VOC(顧客の声)をマーケティングに活かす方法:収集から分析・施策まで

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

VOCを活用したいけれど、どう進めればいいか分からない...

「顧客満足度を向上させたいが、何から始めればいいか分からない」「VOCを収集しているが、施策に活かせていない」「分析方法やツールの選び方が分からない」——B2B企業のマーケティング・CS担当者の多くが、VOC(顧客の声)の活用に課題を抱えています。

VOCは、企業に寄せられる意見、アンケート結果、SNS・ブログの口コミ、コールセンターへの問い合わせやクレームなど、不満や要望を含む自社に対する顧客の評価全般を指します。これを適切に収集・分析・施策化することで、顧客満足度向上や製品改善が実現できます。

この記事では、VOCの定義とマーケティングにおける重要性、収集方法、分析手法とツール活用、マーケティング施策への落とし込み方、成功事例と失敗パターンを解説します。

この記事のポイント:

  • VOCはマーケティングにおいて、ニーズ把握・品質向上・顧客満足度向上・差別化・戦略最適化の5つのメリットがある
  • 収集方法はアンケート、コールセンター、SNS分析、インタビュー等多様で、目的に応じた選択が重要
  • VOC分析ツールは、テキストマイニング・レビュー分析・コールセンター特化型に大別される
  • 成功のカギは、明確な目的設定→収集→分析→優先順位付け→施策化→部署間連携のサイクルを回すこと
  • 失敗パターンは、目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし

1. VOC(顧客の声)とは:マーケティングにおける重要性

(1) VOCの定義:意見・要望・クレーム・口コミ全般

VOC(Voice of Customer:顧客の声)とは、企業に寄せられる意見、アンケート結果、SNS・ブログの口コミ、コールセンターへの問い合わせやクレームなど、不満や要望を含む自社に対する顧客の評価全般を指します。

VOCに含まれるもの:

  • アンケートやWebアンケートの回答
  • コールセンターやメール・チャットでの問い合わせ
  • SNS(Twitter、Instagram等)の投稿・口コミ
  • ECサイトのレビュー・評価
  • 対面インタビューやユーザーテストのフィードバック

ポジティブな声(満足、感謝等)だけでなく、ネガティブな声(不満、クレーム等)も重要なVOCです。

(2) マーケティングにおける5つのメリット:ニーズ把握・品質向上・顧客満足度向上・差別化・戦略最適化

VOCをマーケティングに活用することで、以下の5つのメリットがあります:

1. 顧客ニーズとトレンドの把握:

  • 顧客が何を求めているかをリアルタイムに理解
  • 市場トレンドの変化を早期に察知

2. 商品・サービスの品質向上:

  • 不満やクレームから改善点を発見
  • ポジティブな声から強みを認識

3. 顧客満足度の向上:

  • VOCに基づく改善により、顧客の期待に応える
  • 継続率・リピート率の向上

4. 競合他社との差別化:

  • 顧客の潜在ニーズを発見し、他社にない価値を提供
  • 独自のポジショニングを確立

5. マーケティング戦略の最適化:

  • データドリブンな意思決定
  • マーケティング施策の効果検証と改善

VOC分析を通したサービス改善により、顧客満足度向上を実現し、顧客にとって価値ある商品を提供しやすくなります。

2. VOCの収集方法:多様なチャネルから顧客の声を集める

(1) アンケート・Webアンケート:定量データの収集

アンケート・Webアンケートは、定量データを効率的に収集する代表的な方法です。

主な用途:

  • 顧客満足度調査(NPS、CSATスコア等)
  • 製品・サービス利用状況の把握
  • 改善要望の優先順位付け

ツール例:

  • Googleフォーム(無料)
  • SurveyMonkey、Qualtrics、Typeform(有料)

Webアンケートツールは月額数千円から利用でき、回答の自動集計・分析機能も提供されています。

(2) コールセンター・メール・チャット:リアルタイムな声の収集

コールセンター、メール、チャットは、顧客の声をリアルタイムに収集できる貴重なチャネルです。

コールセンターのメリット:

  • 顧客の感情・ニュアンスを直接把握
  • 不満やクレームの詳細を深掘りできる
  • ヒアリング内容を記録しデータ化

メール・チャットのメリット:

  • テキストデータとして残るため分析しやすい
  • 顧客の生の言葉を収集できる

コールセンターで収集した音声データを自動でテキストデータに変換する技術も導入され始めており、VOC収集の効率化が進んでいます。

(3) SNS分析・ECレビュー:自然発生的な声の収集

SNS分析・ECレビューは、顧客が自然発生的に投稿した声を収集する方法です。

SNS分析:

  • Twitter、Instagram、Facebook等のソーシャルメディア
  • ハッシュタグ検索、ブランド名検索で口コミを収集
  • リアルタイムなトレンド把握

ECレビュー:

  • Amazon、楽天、自社ECサイトのレビュー・評価
  • 製品の具体的な使用感や改善点を把握

これらは顧客が自発的に投稿するため、企業側のバイアスが入りにくい貴重なVOCです。

(4) インタビュー・ユーザーテスト:深い洞察の獲得

対面またはオンラインでのインタビュー・ユーザーテストは、深い洞察を獲得できる方法です。

インタビュー:

  • 1対1またはグループインタビュー
  • 顧客の潜在ニーズや行動の背景を深掘り

ユーザーテスト:

  • 製品・サービスの実際の使用場面を観察
  • UIの問題点、使いにくさを発見

定量データで得られない「なぜ?」を探ることができ、顧客インサイトの発見に有効です。

3. VOC分析の手法とツール活用

(1) VOC分析の基本ステップ:収集→分類→優先順位付け→施策化

VOC分析の基本ステップは以下の通りです:

1. 収集:

  • 多様なチャネルからVOCを収集
  • まずは必要なVOCを明確にし、質問内容や収集方法を的確に定める(目的が定まっていないVOC収集は的外れになる危険性がある)

2. 分類:

  • 収集したVOCをカテゴリ別に分類(製品、価格、サポート、配送等)
  • センチメント分析(ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル)

3. 優先順位付け:

  • 多く寄せられた不満や提案を優先的に対応
  • ただし、すべての意見を取り入れるのではなく、ビジネスへの影響度を考慮

4. 施策化:

  • 改善策を具体的なアクションプランに落とし込む
  • 担当部署への共有と実行

(2) テキストマイニングツール:メール・チャット・SNSデータ分析

テキストマイニングツールは、大量のテキストデータから自然言語解析技術を用いて有益な情報を抽出するツールです。

主な機能:

  • メール、チャット、SNSなどのデータから情報を抽出
  • キーワード出現頻度の分析
  • 感情分析(センチメント分析)

代表的なツール:

  • UserLocal テキストマイニング
  • 見える化エンジン
  • IBM Watson Discovery

月額数万円から利用でき、大量のテキストデータを効率的に分析できます。

(3) レビュー分析ツール・コールセンター特化型ツール:各用途に最適化

VOC分析ツールは、用途に応じて以下のタイプに分かれます:

レビュー分析ツール:

  • ECサイトのレビュー(口コミ)を効率的に収集・分析
  • レビュー情報を販促に活用
  • 代表例: レビュー管理ツール、口コミ分析ツール

コールセンター特化型ツール:

  • コールセンターで収集した音声データからVOCを収集・分析
  • 音声データを自動でテキストデータに変換
  • 代表例: MiiTel、Karakuri、COTOHA Voice Insight

VOC分析ツールを導入する際は、VOC分析の目的を明確にし、その目的に合致し既存のデータ環境と統合できる最適なツールを選定することが重要です。

4. VOCをマーケティング施策に活かす方法

(1) 商品・サービス改善への反映:優先順位をつけて対応

VOCを商品・サービス改善に反映する際は、優先順位をつけて対応することが重要です。

優先順位付けの基準:

  • 顧客への影響度(多くの顧客が困っているか)
  • ビジネスへの影響度(売上・継続率に影響するか)
  • 実現可能性(コスト・期間・技術的な難易度)

改善例:

  • UIの改善(「ボタンの位置が分かりにくい」という声に対応)
  • 新機能の追加(「〇〇機能がほしい」という要望に対応)
  • サポート体制の強化(「問い合わせの返信が遅い」という不満に対応)

(2) 顧客インサイトの発見:潜在ニーズの顕在化

VOC分析により、顧客の潜在的なニーズや動機、行動の背景にある深層心理(顧客インサイト)を発見できます。

顧客インサイトの発見例:

  • 「価格が高い」という声の背景に、「導入効果が見えない」という不安がある
  • 「使いにくい」という声の背景に、「オンボーディングが不十分」という課題がある

表面的な声だけでなく、その背景にある真の課題を把握することで、より本質的な改善策を立案できます。

(3) 部署間連携:CS部門・商品開発部門・マーケティング部門での情報共有

VOC分析の成果を最大化するには、部署間での情報共有が不可欠です。

情報共有の例:

  • 顧客対応の不備 → CS部門(カスタマーサポート)に共有
  • 商品の改善要望 → 商品開発部門に共有
  • 顧客の消費傾向 → マーケティング部門に共有

必要な情報を必要な部署に速やかに共有することで、組織全体でVOCを活用できます。

5. VOC活用の成功事例と失敗パターン

(1) 成功事例:VOCに基づく商品改善・マーケティング戦略最適化

成功事例1: VOCに基づく商品改善:

  • ECサイトのレビュー分析で「配送が遅い」という不満を発見
  • 配送体制を見直し、翌日配送を実現
  • 顧客満足度が20%向上、リピート率が15%向上

成功事例2: マーケティング戦略最適化:

  • SNS分析で「環境配慮」に関心が高いことを発見
  • SDGsを訴求したマーケティング施策を実施
  • ブランドイメージ向上と新規顧客獲得を実現

VOC活用の成功事例は、明確な目的設定、適切な収集・分析、スピーディーな施策化が共通点です。

(2) よくある失敗パターン:目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし

失敗パターン1: 目的が不明確:

  • 何のためにVOCを収集するかが定まっていない
  • 結果として的外れなデータを収集し、活用できない

失敗パターン2: 収集だけで終わる:

  • VOCを収集したが、分析・施策化まで至らない
  • 社内リソース不足や優先順位の問題で放置される

失敗パターン3: 優先順位なし:

  • すべての声を平等に扱い、重要度の低い改善に時間を費やす
  • ビジネスへの影響度を考慮せず、費用対効果が見合わない

まずは明確な目的設定を行い、収集→分析→優先順位付け→施策化のサイクルを確実に回すことが重要です。

6. まとめ:VOCマーケティング成功のポイント

VOC(Voice of Customer:顧客の声)は、マーケティングにおいて、顧客ニーズの把握、商品・サービスの品質向上、顧客満足度向上、競合との差別化、マーケティング戦略の最適化という5つのメリットをもたらします。

収集方法はアンケート、コールセンター、SNS分析、インタビュー等多様で、目的に応じた選択が重要です。VOC分析ツールは、テキストマイニング、レビュー分析、コールセンター特化型に大別され、自社のニーズに合ったツールを選定する必要があります。

成功のカギは、明確な目的設定→収集→分析→優先順位付け→施策化→部署間連携のサイクルを回すことです。失敗パターン(目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし)を避け、スピーディーに施策化することが顧客満足度向上につながります。

次のアクション:

  • VOC収集の目的を明確化する(顧客満足度向上、商品改善、マーケティング戦略最適化等)
  • 既存のアンケート・問い合わせデータを整理する
  • 月100件以上のVOCがある場合、VOC分析ツールの無料トライアルを試す
  • VOC分析結果を関連部署(CS、商品開発、マーケティング)に共有する仕組みを構築する
  • 優先度の高い改善策から実行し、効果を測定する

VOCを正しく収集・分析・施策化することで、顧客にとって価値ある商品・サービスを提供し、持続的な成長を実現しましょう。

※この記事は2025年12月時点の情報です。VOC分析技術やツールは進化し続けているため、最新情報は各ツールベンダーにご確認ください。

よくある質問

Q1VOC収集に必要なコストは?

A1Webアンケートツールは月額数千円から、VOC分析ツールは月額数万円から数十万円です。コールセンターでの収集は人件費が主なコストになります。まずは既存のアンケート・問い合わせデータから始めるのが現実的です。

Q2どのくらいの件数のVOCを集めるべき?

A2定量分析には最低100件以上が望ましいですが、質的なインサイトは数件でも価値があります。重要なのは件数より、目的に応じた適切な収集方法を選ぶことです。

Q3ネガティブな声とポジティブな声、どちらを重視すべき?

A3両方重要です。ネガティブな声は改善点を、ポジティブな声は強みを示します。ただし不満を持つ顧客は声を上げやすいため、サイレントマジョリティの把握も必要です。

Q4VOC分析ツールは必須?

A4VOC件数が月100件以下なら手動分析でも対応可能です。月100件以上、または複数チャネルから収集する場合はツール導入が効率的です。まずは無料トライアルで試すのが推奨されます。

Q5VOC収集から施策実行までの期間は?

A5簡易な改善(UI修正、FAQ追加等)は1-2週間、商品改善は1-3ヶ月、戦略変更は3-6ヶ月が目安です。スピード感を持って対応することが顧客満足度向上につながります。

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Decisense編集部

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