ワークフローで稟議を効率化する方法|電子化のメリットと導入手順

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/22

稟議の承認に時間がかかりすぎて、ビジネス機会を逃していませんか?

「稟議書を上司の席に持っていったら不在で承認が遅れた」「紙の稟議書が行方不明になった」「テレワーク中に承認が止まってしまう」——こうした稟議業務の非効率に悩む企業は少なくありません。

ワークフローシステムによる稟議の電子化は、こうした課題を解決する有効な手段です。この記事では、ワークフローで稟議を効率化する方法と導入手順を、B2B企業の実務視点から解説します。

この記事のポイント:

  • 稟議は「承認を得る業務内容」、ワークフローは「手続きの流れ」という違い
  • ワークフローシステム導入で時間・場所を選ばず申請・承認が可能に
  • 承認プロセスの可視化でボトルネック解消、検索性向上で過去の稟議も即座に参照
  • 月額料金は1名あたり300〜500円が相場(従量課金制が一般的)
  • スモールスタートで一部の稟議から電子化を始めるのが現実的

1. ワークフローと稟議の関係とは?電子化が求められる背景

まず、ワークフローと稟議がどのように関係しているのかを理解しましょう。

(1) 紙・メール稟議の3つの課題

従来の紙やメールでの稟議プロセスには、以下のような課題があります。

課題1: 承認に時間がかかる

  • 紙の稟議書を手渡しで回覧するため、承認者が不在だと承認が止まる
  • 複数の承認者を経由する場合、1週間〜数週間かかることも
  • 急ぎの案件でもスピードアップできない

課題2: 進捗が見えない

  • 「今、誰が承認待ちなのか」が分からない
  • 稟議書が行方不明になることがある
  • 滞っている承認を催促するのも手間

課題3: 検索・管理が困難

  • 過去の稟議書を探すのに時間がかかる
  • 紙の保管場所を確保する必要がある
  • 監査対応で過去の稟議を提出するのが大変

これらの課題は、特にテレワーク環境では深刻化します。

(2) テレワーク時代に求められる承認業務の変革

COVID-19によるテレワーク増加で、稟議の電子化が加速しました。

テレワーク環境での課題:

  • 紙の稟議書を承認者に手渡しできない
  • メールでの回覧は誰が承認したか管理が煩雑
  • 承認のためだけに出社するのは非効率

ワークフローシステムによる解決:

  • 時間・場所を選ばず稟議の申請・承認が可能
  • スマートフォンから外出先でも承認できる
  • 進捗をリアルタイムで確認、滞っている承認を自動通知

2025年現在、ワークフローシステムの導入は標準化しつつあり、市場も成熟して選択肢が豊富になっています。

2. 稟議とワークフローの違い|基礎知識を正しく理解する

「稟議」と「ワークフロー」は混同されやすい用語ですが、明確に異なります。

(1) 稟議とは?承認を得る業務の内容を指す

**稟議(りんぎ)**は、起案者の権限だけでは決定できない事柄について、上司や役員から承認を得ることを指します。

稟議の例:

  • 物品購入の稟議(パソコン購入、ソフトウェア契約など)
  • 人事関連の稟議(採用、昇給、異動など)
  • 経費精算の稟議(出張費、交際費など)
  • 契約締結の稟議(取引先との契約、業務委託など)

稟議は「業務の内容」そのものを指し、「何を承認するか」を表します。

(2) ワークフローとは?手続きをどう進めるかの流れ

ワークフローは、業務の一連の流れ、つまり「手続きをどう進めるか」のプロセスを指します。

稟議におけるワークフローの例:

  1. 起案者が稟議書を作成
  2. 直属の上司が承認
  3. 部長が承認
  4. 経理部門が確認
  5. 役員が最終決裁

ワークフローは「手続きの流れ」を表し、「どのような順序で承認を得るか」を定義します。

(3) ワークフローシステム(稟議システム)の役割

ワークフローシステム(または稟議システム電子承認システムとも呼ばれる)は、稟議などの承認プロセスを電子化し、申請から承認、決裁までを効率化するシステムです。

関係性の整理:

  • 稟議: 承認を得る業務の内容(What)
  • ワークフロー: 手続きをどう進めるかの流れ(How)
  • ワークフローシステム: ワークフローを電子化し、稟議プロセスを管理するツール

稟議プロセスはワークフロー内で動作し、ワークフローシステムで稟議業務を効率化し統合管理できます。

3. ワークフローシステムで稟議を電子化する5つのメリット

ワークフローシステム導入による具体的なメリットを見ていきましょう。

(1) 時間・場所を選ばず申請・承認が可能に

従来の紙稟議:

  • 承認者が出張中や不在だと承認が止まる
  • 承認のために出社が必要

ワークフローシステム導入後:

  • パソコンやスマートフォンからいつでも承認可能
  • テレワーク中でも承認業務が滞らない
  • 外出先や移動中でも承認できる

効果の目安: 多くの企業で承認時間が30〜50%短縮されると言われています。

(2) 承認プロセスの可視化でボトルネック解消

従来の紙稟議:

  • 今どこで止まっているか分からない
  • 催促するのも手間

ワークフローシステム導入後:

  • リアルタイムで進捗を確認できる
  • 滞っている承認を自動通知
  • 承認期限を設定し、遅延を防止

具体例:

  • 「部長承認待ち(3日経過)」といった状態が一目で分かる
  • 自動リマインド機能で承認者に通知

(3) 検索性向上で過去の稟議を即座に参照

従来の紙稟議:

  • 過去の稟議書を探すのに時間がかかる
  • 保管場所の確保が必要

ワークフローシステム導入後:

  • キーワード・日付・承認者などで検索可能
  • 類似案件の稟議を即座に参照
  • 監査対応で過去の稟議を瞬時に提出

具体例:

  • 「2024年の〇〇社との契約稟議」を数秒で検索
  • 類似の購入稟議を参照して申請内容を作成

(4) 内部統制の強化とコンプライアンス対応

メリット:

  • 誰がいつ承認したか記録が残る(承認履歴の証跡)
  • 不正な承認や改ざんを防止
  • 監査対応が容易(電子データで提出可能)

具体例:

  • ISO認証の監査で承認記録を提出
  • 内部監査で特定期間の稟議を抽出・分析

(5) ペーパーレス化でコスト削減

削減できるコスト:

  • 紙代・印刷代
  • 保管スペースのコスト
  • 郵送費(複数拠点がある場合)

環境への貢献:

  • SDGs・ESG経営の一環として評価される
  • ペーパーレス化の実績として対外的にアピール可能

4. 稟議ワークフローシステムの導入ステップ|スモールスタートから始める

中小企業でも導入しやすい段階的なアプローチを紹介します。

(1) ステップ1:現状の稟議フローを可視化する

やること:

  • 現在どんな稟議があるか洗い出す(購入稟議、契約稟議、人事稟議など)
  • 各稟議の承認ルートを図にする(誰から誰へ、どの順序で回るか)
  • 承認にかかっている平均日数を測定

ポイント:

  • すべての稟議を一度に電子化しようとしない
  • まずは現状を正確に把握する

(2) ステップ2:電子化する稟議の種類を選定する

優先すべき稟議:

  • 件数が多い稟議(月10件以上発生)
  • 承認に時間がかかっている稟議
  • テレワーク中に支障が出ている稟議

スモールスタートの例:

  • 「まずは物品購入稟議だけ電子化」
  • 「特定の部署だけで試験導入」

(3) ステップ3:システムを選定しトライアルで検証

選定基準(詳細は次章で解説):

  • 複雑な承認フロー(金額による分岐など)に対応できるか
  • 既存システム(ERP・文書管理)と連携できるか
  • スマートフォン対応とUI/UXの使いやすさ
  • 料金体系(1名あたり月額300〜500円が相場)
  • セキュリティと内部統制対応

トライアルでの確認事項:

  • 実際の稟議フローを設定してみる
  • 承認者役・申請者役で操作性を確認
  • スマートフォンでの承認を試す

(4) ステップ4:承認ルートを設定し小規模テスト運用

やること:

  • 選定した稟議の承認ルートをシステムに設定
  • 一部の部署や一部の稟議種類で試験運用(1〜2ヶ月)
  • 使い勝手や問題点をヒアリング

チェックポイント:

  • 承認にかかる日数が短縮されたか
  • ユーザーから使いにくいという声がないか
  • 承認が滞っているケースがないか

(5) ステップ5:全社展開と効果測定

全社展開:

  • 他の稟議種類や他の部署にも展開
  • マニュアル作成と社内研修の実施

効果測定(導入前後で比較):

  • 承認にかかる平均日数
  • 稟議の滞留件数(承認待ちが長期化している件数)
  • 紙の使用量

ROI評価: 多くの企業で6ヶ月〜1年で効果が実感でき、ROIが評価できます。

5. 失敗しない稟議システムの選び方|5つのチェックポイント

システムを慎重に選ばないと「導入後に使いにくい」「効果を実感できない」という問題が発生します。

(1) 複雑な承認フローへの対応力

確認すべきこと:

  • 金額による承認ルートの分岐(例:100万円以上なら役員承認が必要)
  • 条件分岐(例:部署により承認者が変わる)
  • 並列承認(例:複数の部長が同時に承認)
  • 代理承認(例:承認者が不在時に代理者が承認)

注意点: 複雑なフローは無料トライアルで事前検証が必須です。設定できても使いにくい場合があります。

(2) 既存システム(ERP・文書管理)との連携

確認すべきこと:

  • API連携に対応しているか
  • CSV出力・インポートが可能か
  • 既存の文書管理システムやERPとの連携実績があるか

具体例:

  • 稟議で承認された経費をERPに自動連携
  • 契約稟議の承認後、契約書を文書管理システムに保存

注意点: 連携可否は既存システムにより異なるため、導入前にベンダーに確認が必要です。

(3) スマートフォン対応とUI/UXの使いやすさ

確認すべきこと:

  • スマートフォン専用アプリがあるか(ブラウザ版だけだと使いにくい場合も)
  • プッシュ通知で承認依頼が届くか
  • 直感的に操作できるか(ITリテラシーが低い社員でも使えるか)

使いやすさの目安:

  • 承認ボタンが大きく分かりやすい
  • 稟議内容が一目で把握できる
  • 申請フォームが簡潔

(4) 料金体系(1名あたり月額300〜500円が相場)

一般的な料金体系:

  • 従量課金制: ユーザー数に応じて月額料金が変動(1名あたり300〜500円)
  • 初期費用: 無料〜数十万円(システムにより幅がある)
  • オプション費用: カスタマイズ、サポート、外部連携などで追加費用

注意点:

  • 最低利用ユーザー数が設定されている場合がある(例:最低10名から)
  • 年間契約で割引がある場合も
  • 無料プランがあるシステムもあるが、機能制限に注意

コスト試算例(従業員50名の場合):

  • 月額料金:300円 × 50名 = 15,000円/月
  • 年間コスト:15,000円 × 12ヶ月 = 180,000円/年
  • 初期費用:50,000円(システムによる)

(5) セキュリティと内部統制対応

確認すべきこと:

  • データの暗号化(通信・保存)
  • アクセス権限管理(誰がどのデータにアクセスできるか)
  • 承認履歴の改ざん防止(タイムスタンプ、電子署名)
  • バックアップ体制

内部統制対応:

  • ISO認証、SOC2認証などの取得状況
  • 監査ログの出力機能
  • 二要素認証(2FA)の対応

6. まとめ|稟議の電子化で承認業務を効率化しよう

ワークフローシステムによる稟議の電子化は、承認業務の効率化だけでなく、内部統制の強化やテレワーク対応にも有効です。

重要なポイント:

  • 稟議は「承認を得る業務内容」、ワークフローは「手続きの流れ」
  • ワークフローシステム導入で時間・場所を選ばず申請・承認が可能に
  • 月額料金は1名あたり300〜500円が相場(従量課金制が一般的)
  • スモールスタート(一部の稟議から電子化)が成功の鍵
  • 複雑な承認フロー、既存システム連携、スマホ対応を事前確認

次のアクション:

  • 現状の稟議フローを可視化し、課題を洗い出す
  • 電子化する稟議の種類を選定する(件数が多い稟議を優先)
  • 3〜5社のワークフローシステムを比較し、無料トライアルで検証
  • 小規模テスト運用で効果を確認してから全社展開
  • 導入前後で承認日数・滞留件数を測定し、ROIを評価(6ヶ月〜1年)

稟議の電子化で承認業務を効率化し、ビジネススピードの向上と内部統制の強化を実現しましょう。

※この記事は2025年11月時点の情報です。ワークフローシステムの機能や料金は各ベンダーにより異なり、頻繁に更新されるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q1ワークフローシステムの導入コストはどれくらい?

A1月額料金は1名あたり300〜500円が相場で、ユーザー数に応じた従量課金制が一般的です。初期費用は無料〜数十万円とシステムにより幅があります。まずは無料トライアルで使い勝手を確認するのがおすすめです。

Q2小規模企業でもワークフローシステムは必要?

A2従業員10名以上で稟議が月10件以上発生するなら効果があります。テレワーク導入企業なら規模を問わず検討価値が高いです。スモールスタートで一部の稟議から電子化を始めるのが現実的です。

Q3導入後の効果測定はどうすればいい?

A3承認にかかる平均日数、稟議の滞留件数、紙の使用量を導入前後で比較します。多くの企業で承認時間が30〜50%短縮されます。ROIは6ヶ月〜1年で評価するのが一般的です。

Q4複雑な承認ルート(金額による分岐など)にも対応できる?

A4多くのワークフローシステムが条件分岐機能を提供しています。金額や部署により自動で承認ルートが変わる設定が可能です。ただし複雑なフローは無料トライアルで事前検証が必須です。

Q5既存のERPや文書管理システムと連携できる?

A5API連携やCSV出力に対応するシステムが多いです。ただし連携可否は既存システムにより異なるため、導入前にベンダーに確認が必要です。連携実績を確認するのが安全です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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