カスタマーサポートのKPIとは?重要指標・設定方法・改善施策を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

カスタマーサポートの品質向上に取り組みたいけれど、何を指標にすればいいか分からない...

「応答時間を短くすればいいの?」「顧客満足度はどう測定する?」...カスタマーサポートのKPI設定に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。効率性と品質のバランスをどう取ればいいのか、具体的な目標値をどう設定すればいいのか、分からないことだらけという声も聞かれます。

この記事では、カスタマーサポートで設定すべき主要KPIから設定方法、改善施策までを、SaaS/B2B企業のCS部門責任者向けに解説します。

この記事のポイント:

  • KPIを設定する前にKGI(最終目標)を設定することが大原則
  • 主要KPIは「効率性指標」「品質指標」「自己解決指標」の3カテゴリで整理
  • 一般的に7〜14指標程度を設定する企業が多い
  • 定量評価できる指標を設定し、現実的な目標数値を設定することが重要
  • 自己解決率をKPIとして設定する企業が増えている

1. カスタマーサポートでKPI設定が重要な理由

カスタマーサポートでKPIを設定することには、以下のようなメリットがあります。

サポート品質の可視化: 「なんとなく良いサポート」ではなく、数値で品質を把握できるようになります。応答時間、解決率、顧客満足度などを数値化することで、改善すべきポイントが明確になります。

チームの目標共有: KPIを設定することで、チーム全員が同じ目標に向かって取り組めます。「何を達成すべきか」が明確になり、個人・チームの活動に一貫性が生まれます。

改善活動のPDCA: KPIを定期的に計測・レビューすることで、改善活動のPDCAサイクルが回せます。施策の効果を数値で検証し、次の改善につなげられます。

経営層への報告・予算獲得: サポート部門の成果を数値で示すことで、経営層への報告がしやすくなります。人員増強やツール導入の予算獲得にも、客観的なデータが役立ちます。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い: なお、カスタマーサポートとカスタマーサクセスではKPIの重点が異なります。

項目 カスタマーサポート カスタマーサクセス
アプローチ 反応的(問い合わせ対応) 能動的(顧客の成功支援)
重視するKPI 応答時間、処理時間、解決率 継続率、LTV、アップセル率

本記事では「カスタマーサポート」のKPIに焦点を当てて解説します。

2. カスタマーサポートで設定すべき主要KPI一覧

(1) 効率性指標(一次応答時間・処理時間・応答率)

効率性指標は、スピーディな対応を評価するための指標です。

一次応答時間(First Response Time): 顧客からの問い合わせを受けてから、最初の応答をするまでにかかる時間です。顧客は「すぐに反応してもらえた」と感じることで安心感を得られます。

  • チャット:数分以内が目安
  • メール:数時間〜24時間以内が目安
  • 電話:数十秒〜数分以内が目安

処理時間(Average Handling Time / AHT): オペレーターが1回の対応にかかる時間の長さです。対応開始から終了までの時間で、通話時間、保留時間、後処理時間を含みます。

処理時間が長すぎると顧客を待たせてしまい、短すぎると十分な対応ができていない可能性があります。品質とのバランスが重要です。

応答率(Response Rate): 受け取った問い合わせに対して、担当者が対応できた割合です。未対応のまま放置される問い合わせがないかを把握できます。

(2) 品質指標(解決率・顧客満足度・再問い合わせ率)

品質指標は、対応の質を評価するための指標です。

解決率(Resolution Rate): 問い合わせ件数に対して解決できた件数の比率です。「解決した」の定義を明確にしておくことが重要です。

顧客満足度(Customer Satisfaction / CSAT): カスタマーサポートの対応に対する顧客の満足度を示す指標です。対応後のアンケートで「満足」「普通」「不満」などを回答してもらい、数値化します。

再問い合わせ率(Re-inquiry Rate): 一度解決した問い合わせに対して、再度問い合わせされる割合です。再問い合わせ率が高い場合、初回の対応で十分に解決できていない可能性があります。

NPS(Net Promoter Score / 顧客推奨度): 顧客がそのサービスを他者に推奨する可能性を示す指標です。「このサービスを友人や同僚に勧める可能性は?」という質問に0-10で回答してもらい、推奨者(9-10)の割合から批判者(0-6)の割合を引いて算出します。

(3) 自己解決指標(自己解決率・エスカレーション回数)

自己解決指標は、顧客が自ら問題を解決できる仕組みを評価するための指標です。

自己解決率(Self-Service Rate): FAQやチャットボットなどで顧客が自ら問題解決できた割合です。自己解決率が高いと、オペレーターの負担軽減につながり、顧客もすぐに問題解決できます。

エスカレーション回数(Escalation Count): 問い合わせが上位者や専門部署に引き継がれた回数です。エスカレーションが多いと、一次対応者で解決できない問い合わせが多いことを示します。

3. KPIの設定方法(KGIからの逆算アプローチ)

(1) KGI(最終目標)の設定

KPIを設定する前に、まずKGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標)を設定することが大原則です。KGIは組織が最終的に達成したい目標を数値化した指標です。

KGIの例:

  • 顧客満足度90%以上を達成する
  • 解約率を前年比20%削減する
  • サポートコストを前年比10%削減する

KGIが不明確なままKPIを設定すると、「何のためにこの指標を追っているのか」が曖昧になり、改善活動が形骸化するリスクがあります。

(2) KGIを達成するためのKPI分解

KGIを設定したら、それを達成するために必要な取り組みを明確にし、KPIに分解します。

例: KGI「顧客満足度90%以上」を達成するためのKPI分解

  • 一次応答時間を30分以内にする(スピーディな対応)
  • 解決率を95%以上にする(確実な問題解決)
  • 再問い合わせ率を5%以下にする(初回で完結)

このように、KGI達成に寄与する要素を洗い出し、それぞれを数値目標として設定します。

(3) 現実的な目標数値の設定方法

現状の把握: まず現状の数値を計測します。改善前の基準値(ベースライン)がなければ、目標設定も効果測定もできません。

業界ベンチマークの参考: 業界の平均値や優良企業の数値を参考にします。ただし、業種・企業規模・サポート体制により大きく異なるため、絶対視せず参考程度に留めます。

段階的な改善目標: 一気に高い目標を設定するのではなく、段階的に改善目標を設定します。達成不可能な高すぎる目標は、従業員のモチベーション低下につながります。

例:

  • 現状: 一次応答時間 平均60分
  • 3ヶ月後目標: 45分
  • 6ヶ月後目標: 30分

4. KPI測定ツールと可視化方法

(1) カスタマーサポートツールでの測定機能

多くのカスタマーサポートツール(Zendesk、Freshdesk、Intercomなど)には、KPIを自動計測する機能が備わっています。

自動計測できる主な指標:

  • 一次応答時間
  • 処理時間
  • 応答率
  • チケット数・対応件数

アンケート機能で計測する指標:

  • 顧客満足度(CSAT)
  • NPS

ツールを活用することで、手動での集計作業を削減し、リアルタイムでKPIを把握できます。

(2) ダッシュボードによる可視化

KPIはダッシュボードで可視化することで、チーム全員が現状を把握しやすくなります。

ダッシュボード設計のポイント:

  • 重要なKPIを一画面で確認できるようにする
  • トレンド(推移)がわかるグラフを含める
  • 目標値との比較ができるようにする
  • 更新頻度を明確にする(リアルタイム/日次/週次)

(3) 定期的なレビューと改善サイクル

KPIは設定して終わりではなく、定期的にレビューして改善につなげることが重要です。

週次レビュー:

  • 主要KPIの推移確認
  • 大きな変動があれば原因分析
  • 短期的な改善アクションの検討

月次レビュー:

  • 目標達成度の評価
  • 改善施策の効果検証
  • 翌月の重点項目決定

四半期レビュー:

  • KPI自体の見直し(追加・削除・目標値変更)
  • 中長期的な改善計画の策定

5. KPI改善施策と実践ポイント

(1) 応答時間・処理時間の短縮施策

テンプレート・定型文の整備: よくある問い合わせへの回答テンプレートを整備することで、対応時間を短縮できます。

ナレッジベースの活用: オペレーターが参照できるナレッジベースを整備し、回答の質を担保しながら処理時間を短縮します。

シフト・人員配置の最適化: 問い合わせが多い時間帯に人員を厚く配置することで、応答時間を短縮できます。

チャットボット・AIの活用: 一次対応にチャットボットを導入することで、単純な問い合わせを自動対応し、オペレーターは複雑な問い合わせに集中できます。

(2) 顧客満足度・解決率の向上施策

オペレーター教育・研修: 対応スキルの向上により、顧客満足度と解決率を高めます。ロールプレイングや事例共有が効果的です。

対応品質のモニタリング: 対応内容を定期的にチェックし、改善点をフィードバックします。良い対応事例をチームで共有することも重要です。

エスカレーションルールの明確化: どのような場合に上位者や専門部署にエスカレーションするかを明確にし、適切なタイミングで引き継ぐことで解決率を高めます。

(3) ナレッジベース活用による自己解決率向上

FAQの充実: よくある問い合わせをFAQにまとめ、顧客が自己解決できる環境を整えます。問い合わせ内容の分析から、追加すべきFAQを特定します。

検索性の向上: 顧客がFAQを見つけやすくするため、検索機能の改善やカテゴリ整理を行います。

FAQの定期更新: サービスの変更や新機能追加に合わせてFAQを更新し、情報の鮮度を保ちます。

自己解決率をKPIとして設定する企業が増えており、ナレッジベース活用によるKPI改善が注目されています。

6. まとめ:KPI運用を成功させる注意点

カスタマーサポートのKPI設定と運用を成功させるためのポイントを整理します。

KPI設定の注意点:

  • KPIを設定する前にKGI(最終目標)を設定することが大原則
  • 定量評価できる指標を設定する(数値化できない目標は評価・改善が困難)
  • 現実的な目標数値を設定する(高すぎる目標はモチベーション低下につながる)
  • 効率性指標と品質指標のバランスを取る(応答時間だけに偏らない)

KPI運用の注意点:

  • 定期的にレビューし、改善につなげる
  • KPIを人事評価と連動させる場合は、効率性指標だけでなく品質指標も含める
  • 数値だけで評価すると対応品質が低下するリスクがあるため、定性評価も組み合わせる

次のアクション:

  • 自社のKGI(最終目標)を明確にする
  • 現状のKPIを計測し、ベースラインを把握する
  • 効率性・品質・自己解決の3カテゴリからバランスよくKPIを選定する
  • 段階的な改善目標を設定し、PDCAを回す

KPIは設定して終わりではなく、継続的に計測・レビュー・改善を行うことで、サポート品質の向上につながります。まずは現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問:

Q: KPIはいくつ設定すべきですか? A: 一般的に7〜14指標程度を設定する企業が多いです。多すぎると管理が煩雑になり、少なすぎると偏りが生じます。効率性・品質・自己解決のバランスを考慮して選定してください。最初は基本的な指標に絞り、運用に慣れてから追加することをお勧めします。

Q: チーム規模によってKPIは変えるべき? A: 小規模チームは基本指標(一次応答時間・解決率・顧客満足度など)に絞ることをお勧めします。規模拡大に伴い、自己解決率やエスカレーション回数など詳細指標を追加していくとよいでしょう。運用の負担と効果を考慮して段階的に拡充してください。

Q: KPIの目標値はどう設定すればよい? A: まず現状を計測し、業界ベンチマークを参考に段階的な改善目標を設定します。達成不可能な高すぎる目標は従業員のモチベーション低下を招きます。現状から10-20%改善を目指す程度から始め、達成したら次の目標を設定するアプローチが効果的です。

Q: KPIを人事評価と連動させるべき? A: 連動させる場合は、効率性指標(応答時間など)だけでなく品質指標(顧客満足度など)も必ず含めてください。数値だけで評価すると「早く終わらせること」が優先され、対応品質が低下するリスクがあります。定量評価と定性評価を組み合わせることを推奨します。

よくある質問

Q1KPIはいくつ設定すべきですか?

A1一般的に7〜14指標程度を設定する企業が多いです。多すぎると管理が煩雑になり、少なすぎると偏りが生じます。効率性・品質・自己解決のバランスを考慮して選定してください。最初は基本的な指標に絞り、運用に慣れてから追加することをお勧めします。

Q2チーム規模によってKPIは変えるべき?

A2小規模チームは基本指標(一次応答時間・解決率・顧客満足度など)に絞ることをお勧めします。規模拡大に伴い、自己解決率やエスカレーション回数など詳細指標を追加していくとよいでしょう。

Q3KPIの目標値はどう設定すればよい?

A3まず現状を計測し、業界ベンチマークを参考に段階的な改善目標を設定します。達成不可能な高すぎる目標は従業員のモチベーション低下を招きます。現状から10-20%改善を目指す程度から始めることをお勧めします。

Q4KPIを人事評価と連動させるべき?

A4連動させる場合は、効率性指標だけでなく品質指標も必ず含めてください。数値だけで評価すると対応品質が低下するリスクがあります。定量評価と定性評価を組み合わせることを推奨します。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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