Salesforce導入企業がMA機能を検討する背景
BtoB・BtoC企業でSalesforceを導入している担当者にとって、マーケティング活動を効率化するMA(マーケティングオートメーション)機能の追加は重要な検討課題です。「リード獲得を増やしたい」「営業との連携を強化したい」「データに基づいた施策を実施したい」といったニーズに対して、SalesforceはどのようなMAツールを提供しているのでしょうか。
Salesforceは、B2B向けとB2C向けの2つのMAツールを提供しています。B2B企業向けには「Marketing Cloud Account Engagement」(旧Pardot)、B2C企業向けには「Marketing Cloud Engagement」が用意されており、企業の特性に応じて選択できます。
この記事では、SalesforceのMAツール全体像、Account Engagement(旧Pardot)の機能と特徴、Marketing Cloud Engagementとの比較、料金体系、導入事例を解説します。
この記事のポイント:
- SalesforceのMAツールは2種類:B2B向けAccount Engagement(旧Pardot)と、B2C向けMarketing Cloud Engagement
- Account EngagementはSales Cloudと併用が前提で、マーケティング・営業データを双方向同期できる
- 2024年はWinter、Spring、Summer、Winter '25と年4回のリリースサイクルで機能強化を実施(生成AI、Data Cloud連携等)
- 初期費用なし、月額ユーザー課金モデル。ただしAccount EngagementとSales Cloudの両方が必要で、2つのプラットフォーム分のコストが発生
- 導入効果例:同時実行施策数を200から600へ3倍増加、顧客データ一元化によるセグメンテーション最適化
SalesforceのMAツール全体像:2つの選択肢とその違い
(1) Account Engagement(旧Pardot):B2B向けMA
Account Engagement(旧Pardot、2022年に名称変更)は、Salesforceが提供するB2B企業向けのマーケティングオートメーションツールです。
Account Engagementの特徴:
- B2Bリード獲得・育成に特化した機能
- Sales Cloud(SalesforceのCRM)との統合利用が前提
- リードスコアリング、ナーチャリング、メール自動化、ランディングページ作成等の機能を提供
- 世界No.1 CRM上に構築された唯一のB2Bマーケティングオートメーションプラットフォーム(Salesforce公式)
適している企業:
- B2B企業(BtoB取引が中心の企業)
- Salesforce Sales Cloudを既に導入している企業
- マーケティング部門と営業部門の連携を強化したい企業
(2) Marketing Cloud Engagement:B2C向けMA
Marketing Cloud Engagementは、SalesforceのB2C企業向けマーケティングオートメーションツールです。
Marketing Cloud Engagementの特徴:
- B2C向けのマルチチャネルマーケティング機能(メール、SMS、モバイルプッシュ、広告等)
- 大量の顧客データを管理し、パーソナライズされたメッセージ配信が可能
- ジャーニービルダー(顧客の購買プロセスに応じた自動化)を提供
適している企業:
- B2C企業(消費者向けビジネスが中心の企業)
- 大量の顧客データを扱う企業
- マルチチャネルでのパーソナライズされたマーケティングを実施したい企業
(3) Sales CloudとMAツールの連携
Account EngagementはSales Cloudと併用することで、マーケティング・営業データを双方向同期し、リード情報をシームレスに共有できます。
Sales Cloud + Account Engagementの連携メリット:
- マーケティングチームが獲得したリードを、営業チームがSales Cloudで即座に確認・追跡できる
- リードスコアリング(見込み客の関心度を数値化)により、営業担当者が優先順位をつけて対応できる
- 営業活動の結果をマーケティングチームがAccount Engagementで確認し、施策を改善できる
ただし、Account EngagementとSales Cloudの両方を導入する必要があるため、コストが2つのプラットフォーム分発生する点に注意が必要です。
Account Engagement(旧Pardot)の機能と特徴
(1) 主要機能:リードスコアリング・ナーチャリング・メール自動化
Account Engagementの主要機能は以下の通りです:
リードスコアリング:
- 見込み客の関心度・確度を数値化する機能
- Webサイト訪問、メール開封、資料ダウンロード等の行動に基づいてスコアを自動付与
- AI予測リードスコアリング機能(Advancedプラン以上)で、成約確度の高いリードを優先的に抽出
リードナーチャリング:
- Engagement Studio(キャンペーン自動化機能)により、複数ステップのナーチャリングを設計・実行
- 見込み客の行動に応じて、最適なタイミングでメールを配信
- 2024年Summerリリースでオペレーショナルメール送信機能を追加
メール自動化:
- バッチメール配信、ドリップメール配信(段階的配信)
- 2024年Springリリースで生成AIによるランディングページ・フォーム・リストメール作成機能を追加(Advanced・Premiumエディション)
- Lightning Email Builderでメールテンプレートを効率的に作成
その他の機能:
- ランディングページ作成(API経由の作成も可能、2024年Summer)
- フォーム作成
- B2B Marketing Analytics(マーケティングROIの測定・分析、Advancedプラン以上)
(2) PardotキャンペーンとSalesforceキャンペーンの違い
Account Engagement(旧Pardot)とSales Cloudのキャンペーン機能には、以下のような違いがあります:
Pardotキャンペーン(Account Engagementキャンペーン):
- 見込み客が最初にエンゲージメントしたソース(初回接点)を追跡(1対1の関係)
- 「この見込み客は、どのキャンペーンから獲得したのか?」を明確にする
Salesforceキャンペーン:
- 1人のリード・コンタクトを複数のキャンペーンに紐付け可能(1対多の関係)
- 「この見込み客は、どのキャンペーンに参加したことがあるか?」を包括的に管理
この違いを理解することで、初回接点の追跡と包括的なキャンペーン管理を両立できます。
(3) 2024年の最新アップデート(生成AI・Data Cloud連携)
2024年はAccount Engagementの機能が大幅に強化されています:
2024年Springリリース:
- 生成AIによるランディングページ・フォーム・リストメール作成機能追加(Advanced・Premiumエディション)
- Data Cloud連携強化(Account EngagementのメールエンゲージメントデータをData Cloudにインポート可能)
- Lightning Email Builderアップデート
2024年Summerリリース:
- Engagement Studioでオペレーショナルメール送信機能追加
- API経由のランディングページ作成対応
- Google Manifest V2廃止によりSalesforce Engage for Gmail拡張機能が2024年6月に機能停止(API改善で対応)
2024年Winter '25リリース:
- Agentforce Campaign Creation(AI活用キャンペーン作成)を全顧客に展開(Growth、Plus、Advanced、Premium)
- SMS機能追加(マルチチャネルジャーニー)
- Cross-Object Merge Fields(メッセージパーソナライゼーション)追加
- 重複排除支援機能追加(Optimizer)
- フォーム・メールをSalesforce CMSに転送可能(PDF・MP4・ZIPサポート)
これらのアップデートにより、生成AIを活用したキャンペーン作成の効率化、Data Cloudとの統合によるデータ分析の高度化が可能になりました。
Marketing Cloud EngagementとAccount Engagementの比較
(1) B2B向けとB2C向けの機能差
Account EngagementとMarketing Cloud Engagementの主な違いは以下の通りです:
Account Engagement(B2B向け):
- リードスコアリング、ナーチャリング、営業連携に特化
- Sales Cloudとの統合利用が前提
- B2Bリード獲得・育成に最適化された機能
Marketing Cloud Engagement(B2C向け):
- マルチチャネルマーケティング(メール、SMS、モバイルプッシュ、広告等)
- ジャーニービルダー(顧客の購買プロセスに応じた自動化)
- 大量の顧客データを扱うB2C企業に最適化された機能
企業の特性に応じて、適切なMAツールを選択することが重要です。
(2) 推奨プラン:AdvancedとPremiumの違い
Account Engagementは複数のプランを提供しており、「Advanced」以上のプランでB2B Marketing Analytics、AI予測リードスコアリング機能をフル活用できます。
主なプラン:
- Growth: 基本機能
- Plus: 中級機能
- Advanced: B2B Marketing Analytics、AI予測リードスコアリング、生成AI機能(2024年Spring以降)
- Premium: 最上位機能
導入時は「Advanced」プラン以上を選択することで、データ分析・AI機能を活用した高度なマーケティング施策が可能になります。
(3) サードパーティMAツールとの比較
Salesforce環境では、Account Engagement以外にサードパーティ製MAツール(HubSpot、Marketo等)を連携する選択肢もあります。
Account Engagementのメリット:
- Sales Cloudとの統合が最もスムーズ(同じSalesforce.com製品のため)
- マーケティング・営業データの双方向同期が標準機能
- Salesforce環境でのシングルサインオン
サードパーティMAツールのメリット:
- 価格競争力(HubSpotは無料プランあり、Marketoは高機能だがコストも高い)
- 特定の機能に特化(Marketoはカスタマイズ性が高い、HubSpotは中小企業向けで使いやすい)
Salesforce Sales Cloudを既に導入している企業で、マーケティング・営業連携を最優先する場合はAccount Engagementが適していると言われています。一方、コスト重視・特定機能重視の場合はサードパーティMAツールも検討する価値があります。
料金体系と導入事例
(1) 初期費用と月額課金モデル
Salesforce全サービスは初期費用なし、月額ユーザー課金モデルです。
Account Engagementの料金体系:
- 初期費用: なし
- 月額課金: ユーザー数・プランに応じて変動
- 詳細な料金は公式サイトで非公開のため、個別見積もりが必要
Marketing Cloud Engagementの料金体系:
- 3つのプラン: Professional、Corporate、Enterprise
- 詳細な料金は個別見積もりが必要
※料金は2024年時点の情報です。最新情報は公式サイトで確認してください。
(2) 導入コストの注意点(2つのプラットフォーム分必要)
Account Engagementを導入する際は、以下の点に注意が必要です:
コストの注意点:
- Account EngagementとSales Cloudの両方を導入する必要がある
- 2つのプラットフォーム分のコストが発生する
- ユーザー数が増えると、両方の月額費用が増加する
導入前に詳細な見積もりを取得し、想定外のコストが発生しないよう確認することが重要です。
(3) 導入事例と成果(施策数3倍増、顧客データ一元化等)
国内企業のSalesforce MA導入事例と成果は以下の通りです:
オンワードパーソナルスタイル:
- Service Cloud・Marketing Cloudで顧客データを一元化
- セグメンテーション最適化により、顧客ごとに最適なメッセージを配信
プログリット:
- KPI管理徹底、情報連携自動化で業務生産性向上
- マーケティング・営業プロセスの効率化を実現
Marketing Cloud + Data Cloud導入事例:
- 同時実行施策数を200から600へ3倍増加
- データ統合・分析基盤の強化により、施策の高速化を実現
導入事例は企業規模・業種・運用体制により結果が異なるため、自社の状況に照らして参考にすることが重要です。
まとめ:B2B・B2C別のMAツール選定ガイド
Salesforceは、B2B向けとB2C向けの2つのMAツールを提供しています。B2B企業はAccount Engagement(旧Pardot)、B2C企業はMarketing Cloud Engagementを選択することで、企業の特性に最適化されたマーケティング施策が可能になります。
MA選定のポイント:
- B2B企業: Account Engagement(旧Pardot)を選択し、Sales Cloudと統合利用
- B2C企業: Marketing Cloud Engagementを選択し、マルチチャネルマーケティングを実施
- 導入時は「Advanced」プラン以上を選択し、B2B Marketing Analytics・AI機能をフル活用
- コストはAccount EngagementとSales Cloudの2つのプラットフォーム分が必要
- 2024年の最新アップデート(生成AI、Data Cloud連携)を活用し、施策の効率化・高度化を推進
次のアクション:
- 自社がB2B企業かB2C企業かを明確にする
- Account EngagementまたはMarketing Cloud Engagementの公式サイトで詳細を確認する
- Sales Cloudとの連携方法を確認する
- 詳細な見積もりを取得し、導入コストを試算する
- 導入事例を参考に、自社での活用イメージを具体化する
自社に合ったMAツールで、マーケティング活動の効率化とリード獲得の最大化を目指しましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報です。最新情報は公式サイトをご確認ください。
