Salesforce導入前に知るべき機能の全体像
「Salesforceを導入したけれど、思っていた機能が使えない...」
こうした後悔は、B2B企業の営業部門マネージャーやIT担当者から頻繁に聞かれます。Salesforceは強力なCRMツールですが、万能ではありません。導入前に「できること」と「できないこと」を正確に理解することが重要です。
この記事では、Salesforceでできること・できないこと、苦手な領域への対処法を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- Salesforceは営業支援・顧客管理・マーケティング支援・カスタマーサクセスが主要機能
- 基幹トランザクション処理には不向き、ガバナ制限によるリソース制約がある
- エディションのダウングレード不可、即効性はなく長期的視点が必要
- AppExchange・外部連携・カスタム開発で機能拡張が可能
- スモールスタートと段階的拡張が推奨される
(1) Salesforceは製品が機能別に分かれている
Salesforceは、単一のツールではなく、機能別に複数の製品で構成されています:
主要製品:
- Sales Cloud: 営業支援(商談管理、リード管理、売上予測)
- Service Cloud: カスタマーサポート(ケース管理、ナレッジベース)
- Marketing Cloud: マーケティング支援(メール配信、顧客セグメント)
- Commerce Cloud: EC機能(オンラインストア、カート管理)
- Analytics Cloud: データ分析・可視化
注意点:
- 1ツールで全ての機能をカバーできるわけではない
- 必要な機能に応じて製品を組み合わせる必要がある
- 製品ごとにライセンス費用が発生する
まずは自社の課題を明確にし、必要な製品を選定することが重要です。
(2) 「できること」と「できないこと」を理解する重要性
Salesforce導入の失敗パターンとして、以下が挙げられます:
よくある失敗例:
- 「できること」を過大評価し、期待外れに終わる
- 「できないこと」を把握せず、導入後に追加開発が必要になる
- エディションのダウングレードができず、高コストが継続する
失敗を避けるには:
- 導入前にトライアルで実際に操作性を確認
- 現場スタッフの意見を反映(トップダウン式は失敗しやすい)
- 目的を明確にして製品を選択
「できること」と「できないこと」を理解し、現実的な期待値を持つことが成功の鍵です。
Salesforceでできること:主要機能の概要
(1) 営業支援・顧客管理の一元化
Salesforceの最も基本的な機能は、営業活動と顧客情報の一元管理です:
営業支援(SFA):
- 商談管理(進捗状況・受注確度の可視化)
- リード管理(見込み客の追跡・スコアリング)
- 活動履歴(メール・電話・訪問記録)
- セールスプロセスの標準化
顧客管理(CRM):
- 顧客情報の一元管理(企業情報・担当者・取引履歴)
- 部門横断での情報共有(営業・マーケティング・CSが同一データを参照)
- 顧客とのやり取りを時系列で確認
これらの機能により、営業活動の効率化と成約率向上が期待できます。
(2) マーケティング支援とカスタマーサクセス
Salesforceは、営業だけでなくマーケティングとカスタマーサクセスにも対応しています:
マーケティング支援(Marketing Cloud):
- メール配信・自動化
- 顧客セグメント(属性・行動に基づく)
- リードナーチャリング
- キャンペーン管理・効果測定
カスタマーサクセス(Service Cloud):
- お問い合わせ対応(ケース管理)
- ナレッジベース構築(FAQ・マニュアル)
- チャット・電話・メールのオムニチャネルサポート
ただし、Marketing CloudやService Cloudは別製品のため、Sales Cloudとは別にライセンスが必要です。
(3) Einstein AIによる分析・予測・自動化
Salesforce独自のAI「Einstein」を活用すれば、顧客データの分析・予測・作業自動化が可能です:
Einsteinの主要機能:
- リードスコアリング: 見込み客の関心度を自動で数値化
- 商談の成約確度予測: 過去データから成約確率を予測
- 次のベストアクション提案: 顧客データを分析し、最適な営業アクションを提案
- コンテンツ生成: Spring'24(2024年2月)リリースで生成AI機能を強化
Einsteinを活用することで、営業活動の精度向上と工数削減が期待できます。
(4) Flow Builderによるプロセス自動化
Flow Builderを使えば、コードなしでビジネスプロセスを自動化できます:
自動化の例:
- 商談が成約したら契約書を自動作成
- リードスコアが一定値を超えたら営業担当に通知
- お問い合わせが登録されたら自動返信メール送信
Spring'24(2024年2月)とSummer'24(2024年6月)では、Flow Builderの改善が実施され、さらに使いやすくなっています。
Sales Cloudでできること:営業支援の機能
(1) 商談管理とセールスプロセスの可視化
Sales Cloudの中核機能は、商談管理とセールスプロセスの可視化です:
商談管理:
- 商談の進捗状況を段階別に管理(初回訪問、提案、見積提示、成約等)
- 受注確度・金額・受注予定日を記録
- 商談履歴(活動記録、メール、提案資料)を時系列で確認
セールスプロセスの可視化:
- パイプライン管理(商談の段階別集計)
- ボトルネックの発見(どの段階で停滞しているか)
- 成約率の分析(段階ごとの転換率)
これらの機能により、営業マネージャーはチーム全体の進捗を把握し、適切な指示を出せます。
(2) リード管理とスコアリング
リード管理機能では、見込み客の獲得から商談化までを追跡できます:
リード管理:
- Webフォーム・展示会・ウェビナー等で獲得したリードを一元管理
- リードの属性(企業規模・業種・役職等)を記録
- リードの行動履歴(Webアクセス、メール開封等)を追跡
リードスコアリング(Einstein活用):
- 見込み客の関心度を自動で数値化
- スコアが高いリードを優先的に営業フォロー
- 商談化率の向上が期待できる
(3) レポート・ダッシュボードによる売上予測
Sales Cloudのレポート・ダッシュボード機能で、売上予測とパフォーマンス分析が可能です:
レポート機能:
- 商談の段階別集計
- 営業担当者別の成績
- 月次・四半期別の売上推移
- カスタムレポート作成(任意の条件で集計)
ダッシュボード:
- グラフ・チャートでデータを可視化
- リアルタイム更新
- 役職別に異なるダッシュボードを作成可能
これらの機能により、データに基づく意思決定が可能になります。
Service Cloudでできること:カスタマーサポート機能
(1) ケース管理とお問い合わせ対応
Service Cloudのケース管理機能で、顧客からのお問い合わせを効率的に処理できます:
ケース管理:
- お問い合わせを「ケース」として一元管理
- 対応状況(未対応、対応中、完了)を可視化
- 担当者の自動割り当て
- エスカレーション設定(対応期限を超えたら上司に通知)
お問い合わせ対応:
- 過去の対応履歴を参照
- 関連する顧客情報を即座に表示
- 返信テンプレートで対応を効率化
(2) ナレッジベース構築と情報共有
ナレッジベース機能で、FAQ・マニュアルを構築し、社内外で共有できます:
ナレッジベース:
- FAQ記事を作成・公開
- 顧客がセルフサービスで問題を解決
- 社内用マニュアルとしても活用可能
- 検索機能で必要な情報を即座に発見
効果:
- お問い合わせ件数の削減
- 対応時間の短縮
- 顧客満足度の向上
(3) オムニチャネルサポート
Service Cloudでは、チャット・電話・メール等、複数チャネルからのお問い合わせを一元管理できます:
オムニチャネルサポート:
- チャット・電話・メール・SNSからのお問い合わせを統合
- 顧客がどのチャネルで問い合わせても同じ履歴を参照
- チャネルをまたいだ対応が可能
メリット:
- 顧客の利便性向上
- 対応の一貫性確保
- チャネル別のパフォーマンス分析
Salesforceでできないこと・苦手な領域
(1) 基幹トランザクション処理には不向き
Salesforceは、基幹トランザクション処理(経理、在庫管理、生産管理等)には不向きです:
不向きな理由:
- CRM/SFAに特化した設計であり、基幹システムとしては機能不足
- 複雑な会計処理・在庫管理には専用システムが適している
対処法:
- 基幹システム(ERP等)は別途導入
- SalesforceとAPIで連携し、顧客情報・受注情報を双方向同期
(2) ガバナ制限によるリソース制約
Salesforceはマルチテナントアーキテクチャ(複数ユーザーで同一リソースを共有)のため、リソースに制限があります:
主なガバナ制限:
- API要求: 日次制限があり、上限を超えるとAPI使用が一時的に不可能
- CPU時間: 長時間の処理は制限される
- データベース容量: エディションごとに制限あり
- 検索結果表示: タイムアウト制限あり
対処法:
- 設計段階でガバナ制限を考慮(バッチ処理の最適化等)
- 必要に応じてエディションをアップグレード
- 専門知識を持つパートナーに相談
(3) エディションのダウングレード不可
Salesforceのエディションは、一度導入するとダウングレードできません:
注意点:
- 高機能エディションを導入後、「機能を使いこなせず費用対効果が低い」と気づいても、ダウングレードは不可
- 契約更新時に別エディションへの変更は可能だが、データ移行等の手間がかかる
対処法:
- スモールスタートで必要最小限の機能を持つエディションを選択
- 必要に応じて段階的にアップグレード
(4) 即効性はなく長期的視点が必要
Salesforceは、導入してすぐに成果が出るツールではありません:
理由:
- データが蓄積されるにつれて効果が高まる
- 導入初期は入力作業が通常業務にプラスされ、現場の負担が増加
- 習得に時間がかかる(多機能なため)
対処法:
- 長期的視点で導入効果を評価(6ヶ月〜1年単位)
- 導入初期の現場負担を理解し、サポート体制を整備
- 継続的なトレーニングでユーザーのスキルアップを図る
(5) 多機能ゆえの習得難易度
Salesforceは多機能ですが、その分習得に時間がかかります:
習得の難しさ:
- 初心者には操作が複雑に感じられる場合がある
- カスタマイズには専門知識(Apex、Visualforce等)が必要
- 定期的なアップデートで機能が追加され、継続的な学習が必要
対処法:
- 運用前の社内トレーニングに時間をかける
- Salesforce公式のトレーニング・認定資格を活用
- 導入支援パートナーに相談
できないことへの対処法:AppExchange・外部連携・カスタム開発
(1) AppExchangeで機能拡張
AppExchangeは、Salesforceのアプリマーケットプレイスです:
AppExchangeでできること:
- 足りない機能をアプリで補完(会計連携、名刺管理、電話連携等)
- 数千のアプリから選択可能
- 無料・有料アプリが混在
活用例:
- 会計ソフト連携アプリで受注情報を自動反映
- 名刺管理アプリでリード情報を効率的に登録
- 電話連携アプリで通話履歴を自動記録
(2) APIによる外部システム連携
SalesforceのAPIを使えば、外部システムとデータを連携できます:
API連携の例:
- 基幹システム(ERP)と受注情報を双方向同期
- Webサイトのフォームから直接Salesforceにリード登録
- BI(Business Intelligence)ツールでSalesforceデータを分析
注意点:
- API要求には日次制限があるため、連携設計時に考慮が必要
(3) Lightning Platformによるカスタム開発
Lightning Platformを使えば、Salesforce上で独自アプリを開発できます:
カスタム開発の例:
- 自社専用の業務プロセスを構築
- 独自のレポート・ダッシュボード作成
- Apexコードで複雑なビジネスロジックを実装
注意点:
- カスタム開発には専門知識(Apex、Visualforce、Lightning Web Components等)が必要
- 開発・保守コストが発生する
(4) スモールスタートと段階的拡張
Salesforce導入の成功パターンは、スモールスタートと段階的拡張です:
推奨アプローチ:
- Phase 1: 必要最小限の機能で開始(Sales Cloudの基本機能のみ等)
- Phase 2: 運用に慣れたら機能を追加(レポート・ダッシュボード強化等)
- Phase 3: 必要に応じてエディションをアップグレード、他製品を追加
メリット:
- 初期コストを抑えられる
- 現場の負担を軽減
- 段階的に習得できる
- 本当に必要な機能を見極められる
スモールスタートで始め、成果を確認しながら拡張することが推奨されます。
まとめ:導入前に機能の限界と対処法を理解しよう
Salesforceは強力なCRM/SFAツールですが、万能ではありません。導入前に「できること」と「できないこと」を正確に理解することが重要です。
できること:
- 営業支援・顧客管理の一元化
- マーケティング支援とカスタマーサクセス
- Einstein AIによる分析・予測・自動化
- Flow Builderによるプロセス自動化
できないこと・苦手なこと:
- 基幹トランザクション処理には不向き
- ガバナ制限によるリソース制約
- エディションのダウングレード不可
- 即効性はなく長期的視点が必要
- 多機能ゆえの習得難易度
対処法:
- AppExchangeで機能拡張
- APIによる外部システム連携
- Lightning Platformによるカスタム開発
- スモールスタートと段階的拡張
次のアクション:
- 自社の課題を明確にし、必要な製品を選定
- トライアルで実際の操作性を確認
- 現場スタッフの意見を反映
- スモールスタートで始め、成果を確認しながら拡張
- 専門知識を持つパートナーに相談
「できること」と「できないこと」を理解し、現実的な期待値を持つことで、Salesforce導入を成功に導きましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。料金・機能は変更の可能性があるため、最新情報はSalesforce公式サイトをご確認ください。
