VOCを活用したいけれど、どう進めればいいか分からない...
「顧客満足度を向上させたいが、何から始めればいいか分からない」「VOCを収集しているが、施策に活かせていない」「分析方法やツールの選び方が分からない」——B2B企業のマーケティング・CS担当者の多くが、VOC(顧客の声)の活用に課題を抱えています。
VOCは、企業に寄せられる意見、アンケート結果、SNS・ブログの口コミ、コールセンターへの問い合わせやクレームなど、不満や要望を含む自社に対する顧客の評価全般を指します。これを適切に収集・分析・施策化することで、顧客満足度向上や製品改善が実現できます。
この記事では、VOCの定義とマーケティングにおける重要性、収集方法、分析手法とツール活用、マーケティング施策への落とし込み方、成功事例と失敗パターンを解説します。
この記事のポイント:
- VOCはマーケティングにおいて、ニーズ把握・品質向上・顧客満足度向上・差別化・戦略最適化の5つのメリットがある
- 収集方法はアンケート、コールセンター、SNS分析、インタビュー等多様で、目的に応じた選択が重要
- VOC分析ツールは、テキストマイニング・レビュー分析・コールセンター特化型に大別される
- 成功のカギは、明確な目的設定→収集→分析→優先順位付け→施策化→部署間連携のサイクルを回すこと
- 失敗パターンは、目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし
1. VOC(顧客の声)とは:マーケティングにおける重要性
(1) VOCの定義:意見・要望・クレーム・口コミ全般
VOC(Voice of Customer:顧客の声)とは、企業に寄せられる意見、アンケート結果、SNS・ブログの口コミ、コールセンターへの問い合わせやクレームなど、不満や要望を含む自社に対する顧客の評価全般を指します。
VOCに含まれるもの:
- アンケートやWebアンケートの回答
- コールセンターやメール・チャットでの問い合わせ
- SNS(Twitter、Instagram等)の投稿・口コミ
- ECサイトのレビュー・評価
- 対面インタビューやユーザーテストのフィードバック
ポジティブな声(満足、感謝等)だけでなく、ネガティブな声(不満、クレーム等)も重要なVOCです。
(2) マーケティングにおける5つのメリット:ニーズ把握・品質向上・顧客満足度向上・差別化・戦略最適化
VOCをマーケティングに活用することで、以下の5つのメリットがあります:
1. 顧客ニーズとトレンドの把握:
- 顧客が何を求めているかをリアルタイムに理解
- 市場トレンドの変化を早期に察知
2. 商品・サービスの品質向上:
- 不満やクレームから改善点を発見
- ポジティブな声から強みを認識
3. 顧客満足度の向上:
- VOCに基づく改善により、顧客の期待に応える
- 継続率・リピート率の向上
4. 競合他社との差別化:
- 顧客の潜在ニーズを発見し、他社にない価値を提供
- 独自のポジショニングを確立
5. マーケティング戦略の最適化:
- データドリブンな意思決定
- マーケティング施策の効果検証と改善
VOC分析を通したサービス改善により、顧客満足度向上を実現し、顧客にとって価値ある商品を提供しやすくなります。
2. VOCの収集方法:多様なチャネルから顧客の声を集める
(1) アンケート・Webアンケート:定量データの収集
アンケート・Webアンケートは、定量データを効率的に収集する代表的な方法です。
主な用途:
- 顧客満足度調査(NPS、CSATスコア等)
- 製品・サービス利用状況の把握
- 改善要望の優先順位付け
ツール例:
- Googleフォーム(無料)
- SurveyMonkey、Qualtrics、Typeform(有料)
Webアンケートツールは月額数千円から利用でき、回答の自動集計・分析機能も提供されています。
(2) コールセンター・メール・チャット:リアルタイムな声の収集
コールセンター、メール、チャットは、顧客の声をリアルタイムに収集できる貴重なチャネルです。
コールセンターのメリット:
- 顧客の感情・ニュアンスを直接把握
- 不満やクレームの詳細を深掘りできる
- ヒアリング内容を記録しデータ化
メール・チャットのメリット:
- テキストデータとして残るため分析しやすい
- 顧客の生の言葉を収集できる
コールセンターで収集した音声データを自動でテキストデータに変換する技術も導入され始めており、VOC収集の効率化が進んでいます。
(3) SNS分析・ECレビュー:自然発生的な声の収集
SNS分析・ECレビューは、顧客が自然発生的に投稿した声を収集する方法です。
SNS分析:
- Twitter、Instagram、Facebook等のソーシャルメディア
- ハッシュタグ検索、ブランド名検索で口コミを収集
- リアルタイムなトレンド把握
ECレビュー:
- Amazon、楽天、自社ECサイトのレビュー・評価
- 製品の具体的な使用感や改善点を把握
これらは顧客が自発的に投稿するため、企業側のバイアスが入りにくい貴重なVOCです。
(4) インタビュー・ユーザーテスト:深い洞察の獲得
対面またはオンラインでのインタビュー・ユーザーテストは、深い洞察を獲得できる方法です。
インタビュー:
- 1対1またはグループインタビュー
- 顧客の潜在ニーズや行動の背景を深掘り
ユーザーテスト:
- 製品・サービスの実際の使用場面を観察
- UIの問題点、使いにくさを発見
定量データで得られない「なぜ?」を探ることができ、顧客インサイトの発見に有効です。
3. VOC分析の手法とツール活用
(1) VOC分析の基本ステップ:収集→分類→優先順位付け→施策化
VOC分析の基本ステップは以下の通りです:
1. 収集:
- 多様なチャネルからVOCを収集
- まずは必要なVOCを明確にし、質問内容や収集方法を的確に定める(目的が定まっていないVOC収集は的外れになる危険性がある)
2. 分類:
- 収集したVOCをカテゴリ別に分類(製品、価格、サポート、配送等)
- センチメント分析(ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル)
3. 優先順位付け:
- 多く寄せられた不満や提案を優先的に対応
- ただし、すべての意見を取り入れるのではなく、ビジネスへの影響度を考慮
4. 施策化:
- 改善策を具体的なアクションプランに落とし込む
- 担当部署への共有と実行
(2) テキストマイニングツール:メール・チャット・SNSデータ分析
テキストマイニングツールは、大量のテキストデータから自然言語解析技術を用いて有益な情報を抽出するツールです。
主な機能:
- メール、チャット、SNSなどのデータから情報を抽出
- キーワード出現頻度の分析
- 感情分析(センチメント分析)
代表的なツール:
- UserLocal テキストマイニング
- 見える化エンジン
- IBM Watson Discovery
月額数万円から利用でき、大量のテキストデータを効率的に分析できます。
(3) レビュー分析ツール・コールセンター特化型ツール:各用途に最適化
VOC分析ツールは、用途に応じて以下のタイプに分かれます:
レビュー分析ツール:
- ECサイトのレビュー(口コミ)を効率的に収集・分析
- レビュー情報を販促に活用
- 代表例: レビュー管理ツール、口コミ分析ツール
コールセンター特化型ツール:
- コールセンターで収集した音声データからVOCを収集・分析
- 音声データを自動でテキストデータに変換
- 代表例: MiiTel、Karakuri、COTOHA Voice Insight
VOC分析ツールを導入する際は、VOC分析の目的を明確にし、その目的に合致し既存のデータ環境と統合できる最適なツールを選定することが重要です。
4. VOCをマーケティング施策に活かす方法
(1) 商品・サービス改善への反映:優先順位をつけて対応
VOCを商品・サービス改善に反映する際は、優先順位をつけて対応することが重要です。
優先順位付けの基準:
- 顧客への影響度(多くの顧客が困っているか)
- ビジネスへの影響度(売上・継続率に影響するか)
- 実現可能性(コスト・期間・技術的な難易度)
改善例:
- UIの改善(「ボタンの位置が分かりにくい」という声に対応)
- 新機能の追加(「〇〇機能がほしい」という要望に対応)
- サポート体制の強化(「問い合わせの返信が遅い」という不満に対応)
(2) 顧客インサイトの発見:潜在ニーズの顕在化
VOC分析により、顧客の潜在的なニーズや動機、行動の背景にある深層心理(顧客インサイト)を発見できます。
顧客インサイトの発見例:
- 「価格が高い」という声の背景に、「導入効果が見えない」という不安がある
- 「使いにくい」という声の背景に、「オンボーディングが不十分」という課題がある
表面的な声だけでなく、その背景にある真の課題を把握することで、より本質的な改善策を立案できます。
(3) 部署間連携:CS部門・商品開発部門・マーケティング部門での情報共有
VOC分析の成果を最大化するには、部署間での情報共有が不可欠です。
情報共有の例:
- 顧客対応の不備 → CS部門(カスタマーサポート)に共有
- 商品の改善要望 → 商品開発部門に共有
- 顧客の消費傾向 → マーケティング部門に共有
必要な情報を必要な部署に速やかに共有することで、組織全体でVOCを活用できます。
5. VOC活用の成功事例と失敗パターン
(1) 成功事例:VOCに基づく商品改善・マーケティング戦略最適化
成功事例1: VOCに基づく商品改善:
- ECサイトのレビュー分析で「配送が遅い」という不満を発見
- 配送体制を見直し、翌日配送を実現
- 顧客満足度が20%向上、リピート率が15%向上
成功事例2: マーケティング戦略最適化:
- SNS分析で「環境配慮」に関心が高いことを発見
- SDGsを訴求したマーケティング施策を実施
- ブランドイメージ向上と新規顧客獲得を実現
VOC活用の成功事例は、明確な目的設定、適切な収集・分析、スピーディーな施策化が共通点です。
(2) よくある失敗パターン:目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし
失敗パターン1: 目的が不明確:
- 何のためにVOCを収集するかが定まっていない
- 結果として的外れなデータを収集し、活用できない
失敗パターン2: 収集だけで終わる:
- VOCを収集したが、分析・施策化まで至らない
- 社内リソース不足や優先順位の問題で放置される
失敗パターン3: 優先順位なし:
- すべての声を平等に扱い、重要度の低い改善に時間を費やす
- ビジネスへの影響度を考慮せず、費用対効果が見合わない
まずは明確な目的設定を行い、収集→分析→優先順位付け→施策化のサイクルを確実に回すことが重要です。
6. まとめ:VOCマーケティング成功のポイント
VOC(Voice of Customer:顧客の声)は、マーケティングにおいて、顧客ニーズの把握、商品・サービスの品質向上、顧客満足度向上、競合との差別化、マーケティング戦略の最適化という5つのメリットをもたらします。
収集方法はアンケート、コールセンター、SNS分析、インタビュー等多様で、目的に応じた選択が重要です。VOC分析ツールは、テキストマイニング、レビュー分析、コールセンター特化型に大別され、自社のニーズに合ったツールを選定する必要があります。
成功のカギは、明確な目的設定→収集→分析→優先順位付け→施策化→部署間連携のサイクルを回すことです。失敗パターン(目的不明確・収集だけで終わる・優先順位なし)を避け、スピーディーに施策化することが顧客満足度向上につながります。
次のアクション:
- VOC収集の目的を明確化する(顧客満足度向上、商品改善、マーケティング戦略最適化等)
- 既存のアンケート・問い合わせデータを整理する
- 月100件以上のVOCがある場合、VOC分析ツールの無料トライアルを試す
- VOC分析結果を関連部署(CS、商品開発、マーケティング)に共有する仕組みを構築する
- 優先度の高い改善策から実行し、効果を測定する
VOCを正しく収集・分析・施策化することで、顧客にとって価値ある商品・サービスを提供し、持続的な成長を実現しましょう。
※この記事は2025年12月時点の情報です。VOC分析技術やツールは進化し続けているため、最新情報は各ツールベンダーにご確認ください。
