複数のシステムに顧客データが散在していて、一元管理できていない...
B2B企業のIT・DX責任者の多くが、顧客データの統合管理に課題を抱えています。「営業システムとマーケティングシステムで顧客情報が別々」「サービス部門が最新の顧客情報を把握できていない」「部門をまたいだ顧客体験の設計が困難」といった悩みは尽きません。
この記事では、Salesforce Customer 360の概要、主要機能、導入メリットを、実績データを交えながら解説します。複数クラウド製品の統合プラットフォームとして、どのように顧客の360度ビューを実現するのか、実務担当者の視点で紹介します。
この記事のポイント:
- Customer 360は、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud等の複数製品を統合し、顧客の360度ビューを実現するプラットフォーム
- 95%の企業がROI目標を達成し、94%が技術・アプリのサポート向上を実感(導入実績)
- 顧客IDの統合により、複数システムに散在する顧客レコードを一意のIDで管理できる
- 2024年にAI統合を強化し、Agentforce(自律AIエージェント)との連携で人間とAIが協働
- 料金は利用製品・エディションにより異なり、個別見積もりが必要
1. Salesforce Customer 360とは
Salesforce Customer 360は、Salesforceの複数クラウド製品を統合し、顧客の360度ビューを実現するプラットフォームです。ここでは、Customer 360の基本概念を解説します。
(1) 製品名であり概念でもあるCustomer 360
Customer 360は、単一の製品ではなく、Salesforceの複数クラウド製品(Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud、Commerce Cloud等)を統合して到達する状態を指します。各製品を個別に導入するだけでなく、それらを連携させることで、顧客情報を統合的に管理できるようになります。
(出典: Salesforce Customer 360とは何か)
(2) 顧客の360度ビューを実現するプラットフォーム
「顧客の360度ビュー」とは、営業、マーケティング、カスタマーサービス、コマース等、すべてのタッチポイントで得られる顧客情報を統合し、一つの画面で確認できる状態を指します。
従来、各部門が独自のシステムで顧客データを管理していたため、以下のような課題がありました:
- 営業部門が最新のサービス問い合わせ履歴を把握できない
- マーケティング部門が営業の商談状況を確認できない
- カスタマーサービス部門が過去の購買履歴を見られない
Customer 360を導入すると、これらのデータが統合され、どの部門からでも最新の顧客情報にアクセスできるようになります。
(3) 複数クラウド製品の統合による到達状態
Customer 360は、特定の製品を購入すれば即座に実現できるものではなく、複数のSalesforce製品を組み合わせて構築するプラットフォームです。以下のような製品を統合することで、顧客の360度ビューが実現されます:
- Sales Cloud: 営業活動・商談管理
- Service Cloud: カスタマーサポート・問い合わせ対応
- Marketing Cloud: マーケティングキャンペーン・メール配信
- Commerce Cloud: Eコマース・オンライン販売
各製品のインスタンスを登録し、顧客レコードを単一の標準的なビューにまとめることで、Customer 360が実現されます(出典: Salesforce を使用した Customer Data Platform の構築)。
2. Customer 360を構成する主要製品群
Customer 360を実現する主要製品を4つ紹介します。
(1) Sales Cloud(営業支援)
機能:
- 商談管理・パイプライン管理
- 顧客・見込み客情報の一元管理
- 営業活動の記録・可視化
役割: Sales Cloudは、営業担当者が顧客との接点情報(商談履歴、提案内容、契約情報等)を記録するシステムです。Customer 360に統合されることで、マーケティング部門やサービス部門もこの情報にアクセスできるようになります。
(2) Service Cloud(カスタマーサービス)
機能:
- 問い合わせ管理(ケース管理)
- サポートチケット・対応履歴の記録
- ナレッジベース・FAQの提供
役割: Service Cloudは、カスタマーサポート部門が顧客からの問い合わせに対応するシステムです。Customer 360に統合されることで、営業担当者もサポート履歴を確認でき、顧客対応の質が向上します。
(3) Marketing Cloud(マーケティングオートメーション)
機能:
- メール配信・キャンペーン管理
- リードナーチャリング(見込み客の育成)
- カスタマージャーニーの設計・実行
役割: Marketing Cloudは、マーケティング部門が見込み客を育成し、商談化するシステムです。Customer 360に統合されることで、営業部門に引き渡されたリードの状況をリアルタイムで把握できます。
(4) Commerce Cloud(Eコマース)
機能:
- オンラインストアの構築・運営
- 購買履歴の管理
- パーソナライズされた商品推奨
役割: Commerce Cloudは、B2CまたはB2BのEコマースサイトを運営するシステムです。Customer 360に統合されることで、営業・サービス部門が顧客の購買履歴を把握し、より適切な提案やサポートが可能になります。
(出典: Salesforce Customer 360はどんな場所でもチームをつなぎます)
3. Customer 360の主要機能
Customer 360の主要機能を4つ紹介します。
(1) 顧客IDの統合とCustomer 360 Truth
機能概要: Customer 360 Truthは、全Salesforce製品から顧客データを統合し、完全な顧客ビューを提供する機能です。
仕組み: 複数のシステムに散在する顧客レコード(営業システムの「田中太郎」、サポートシステムの「タナカタロウ」、マーケティングシステムの「t.tanaka@example.com」等)を照合し、一意のIDで管理します。これにより、同一顧客を重複なく管理できます。
(出典: Salesforce Customer 360 Overview)
(2) Customer 360 Identity(顧客ID認識)
Customer 360 Identityは、顧客がどこで接触してもID認識し、顧客像を明確にする機能です。
活用例:
- 顧客がWebサイトを訪問→マーケティングシステムがID認識
- 顧客が営業担当に電話→営業システムがID認識し、最新のWebサイト訪問履歴を表示
- 顧客がサポートに問い合わせ→サポートシステムがID認識し、過去の購買履歴・商談履歴を表示
これにより、顧客がどのチャネルで接触しても、一貫した顧客体験を提供できます。
(3) 部門間連携の強化(Slackとの統合)
Customer 360とSlackを併用すると、マーケティング・営業・サービス・ITなど関係部門の連携が強化されます。
活用例:
- 営業担当者がSlackで「顧客Aの最新サポート履歴を確認したい」と依頼→自動的にCustomer 360から最新情報が表示される
- サポート担当者が「顧客Bの過去の購買履歴を知りたい」と依頼→自動的にCommerce Cloudのデータが表示される
これにより、部門をまたいだ情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードが上がります。
(出典: Salesforce Customer 360はどんな場所でもチームをつなぎます)
(4) 2024年追加のAgentforce(AI自律エージェント)
2024年、SalesforceはAI統合を強化し、「#1 AI CRM」として、自律エージェント・統合データ・Customer 360アプリを提供しています。
Agentforceの機能:
- AIが顧客データを分析し、次のアクションを提案
- ルーティン業務の自動化(リード対応、サポートチケット分類等)
- 人間とAIが協働する顧客成功モデル
(出典: What is Salesforce Customer 360: A Complete Overview)
4. 導入のメリットと実績
Customer 360導入による具体的なメリットと実績を紹介します。
(1) ROI目標達成率95%
Salesforceの調査によると、Customer 360を導入した企業の95%がROI目標を達成しています。これは、以下のような効果が得られることを示しています:
- 営業活動の効率化(商談化率・受注率の向上)
- マーケティングROIの改善(リードナーチャリング精度の向上)
- カスタマーサポート品質の向上(対応時間の短縮・顧客満足度の向上)
(出典: 世界初リアルタイムCRM「Customer 360」とは?導入のメリット)
(2) 技術・アプリサポート向上94%
同調査では、94%の企業が技術・アプリのサポート向上を実感しています。これは、以下のような効果によるものです:
- サポート担当者が顧客の過去の問い合わせ履歴を即座に確認できる
- 営業担当者が最新のサポート状況を把握し、適切なフォローができる
- IT部門がシステム統合により、データの一貫性を保てる
(3) マーケティング・営業・サービス・ITの連携強化
Customer 360を導入すると、部門間の壁がなくなり、以下のような連携が可能になります:
- マーケティング部門が育成したリードを営業部門にスムーズに引き渡せる
- 営業部門が受注した顧客情報をサービス部門に共有し、オンボーディングを効率化できる
- サービス部門が把握した顧客のニーズを営業部門にフィードバックし、アップセル・クロスセルに活用できる
ただし、導入効果は企業規模・業種・既存システム環境により異なるため、導入前にデータインフラを評価し、自社に合った構成を検討することが重要です。
5. 料金体系と導入前の準備
Customer 360の料金体系と導入前に確認すべきポイントを解説します。
(1) 利用製品・エディションによる個別見積もり
Customer 360は複数製品の統合プラットフォームのため、料金は利用する製品・エディションにより大きく異なります。
料金の決定要因:
- 導入する製品(Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud等)
- 各製品のエディション(Essentials、Professional、Enterprise、Unlimited等)
- ユーザー数
- 追加機能・カスタマイズの有無
公式サイトまたは営業担当に問い合わせて、個別見積もりを取得することをお勧めします(出典: Customer 360 Audiencesの価格)。
(2) 導入前のデータインフラ評価
Customer 360を導入する前に、現在のデータインフラを評価することが重要です。
確認事項:
- 顧客データがどのシステムに保存されているか(営業システム、サポートシステム、マーケティングシステム等)
- 各システムで顧客IDの管理方法が異なるか(メールアドレス、電話番号、独自ID等)
- データの品質(重複、欠損、不整合等)
(出典: What Is Customer 360?)
(3) 現在の顧客データ収集状況の把握
導入前に、現在どのような顧客データを収集しているかを把握しましょう。
確認事項:
- どのタッチポイントで顧客データを収集しているか(Webサイト、営業活動、サポート問い合わせ等)
- 各タッチポイントで収集しているデータ項目(氏名、メール、購買履歴、問い合わせ内容等)
- データ収集の頻度・タイミング
これらを事前に整理すると、Customer 360導入後のデータ統合がスムーズになります。
6. まとめ:Customer 360導入が向いている企業
Salesforce Customer 360の導入が向いている企業の特徴をまとめます。
導入が向いている企業:
- 営業・マーケティング・サービス部門で顧客データが分断されている
- 部門間の連携を強化し、顧客体験を向上させたい
- 既にSalesforce製品を一部導入しており、さらに統合を進めたい
- 中堅〜大企業規模(300名以上)で、複数部門にまたがる顧客接点がある
- ROI改善・技術サポート品質向上に投資する余力がある
導入前に確認すべきこと:
- 現在のデータインフラ・顧客データ収集状況を評価する
- 利用する製品・エディションを決定し、個別見積もりを取得する
- 導入コスト・運用体制を確保できるか確認する
次のアクション:
- Salesforce公式サイトでCustomer 360の詳細を確認する
- 営業担当に問い合わせて個別見積もりを依頼する
- 無料トライアルで各製品の使い勝手を確認する
- 導入事例を参考にし、自社に合った構成を検討する
Customer 360を活用して、顧客データの統合管理と部門間連携を強化し、顧客体験の向上を目指しましょう。料金・機能は変更される可能性があるため、導入前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
