SaaSサービスとは?基本的な定義と仕組み
「業務システムをクラウド化したいけれど、SaaSって何?」「オンプレミスとの違いが分からない...」「セキュリティは大丈夫なの?」こうした疑問を抱えている経営者や情シス担当者は多いのではないでしょうか。
SaaSは、企業の業務効率化やDX推進において重要な選択肢となっています。初期費用を抑えられ、メンテナンス不要で、どこからでもアクセスできるSaaSは、多くの企業が導入を検討しています。
この記事では、SaaSの基本的な定義と仕組み、PaaS・IaaS・オンプレミスとの違い、導入のメリット・デメリット、代表的なサービス、選び方まで、実践的に解説します。
この記事のポイント:
- SaaSは「Software as a Service」の略で、インターネット経由で利用できるクラウド上のソフトウェア
- 初期費用が低く、月額課金制で予算を計画しやすく、メンテナンス不要
- PaaS・IaaSと異なり、ソフトウェアそのものを提供(最も使いやすい)
- カスタマイズ性の制限、セキュリティの依存性、ベンダー都合のメンテナンスがデメリット
- 2025年のグローバルSaaS市場は2,317.5億ドル(約1兆円超)、AI統合が最大トレンド
SaaSサービスとは?基本的な定義と仕組み
(1) SaaS(Software as a Service)の定義
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由で利用できるクラウド上のソフトウェア・サービス形態です。
SaaSの特徴:
- インストール不要で、WebブラウザやアプリからアクセスするだけでOK
- 自社でサーバーやソフトウェアを購入・管理する必要がない
- サービス提供者(ベンダー)がメンテナンス、アップデート、セキュリティ対策を担当
「サース」または「サーズ」と読まれ、従来のオンプレミス型ソフトウェア(自社サーバーにインストールして使用)とは対照的なモデルです。
(2) サブスクリプションモデルの基本
SaaSは、月額または年額で定額料金を支払うサブスクリプションモデルが主流です。
サブスクリプションモデルのメリット:
- 初期費用が低い(0円〜数万円)
- 利用人数や機能に応じて柔軟にプランを変更できる
- 不要になればすぐに解約できる
料金体系の例:
- ユーザー課金: 利用ユーザー数に応じて課金(例: 1ユーザーあたり月額1,000円)
- 機能課金: 利用する機能に応じて課金(例: ベーシックプラン、プロフェッショナルプラン)
- 従量課金: 利用量に応じて課金(例: ストレージ容量、API呼び出し回数)
(3) 2025年のSaaS市場動向とトレンド
2025年のグローバルSaaS市場は2,317.5億ドル(約1兆円超)に達し、2033年には5,106.7億ドルに成長する見込みです(年平均成長率10.38%)。
2025年の主要トレンド:
AI統合:
- ワークフロー自動化のバーティカルAIエージェント
- マルチモーダルAI×SaaS
- AI搭載SaaSサービスが90サービスに拡大(前年比2倍以上)
業種特化型SaaS(バーティカルSaaS):
- 建設プロジェクト管理、医療レセプト、飲食店予約/POS等
- 深い業務理解と低い解約率で注目
ノーコード/ローコードツール:
- Bubble、FlutterFlow等の普及
- 個人・小チームによるMicroSaaS立ち上げが現実的に
エンタープライズ市場への拡大:
- SAML認証、多言語/多通貨対応、複数拠点管理等の高度な機能
Agent as a Service:
- AIエージェントがサービスとして提供される新しい形態
- 従来のSaaSモデルからの転換が示唆されている
SaaSとPaaS・IaaS・オンプレミスの違い
(1) SaaS・PaaS・IaaSの比較(クラウドサービスの階層)
クラウドサービスは、提供する範囲によって3つに分類されます。
SaaS(Software as a Service):
- 提供範囲: ソフトウェアそのもの
- 例: Slack、Zoom、Salesforce、freee
- 特徴: 最も使いやすく、専門知識不要
PaaS(Platform as a Service):
- 提供範囲: アプリケーションの実行に必要なプラットフォーム(OS、ミドルウェア等)
- 例: Google App Engine、Heroku、AWS Elastic Beanstalk
- 特徴: 開発者向け、アプリ開発・実行環境を提供
IaaS(Infrastructure as a Service):
- 提供範囲: サーバー、CPU、メモリー等のインフラ環境
- 例: AWS EC2、Microsoft Azure、Google Cloud Platform
- 特徴: 最も柔軟性が高いが、サーバー管理の知識が必要
使い分けの目安:
- SaaS: 業務システム(営業支援、会計、コミュニケーション等)をすぐに使いたい
- PaaS: 自社でアプリを開発したいが、インフラ管理は任せたい
- IaaS: インフラから自由に構築したい、既存システムをクラウド化したい
(2) オンプレミスとの違い(所有 vs 利用)
オンプレミスは、自社でサーバーやソフトウェアを購入・管理する従来型のシステム形態です。
オンプレミスの特徴:
- 初期費用が高い(サーバー購入、ソフトウェアライセンス、設置工事等で数百万〜数千万円)
- カスタマイズ性が高い(自社の業務フローに完全に合わせられる)
- メンテナンスは自社負担(サーバー管理、アップデート、セキュリティ対策)
SaaSの特徴:
- 初期費用が低い(0円〜数万円)
- カスタマイズ性は制限される(業務フローをSaaSに合わせる必要がある場合も)
- メンテナンスはベンダー負担(自動アップデート、セキュリティ対策)
所有 vs 利用:
- オンプレミス: 「所有」モデル(買い切り、自社管理)
- SaaS: 「利用」モデル(月額課金、ベンダー管理)
(3) ASPとの違い
ASP(Application Service Provider)は、SaaSの前身とされるサービス形態です。
ASPとSaaSの違い:
- ASP: 特定の顧客向けにカスタマイズされたサーバー環境を提供
- SaaS: マルチテナント型で、複数の顧客が同じソフトウェア環境を共有
SaaSはASPの進化形で、より柔軟性が高く、コストも抑えられています。現在では「ASP」という用語はほとんど使われず、「SaaS」に統一されています。
SaaS導入のメリットとデメリット
(1) メリット①:初期費用の低減と予算の計画しやすさ
SaaSの最大のメリットは、初期費用を大幅に抑えられることです。
オンプレミスとの比較:
- オンプレミス: 初期費用数百万〜数千万円(サーバー購入、ライセンス、設置工事)
- SaaS: 初期費用0円〜数万円、月額数千円〜数十万円
予算の計画しやすさ:
- 月額課金制で、年間の予算を計画しやすい
- 利用人数や機能に応じて柔軟にプランを変更できる
- 不要になればすぐに解約できる(オンプレミスは廃棄コストがかかる)
(2) メリット②:メンテナンス不要とアップデート自動化
SaaSは、メンテナンスやアップデートをベンダーが担当するため、自社の負担がありません。
メンテナンス不要:
- サーバー管理、セキュリティパッチ適用、障害対応はベンダーが担当
- 自社に専任のIT担当者がいなくても安心
アップデート自動化:
- 新機能の追加やバグ修正が自動で反映される
- 常に最新バージョンを利用できる
(3) メリット③:場所・デバイスを問わないアクセス性
SaaSは、インターネット経由でどこからでもアクセス可能です。
場所を問わないアクセス:
- オフィス、自宅、外出先からアクセスできる
- リモートワークやテレワークに最適
デバイスを問わないアクセス:
- PC、スマートフォン、タブレットなど、異なるデバイスから利用できる
- 外出先での確認・承認業務がスムーズに
(4) デメリット①:カスタマイズ性の制限
SaaSは、パッケージソフトやオンプレミスと比べてカスタマイズ性が制限されます。
カスタマイズ性の制限:
- 業務フローをSaaSに合わせる必要がある場合がある
- 独自の機能追加やUI変更が難しい
対策:
- 導入前に無料トライアルで自社の業務フローに適合するか検証する
- カスタマイズが必要な場合は、API連携やプラグインで対応できるか確認する
(5) デメリット②:セキュリティの依存性
SaaSは、セキュリティ対策をベンダーに依存します。
セキュリティの依存性:
- 暗号化、アクセス制御、バックアップ等のセキュリティ対策はベンダーが担当
- ベンダーのセキュリティ強度によって自社データの安全性が左右される
対策:
- 導入時にベンダーの暗号化技術、アクセス制御、バックアップ体制を確認する
- ISO27001等のセキュリティ認証を取得しているか確認する
- SLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)でダウンタイムや障害対応の保証を確認する
(6) デメリット③:ベンダー都合のメンテナンスとサービス終了リスク
SaaSは、バージョンアップやシステムメンテナンスがベンダー都合で実施されます。
ベンダー都合のメンテナンス:
- メンテナンス期間は利用が制限される場合がある
- 自社の都合でアップデートを遅らせることができない
サービス終了リスク:
- ベンダーの経営状況によってはサービスが終了する可能性がある
- サービス終了時は他のツールへの移行が必要(移行コストがかかる)
対策:
- ベンダーの経営状況や長期的展望を確認する
- データのエクスポート機能があるか確認し、定期的にバックアップを取る
代表的なSaaSサービスと活用分野
(1) コミュニケーション(Slack、Zoom、Microsoft Teams)
Slack:
- ビジネスチャットツール
- チャンネル単位でのコミュニケーション、ファイル共有、外部ツール連携
Zoom:
- Web会議ツール
- ビデオ会議、ウェビナー、録画機能
Microsoft Teams:
- コミュニケーション・コラボレーションツール
- チャット、ビデオ会議、ファイル共有、Office 365連携
(2) CRM・営業支援(Salesforce、HubSpot)
Salesforce:
- 世界最大級のCRM(顧客管理)プラットフォーム
- 営業支援、マーケティングオートメーション、カスタマーサポート
HubSpot:
- 中小企業向けCRM・マーケティングオートメーション
- リード管理、メール配信、ブログ・LP作成
(3) 会計・経理(freee、マネーフォワード)
freee:
- クラウド会計ソフト
- 自動仕訳、請求書作成、経費精算、確定申告
マネーフォワード:
- クラウド会計・経理ソフト
- 会計、請求書、経費精算、給与計算
(4) プロジェクト管理(Asana、Trello、Notion)
Asana:
- プロジェクト・タスク管理ツール
- ガントチャート、カンバンボード、タイムライン表示
Trello:
- カンバン型タスク管理ツール
- 直感的な操作、シンプルなUI
Notion:
- オールインワンワークスペース
- ドキュメント、タスク管理、データベース、Wiki
(5) 業種特化型SaaS(建設、医療、飲食等)
2025年のトレンドとして、業種特化型SaaS(バーティカルSaaS)が注目されています。
業種特化型SaaSの例:
- 建設: プロジェクト管理、工程管理、図面共有
- 医療: レセプト管理、電子カルテ、予約システム
- 飲食: 予約システム、POSレジ、在庫管理
業種特化型SaaSの特徴:
- 深い業務理解で、業務フローに最適化されている
- 低い解約率(業務に不可欠なツールとなる)
SaaSサービスの選び方と導入時の注意点
(1) 自社ニーズの明確化(必要な機能と過剰な機能の見極め)
SaaS導入時は、自社のニーズを明確にし、必要な機能と過剰な機能のバランスを見極めることが重要です。
ニーズの明確化:
- 解決したい課題は何か?(業務効率化、コスト削減、リモートワーク対応等)
- 必要な機能は何か?(リスト化する)
- 利用人数は何人か?(ユーザー課金の場合)
過剰な機能の見極め:
- 高機能なSaaSは月額費用も高い
- 使わない機能にコストをかけるのは無駄
(2) セキュリティ対策の確認(暗号化・アクセス制御・バックアップ)
セキュリティ対策はベンダーに依存するため、導入前に必ず確認が必要です。
確認すべきセキュリティ対策:
- 暗号化技術(データ通信、データ保存時の暗号化)
- アクセス制御(多要素認証、IPアドレス制限、SAML認証等)
- バックアップ体制(定期バックアップ、災害時の復旧計画)
- セキュリティ認証(ISO27001、SOC2、プライバシーマーク等)
(3) サポート体制の確認(日本語対応、レスポンス時間)
サポート体制も重要な選定ポイントです。
確認すべきサポート体制:
- 日本語対応の有無(海外製品は英語のみの場合も)
- サポート窓口(メール、電話、チャット)
- レスポンス時間(問い合わせから回答までの時間)
- オンボーディング支援(初期設定、運用立ち上げ支援)
(4) 無料トライアルの活用
多くのSaaSは無料トライアルを提供しています。
無料トライアルで確認すべきポイント:
- 実際の使用感(UI/UXが使いやすいか)
- 自社の業務フローに適合するか
- 必要な機能が揃っているか
- パフォーマンス(動作速度、レスポンス)
(5) ベンダーの経営状況と長期展望
ベンダーの経営状況や長期的展望も確認しましょう。
確認すべきポイント:
- ベンダーの経営状況(上場企業か、資金調達状況)
- 導入実績(同業種・同規模企業での導入事例)
- 継続率・解約率(公表されている場合)
- ロードマップ(今後の機能追加予定)
まとめ:SaaSが向いている企業・向いていない企業
SaaSは、初期費用を抑えられ、メンテナンス不要で、場所・デバイスを問わずアクセスできる、現代のビジネスに適したソフトウェア形態です。ただし、カスタマイズ性の制限、セキュリティの依存性、ベンダー都合のメンテナンスといったデメリットもあります。
SaaSが向いている企業:
- 初期費用を抑えたい(特にスタートアップ、中小企業)
- IT担当者が少なく、メンテナンス負担を減らしたい
- リモートワーク、テレワークを推進している
- 業務効率化を早期に実現したい
- 標準的な業務フローに対応できる
SaaSが向いていない企業:
- 業務フローが特殊で、高度なカスタマイズが必須
- セキュリティ要件が非常に高く、自社管理が必須(金融機関、官公庁等)
- インターネット接続が不安定な環境
- 長期的にはオンプレミスの方がコストが安い(大規模企業の一部)
次のアクション:
- 自社のニーズを明確にする(解決したい課題、必要な機能)
- 3-5社のSaaSサービスを比較する(機能、料金、サポート体制)
- 無料トライアルで実際に試す
- セキュリティ対策、サポート体制、ベンダーの経営状況を確認する
2025年はAI統合、業種特化型SaaS、ノーコード/ローコードツールの普及が進み、SaaS市場はさらに成長が見込まれます。自社に合ったSaaSを選定し、業務効率化とDX推進を実現しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。SaaSサービスの料金や機能は変更される可能性があるため、最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
