Salesforceという名前は聞いたことがあるけれど...
「Salesforceって何ができるの?」「CRMとどう違うの?」「導入にいくらかかるの?」——B2Bデジタルプロダクト企業の営業・マーケティング担当者の多くが、Salesforceという名前は知っていても、具体的な機能や導入コストのイメージが掴めていません。
Salesforceは世界シェアNo.1のCRMプラットフォームですが、機能が豊富すぎて初心者には複雑に感じられるのも事実です。また、料金体系や導入時の注意点を理解しないまま契約すると、費用対効果が見合わない場合もあります。
この記事では、Salesforceの基本概念、主要機能、導入メリット・デメリット、料金体系、他CRMとの比較を初心者向けに解説します。
この記事のポイント:
- Salesforceは世界シェアNo.1のクラウドベースCRM(10万社以上が導入)
- Sales Cloud・Marketing Cloud・Service Cloudなど営業・マーケ・CSの各分野に特化したプロダクトを提供
- クラウドサービスのため初期投資不要、インターネット環境があればどこでも利用可能
- 料金は年間契約必須で月額9,000〜36,000円/ユーザー(税抜)、ユーザー数増加でコスト増大
- 中小企業には機能が過剰な場合があり、HubSpot・Zoho等の軽量CRMも検討すべき
1. Salesforceとは:世界シェアNo.1のCRMプラットフォーム
(1) Salesforce.com(企業名)とSalesforce(製品名)
Salesforceという言葉は、以下の2つの意味で使われます:
- Salesforce.com(企業名): アメリカのクラウドソフトウェア企業。1999年創業、CRM領域で世界トップシェアを持つ
- Salesforce(製品名): 同社が提供する世界最大のクラウドベースCRMソフトウェア「Salesforce Customer 360」
通常は製品名として使われることが多く、「Salesforceを導入する」と言えば、このCRMソフトウェアを契約・利用することを指します。
(2) CRM市場におけるシェアと導入実績(世界10万社以上)
SalesforceはCRM領域で世界・日本ともに第一位のシェアを誇り、世界の導入企業は10万社以上、日本でも15万社以上の導入実績があります(2025年時点)。
主な導入企業例:
- 小売業(オイシックス・ラ・大地等)
- 金融サービス
- 消費財メーカー
- IT・テクノロジー企業
この圧倒的なシェアは、豊富な機能・高いカスタマイズ性・エコシステムの充実によるものです。
2. Salesforceの基礎知識(定義・製品体系・主要機能)
(1) Salesforceの定義(クラウドベースCRM)
Salesforceは、クラウドベースのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)ソフトウェアです。
CRMとは: 顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサービスの効率化を図るシステムです。顧客の基本情報、商談履歴、問い合わせ対応記録などを統合的に管理します。
クラウドベースの利点:
- ハードウェアやサーバーなどの初期投資が不要
- インターネット環境さえあればいつでもどこでも利用可能
- ソフトウェアのアップデートや保守はSalesforce側が実施
(2) 主要プロダクト(Sales Cloud・Marketing Cloud・Service Cloud)
Salesforceは、営業・マーケティング・カスタマーサービスの各分野に特化したプロダクトを提供しています:
Sales Cloud(営業支援・CRM):
- 顧客情報・商談管理
- 営業活動の記録・分析
- 売上予測レポート
Marketing Cloud(BtoC向けマーケティング):
- メールマーケティング
- SNS広告連携
- リード獲得・育成
Service Cloud(カスタマーサービス):
- 問い合わせ管理
- チャット・メール対応
- ナレッジベース構築
各プロダクトは単体で利用することも、統合して利用することも可能です。
(3) SFA・CRM・MA機能の統合
SalesforceはCRMとしてだけでなく、SFA(営業支援)やMA(マーケティングオートメーション)の機能も統合されており、部門横断でのデータ活用が可能です。
SFA(Sales Force Automation): 営業活動の記録・管理・分析を自動化し、営業効率を向上させるツール
MA(Marketing Automation): リード獲得・育成・スコアリングなどのマーケティング活動を自動化するツール
営業部門がSales Cloudで管理している顧客情報を、マーケティング部門がMarketing Cloudで活用する、といった連携が実現します。
(4) 2025年の最新トレンド(Agentforce・AIエージェント)
2025年はAIエージェント「Agentforce」が最大のトピックです。
Agentforce: Salesforceが2025年に発表したAIエージェントプラットフォーム。AIを単なる自動化ツールではなく、判断・行動できる自律的なチームメイトとして組織に組み込む構想(「Agentic Enterprise」)
主なイベント:
- Dreamforce 2025(10月14-16日、サンフランシスコ)で「Agentic Enterprise」構想を発表
- Agentforce World Tour Tokyo(11月20-21日)で「Agentforce 360プラットフォーム」を発表
- Agent Script機能が2025年12月にベータリリース予定
ただし、この機能は2025年12月時点でベータ版であり、正式版とは仕様が異なる可能性があることに注意してください。
3. Salesforceの導入メリット
(1) クラウドサービスによる初期投資削減と柔軟なアクセス
クラウドサービスのため、以下のメリットがあります:
- 初期投資不要: ハードウェア購入・サーバー構築が不要
- 柔軟なアクセス: インターネット環境があればどこでも利用可能(テレワーク対応)
- 自動アップデート: ソフトウェアのアップデートや保守はSalesforce側が実施
(2) 営業データの集約・一元管理・分析・可視化
日々の営業活動で収集したデータを集約・一元管理し、それらを分析・可視化して活用できることが最大の強みです。
具体的な機能:
- 顧客情報・商談履歴の一元管理
- 売上予測レポートの自動生成
- ダッシュボードでの視覚的なデータ分析
(3) 部門横断でのデータ活用(営業・マーケ・CS連携)
営業・マーケティング・カスタマーサービスの各部門が同じプラットフォームでデータを共有することで、以下が実現します:
- マーケティング部門が獲得したリードを営業部門がフォロー
- 営業部門が受注した顧客をカスタマーサービス部門が継続サポート
- 各部門の活動を統合的に分析し、ボトルネックを特定
(4) 豊富な機能とカスタマイズ性
導入規模や用途に応じてエディションを選択可能で、以下のように幅広いニーズに対応できます:
- Professional版: 中小企業向けの包括的CRM
- Enterprise版: 細かいカスタマイズが可能(ワークフロー自動化、高度なレポート等)
- Unlimited版: 無制限のCRM機能とサポート
4. 導入時の注意点(コスト・複雑性・運用体制)
(1) 料金体系(年間契約必須、月額9,000〜36,000円/ユーザー)
Salesforceの料金は年間契約が必須で、月額料金は1ユーザーあたり9,000円〜36,000円(税抜)と幅広くなっています。
Sales Cloudの料金プラン(2025年時点):
- Lightning Professional: 月額9,000円/ユーザー(包括的なCRM)
- Lightning Enterprise: 月額18,000円/ユーザー(細かいカスタマイズ可能)
- Lightning Unlimited: 月額36,000円/ユーザー(無制限のCRM機能とサポート)
※最新の料金は公式サイトでご確認ください(価格は変更される場合があります)
(2) ユーザー数増加に伴うコスト増大
利用ユーザー数が増えると費用が膨らむため、事前に費用対効果を検証する必要があります。
コスト試算例(Professional版、月額9,000円/ユーザーの場合):
- 10ユーザー: 月額9万円 → 年間108万円
- 50ユーザー: 月額45万円 → 年間540万円
- 100ユーザー: 月額90万円 → 年間1,080万円
(3) カスタマイズに専門知識が必要
カスタマイズ性が高い反面、導入・設定には専門知識が必要な場合があり、初期の導入支援やトレーニングコストを考慮すべきです。
追加コストの例:
- 導入支援コンサルティング
- カスタマイズ・設定代行
- 社内向けトレーニング
(4) 機能の豊富さゆえの初期の使いこなしにくさ
機能が豊富すぎて、最初は使いこなせない可能性があります。段階的な導入と社内教育が重要です。
推奨アプローチ:
- まずは基本機能(顧客情報管理、商談管理)のみ導入
- 運用に慣れてから高度な機能(ワークフロー自動化、レポート等)を追加
- 社内でSalesforce担当者を設置し、継続的に社内教育を実施
5. 他CRMとの比較と選定のポイント
(1) 企業規模別の向き・不向き
Salesforceは機能が豊富で大企業向けですが、中小企業には過剰な場合があります:
大企業(従業員500名以上)向け:
- Salesforce(機能豊富、カスタマイズ性高、コスト高)
- Microsoft Dynamics 365(Officeとの統合性高)
中堅企業(従業員50-500名)向け:
- Salesforce Professional版
- HubSpot CRM(無料版〜、使いやすさ重視)
小規模企業(従業員50名以下)向け:
- HubSpot CRM(無料版あり)
- Zoho CRM(低コスト、軽量)
(2) HubSpot・Microsoft Dynamics・Zoho等との公平な比較
主要CRMの特徴を公平に比較します:
Salesforce:
- メリット: 機能豊富、高いカスタマイズ性、世界最大シェア
- デメリット: 高コスト、複雑性、初期設定に専門知識が必要
HubSpot CRM:
- メリット: 無料版あり、使いやすさ重視、マーケティング機能が強い
- デメリット: 高度なカスタマイズは有料プランが必要
Microsoft Dynamics 365:
- メリット: Office製品との統合性高、大企業向け
- デメリット: 複雑性、Salesforceと同等の高コスト
Zoho CRM:
- メリット: 低コスト、軽量、中小企業向け
- デメリット: 機能はSalesforceより限定的
(3) 費用対効果の検証ポイント
CRM導入の費用対効果は、以下で評価します:
効果指標:
- 営業効率化(商談管理の時間削減)
- リード管理の改善(リード→受注への転換率向上)
- 部門間連携の円滑化
費用:
- 年間ライセンス料
- 導入支援コスト
- トレーニングコスト
中小企業では、予算月50万円以下・従業員50名以下なら、まずHubSpot CRMの無料版やZoho CRMで試し、必要に応じてSalesforceに移行するアプローチも検討すべきです。
6. まとめ:企業規模・予算に応じた選定基準
Salesforceは世界シェアNo.1のCRMプラットフォームで、営業・マーケティング・カスタマーサービスを統合的に管理できる豊富な機能を持ちます。クラウドサービスのため初期投資不要、柔軟なアクセスが可能です。
一方で、年間契約必須で月額9,000〜36,000円/ユーザーとコストが高く、ユーザー数増加に伴い費用が膨らみます。機能が豊富すぎて初期は使いこなせない可能性もあるため、段階的な導入が推奨されます。
次のアクション:
- 自社の企業規模・予算を整理する(従業員数、CRM予算)
- Salesforce、HubSpot、Zohoの公式サイトで料金を比較する
- 無料トライアルで実際に操作性を試す(HubSpot CRMは無料版あり)
- 導入実績のある同業種企業の事例を参考にする
企業規模・予算に応じて最適なCRMを選定し、営業・マーケティング活動の効率化を実現しましょう。
※この記事は2025年12月時点の情報です。料金プランや機能は頻繁に更新されるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
