SaaSとは?クラウドサービスの基礎知識と導入メリットを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/22

SaaSとは|なぜ注目されているのか

「クラウドサービスを導入したいけれど、SaaSって何?」「SaaSとPaaSやIaaSの違いが分からない」——企業の情報システム担当者や経営企画担当者の多くが、こうした疑問を抱えています。

SaaS(Software as a Service、サース)とは、インターネット経由で提供されるクラウド型ソフトウェアサービスのことです。従来のようにパッケージソフトを購入してインストールする必要はなく、インターネット環境があればすぐに利用を開始できます。総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、日本企業のクラウドサービス利用率は68.7%に達し、そのうち87.1%が効果を実感しているという調査結果が出ています。

SaaS市場は急速に拡大しており、2024年の日本SaaS市場は1.4兆円規模、2027年には2兆円を超える見込みです(CAGR 11%)。業務システム(ERP、会計、人事給与)の成長率は特に高く、年平均成長率15.5%と非常に高い水準を記録しています。この記事では、SaaSの基礎知識から導入メリット・デメリット、PaaS・IaaS・オンプレミスとの違い、選定ポイントまで、実務担当者向けに解説します。

この記事のポイント:

  • SaaSはインターネット経由で提供されるクラウド型ソフトウェアで、インストール不要・即利用可能
  • サブスクリプションモデル(月額・年額定額)で初期投資を抑え、導入スピードが速い
  • PaaS・IaaSと比べ完成したソフトウェアを提供するため、運用負荷が最も低い
  • カスタマイズ制約とセキュリティ対策の確認が導入時の重要ポイント
  • 日本企業のクラウド利用率68.7%、効果実感87.1%と高い満足度

SaaSの基礎知識

(1) SaaSの定義と仕組み

SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由でソフトウェアを提供するクラウドサービスの一形態です。以下の特徴があります。

SaaSの基本特徴:

インストール不要: Webブラウザやアプリからアクセスするだけで利用開始。社内サーバーへのインストールや設定作業が不要です。

サブスクリプションモデル: 月額または年額の定額料金を支払う課金方式が一般的。初期投資を抑え、必要な期間だけ利用できます。

マルチテナント: 複数の企業(顧客)が同一のアプリケーション環境を共有する仕組み。ベンダー側で一括管理されるため、個別の保守運用が不要です。

自動アップデート: システムのバージョンアップやメンテナンスはベンダー側が自動的に実施。利用者は常に最新バージョンを使えます。

マルチデバイス対応: 場所や時間を問わず、PC・タブレット・スマートフォンなど様々なデバイスからアクセス可能。リモートワークに最適です。

(2) 代表的なSaaSサービス例(CRM・ERP・会計・人事給与)

SaaSは幅広い業務領域で活用されています。主要な領域と代表的なサービス例を紹介します。

CRM(顧客関係管理):

  • Salesforce: 世界最大手のCRM、営業支援・顧客管理
  • HubSpot: マーケティング・営業・カスタマーサービスを統合
  • Zoho CRM: 中小企業向け、低価格で導入しやすい

ERP(統合基幹業務システム):

  • SAP S/4HANA Cloud: 大企業向け統合ERP
  • Oracle NetSuite: 中堅企業向けクラウドERP
  • freee会計: 中小企業向けクラウド会計・ERPパッケージ

会計・経理:

  • freee会計: クラウド会計ソフト、請求書・経費精算連携
  • マネーフォワード クラウド会計: 銀行連携・自動仕訳機能
  • 弥生会計オンライン: 定番会計ソフトのクラウド版

人事給与:

  • SmartHR: 労務管理・人事データベース
  • ジョブカン: 勤怠管理・給与計算
  • カオナビ: タレントマネジメント・人事評価

その他の業務領域:

  • コミュニケーション: Slack、Microsoft Teams、Chatwork
  • プロジェクト管理: Asana、Trello、Backlog
  • ファイル共有: Dropbox、Google Workspace、Box

(3) SaaS市場の動向(2024年1.4兆円→2027年2兆円予測)

One Capital「Japan SaaS Insights 2024」によると、日本のSaaS市場は急成長を続けています。

市場規模の推移:

  • 2024年: 1.4兆円
  • 2027年予測: 2兆円超(CAGR 11%)
  • 業務システム(ERP・会計・人事給与): CAGR 15.5%と特に高成長

2024年の主要トレンド:

生成AI統合の「AI-Native」SaaS: 生成AIをネイティブに統合したSaaSが急増しています。サポート、マーケティング、チャット領域で顧客体験の向上が進んでおり、従来型SaaSとの差別化ポイントになっています。

マルチプロダクト化戦略: ARR(年間経常収益)100億円超えのSaaS企業は、単一製品から複数製品への展開により成長率を維持する傾向が見られます。クロスセル・アップセルによる顧客単価向上が成長の鍵となっています。

業務システムの高成長: ERP、会計、人事給与などの基幹業務システムのSaaS化が加速しており、年平均成長率15.5%と非常に高い成長率を記録しています。従来のオンプレミス型からの移行が進んでいます。

SaaSのメリット・デメリット

(1) メリット(初期投資削減・導入スピード・保守不要)

SaaS導入の主なメリットは以下の通りです。

初期投資を大幅に削減: オンプレミス型システムでは、サーバー購入・ソフトウェアライセンス・設置工事などで数百万円〜数千万円の初期投資が必要でした。SaaSはサブスクリプションモデル(月額・年額定額)のため、初期費用を大幅に抑えられます。月額数千円から利用できるサービスも多く、中小企業でも導入しやすい点が魅力です。

導入スピードが速い: インターネット環境があればすぐに利用開始できます。オンプレミス型では導入まで数ヶ月〜1年かかるケースもありますが、SaaSは数日〜数週間で運用を開始できます。ビジネス環境の変化に迅速に対応できる点が大きなメリットです。

システム保守が不要: バージョンアップ、セキュリティパッチ適用、サーバーメンテナンスなどはベンダー側が自動的に実施します。社内の情報システム部門の運用負荷を大幅に削減できます。

マルチデバイス・リモートワーク対応: 場所や時間を問わず、PC・タブレット・スマートフォンなど様々なデバイスからアクセス可能。リモートワークやハイブリッドワークに最適です。

スケーラビリティ: 利用者数や機能を柔軟に増減できます。ビジネスの成長に応じて段階的に拡張できるため、過剰投資を避けられます。

(2) デメリット(カスタマイズ制約・セキュリティリスク・ベンダー依存)

SaaS導入時に注意すべきデメリットもあります。

カスタマイズ制約: マルチテナント型のため、企業ごとに大幅なカスタマイズができない場合が多いです。SaaSの機能に合わせて業務プロセスを調整する必要があり、既存の業務フローを大きく変更できない場合は導入が困難です。

セキュリティリスク: インターネット経由のため、常に情報漏えいの脅威にさらされています。ベンダーのセキュリティ対策(暗号化、アクセス制御、バックアップ等)を事前に確認し、自社のセキュリティポリシーと照らし合わせる必要があります。

ベンダー依存(ベンダーロックイン): ベンダー都合のバージョンアップやメンテナンスで利用制限が発生する可能性があります。また、サービス終了時のデータ移行が困難な場合があるため、データのエクスポート機能を事前に確認することが重要です。

長期利用での総コスト: サブスクリプションモデルは初期投資を抑えられますが、長期利用(5年以上)では総コストがオンプレミス型を上回る場合があります。利用期間を考慮した総コスト比較が必要です。

インターネット接続必須: インターネット環境がないと利用できません。通信障害やベンダー側のシステム障害で業務が停止するリスクがあります。

PaaS・IaaS・オンプレミスとの違い

(1) SaaS・PaaS・IaaSの比較(提供範囲・柔軟性・運用負荷)

クラウドサービスは、提供される範囲によってSaaS・PaaS・IaaSの3つに分類されます。

SaaS(Software as a Service): 完成したソフトウェアを提供。利用者はすぐに使える。運用負荷が最も低く、カスタマイズ性は低い。

例: Salesforce、Google Workspace、freee会計、Slack

PaaS(Platform as a Service): アプリケーション開発・実行環境を提供。開発者が独自アプリを構築できる。インフラ管理は不要だが、アプリ開発・運用は必要。

例: Google App Engine、Microsoft Azure App Service、Heroku

IaaS(Infrastructure as a Service): サーバー・ストレージ・ネットワーク等のインフラを提供。最も柔軟性が高いが、OS・ミドルウェア・アプリの管理は利用者が行う。

例: Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)

比較表:

項目 SaaS PaaS IaaS
提供範囲 完成したソフトウェア アプリ開発環境 インフラ(サーバー・ストレージ)
カスタマイズ性
運用負荷
導入スピード 速い 中程度 遅い
対象ユーザー ビジネスユーザー 開発者 インフラエンジニア

(2) オンプレミスとクラウドの比較(コスト・セキュリティ・カスタマイズ性)

SaaS(クラウド)とオンプレミスの違いを比較します。

コスト:

  • SaaS: 初期投資が少なく(月額数千円〜)、段階的に拡張可能。長期利用で総コストが高くなる場合あり。
  • オンプレミス: 初期投資が大きい(数百万円〜数千万円)が、長期利用では総コストが低くなる場合あり。

導入スピード:

  • SaaS: 数日〜数週間で利用開始
  • オンプレミス: 数ヶ月〜1年

カスタマイズ性:

  • SaaS: 制約が多い(マルチテナント型のため)
  • オンプレミス: 自由度が高い(独自要件に完全対応可能)

セキュリティ:

  • SaaS: ベンダーに依存。インターネット経由のため情報漏えいリスクあり。
  • オンプレミス: 自社で完全管理可能。物理的に社内に設置するため外部からの攻撃リスクは低い。

運用負荷:

  • SaaS: ベンダーが管理、保守不要
  • オンプレミス: 社内で管理、専任担当者が必要

選定基準:

  • 初期投資を抑えたい・導入スピード重視 → SaaS
  • 独自要件が多い・長期利用予定 → オンプレミス
  • 高度なセキュリティ要件・完全な自社管理が必要 → オンプレミス

SaaS選定のポイントと導入時の注意点

(1) 選定時の確認事項(カスタマイズ範囲・セキュリティ対策・料金体系)

SaaS導入を成功させるため、以下の項目を事前に確認しましょう。

カスタマイズ範囲:

  • 自社の業務プロセスにどこまで対応できるか
  • 既存システムとのAPI連携が可能か
  • ワークフロー設定や項目追加の柔軟性

セキュリティ対策:

  • データの暗号化(保存時・通信時)
  • アクセス制御(IPアドレス制限・多要素認証)
  • バックアップ・災害復旧体制
  • 第三者認証取得状況(ISO 27001、SOC 2等)
  • データの保存場所(国内・海外)

料金体系:

  • 初期費用と月額費用の内訳
  • ユーザー数課金 or 機能課金
  • オプション機能の追加費用
  • 最低利用期間・解約条件
  • 料金プランのスケーラビリティ

サポート体制:

  • 日本語サポートの有無
  • サポート窓口(メール・電話・チャット)
  • 対応時間(平日のみ or 24時間365日)
  • 導入支援・トレーニングの提供

データポータビリティ:

  • データのエクスポート機能(CSV・API)
  • サービス終了時のデータ移行手順
  • ベンダーロックインのリスク

無料トライアル: 多くのSaaSは無料トライアル期間(14日〜30日)を提供しています。実際に業務で試用し、操作性・機能・パフォーマンスを確認してから本格導入することを推奨します。

(2) 導入でよくある失敗事例と対策

SaaS導入でよくある失敗パターンと対策を紹介します。

失敗事例1: カスタマイズできず業務に合わない 既存の業務プロセスに合わせたカスタマイズができず、結局使われなくなったケース。

対策: 無料トライアルで業務フィットを検証。カスタマイズ範囲を事前確認し、必要に応じて業務プロセスの調整も検討する。

失敗事例2: セキュリティポリシーに抵触 導入後にセキュリティ部門から「データの海外保存は不可」と指摘され、利用停止になったケース。

対策: 導入前に社内のセキュリティポリシーを確認し、ベンダーのセキュリティ対策(データ保存場所、認証取得状況)を照合する。

失敗事例3: 既存システムと連携できない API連携ができず、手作業でのデータ入力が発生し、かえって業務効率が悪化したケース。

対策: 既存システムとのAPI連携可否を事前確認。連携実績のあるツールを優先的に選定する。

失敗事例4: 想定以上のコスト増加 ユーザー数課金で、利用者が増えるたびに月額費用が増加し、予算を超過したケース。

対策: 料金体系(ユーザー数課金 or 機能課金)を確認し、将来の利用者数増加を見込んだコストシミュレーションを実施する。

まとめ|SaaS導入判断のチェックリスト

SaaSは、インターネット経由で提供されるクラウド型ソフトウェアサービスで、初期投資を抑え、迅速に導入できる点が大きなメリットです。一方、カスタマイズ制約やセキュリティ対策の確認が導入時の重要ポイントとなります。

PaaS・IaaSと比べ、SaaSは完成したソフトウェアを提供するため運用負荷が最も低く、ビジネスユーザーが即座に利用できます。オンプレミスと比較すると、初期投資とスピードに優れる一方、カスタマイズ性では劣ります。

SaaS導入判断のチェックリスト:

コスト:

  • 初期投資を抑えたい(月額課金で段階的に拡張)
  • 長期利用での総コスト比較を実施済み

機能・業務適合:

  • 無料トライアルで業務フィットを検証済み
  • カスタマイズ範囲を確認し、業務プロセス調整の覚悟がある

セキュリティ:

  • 社内セキュリティポリシーとベンダー対策を照合済み
  • データ保存場所(国内 or 海外)を確認済み
  • 第三者認証(ISO 27001、SOC 2等)を確認済み

既存システム連携:

  • API連携の可否を確認済み
  • 連携実績のあるツールを優先選定

ベンダーロックイン対策:

  • データのエクスポート機能を確認済み
  • サービス終了時のデータ移行手順を確認済み

次のステップ:

  • 業務領域(CRM・ERP・会計・人事給与等)の優先順位を決定
  • 主要SaaSベンダーの公式サイトで料金・機能を比較
  • 無料トライアルで3〜5社を実際に試用
  • 社内のセキュリティ部門・情報システム部門と事前調整
  • 本格導入後、定期的に効果測定とベンダー評価を実施

SaaSは適切に選定・導入すれば、業務効率化とコスト削減を実現する強力なツールです。本記事のチェックリストを活用し、自社に最適なSaaSを見つけましょう。

※この記事は2025年12月時点の情報です。SaaSベンダーの料金プランや機能は変更される可能性があるため、最新情報は各ベンダーの公式サイトをご確認ください。

よくある質問

Q1SaaSとPaaS・IaaSの違いは?

A1SaaSは完成したソフトウェアを提供し、利用者はすぐに使えます。PaaSはアプリケーション開発環境を提供し、開発者が独自アプリを構築できます。IaaSはサーバー・ストレージ等のインフラを提供します。提供範囲が異なり、SaaSが最も運用負荷が低く、カスタマイズ性は低い一方、PaaS・IaaSは柔軟性が高い分、運用負荷も高くなります。

Q2SaaS導入で失敗しないためには?

A2カスタマイズ範囲の事前確認、セキュリティ対策(暗号化・アクセス制御・第三者認証)の確認、データエクスポート機能の有無確認が重要です。無料トライアル期間(14日〜30日)で業務フィットを検証し、既存システムとのAPI連携可否も確認してから本格導入するのが推奨されます。社内のセキュリティ部門・情報システム部門との事前調整も不可欠です。

Q3SaaS導入のコストはどのくらい?

A3サブスクリプションモデル(月額・年額定額)で初期投資を抑えられ、月額数千円から利用可能です。企業規模・機能により月額数万円から数十万円まで幅広い料金設定があります。オンプレミスに比べ初期費用は大幅に削減できますが、長期利用(5年以上)では総コストが逆転する場合もあるため、利用期間を考慮した総コスト比較が必要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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