Salesforceで失注理由を分析する方法|データ活用と改善施策の立て方

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/15

失注した商談から何を学ぶべきか

B2B営業のマネージャーやSalesforce管理者として、「商談が失注した後、なぜ失注したのかを分析できていない」「失注データは蓄積しているが、どう活用すればいいか分からない」という課題に直面することがあります。失注理由を記録しても、その分析方法や改善施策への活かし方が不明確だと、せっかくのデータが活用されません。

SalesforceのSales Cloudを活用すれば、失注理由の記録・分析・可視化が効率的にでき、受注率向上につながる具体的な改善ポイントを発見できます。この記事では、Salesforceでの失注理由の記録設定、分析方法、改善施策への活かし方まで、B2B営業の現場で実践できる形で解説します。

この記事のポイント:

  • 失注理由の分析は受注率向上への具体的な改善ポイントを可視化し、営業プロセスの課題を明確にする
  • 失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入するため、掘り起こしの価値が高い
  • Salesforceでは商談オブジェクトに失注理由フィールドを追加し、プルダウン選択肢で標準化することが推奨される
  • 入力規則で商談フェーズ「不成立」時に失注理由を必須化すれば、入力漏れを防げる
  • 失注理由は「顧客視点の理由」と「営業側の原因」を分けて記録することで分析精度が上がる
  • Sales Cloudのレポート・ダッシュボード機能で、営業担当者別・フェーズ別・競合別の失注分析が可能

1. なぜ失注理由の分析が重要なのか

(1) 受注率向上への具体的な改善ポイントが見える

失注理由を分析することで、営業プロセスのどこに課題があるのかが明確になります。

分析によって見えてくる改善ポイント:

  • 価格競争で負けることが多い → 価格以外の価値訴求の強化
  • 提案内容が顧客の要件に合わない → ヒアリング力の向上
  • 営業フェーズの初期で失注が多い → 初回アプローチの改善
  • 特定の営業担当者の失注率が高い → 個別トレーニングの実施

営業活動を細分化して可視化することで、具体的な失注要因を把握し、次回以降の営業活動に活かすことができます。

(2) 失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入(掘り起こしの価値)

失注した商談は「もう見込みがない」と諦めがちですが、実際には失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入しています。つまり、失注 = 需要がないわけではなく、「今回はタイミングや条件が合わなかった」だけのケースが多いのです。

掘り起こしの価値:

  • 一定期間(60日後、6ヶ月後など)を置いて再アプローチすることで、成約の可能性がある
  • 失注理由に応じた掘り起こしシナリオ(価格改善、新機能追加等)を設定できる
  • Salesforceで掘り起こしプロセスを自動化すれば、漏れなくフォローできる

(3) 営業プロセスの課題を可視化できる

失注分析を通じて、営業プロセス全体の課題を可視化できます。

可視化される課題の例:

  • 営業フェーズ別: どのフェーズで失注が多いか(提案、交渉、最終決定等)
  • 営業担当者別: 特定の担当者の失注率が高いか、どの要因で失注しているか
  • 競合他社別: どの競合に負けることが多いか、その理由は何か
  • 時期別: 特定の時期(年度末、予算編成時期等)に失注が増えるか

これらのデータをもとに、営業プロセス全体の改善施策を立案できます。

2. Salesforceでの失注理由の記録設定

(1) 商談オブジェクトに失注理由フィールドを追加

Salesforceでは、商談(Opportunity)オブジェクトに失注理由を記録するカスタムフィールドを追加します。

設定手順(概要):

  1. 設定画面からオブジェクトマネージャーを開く
  2. 商談オブジェクトを選択
  3. カスタムフィールド「失注理由」を作成(選択リスト型 / Picklist)
  4. 選択肢を定義(後述の分類を参考)

(2) プルダウン選択肢(Picklist)で標準化する

失注理由は選択肢(プルダウン)で統一することで、データの集計・分析がしやすくなります。自由記述形式だと、「価格が高い」「料金が合わない」「コストが見合わない」など表現がバラバラになり、集計が困難です。

プルダウン選択肢の例:

  • 価格が合わなかった
  • 競合他社を選定した
  • 機能・仕様が要件に合わなかった
  • タイミングが合わなかった(予算・導入時期等)
  • 意思決定者の承認が得られなかった
  • 提案内容が不十分だった
  • 関係構築が不足していた
  • その他(自由記述欄を併用)

選択肢は自社の営業プロセスや業界特性に合わせてカスタマイズすることが推奨されます。

(3) 入力規則で「不成立」時に失注理由を必須化

Salesforceの入力規則(Validation Rule)を使い、商談フェーズが「不成立」になったときに失注理由を必須入力にすることで、入力漏れを防げます。

入力規則の例:

  • 条件: 商談フェーズ = 「不成立」かつ失注理由が空欄
  • エラーメッセージ: 「失注理由を入力してください」

これにより、営業担当者が失注を記録する際、必ず失注理由も入力するようになります。

(4) 「顧客視点の理由」と「営業側の原因」を分けて記録

失注理由を「顧客視点の理由」と「営業側の原因」に分けて記録すると、分析精度が上がります。

顧客視点の理由(Lost Reason):

  • 価格が合わなかった
  • タイミングが合わなかった
  • 機能・仕様が要件に合わなかった
  • 競合他社を選定した

営業側の原因(Lost Cause):

  • 提案力不足
  • ヒアリング不足
  • 関係構築不足
  • フォロー遅延

2つのフィールドを設けることで、「顧客はタイミングが合わなかったと言っているが、実際には営業のフォローが遅れたことが原因」といった深い分析が可能になります。

3. 失注理由の分類と主要な失注要因

(1) 3つの本質的カテゴリ(意思決定の未熟さ、タイミング不一致、商品・サービス要因)

2024年の最新アプローチでは、失注理由を以下の3つのカテゴリに分類することが推奨されています:

カテゴリ1:意思決定の未熟さ

  • 意思決定者の承認が得られなかった
  • 社内の合意形成ができなかった
  • 予算が確保できなかった

カテゴリ2:タイミング不一致

  • 導入時期が合わなかった
  • 予算編成の時期とズレていた
  • 組織変更・人事異動のタイミングと重なった

カテゴリ3:商品・サービス要因

  • 価格が合わなかった
  • 機能・仕様が要件に合わなかった
  • 競合他社の方が魅力的だった

この分類により、「タイミング不一致」であれば掘り起こしの価値が高く、「商品・サービス要因」であれば製品改善が必要、といった判断ができます。

(2) 主な失注要因4つ(価格競争、提案内容不足、要件不一致、タイミング)

失注の主な要因は、以下の4つにまとめられます:

1. 価格競争

  • 競合他社の方が安かった
  • 予算オーバーだった
  • 費用対効果が見えなかった

2. 提案内容不足

  • 顧客の課題を十分にヒアリングできていなかった
  • 提案資料が不十分だった
  • 顧客の業界・事業に対する理解が浅かった

3. 要件不一致

  • 機能・仕様が顧客の要件に合わなかった
  • カスタマイズ対応が難しかった
  • 既存システムとの連携ができなかった

4. タイミング

  • 導入時期が合わなかった
  • 組織変更で担当者が変わった
  • 予算が確保できなかった

(3) 失注を招く要因13選の概要

より詳細には、失注を招く要因として13の項目が挙げられています:

  1. 価格が合わなかった
  2. 競合他社を選定した
  3. 機能・仕様が要件に合わなかった
  4. タイミングが合わなかった
  5. 意思決定者の承認が得られなかった
  6. 提案内容が不十分だった
  7. 関係構築が不足していた
  8. ヒアリングが不足していた
  9. フォローが遅れた
  10. 顧客の業界理解が浅かった
  11. 導入後のサポート体制が不明確だった
  12. 社内の合意形成ができなかった
  13. 予算が確保できなかった

これらを参考に、自社の営業プロセスに合った失注理由の選択肢を設計してください。

4. Salesforceを活用した失注分析の方法

(1) Sales Cloudのレポート・ダッシュボード機能

SalesforceのSales Cloudを使えば、データ集計・可視化が簡単にでき、失注割合や失注要因の分析が効率的にできます。

活用できる機能:

  • レポート: 失注商談の一覧、失注理由別の集計、営業担当者別の失注率等
  • ダッシュボード: 失注理由の割合をグラフ化、営業フェーズ別の失注数を可視化
  • フィルター: 期間、営業担当者、商品、地域等で絞り込み

(2) 営業担当者別・営業フェーズ別の失注分析

失注分析では、営業担当者別、営業フェーズ別に分析することが重要です。

営業担当者別分析:

  • 特定の担当者の失注率が高い場合、個別トレーニングが必要
  • 失注理由が「提案力不足」「ヒアリング不足」に偏っている場合、スキル向上が課題

営業フェーズ別分析:

  • 初期フェーズ(見込み、提案)で失注が多い → 初回アプローチの改善
  • 後期フェーズ(交渉、最終決定)で失注が多い → クロージング力の強化

(3) 競合他社別の失注分析

競合他社別に失注理由を分析することで、競合対策を立てられます。

分析のポイント:

  • 特定の競合に負けることが多い場合、その理由(価格、機能、ブランド等)を分析
  • 競合の強み・弱みを把握し、差別化ポイントを明確にする

(4) 商談履歴レポートで進捗状況を追跡

Salesforceの商談履歴レポート(Opportunity History Report)を活用すれば、商談がどのフェーズまで進んだかを追跡できます。

活用例:

  • どのフェーズで失注が多いかを可視化
  • フェーズごとの滞留期間を分析し、営業プロセスのボトルネックを発見

5. 失注分析から改善施策へつなげる

(1) 失注要因に応じた営業プロセスの改善

失注要因に応じて、営業プロセスを改善します。

改善施策の例:

  • 価格競争で負ける: 価格以外の価値(ROI、サポート体制、導入実績等)を訴求
  • 提案内容不足: ヒアリングシートを作成し、顧客の課題を深く理解
  • 要件不一致: 提案前に要件定義をしっかり行い、ミスマッチを防ぐ
  • タイミング不一致: 掘り起こしシナリオを設定し、適切なタイミングで再アプローチ

(2) 営業担当者の教育・トレーニング

失注分析の結果を基に、営業担当者の教育・トレーニングを実施します。

トレーニングの例:

  • 提案力不足が課題 → 提案書作成研修
  • ヒアリング不足が課題 → 質問力向上研修
  • 関係構築不足が課題 → 顧客エンゲージメント研修

(3) 失注商談の掘り起こし(60日後の再アプローチ等)

失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入するため、掘り起こしの価値が高いです。Salesforceで掘り起こしシナリオを設定し、自動化することが推奨されます。

掘り起こしシナリオの例:

  • タイミング不一致 → 60日後に再アプローチ
  • 価格が合わなかった → 新しい料金プランが出たタイミングで連絡
  • 機能不足 → 新機能が追加されたタイミングで提案

(4) 顧客アンケートによる真の失注理由の収集

営業担当者が記録した失注理由は主観的な場合があり、顧客の本音とズレている可能性があります。顧客アンケートで真の失注理由を収集することが推奨されます。

アンケートの例:

  • 失注直後に顧客にアンケートを送付
  • 「今回ご契約に至らなかった理由を教えてください」(複数選択 + 自由記述)
  • 営業担当者が記録した理由と顧客の回答を比較分析

6. まとめ:失注分析を受注率向上に活かすために

Salesforceを活用した失注理由の分析は、受注率向上への具体的な改善ポイントを明確にし、営業プロセス全体の課題を可視化します。失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入するため、掘り起こしの価値も高いです。

次のアクション:

  • Salesforceの商談オブジェクトに失注理由フィールドを追加する
  • プルダウン選択肢で失注理由を標準化する
  • 入力規則で商談フェーズ「不成立」時に失注理由を必須化する
  • Sales Cloudのレポート・ダッシュボード機能で失注分析を実施する
  • 営業担当者別・フェーズ別・競合別に分析し、改善施策を立案する
  • 失注商談の掘り起こしシナリオを設定し、自動化する

失注理由の記録と分析は、一度設定すれば継続的に営業プロセスの改善に活かせる資産となります。Salesforceの標準機能を活用し、データドリブンな営業マネジメントを実現しましょう。

※この記事は2024-2025年時点の情報です。Salesforceの設定方法は将来変更される可能性があるため、公式ドキュメントで最新情報を確認してください。

よくある質問

Q1失注理由はどう分類すべきですか?

A1大きく3つのカテゴリに分類することが推奨されます:(1)意思決定の未熟さ(承認が得られなかった、予算確保できなかった等)、(2)タイミング不一致(導入時期が合わなかった等)、(3)商品・サービス要因(価格、機能、競合等)。さらに「顧客視点の理由」と「営業側の原因」を分けて記録すると、分析精度が上がります。

Q2営業担当者が失注理由を入力し忘れないようにするには?

A2Salesforceの入力規則(Validation Rule)で、商談フェーズが「不成立」になったときに失注理由を必須入力にすることができます。プルダウン選択肢(Picklist)で標準化すれば、入力負担を減らしつつデータの一貫性も保てます。

Q3失注商談は掘り起こすべきですか?

A3掘り起こすべきです。失注商談の約8割が2年以内に競合他社から購入しており、再アプローチの価値が高いことが分かっています。Salesforceで掘り起こしシナリオ(60日後の再アプローチ、新機能リリース時の連絡等)を設定し、自動化することが推奨されます。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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