ワークフローデザインとは?設計手法・可視化ツール・改善ステップを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/17

業務プロセス可視化における課題とワークフローデザインの必要性

「申請書がどこで止まっているか分からない」「承認待ちで業務が遅延する」といった課題を抱えているB2B企業は少なくありません。業務プロセスがブラックボックス化すると、ボトルネックの発見が困難になり、業務効率が低下します。

ワークフローデザインは、こうした課題を解決するための重要な手法です。業務の流れを可視化し、プロセスを最適化することで、承認リードタイムの短縮やペーパーレス化を実現できます。

この記事では、ワークフローデザインの基礎知識から設計手法、可視化ツールの活用、改善ステップまでを体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • ワークフローとは業務の流れを可視化したもので、4つのパターン(直線型・指名型・条件分岐型・合議型)がある
  • ワークフロー設計の基本は、①目的設定、②関係者特定、③タスク分解の3ステップ
  • 業務フロー図の作成により、進捗の一目把握とボトルネック発見が可能になる
  • ワークフローシステムは企業規模や業務特性に応じて5つのタイプから選定する
  • ワークフロー改善の効果として、承認リードタイム20%削減や業務効率30%改善の事例がある

ワークフローデザインの基礎知識

(1) ワークフローとは何か(業務の流れ・プロセスの可視化)

ワークフローとは、「業務の流れ」または「一連の業務プロセスを可視化したもの」を指します。申請・承認・決裁などのプロセスを含み、業務効率化の重要な要素となります。

業務フロー図として可視化することで、関係者全員が現在の状況を理解でき、進捗を一目で把握できるようになります。

(2) 4つのワークフローパターン(直線型・指名型・条件分岐型・合議型)

ワークフローには、業務の性質に応じて4つのパターンがあります:

直線型: 順次、承認者を通過するシンプルなワークフロー。経費申請や休暇申請など、定型的な業務に適しています。

指名型: 申請者が承認者を指名できるワークフロー。プロジェクトごとに承認者が変わる場合などに活用されます。

条件分岐型: 条件に応じて異なる承認ルートに分岐するワークフロー。金額や案件種別によって承認者が変わる場合に有効です。

合議型: 複数の承認者が同時に承認するワークフロー。部門横断的な意思決定が必要な案件に適しています。

(3) ワークフローシステムの役割(デジタル化・自動化)

ワークフローシステムは、企業のワークフローをデジタル化し、プロセスを自動化して紙文書を排除するシステムです。

主な役割は以下の通りです:

  • 申請書のデジタル化
  • 承認フローの自動化
  • 紙文書の排除
  • 承認遅延・確認漏れ・書類紛失の防止

クラウド型ワークフローシステムは初期費用無料で、1ユーザーあたり月額250円ほどから利用可能となり、中小企業でも導入しやすくなっています。

(4) B2B企業での活用意義

B2Bデジタルプロダクト企業では、見積承認、契約書承認、開発タスク管理など、多様な業務プロセスが存在します。これらを可視化・標準化することで、業務効率化と内部統制強化を同時に実現できます。

ワークフロー設計の具体的手法

(1) 設計の基本3ステップ(目的設定・関係者特定・タスク分解)

ワークフロー設計の基本ステップは以下の3つです:

①明確な目的設定: ペーパーレス化、承認リードタイム短縮、内部統制強化など、何を実現したいのかを明確にします。

②関係者とその役割・タスクの特定: 誰がどのタスクを担当するのかを整理します。

③業務の分解と整理: 業務を細分化し、各ステップでの処理内容を明確にします。

(2) 目的の明確化(ペーパーレス・承認リードタイム短縮・内部統制強化)

ワークフロー設計の目的は、企業によって異なります:

ペーパーレス化によるコスト削減: 印刷費用、保管スペース、検索時間の削減が期待できます。

承認プロセスのリードタイム短縮: 申請から承認までの時間を短縮し、業務スピードを向上させます。

内部統制の強化: 承認履歴の記録、監査証跡の確保により、コンプライアンスを強化できます。

(3) 関係者とその役割・タスクの特定

業務プロセスに関わる全ての関係者を洗い出し、それぞれの役割とタスクを特定します。

例えば、経費申請のワークフローでは:

  • 申請者: 経費申請書の作成・提出
  • 直属上司: 内容確認・一次承認
  • 経理部: 規程確認・二次承認
  • 経理責任者: 最終承認・支払処理

といった形で、役割とタスクを明確化します。

(4) 業務の分解と整理

業務を細分化し、各ステップでの処理内容を整理します。

業務の流れを時系列で整理:

  1. 申請書作成
  2. 添付書類準備
  3. 上司承認依頼
  4. 上司承認
  5. 経理部承認依頼
  6. 経理部承認
  7. 支払処理

各ステップで必要な情報、判断基準、所要時間を明確にすることが重要です。

(5) As-Is/To-Be分析

As-Is分析: 現状の業務フローを可視化し、ボトルネックや非効率なプロセスを発見します。

To-Be設計: 理想的な業務フローを設計し、改善点を具体化します。

この分析により、無意味な二重チェックや不要な承認段階を排除できます。ただし、重要事項については必要な二重チェックを維持することが重要です。

業務フロー図の作成と可視化

(1) 業務フロー図の書き方(縦軸に担当者、横軸に時間)

業務フロー図の一般的な書き方は以下の通りです:

縦軸: 担当者・部門を配置 横軸: 時間の流れを配置 記号: プロセス(四角)、判断(菱形)、開始/終了(楕円)を使用

この形式により、誰がどのタイミングで何をするのかが一目で分かります。

(2) BPMN記法の基本要素

BPMN(Business Process Model and Notation)は、業務プロセスを標準的な記法で表現する方法です。

基本要素:

  • イベント(開始・終了)
  • アクティビティ(タスク・処理)
  • ゲートウェイ(分岐・合流)
  • フロー(矢印)

BPMN記法を使用することで、関係者間での共通理解が容易になります。

(3) 可視化ツールの活用(Miro・Lucidchart・Excel等)

業務フロー図の作成には、さまざまなツールが活用できます:

Miro: オンラインホワイトボードツール。リアルタイム共同編集が可能で、テンプレートも豊富です。

Lucidchart: 専門的なフローチャート作成ツール。BPMN記法にも対応し、詳細な業務プロセスを表現できます。

Excel: 簡易的なフロー図作成に活用できます。図形機能を使って基本的なワークフロー図を作成できます。

ツール選定時は、企業規模、予算、必要な機能(共同編集、テンプレート、エクスポート形式等)を考慮して選ぶことが推奨されます。

(4) 可視化のメリット(進捗把握・ボトルネック発見・標準化)

ワークフローを可視化することで、以下のメリットが得られます:

進捗の一目把握: 申請がどの段階にあるのかが瞬時に分かります。

ボトルネックの発見: 承認遅延が発生している箇所を特定できます。

業務の標準化: 担当者が変わっても、同じ品質で業務を実行できます。

非効率の削減: 成功事例では、業務処理時間20%削減や業務効率30%改善などが報告されています。

(5) UI/UXデザインワークフロー(ISO 9241-210人間中心設計)

デジタルプロダクトのワークフローデザインでは、ISO 9241-210に基づく人間中心設計(HCD)プロセスが重要です。

人間中心設計の原則:

  • ユーザーのニーズと要求の理解
  • ユーザーとタスクの明確化
  • ユーザー参加による設計
  • 反復的な設計と評価

テンプレート化された文書を活用することで、誤りを防ぎ、品質を担保できます。2024年6月版のベイジの業務システムUIデザインワークフローでは、100のタスクを体系的に解説しており、実務担当者の参考になります。

ワークフローシステムの選定と活用

(1) ワークフローシステムの5つのタイプ

ワークフローシステムは、企業規模や業務特性に応じて5つのタイプに分類されます:

中小企業向け: 初期費用無料、月額数千円〜数万円。基本的な承認機能を提供。

中堅・大企業向け: 月額数十万円〜。高度な承認フロー、API連携、監査証跡機能を提供。

Excelフォーム型: 既存のExcel資産を活用できるタイプ。導入ハードルが低い。

バックオフィス一体型: 会計・人事・経費精算などのバックオフィス業務を統合管理。

グループウェア一体型: メール・スケジュール・ファイル共有とワークフローを統合。

(2) 選定の3つの軸(機能・コスト・使いやすさ)

ワークフローシステム選定時は、以下の3つの軸で評価します:

機能: 必要な機能(Excel資産流用、スマホ承認、外部連携、電帳法対応、API自動化等)が揃っているか確認します。

コスト: 初期費用、月額費用、ユーザー課金体系を比較します。中小企業では月額数万円、大企業では月額数十万円が一般的です。

使いやすさ: 従業員が直感的に操作できるか、UIが複雑でないか、動作スピードが軽いかを評価します。

(3) 確認すべき機能

ワークフローシステム導入時に確認すべき機能は以下の通りです:

Excel資産の流用: 既存のExcelフォームをそのまま使えるか スマホ即承認: 外出先でもスマホから承認できるか 外部連携: Google Workspace、Microsoft 365、チャットツール、電子契約サービスとの連携が可能か 電帳法対応: 電子帳簿保存法のログ要件、検索要件を満たすか 監査証跡: 承認履歴を記録し、監査に対応できるか SAML/IP制限: セキュリティ要件を満たすか API自動化: 他システムとの自動連携が可能か 電子署名・タイムスタンプ: 法的証拠力を担保できるか

これらの機能は、無料トライアルで実際に使用して確認することが推奨されます。

(4) 無料トライアルでの事前検証

従業員が直感的に操作できるか、UIが複雑でないか、動作スピードが軽いかは、実際に使用しないと判断できません。

無料トライアル期間中に以下を検証します:

  • 実際の業務で運用してみる
  • 複数の従業員に操作してもらい、フィードバックを収集する
  • ボトルネックや使いにくい点を洗い出す
  • サポート体制(日本語対応、レスポンス速度)を確認する

(5) ワークフロー改善のポイント(承認プロセス最適化・二重チェック見直し)

ワークフローシステムを導入しただけでは、業務効率化は実現しません。以下のポイントで改善を進めます:

承認プロセスと承認者数の適正化: 不要な承認段階を排除し、必要最小限の承認ルートに簡素化します。

無意味な二重チェックの排除: 形式的な二重チェックは排除しますが、重要事項(高額案件、法務確認等)については必要な二重チェックを維持します。

変更管理とコミュニケーション: ワークフロー改善は現場の業務に影響するため、関係者とのコミュニケーションと変更管理が成功の鍵となります。

まとめ:効果的なワークフローデザインのポイント

ワークフローデザインは、業務プロセスを可視化し、効率化を実現する重要な手法です。

重要なポイント:

  • ワークフロー設計は、明確な目的設定から始める
  • 業務フロー図で可視化し、ボトルネックを発見する
  • ワークフローシステムは企業規模と業務特性に応じて選定する
  • 無料トライアルで実際に運用してから導入判断する
  • 承認プロセスの最適化と二重チェックの見直しで効果を最大化する

次のアクション:

  • 自社の業務プロセスを洗い出し、As-Isフローを作成する
  • ボトルネックと非効率なプロセスを特定する
  • ワークフローシステムの無料トライアルを3〜5社で試す
  • 関係者と改善案を協議し、To-Beフローを設計する
  • 効果測定指標(承認リードタイム、ペーパーレス化率、業務処理時間)を設定する

※ワークフローシステムの機能や料金は更新される可能性があるため、最新情報は各社公式サイトをご確認ください。(この記事は2024年時点の情報です)

よくある質問

Q1ワークフローデザインはどこから始めればいい?

A1まず明確な目的設定(ペーパーレス化、承認リードタイム短縮、内部統制強化等)から開始してください。次に関係者とタスクを特定し、現状のAs-Is業務フローを可視化します。ボトルネックを発見してからTo-Be設計に進むことが推奨されます。

Q2ワークフローシステムの選定基準は?

A2①機能(Excel資産流用・スマホ承認・外部連携・電帳法対応・API自動化等)、②コスト(初期費用・月額・ユーザー課金)、③使いやすさ(直感的なUI・動作速度)の3軸で評価します。無料トライアルで実際に運用してから導入判断することが推奨されます。

Q3ワークフロー改善の効果測定方法は?

A3承認リードタイム(申請から承認までの日数)、ペーパーレス化率(紙文書削減割合)、業務処理時間(削減時間)、承認遅延・確認漏れ件数、従業員満足度を測定します。成功事例では20%削減、30%効率改善などが報告されています。

Q4ワークフロー改善でよくある失敗は?

A4目的が不明確なまま導入、現場の意見を聞かずにトップダウンで導入、無意味な承認段階を残す、システムが複雑で操作しづらい、変更管理とコミュニケーション不足などがあります。事前の業務可視化と関係者合意形成が重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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