 自社の営業プロセス(リード獲得〜受注〜フォロー)が可視化されている
- CRMで管理すべき顧客情報・商談情報が整理されている
- 必須機能と優先度の低い機能が区別されている
- 既存システム(MA/SFA/基幹システム等)との連携要件が明確になっている
- データ移行の対象と方法が検討されている
- CRM運用の責任者が決まっている
- データ入力のルール(誰が・いつ・何を入力するか)が設計されている
- 営業現場への導入・教育計画がある
- 活用状況をモニタリングする仕組みが検討されている
- 初期費用・月額費用・カスタマイズ費用の予算が確保されている
- ベンダーのサポート体制(導入支援・カスタマーサクセス)を確認している
- トライアル・デモで実際の操作感を確認する予定がある
- 導入後の効果測定方法(いつ・何を計測するか)が決まっている
すべてにチェックが入らなくても導入は可能ですが、チェックが付く項目が少ないほど「導入後に活用できない」リスクが高まります。特に「導入目的の明確化」「運用責任者の決定」「MA/SFA連携要件の整理」は最低限クリアしておくべき条件です。
まとめ:CRM選定は導入後の活用まで見据えて行う
CRMツール選定で成功するためには、機能や価格の比較だけでなく、導入後の活用までを見据えた視点が必要です。
本記事で解説したポイントを振り返ります。
- CRM・SFA・MAの役割の違いを理解し、連携を前提とした選定を行う
- 市場シェアは参考にしつつ、自社の営業プロセスとの適合性を重視する
- 機能や価格だけで選ぶと形骸化するリスクがあることを認識する
- 運用体制(責任者・入力ルール・モニタリング)を導入前に設計する
- チェックリストで選定前の準備状況を確認する
まずは上記のチェックリストで自社の準備状況を確認し、不足している項目から着手してください。CRMツール選定で重要なのは機能や価格の比較だけでなく、自社の営業プロセスとの適合性、MA/SFAとの連携、そして導入後に活用できる運用体制を見据えて選ぶことです。
