顧客データを統合しても活用できない企業が多い理由
自社のMA・SFAと連携させてデータ活用を進めるために必要なのは、ツール選定だけでなく、既存のMA・SFAとのデータ連携設計から運用定着まで一気通貫で取り組むことであり、そのためには実装力を持つ専門家の支援が有効です。
CDP(Customer Data Platform) とは、自社の顧客データを一元的に収集・統合し、顧客単位で管理・活用するためのデータ基盤です。
総務省「通信利用動向調査 2023」によると、従業員100人以上企業のうち営業支援システム(SFA/CRM)利用率は54.5%に達しています。一方で、ビッグデータ分析・活用を実施している企業は18.8%にとどまっています。この数字が示すのは、「ツールを導入しても、データを活用できていない企業が多い」という現実です。
CDPを導入しても、MA・SFAとの連携が不十分では、データが統合されただけで活用に至らないケースが少なくありません。本記事では、CDPの基本から、MA・SFA連携、運用定着までを解説します。
この記事で分かること
- CDPの基本概念と主要機能(収集・統合・分析・活用)
- CDP・DMP・CRMの違いと使い分け
- CDP導入のメリットと活用事例
- CDP導入で失敗するパターンと成功のための確認チェックリスト
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは|基本概念と主要機能
CDPは、複数システムに分散した顧客データを一元的に統合し、マーケティング・営業・カスタマーサクセスが横断的に活用できる状態を作るためのデータ基盤です。
Single Customer View(統合顧客ビュー) とは、複数システムに分散した顧客データを1人の顧客として統合し、一元的に参照できる状態を指します。CDPの主な目的は、このSingle Customer Viewを実現することです。
アイデンティティ解決(名寄せ) とは、メールアドレス・顧客ID・CookieIDなど複数の識別子を同一人物として紐づける処理です。CDPでは、このアイデンティティ解決によって、異なるチャネルで取得したデータを同一顧客として統合します。
1stパーティデータとは、自社が直接収集した顧客データ(Web行動、購買履歴、問い合わせ履歴など)を指します。近年、3rd party cookie規制が進む中で、1stパーティデータの重要性が高まっています。CDPは、この1stパーティデータを最大限に活用するための基盤です。
CDPの主要機能|収集・統合・分析・活用
CDPの機能は大きく4つに分けられます。
1. 収集機能: Webサイト、アプリ、メール、MA、SFA、ECなど複数のチャネル・システムからデータを収集します。APIやコネクタを通じて、リアルタイムまたはバッチでデータを取り込みます。
2. 統合機能: 収集したデータをアイデンティティ解決(名寄せ)により、顧客単位で統合します。メールアドレス、顧客ID、CookieIDなどを紐づけ、Single Customer Viewを構築します。
3. 分析機能: 統合された顧客データを分析し、セグメント作成やスコアリングを行います。「過去30日以内にWebサイトを3回以上訪問した」「特定の製品ページを閲覧した」などの条件でセグメントを切り出せます。
4. 活用機能: 作成したセグメントや分析結果を、MA、SFA、広告配信ツールなど外部システムに連携します。この連携により、パーソナライズされたマーケティング施策を実行できます。
CDP・DMP・CRMの違い|自社に必要なのはどれか
CDP、DMP、CRMはいずれも顧客データを扱うツールですが、目的・データ種類・活用方法が異なります。自社の課題に応じて、どのツールが必要かを見極めることが重要です。
DMP(Data Management Platform) とは、主に3rdパーティの匿名データを扱い、広告ターゲティング・新規獲得を目的としたデータ管理基盤です。CDPが1stパーティの個人特定データを扱うのに対し、DMPは匿名の属性データを扱う点が異なります。
「CRMがあればCDPは不要」という誤解がありますが、これは正しくありません。CRMは営業向けの顧客管理ツールであり、マーケティング・CS横断でのデータ活用には適していません。CDPは、CRM・MA・Webサイト・アプリなど複数システムのデータを統合し、全部門で活用できる状態を作ります。
【比較表】CDP・DMP・CRM比較表
| 項目 | CDP | DMP | CRM |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 顧客データ統合・活用 | 広告ターゲティング | 営業の顧客管理 |
| データ種類 | 1stパーティ(個人特定) | 3rdパーティ(匿名) | 1stパーティ(個人特定) |
| データ粒度 | 顧客単位 | セグメント単位 | 顧客・商談単位 |
| 主な活用部門 | マーケ・営業・CS横断 | マーケ(広告) | 営業 |
| MA連携 | ◎ 前提 | △ 限定的 | ○ 可能 |
| SFA連携 | ◎ 前提 | × 対象外 | ◎ 一体型もあり |
| 広告連携 | ○ 可能 | ◎ 主目的 | △ 限定的 |
3rd party cookie規制が進む中で、DMPの活用は縮小傾向にあり、CDP+1stパーティデータ活用への移行が加速しています。BtoB企業においては、MA・SFAとの連携を前提としたCDP活用が有効なアプローチとなります。
CDP導入のメリットと活用事例
CDP導入の主なメリットは、顧客データの統合による「見える化」と、MA・SFA連携による「施策の高度化」です。ただし、これらのメリットはMA・SFAとの連携があってこそ実現できます。
具体的な活用事例として、人材サービス企業の事例では、CDP導入により新規登録者の面談参加率が33%から約43%(1.3倍)に改善したという報告があります。これは個社事例であり業界平均ではありませんが、CDP活用の効果を示す参考値といえます。
また、CDP連携によるメール開封率・クリック率は1.2〜1.5倍程度の改善が国内BtoB事例で報告されています。これらの効果は、CDPでセグメントを細分化し、パーソナライズされたコンテンツをMAから配信することで実現しています。
BtoB企業におけるCDP活用のポイントは以下の通りです。
- Webサイト行動とMA・SFAデータを統合し、「今アツいアカウント」を可視化
- スコアリングにより営業への引き渡しタイミングを最適化
- メールコンテンツのパーソナライズによる開封率・クリック率向上
- ABM(アカウントベースドマーケティング)との連携
CDP導入で失敗するパターンと成功のための確認事項
よくある失敗パターンとして、「CDPを導入すれば自動的に顧客データが活用できる」と考え、MA・SFAとの連携設計や運用体制構築を後回しにするケースがあります。これは誤りです。 データが統合されただけで活用に至らない企業が多い原因は、ここにあります。
国内MAツール市場は年平均成長率10〜15%で拡大しており(民間調査)、MA・SFAを導入済みの企業は増えています。しかし、CDP・MA・SFAを一気通貫の業務フローとして設計しなければ、どこかでデータが死蔵されることになります。
CDP導入成功のためには、以下の点を事前に確認・設計することが重要です。
- どのシステムのデータをCDPに統合するか(対象システムの洗い出し)
- アイデンティティ解決(名寄せ)のキーとなる識別子は何か
- 統合したデータをどのシステム(MA、SFA、広告)に連携するか
- セグメント・スコアリングのロジックをどう設計するか
- 運用担当者は誰か、部門間の役割分担はどうするか
【チェックリスト】CDP導入前確認チェックリスト
- CDP導入の目的(解決したい課題)が明文化されている
- 統合対象のシステム(MA、SFA、Webサイト、EC等)が洗い出されている
- 各システムのデータ項目・フォーマットが確認されている
- アイデンティティ解決のキー(メールアドレス、顧客ID等)が決まっている
- データの連携方法(API、バッチ等)が確認されている
- CDP→MA・SFAへのデータ連携フローが設計されている
- セグメント・スコアリングのロジックが設計されている
- 作成したセグメントの活用シナリオが具体化されている
- データのクレンジング・正規化ルールが決まっている
- 個人情報保護・プライバシーポリシーの対応が確認されている
- 運用担当者・責任者が決まっている
- マーケティング・営業・IT部門間の役割分担が合意されている
- 導入後の効果測定KPIが設定されている
- ベンダー選定基準が明確になっている
- 導入・運用の予算が確保されている
まとめ:CDPは導入だけでなくMA・SFA連携と運用定着が成功の鍵
本記事では、CDPの基本概念から、MA・SFA連携、導入時の確認事項までを解説しました。
主なポイントを整理すると以下の通りです。
- CDPは顧客データを一元的に収集・統合し、全部門で活用できる状態を作るデータ基盤
- CDP・DMP・CRMは目的・データ種類が異なり、CDPはMA・SFA連携が前提
- 「CDP導入=自動的にデータ活用できる」という考え方は誤り
- 事前の連携設計・運用体制構築が成功の鍵
企業がCDP導入で失敗するパターンの多くは、ツール選定だけに注力し、MA・SFAとの連携設計や運用体制構築を後回しにしたことに起因します。
CDPの導入効果を最大化するには、ツール選定だけでなく、既存のMA・SFAとのデータ連携設計から運用定着まで一気通貫で取り組むことが重要であり、そのためには実装力を持つ専門家の支援が有効です。
まずは自社のデータ連携状況を確認し、本記事のチェックリストを活用して導入準備を進めてみてください。必要に応じて、専門家への相談も検討することをお勧めします。
