Salesforceの承認フロー|設定方法と効率的なワークフロー構築のコツ

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/11

なぜSalesforceの承認フローが重要なのか

「見積の値引き承認をメールでやり取りしていて時間がかかる」「経費精算の承認状況が分からない」「契約書の承認が属人化している」...こうした課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。

Salesforceの承認プロセス機能を活用することで、申請から承認までのフローを自動化し、業務効率化と可視化を実現できます。営業担当者、管理者、経営層が承認状況をリアルタイムで把握でき、意思決定のスピードが向上します。

この記事では、Salesforceの承認フロー(承認プロセス)の基本概念から設定手順、活用シーン、高度な活用方法までを実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • Salesforceの承認プロセスは申請から承認までのフローを自動化する標準機能
  • ジャンプスタートウィザード(1段階承認)と標準ウィザード(複数段階承認)の2種類
  • 値引き承認、経費精算、契約承認など幅広い業務に活用可能
  • 動的承認プロセスとFlow Orchestratorで高度なワークフローを構築できる
  • 承認プロセスは自動起動しないため、フローで起動条件を設定する必要がある

Salesforceの承認プロセスとは|基本概念

(1) 承認プロセスの定義と役割

Salesforceの承認プロセスとは、申請と承認を自動化するための標準機能です。値引き申請、経費精算、休暇申請、契約承認など、様々な業務プロセスに活用できます。

Salesforce公式ドキュメントによると、承認プロセスは以下のような役割を果たします。

承認プロセスの主な役割:

  • 申請者が承認を依頼できる
  • 承認者が承認・却下を判断できる
  • 承認状況をリアルタイムで可視化できる
  • 承認・却下時に自動でアクションを実行できる(項目更新、メール通知など)
  • 承認履歴を記録として残せる

承認プロセスはSalesforceの標準機能として提供されているため、追加コストなしで利用できます。ただし、UIがやや分かりにくく、設定と挙動の関係を理解する必要があります。

(2) 申請から承認までの流れ

承認プロセスの基本的な流れは以下の通りです。

承認プロセスの流れ:

  1. 申請: 申請者がレコード(商談、経費など)から承認を依頼
  2. 承認待ち: 承認者に通知が届き、承認待ちステータスになる
  3. 承認・却下: 承認者が承認または却下を判断
  4. 完了: 承認された場合は完了、却下された場合は申請者に戻る
  5. アクション実行: 承認・却下時に自動でアクション(項目更新、メール通知など)が実行される

複数段階の承認が必要な場合は、第1承認者→第2承認者→第3承認者と順次承認が進みます。いずれかの段階で却下されると、申請者に戻ります。

承認プロセスの設定手順|ジャンプスタートvs標準ウィザード

Salesforceの承認プロセスには、ジャンプスタートウィザードと標準ウィザードの2種類の設定方法があります。

(1) ジャンプスタートウィザード(1段階承認)

ジャンプスタートウィザードは、1段階の承認プロセスをシンプルに設定できる方法です。

設定手順:

  1. 「設定」→「ホーム」→「承認プロセス」を開く
  2. 「ジャンプスタートウィザード」を選択
  3. 承認対象のオブジェクト(商談、経費など)を選択
  4. 承認プロセス名を入力
  5. 承認者を選択(ユーザー、キュー、関連レコードの所有者など)
  6. 承認・却下時のアクションを設定(項目更新、メールアラートなど)
  7. 保存して有効化

ジャンプスタートの特徴:

  • 設定が簡単で短時間で構築可能
  • 1段階承認のみ対応
  • シンプルな承認フローに適している

(2) 標準ウィザード(複数段階承認)

標準ウィザードは、複数段階の承認プロセスを設定できる方法です。

設定手順:

  1. 「設定」→「ホーム」→「承認プロセス」を開く
  2. 「標準ウィザード」を選択
  3. 承認プロセス名と適用条件を設定
  4. 承認者の割り当て方法を選択(自動・手動)
  5. 承認ステップを追加(第1承認者、第2承認者...)
  6. 各ステップで承認者と条件を設定
  7. 承認・却下時のアクションを設定
  8. 保存して有効化

標準ウィザードの特徴:

  • 複数段階の承認プロセスを構築可能
  • 条件分岐やステップごとの承認者設定が可能
  • 複雑な承認フローに対応できる

(3) 承認・却下時のアクション設定(項目更新・メールアラート)

承認プロセスでは、承認・却下時に自動でアクションを実行できます。

設定可能なアクション:

  • 項目自動更新: レコードのステータスや承認フラグを自動更新
  • メールアラート: 承認者・申請者に通知メールを送信
  • ToDo作成: 承認後のフォローアップタスクを自動作成
  • アウトバウンドメッセージ: 外部システムへの通知

メールアラートを設定する場合は、事前にメールテンプレートを作成しておく必要があります。ただし、申請時に入力したコメントは標準のメールテンプレートの差し込み項目に反映されない点に注意が必要です(2024年時点)。これを実現するには、Apex開発とVisualforceメールテンプレートの活用が必要になります。

(4) 承認プロセスの起動方法(手動ボタン・フロー)

承認プロセスは自動起動しないため、起動方法を設定する必要があります。主な起動方法は以下の2つです。

手動起動ボタン:

  • レコードページに「承認申請」ボタンを配置
  • 申請者が手動でボタンをクリックして起動
  • シンプルで分かりやすい

フローからの起動:

  • フローを作成して特定条件で自動起動
  • 例:商談金額が100万円以上になった時に自動起動
  • 承認プロセスの自動化を実現できる

フローからの起動設定により、「見積金額が一定額を超えたら自動的に承認申請を起動する」といった条件付き自動化が可能になります。

活用シーン|値引き承認・経費精算・契約承認など

Salesforceの承認プロセスは、様々な業務シーンで活用されています。

(1) 見積値引き承認

営業担当者が顧客に提示する見積の値引き率が一定値を超える場合に、上長の承認を必要とする運用です。

設定例:

  • 値引き率10%以上の見積は課長承認が必要
  • 値引き率20%以上の見積は部長承認が必要
  • 承認後は見積ステータスを「承認済み」に自動更新
  • 承認者・申請者に自動でメール通知

この仕組みにより、過度な値引きを防ぎ、収益性を維持しながら柔軟な営業活動が可能になります。

(2) 経費精算承認

営業担当者が使用した経費(交通費、接待費など)の精算承認プロセスです。

設定例:

  • 経費レコードから承認申請を起動
  • 直属の上長が承認
  • 承認後は経費ステータスを「精算可能」に自動更新
  • 経理部門に自動通知

承認履歴がSalesforceに記録されるため、監査時のエビデンスとしても活用できます。

(3) 契約承認

顧客との契約内容を法務部門や経営層が承認するプロセスです。

設定例:

  • 契約金額500万円未満は営業部長承認
  • 契約金額500万円以上は事業部長→法務部→CFOの多段階承認
  • 承認後は契約ステータスを「承認済み」に自動更新
  • 関係部門に自動通知

契約金額や条件によって承認フローを分岐させることで、重要度に応じた適切な承認プロセスを実現できます。

(4) その他の活用例

その他にも、以下のような業務に承認プロセスが活用されています。

  • 休暇申請承認
  • 購買申請承認
  • マーケティングキャンペーン承認
  • 価格変更承認
  • カスタマーサポートのエスカレーション承認

Salesforceで管理しているあらゆるレコードに対して承認プロセスを設定できるため、幅広い業務の効率化が可能です。

高度な活用方法|動的承認プロセスとFlow Orchestrator

(1) 動的承認プロセス(条件に応じて承認者を変更)

動的承認プロセスとは、レコードの条件(金額、部門、商品など)に応じて承認者を動的に変更する仕組みです。

TerraSkyの解説によると、Salesforceの標準機能(承認プロセス+フロー+公開グループ)を組み合わせることで実現可能です。

動的承認プロセスの構築方法:

  1. 公開グループで承認者グループを作成(営業部承認者、技術部承認者など)
  2. フローで条件判定ロジックを作成(部門や金額に応じて承認者を選択)
  3. 承認プロセスで公開グループを承認者として設定
  4. フローから承認プロセスを起動

動的承認の活用例:

  • 商談金額100万円未満は営業課長、100万円以上は営業部長が承認
  • 部門ごとに異なる承認者を自動選択
  • 商品カテゴリによって技術部承認の要否を切り替え

この仕組みにより、複雑な承認ルールを柔軟に設定できます。

(2) Flow Orchestratorで複雑なワークフローを構築

Flow Orchestratorは、複雑なワークフローを作成できるSalesforceのローコード開発ツールです。

電通総研のテックブログによると、Flow Orchestratorを活用することで以下のような高度な承認ワークフローを構築できます。

Flow Orchestratorの活用例:

  • 金額条件による分岐承認フロー(100万円以上は経理部承認を追加)
  • 並列承認(営業部長と技術部長が同時並行で承認)
  • リアルタイム状況確認(現在どのステップで誰が承認待ちか可視化)
  • 承認期限の設定と自動リマインド

Flow Orchestratorは高度な機能のため、複雑なワークフローが必要な場合に検討することをおすすめします。

(3) Slack連携によるモバイル承認

最新のトレンドとして、Slack連携による承認機能が進化しています。

Slack連携のメリット:

  • Salesforceにログインせずに承認・却下が可能
  • モバイルから承認操作ができる
  • Slackで承認通知を受け取れる
  • 承認状況をSlackで確認できる

外出中の営業担当者や経営層も、スマートフォンからSlack経由で迅速に承認できるため、意思決定のスピードが大幅に向上します。

まとめ|効率的な承認フロー構築のポイント

Salesforceの承認プロセスは、申請から承認までのフローを自動化し、業務効率化と可視化を実現する標準機能です。

承認フロー構築のポイント:

  • シンプルな承認はジャンプスタートウィザード、複雑な承認は標準ウィザードを選択
  • 承認・却下時のアクション(項目更新、メールアラート)を設定して自動化
  • 承認プロセスは自動起動しないため、フローで起動条件を設定
  • 動的承認プロセスで条件に応じた承認者の切り替えが可能
  • Flow Orchestratorで高度なワークフローを構築できる

次のアクション:

  • 自社で承認が必要な業務プロセスをリストアップする
  • Salesforce公式ドキュメントで承認プロセスの設定方法を確認する
  • テスト環境(Sandbox)でジャンプスタートウィザードを試す
  • 値引き承認や経費精算など1つの業務から小さく始める
  • 効果を測定して他の業務にも展開する

承認プロセスの設定UIは古く、設定と挙動の関係が分かりにくい点もありますが、一度理解すれば様々な業務に応用できます。また、Summer '25でリリースされたフロー承認プロセス(Flow Approval Process)により、今後さらに柔軟な設定が可能になります。最新情報はSalesforce公式ドキュメントで確認してください。

よくある質問

Q1承認プロセスを自動起動させるには?

A1承認プロセスは自動起動しないため、フローを作成して特定条件で起動させる設定が必要です。例えば、「商談金額が100万円以上になった時に自動起動する」といった条件を設定できます。手動起動ボタンも併用できます。

Q2複数段階の承認を設定するには?

A2標準ウィザードを使用して複数の承認ステップを追加します。各ステップで承認者と条件を設定できます。例えば、第1承認者は課長、第2承認者は部長といった多段階の承認フローを構築できます。

Q3承認者を条件によって変えるには?

A3動的承認プロセスをフローと公開グループで構築します。金額や部門などの条件に応じて承認者を柔軟に設定できます。例えば、商談金額100万円未満は課長、100万円以上は部長が承認するといった切り替えが可能です。

Q4Salesforceの承認プロセスでどんな業務を効率化できますか?

A4値引き承認、経費精算、契約承認、休暇申請、購買申請など幅広い業務に活用できます。Salesforceで管理しているあらゆるレコードに対して承認プロセスを設定可能です。承認履歴が記録されるため、監査時のエビデンスとしても活用できます。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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