Salesforceのデータベースを理解する重要性
Salesforceを導入したものの、「データがうまく整理できない」「レポートが思うように作れない」といった悩みを抱えていませんか?
B2B企業の営業担当者や営業マネージャーの多くが、Salesforceのデータ管理に課題を感じています。「オブジェクトとは何?」「リレーションシップの設定方法は?」「大量データをどう扱えばいい?」といった疑問は尽きません。
この記事では、Salesforceのデータベース機能の基本から、効果的なデータ管理・活用方法まで、実践的なポイントを解説します。
この記事のポイント:
- Salesforceは独自の用語体系(オブジェクト・レコード・フィールド)を使用しており、理解することで効率的なデータ管理が可能
- リレーションシップは参照関係(ルックアップ)と主従関係(マスター詳細)の2種類があり、用途に応じた使い分けが重要
- データモデル設計の良し悪しが後々のカスタマイズや使い勝手に大きく影響するため、初期設計が重要
- 定期的なバックアップや監査ログの記録が重要だが、実際に利用している企業は39%にとどまる
- 2024年、Data Cloudベクトルデータベースの国内提供開始により、非構造化データの保管も可能に
Salesforceのデータベースを理解する重要性
(1) CRM運用におけるデータベースの役割
Salesforceは世界最大手のクラウド型CRM(顧客関係管理)プラットフォームで、2024年のIDC調査では8年連続でグローバルCRMプロバイダー第1位を維持し、市場シェア22.1%を獲得しています。日本市場でも38.82%のシェアを持ち、多くのB2B企業で採用されています。
Salesforceの核となるのがデータベース機能です。顧客情報、商談データ、営業活動履歴など、あらゆるビジネスデータを一元管理し、営業活動の効率化や意思決定の精度向上を実現します。
(2) データ管理の質がビジネスに与える影響
データ管理の質は、営業活動の成果に直結します。適切なデータモデル設計により、以下のメリットが得られます:
営業活動の効率化:
- 顧客情報の迅速な検索・参照
- レポート・ダッシュボードでの可視化
- 営業プロセスの標準化と共有
意思決定の精度向上:
- 正確なデータに基づく判断
- 売上予測の精度向上
- リソース配分の最適化
一方、データ管理が不適切だと、データの重複、不整合、検索困難といった問題が発生し、営業活動の足かせとなります。
Salesforceのデータベース構造の基礎知識
(1) オブジェクト・レコード・フィールドの概念
Salesforceは独自の用語体系を使用しています。一般的なデータベース用語との対応を理解することで、スムーズに操作できます:
オブジェクト(Object):
- 一般的なデータベースの「テーブル」に相当
- 取引先、商談、リードなどのデータのまとまり
- 標準オブジェクトとカスタムオブジェクトがある
レコード(Record):
- データベースの「行(Row)」に相当
- 個々のデータエントリ(例:A社の取引先情報)
フィールド(Field):
- データベースの「列(Column)」に相当
- 各データ項目(例:会社名、住所、電話番号)
これらの用語を理解することで、データ設計やカスタマイズがスムーズに進みます。
(2) リレーションシップの種類と使い分け
Salesforceのデータベースは複数のオブジェクト間でデータ連携が可能です。主なリレーションシップは以下の2種類です:
ルックアップリレーションシップ(参照関係):
- 2つのオブジェクト間の緩やかな関連付け
- 親レコードを削除しても子レコードは残る
- 例:取引先と商談(商談から取引先を参照)
マスター詳細リレーションシップ(主従関係):
- 親子関係が明確な強い関連付け
- 親レコードを削除すると子レコードも削除される
- 子レコードは必ず親レコードに紐づく
- 例:商談と商談商品(商談商品は必ず商談に属する)
用途に応じた使い分けが重要で、ビジネスロジックを正確に反映することで、データの整合性が保たれます。
(3) 標準オブジェクトとカスタムオブジェクトの違い
標準オブジェクト:
- Salesforceに最初から用意されているオブジェクト
- 取引先、商談、リード、キャンペーンなど
- 基本的な営業活動をカバー
カスタムオブジェクト:
- 業務に応じて独自に作成できるオブジェクト
- 標準オブジェクトでカバーできない業務要件に対応
- 例:プロジェクト管理、顧客サポート、製品管理など
業務に最適化したデータ管理を実現するには、標準オブジェクトとカスタムオブジェクトを適切に組み合わせることが重要です。
(4) 技術仕様:Oracle RDBMSとPostgreSQL
Salesforceは主にOracleのRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)を使用しています。一部PostgreSQLも利用していますが、大部分はOracleデータベース上で動作します。
ユーザーは通常、この技術仕様を意識する必要はありませんが、大量データを扱う際やパフォーマンスチューニングを行う際には、RDBMSの特性を理解していると役立ちます。
データモデル設計の実践ポイント
(1) 業務プロセスに基づいた設計アプローチ
データモデル設計の良し悪しが、後々のカスタマイズや使い勝手に大きく影響します。失敗を避けるためには、以下のステップに従います:
1. 業務プロセスの分析:
- 営業フロー、顧客管理プロセスを詳細に把握
- 必要なデータ項目を洗い出し
2. 概念データモデルの作成:
- 業務上の主要なエンティティ(取引先、商談、プロジェクトなど)を抽出
- エンティティ間の関係性を整理
3. Salesforceオブジェクトへのマッピング:
- 標準オブジェクトで対応できる部分を特定
- カスタムオブジェクトが必要な部分を設計
初期設計を慎重に行うことで、後からの大規模な変更を避けられます。
(2) スキーマビルダーの活用方法
Salesforceのスキーマビルダーは、データモデルを視覚的に設計・管理できるツールです。
主な機能:
- オブジェクト間のリレーションシップを図で確認
- フィールドやリレーションシップの追加・編集
- 全体像の把握が容易
スキーマビルダーで全体像を可視化することで、設計の整合性を確認しやすくなります。
(3) 設計時の注意点と失敗回避
よくある失敗例:
過度な正規化:
- データベース理論に従いすぎてオブジェクトを細分化しすぎると、操作が複雑になる
- Salesforceの特性に合わせた適度な設計が重要
リレーションシップの不適切な設計:
- ルックアップとマスター詳細の使い分けミス
- 循環参照の発生
変更コストの高さ:
- データモデルの後からの変更は、データ移行やカスタマイズの修正が必要
- 初期段階での慎重な設計が重要
業務要件を十分に理解してから設計を開始することで、これらの失敗を回避できます。
データ管理のベストプラクティス
(1) バックアップと監査ログの重要性
定期的なバックアップと監査ログの記録は、データの質と信頼性を高めるために不可欠です。しかし、IT部門の意思決定者の39%のみがバックアップ・復元ソリューションを利用しているのが現状です。
推奨されるバックアップ戦略:
- 週次または日次の自動バックアップ
- バックアップデータの定期的な復元テスト
- ディザスタリカバリ計画の策定
監査ログの活用:
- データ変更履歴の追跡
- セキュリティインシデントの検知
- コンプライアンス対応
データ損失や不正アクセスのリスクに備え、バックアップ体制を整えることが重要です。
(2) データインテグリティの確保
データインテグリティ(データの整合性・完全性)を確保することで、業務効率と意思決定精度が向上します。
データの質を高める施策:
- 入力規則の設定(必須項目、形式チェック)
- 重複データの防止(重複管理ルール)
- データクレンジングの定期実施
データガバナンスの確立:
- データ入力ルールの標準化
- 責任者の明確化
- 定期的なデータ品質監査
データの質を維持することで、Salesforceの投資対効果を最大化できます。
(3) 外部システムとのデータ連携
Salesforceは単独で使うだけでなく、他のシステムと連携してデータを統合することで、さらに価値を高めることができます。
主なデータ連携方法:
API連携:
- REST APIやSOAP APIを使った双方向連携
- リアルタイムまたは定期的なデータ同期
ETLツール:
- データ抽出・変換・ロード(ETL)ツールを使った一括連携
- 例:Informatica、Talendなど
AppExchangeアプリ:
- Salesforceアプリマーケットで提供される連携アプリ
- 主要なSFA/CRM、マーケティングツールと簡単に連携
連携の複雑度やコストを考慮し、業務要件に合った方法を選択することが重要です。
大量データ対応と最新動向
(1) LDV(大量データ)のベストプラクティス
大量データを扱う場合、適切な設計を怠るとパフォーマンス劣化やデータスキューの問題が発生する可能性があります。
LDVのベストプラクティス:
インデックス設計:
- よく検索されるフィールドにインデックスを設定
- カスタムインデックスの活用
アーカイブ戦略:
- 古いデータの定期的なアーカイブ
- 外部ストレージへの移行
クエリの最適化:
- SOQL(Salesforceオブジェクトクエリ言語)の効率的な記述
- 不要なデータ取得の回避
これらのベストプラクティスに従うことで、大量データでもパフォーマンスを維持できます。
(2) Data Cloudベクトルデータベースの活用
2024年6月、SalesforceはEinstein CopilotとData Cloudベクトルデータベースを日本で提供開始しました。
新機能の特徴:
- 構造化データに加え、PDF、メール、会話記録など非構造化データも保管可能
- ベクトルデータベースにより、意味的な類似性に基づく検索が可能
- AI機能との統合により、高度なデータ分析が実現
従来の構造化データだけでなく、営業メールやカスタマーサポートの会話記録など、さまざまな形式のデータを一元管理できるようになりました。
(3) Einstein Copilotとの連携
Einstein CopilotはSalesforceの対話型AIアシスタント機能で、Data Cloudと連携してデータ活用を支援します。
主な活用例:
- 自然言語での問い合わせ(「今月の売上上位10社は?」など)
- レポート・ダッシュボードの自動生成
- データに基づく提案やアラート
AIとデータベースの連携により、データ活用のハードルが下がり、営業担当者が分析に時間を割くことなく、重要な洞察を得られるようになります。
※最新の提供状況や料金は、Salesforce公式サイトで確認してください。(この記事は2025年1月時点の情報です)
まとめ:効果的なSalesforceデータ活用のために
Salesforceのデータベース機能を最大限に活用するためには、オブジェクト・レコード・フィールドといった基本概念の理解と、適切なデータモデル設計が不可欠です。
次のアクション:
- 自社の業務プロセスを整理し、必要なデータ項目を洗い出す
- スキーマビルダーで現在のデータモデルを可視化し、改善点を特定する
- バックアップとデータインテグリティの確保策を見直す
- LDVベストプラクティスに従い、大量データでもパフォーマンスを維持する設計を検討する
- 最新機能(Data Cloudベクトルデータベース、Einstein Copilot)の活用可能性を調査する
適切なデータ管理により、営業活動の効率化と意思決定の精度向上を実現しましょう。
