B2B ECの重要性とデジタル化の背景
B2B取引においても、ECサイトによるデジタル化が急速に進んでいます。従来のFAXや電話による受発注から、オンラインでの取引へと移行する企業が増加しており、業務効率化とコスト削減、顧客体験向上への期待が高まっています。
Salesforceの調査によると、B2Bリーダーの予測では、2024年までに売上の50%以上がデジタルチャネルから得られる見込みとされています(前年は30%)。この流れの中で、B2B向けECプラットフォームの選定は、企業の競争力を左右する重要な意思決定となっています。
この記事では、Salesforce B2B Commerce Cloudの特徴・機能・導入メリットを解説し、他社プラットフォームとの比較を通じて、自社に合ったB2B ECプラットフォームを選ぶための判断材料を提供します。
この記事のポイント:
- Salesforce B2B CommerceはSalesforce Platformネイティブで、CRMとの統合が強み
- カスタムカタログ、交渉済み価格、承認ワークフローなどB2B特有の機能を標準搭載
- 国内導入事例では3〜5カ月で稼働開始、コスト削減・売上増加の実績あり
- 料金は非公開で年間数百万円〜。中堅〜大企業向け
- 他のB2B ECプラットフォームと比較して、自社の要件に合うかを検討する
Salesforce B2B Commerce Cloudとは
(1) Salesforce Platformネイティブの強み
Salesforce B2B Commerce(旧CloudCraze)は、Salesforce Lightning Platform上でネイティブに構築されたB2B向けECプラットフォームです。Salesforce CRMと同じプラットフォーム上で動作するため、顧客データの一元管理と営業・マーケティング・カスタマーサービスとの連携がスムーズに行えます。
Salesforce Platformネイティブのメリット:
- Salesforce CRMのデータをリアルタイムで参照可能
- 顧客情報、商談履歴、サポート履歴を統合的に管理
- Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloudとの連携が容易
- Salesforceの標準機能(レポート、ダッシュボード、ワークフロー)を活用可能
(2) B2C Commerceとの違い
Salesforceには「B2B Commerce」と「B2C Commerce」の2つの異なるコマースプラットフォームがあります。両者は技術スタックが完全に異なるため、既存のB2C Commerce資産を流用することはできません。
B2B CommerceとB2C Commerceの違い:
| 項目 | B2B Commerce | B2C Commerce |
|---|---|---|
| 技術基盤 | Salesforce Platform(Lightning) | 別の技術スタック(旧Demandware) |
| 主な対象 | 企業間取引 | 消費者向け取引 |
| 価格設定 | 顧客別カスタム価格、交渉済み価格 | 一般消費者向け統一価格 |
| 注文形態 | 大量注文、再注文、承認フロー | 少量・個人購入 |
| CRM連携 | Salesforce CRMとネイティブ連携 | API連携 |
(3) CRMとの統合による一元管理
Salesforce B2B Commerceの最大の強みは、CRMとの緊密な統合です。顧客のEC上の行動(閲覧、カート、購入)とCRM上の情報(商談、サポート履歴)を一元管理することで、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できます。
CRM統合のメリット:
- 営業担当者がECでの購買履歴を確認しながら商談可能
- カスタマーサポートがECの注文状況を即座に把握
- マーケティング施策の効果をECの購買データで測定
- 顧客セグメントに基づいた価格設定やプロモーション
主要機能と特徴(B2B特有の機能)
(1) カスタムカタログと交渉済み価格
B2B取引では、顧客ごとに異なる商品ラインナップや価格を提示することが一般的です。Salesforce B2B Commerceは、この要件に対応する機能を標準で備えています。
カスタムカタログ機能:
- 顧客別に表示する商品を制御
- 取引先グループごとのカタログ設定
- 契約に基づいた商品・サービスの表示
交渉済み価格機能:
- 事前に交渉済みの価格をアカウント別に設定
- ボリュームディスカウントの自動適用
- 複数の価格体系(リスト価格、契約価格、プロモーション価格)の管理
(2) 大量注文と再注文機能
B2B取引では、数十〜数百点の商品を一度に発注するケースが多く、効率的な注文処理が求められます。
大量注文対応:
- CSVアップロードによる一括発注
- クイックオーダー機能(SKUを直接入力して発注)
- 複数配送先への同時発注
再注文機能:
- 過去の注文履歴からワンクリックで再注文
- 定期発注のテンプレート化
- 注文履歴の検索・絞り込み
(3) 承認ワークフローと見積作成
B2B取引では、発注前に社内承認が必要なケースが多くあります。Salesforce B2B Commerceは、承認ワークフローと見積機能を提供しています。
承認ワークフロー:
- 金額や商品カテゴリに応じた承認フローの設定
- 複数階層の承認プロセス
- 承認待ちのアラート・通知
見積作成機能:
- EC上で見積を作成し、承認を得てから発注
- Salesforce CPQ(Configure, Price, Quote)との連携
- 見積履歴の管理と追跡
(4) AI機能(Agentforce)による検索・購入支援
Salesforceは、AI機能(Agentforce)をB2B Commerceに統合し、バイヤーの購買体験を向上させています。
AI機能の活用:
- 商品検索の精度向上(自然言語検索、関連商品のレコメンド)
- パーソナライズされた商品提案
- 購入履歴に基づく再注文の提案
- チャットボットによる問い合わせ対応
導入メリット・デメリットと事例
(1) 導入メリット(業務効率化・コスト削減)
Salesforce B2B Commerce導入による主なメリットは以下の通りです。
業務効率化:
- FAX・電話受注のオンライン化による受発注業務の削減
- 手作業によるデータ入力の排除
- 24時間365日のオンライン受注対応
コスト削減:
- 受注処理コストの削減
- 人的ミス(入力ミス、確認漏れ)の防止
- ペーパーレス化による印刷・郵送コスト削減
売上向上:
- 顧客の購買利便性向上によるリピート率アップ
- クロスセル・アップセルの機会創出
- 新規顧客獲得チャネルの拡大
(2) 導入デメリット(初期投資・運用コスト)
一方で、導入にあたっての課題・デメリットも考慮が必要です。
コスト面:
- 料金は非公開だが、年間数百万円〜と高額(中堅〜大企業向け)
- Salesforce CRMの導入が前提となり、追加コストが発生
- カスタマイズや基幹システム連携には別途費用が必要
技術面:
- B2B CommerceとB2C Commerceは異なる技術スタックのため、B2C資産の流用不可
- 導入・カスタマイズにはパートナー企業のサポートが推奨される
- Salesforce Platform上での開発スキルが必要
運用面:
- B2B特有の複雑な価格設定や承認フローの設計が必要
- 既存の基幹システム(ERP、在庫管理)との連携設計
- 社内の運用体制構築とトレーニング
(3) 国内企業の導入事例
Salesforce B2B Commerceを導入した国内企業の事例を紹介します。
伊藤忠エネクス(カーライフ部門):
- 導入期間: 3カ月余りで構築完了
- 効果: リニューアル直後から売上は前年比1.5倍で推移
- ポイント: スモールスタートで導入し、段階的に機能拡張
大塚倉庫:
- 導入期間: 5カ月で稼働開始
- 効果: 年間約1,500万円のコスト削減を達成
- ポイント: FAX・電話での受注をオンライン化し業務効率化
島精機製作所:
- 効果: 受注作業時間50%削減
- ポイント: グローバルでの受発注プロセスを統一
※導入効果は企業規模・業種・既存システムとの統合状況により異なります。
他社B2B ECプラットフォームとの比較
(1) 比較対象プラットフォームの概要
Salesforce B2B Commerce以外にも、複数のB2B向けECプラットフォームが存在します。
主なB2B ECプラットフォーム:
- Shopify Plus: B2B機能を強化したShopifyの上位プラン。導入のしやすさが強み
- Adobe Commerce(旧Magento): カスタマイズ性が高くエンタープライズ向け
- SAP Commerce Cloud: SAPエコシステムとの統合に強み
- 国産プラットフォーム(ecbeing B2B、アイル等): 日本市場特有のニーズに対応
(2) 機能・料金・導入難易度の比較
| プラットフォーム | 主な強み | 料金目安 | 導入難易度 |
|---|---|---|---|
| Salesforce B2B Commerce | CRM統合、Salesforce連携 | 年間数百万円〜(非公開) | 高め |
| Shopify Plus | 導入しやすさ、低コスト | 月額$2,000〜 | 低め |
| Adobe Commerce | カスタマイズ性、大規模対応 | 年間数百万円〜 | 高め |
| SAP Commerce Cloud | SAP連携、ERP統合 | 年間数百万円〜 | 高め |
| 国産プラットフォーム | 日本市場対応、サポート | 月額数万円〜 | 中程度 |
※料金は2025年1月時点の目安です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。
(3) 企業規模別の選定ポイント
大企業(従業員1,000人以上):
- 既存のSalesforce CRMを活用している場合は、B2B Commerceの統合メリットが大きい
- SAP ERPを利用している場合は、SAP Commerce Cloudも選択肢
- グローバル展開には多言語・多通貨対応が充実したプラットフォームを選定
中堅企業(従業員100〜1,000人):
- 初期投資を抑えたい場合は、Shopify Plusや国産プラットフォームを検討
- CRM連携を重視する場合は、Salesforce B2B Commerceのメリットが大きい
- カスタマイズの柔軟性が必要な場合は、Adobe Commerceを検討
中小企業(従業員100人未満):
- コストと導入スピードを重視し、Shopify Plusや国産プラットフォームを検討
- 将来的な拡張性を考慮した選定も重要
まとめ:自社に合ったB2B ECプラットフォームの選び方
Salesforce B2B Commerce Cloudは、Salesforce CRMとの緊密な統合と、B2B特有の機能(カスタムカタログ、交渉済み価格、承認ワークフロー)を強みとするプラットフォームです。既にSalesforce製品を活用している企業にとっては、データ連携や運用効率の面で大きなメリットがあります。
一方で、料金は高額(年間数百万円〜)であり、導入にはSalesforce Platformの専門知識やパートナー企業のサポートが必要な場合があります。
B2B ECプラットフォーム選定のポイント:
- 自社の予算と投資対効果(ROI)を検討
- 既存システム(CRM、ERP、在庫管理)との連携要件を整理
- 必要なB2B特有の機能(価格設定、承認フロー)を明確化
- 運用体制とサポート体制を確認
次のアクション:
- 自社の要件を整理し、比較表を作成する
- 複数のプラットフォームの資料請求・デモを依頼
- 導入事例が近い企業の事例を参考にする
- 導入パートナーから見積を取得して比較検討
※この記事は2025年1月時点の情報に基づいています。料金・機能は変更される可能性がありますので、導入前に各社公式サイトで最新情報をご確認ください。
よくある質問:
Q: Salesforce B2B Commerceの導入期間はどれくらいですか? A: 企業の規模や要件により異なりますが、国内事例では3〜5カ月で稼働開始したケースがあります。伊藤忠エネクスは3カ月余り、大塚倉庫は5カ月で稼働しています。スモールスタートで導入し、段階的に機能拡張するアプローチが一般的です。
Q: B2B CommerceとB2C Commerceの違いは何ですか? A: B2B CommerceはSalesforce Lightning Platformでネイティブに構築されていますが、B2C Commerceは別の技術スタック(旧Demandware)を使用しています。そのため、既存のB2C Commerce資産をB2B Commerceに流用することはできません。機能面では、B2B Commerceは交渉済み価格、承認フロー、大量注文などB2B特有の機能に対応しています。
Q: 導入コストはどれくらいですか? A: Salesforce B2B Commerceの料金は公開されていませんが、年間数百万円〜と言われており、中堅〜大企業向けです。また、Salesforce CRMの導入が前提となるため、CRMのライセンス費用も考慮する必要があります。カスタマイズや基幹システム連携には別途費用がかかります。詳細な費用は、公式サイトまたは営業担当に問い合わせることをおすすめします。
