「Salesforceと基幹システムをリアルタイムで同期したい...」
Salesforceを導入している企業の多くが、ERP・会計システム・基幹システムとの連携に課題を抱えています。「手作業でのデータ移行は限界」「リアルタイムで販売情報を配信したい」「モバイルアプリからSalesforceデータにアクセスしたい」といったニーズに応えるために、Salesforce APIの活用が求められています。
Salesforce APIは、REST API、SOAP API、Bulk API、Streaming APIなど、用途に応じて使い分けることで、多様な統合シーンに対応できます。本記事では、APIの種類と特徴、使い分けの基準、認証方法、API制限と監視方法を解説します。
この記事のポイント:
- REST APIは軽量・高速でモバイルアプリ開発に適し、SOAP APIは安全性・信頼性重視のサーバー間統合に適する
- Bulk APIは数万単位の大量データを高速処理し、Streaming APIはリアルタイムデータ更新を監視
- Enterprise Editionでは1日100,000リクエストから開始し、ライセンス数に応じて増加
- Summer '24リリースでEvent Log File Browserが追加され、API使用状況と使用バージョンを監視可能
- 2024年5月、SalesforceはBest API賞を受賞し、最も活発なAPIパブリッシャーに選ばれた
1. Salesforce API連携の重要性と活用シーン
(1) API連携で実現できること(ERP・基幹システム統合等)
Salesforce APIを活用することで、以下のような統合が可能になります:
- ERP・会計システムとの統合: SOAP APIでリアルタイムの販売情報やサポート情報を配信
- 基幹システムとのマスタデータ同期: Bulk APIで基幹システムのマスタデータを高速読み込み
- モバイルアプリ開発: REST APIでモバイルアプリからSalesforceデータにアクセス
- リアルタイムデータ同期: Streaming APIでSalesforce内のデータ更新を監視し、条件に合うデータ更新時にプッシュ通知を実行
- 組織マージ時のメタデータ統合: Metadata APIで組織間のメタデータを統合
これらの統合により、データの手作業による移行や二重入力を排除し、業務効率を大幅に向上できます。
(2) 2024年のAPI活用トレンド(Best API賞受賞、市場規模76.7億ドル)
2024年5月、SalesforceはPostman Public API NetworkでBest API賞を受賞し、最も活発なAPIパブリッシャーに選ばれました(20万以上のコレクションフォーク)。
また、2024年のAPI管理市場は76.7億ドルに達しており、統合はスケーリングとパーソナライズされた体験の提供に不可欠となっています。
これらのトレンドは、Salesforce APIの活用が企業のデジタルトランスフォーメーションにおいて重要な役割を果たしていることを示しています。
2. Salesforce APIの基礎知識(種類と特徴)
(1) Salesforceが提供する主要API(REST、SOAP、Bulk、Streaming等)
Salesforceは12種類のAPIを提供していますが、主要なAPIは以下の通りです:
- REST API: 軽量なリクエスト・レスポンスフレームワーク、JSON対応
- SOAP API: WSDLファイルを使用したサーバー間統合、XML専用
- Bulk API: 大量データ(数万単位)の高速非同期処理
- Streaming API: データ更新の監視とプッシュ通知
- Metadata API: メタデータの記述・管理(カスタムオブジェクト、項目、ページレイアウト等)
- Connect REST API(Chatter API): Chatterコミュニケーション機能の実行
- Tooling API: カスタム開発ツール作成
(2) 各APIの特徴と対象用途の概要
| API | データフォーマット | 処理方式 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| REST API | JSON | 同期 | モバイルアプリ、Webアプリ開発 |
| SOAP API | XML | 同期 | サーバー間統合、エンタープライズ連携 |
| Bulk API | CSV、JSON、XML | 非同期 | 大量データインポート・エクスポート |
| Streaming API | JSON | プッシュ通知 | リアルタイムデータ更新監視 |
| Metadata API | XML | 同期 | 組織設定の移行、メタデータ管理 |
(3) API利用に必要な権限とエディション
必要な環境:
- Trailhead Playground、または
- Enterprise、Unlimited、Developer、Performance、Professional Edition(アドオン付き)のいずれかのorg
必要な権限:
- 「API有効化」権限
Professional Edition(無料版)ではAPIが制限されているため、本格的な統合にはEnterprise Edition以上が推奨されます。
3. 主要APIの使い分けと選定基準
(1) REST API:軽量・高速なWeb/モバイル統合(JSON対応)
特徴:
- JSON対応で簡略的なコーディングが可能
- データ処理負荷が少なく高速
- モバイルアプリやWebアプリの開発に適している
適用シーン:
- スマートフォンアプリからのSalesforceデータアクセス
- Webアプリケーションとの統合
- 軽量なデータ取得・更新
(2) SOAP API:安全性・信頼性重視のサーバー間統合(XML・WSDL)
特徴:
- XML専用で厳密な仕様に基づく
- WSDLファイルを使用した正式な契約定義
- 安全性・信頼性に優れる
適用シーン:
- エンタープライズレベルの構造化統合
- ERP・会計システムとの統合
- サーバー間でのリアルタイムデータ同期
DataLoaderはSOAP APIとBulk APIの2種類を使用しており、処理量に応じて自動的に切り替わります。
(3) Bulk API:大量データ(数万単位)の高速非同期処理
特徴:
- 数万単位の大量データを高速処理
- 非同期処理で長時間の処理も対応可能
- CSV、JSON、XMLフォーマットに対応
適用シーン:
- 基幹システムのマスタデータ読み込み
- 大量のレコードのインポート・エクスポート
- 定期的なバッチ処理
(4) Streaming API:リアルタイムデータ更新とプッシュ通知
特徴:
- Salesforce内のデータ更新を監視
- 条件に合うデータ更新時にプッシュ通知を実行
- リアルタイム性が求められるシーンに適する
適用シーン:
- 営業ダッシュボードへのリアルタイム反映
- 在庫管理システムとの即時連携
- アラート通知の自動実行
(5) Metadata API:メタデータ管理と組織間移行
特徴:
- Salesforceのメタデータ(カスタムオブジェクト、項目、ページレイアウト等)を記述・管理
- 組織間のメタデータ移行に対応
適用シーン:
- 組織マージ時のメタデータ統合
- 本番環境へのカスタマイズのデプロイ
- バックアップとリストアの自動化
4. API認証と実装の基本手順
(1) OAuth認証の仕組みとセキュアな接続方法
Salesforce APIへのアクセスには、OAuth認証が推奨されます。OAuthは、セキュアな認証プロトコルで、ユーザー名・パスワードを入力せずにAPIアクセスが可能です。
OAuth認証の基本フロー:
- アプリケーションがSalesforceに認証リクエストを送信
- ユーザーがSalesforceにログインし、アクセスを許可
- Salesforceがアクセストークンを発行
- アプリケーションはアクセストークンを使用してAPIにリクエスト
これにより、セキュリティリスクが低減されます。
(2) REST APIの基本的な実装パターン
REST APIでは、標準的なHTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE)を使用してSalesforceデータにアクセスします。
基本的なリクエスト例(疑似コード):
GET https://yourInstance.salesforce.com/services/data/vXX.X/sobjects/Account/001XXXXXXXXXXXX
Authorization: Bearer {access_token}
詳細な実装手順は、Salesforce公式の開発者ドキュメントとTrailheadを参照してください。
(3) SOAP APIのWSDLファイル活用
SOAP APIでは、WSDLファイル(Web Services Description Language)を使用して、APIの正式な契約定義を取得します。
WSDLファイルの取得:
- Salesforce設定画面で「API」→「WSDL生成」を選択
- Enterprise WSDLまたはPartner WSDLをダウンロード
- 開発環境(Java、.NET等)でWSDLファイルをインポート
これにより、タイプセーフなAPIクライアントを自動生成できます。
(4) Trailheadを活用した学習リソース
Salesforce公式の学習プラットフォーム「Trailhead」では、API統合の基礎から応用までの実践的な学習リソースが提供されています。
推奨モジュール:
- API Basics
- REST API Integration Guide
- SOAP API Implementation
これらのモジュールを活用することで、実務的なスキルを習得できます。
5. API制限の詳細と監視・対処法
(1) Enterprise Editionの制限(1日100,000リクエストから)
Enterprise Editionでは、1日あたりのAPI制限は100,000リクエストから開始します。
(2) ライセンス数に応じた制限の増加
API制限はライセンス数に応じて増加します。詳細な計算式は公式ドキュメントで確認できます。
(3) Event Log File Browserによる使用状況監視(Summer '24新機能)
Summer '24リリースで、Event Log File Browserが追加され、API使用状況と使用バージョンの監視が容易になりました。
監視項目:
- 1日あたりのAPIコール数
- 使用中のAPIバージョン
- 制限に対する使用率
(4) 追加APIコールの購入(200~10,000回/日)
API制限を超えた場合、追加のAPIコールを200~10,000回/日の単位で購入できます。
(5) APIバージョン廃止への対応(バージョン21.0~30.0は2025年夏廃止)
Platform APIバージョン21.0~30.0は非推奨となっており、Summer '25リリース(2025年夏)で廃止される予定です。
Event Log File Browserを使用して、使用中のバージョンを確認し、最新バージョンへの移行を計画する必要があります。
6. まとめ:Salesforce API活用のベストプラクティス
Salesforce APIは、REST API、SOAP API、Bulk API、Streaming APIなど、用途に応じた使い分けにより、多様な統合シーンに対応できます。軽量なWeb/モバイル統合にはREST API、エンタープライズレベルの構造化統合にはSOAP API、大量データ処理にはBulk API、リアルタイムデータ更新にはStreaming APIが推奨されます。
Enterprise Editionでは1日100,000リクエストから開始し、ライセンス数に応じて増加します。Summer '24リリースのEvent Log File Browserで使用状況を監視し、APIバージョン廃止に備えることが重要です。
次のアクション:
- 自社の統合要件を整理し、適切なAPIを選定する
- OAuth認証の実装とセキュアな接続を確立する
- Trailheadで実践的なスキルを習得する
- Event Log File Browserで使用状況を監視し、制限を確認する
- APIバージョンを確認し、最新バージョンへの移行を計画する
Salesforce APIを正しく活用することで、データの手作業による移行を排除し、業務効率を大幅に向上させましょう。
よくある質問:
Q: REST APIとSOAP APIの違いは何ですか? A: REST APIはJSON対応で軽量・高速、モバイルアプリやWebアプリ開発に適しています。SOAP APIはXML専用でWSDLファイルを使用し、安全性・信頼性に優れるため、エンタープライズレベルのサーバー間統合に適しています。
Q: どのSalesforce APIを選べば良いですか? A: 軽量なWeb/モバイル統合にはREST API、エンタープライズレベルの構造化統合にはSOAP API、数万単位の大量データ処理にはBulk API、リアルタイムデータ更新監視にはStreaming APIが推奨です。用途に応じた使い分けが重要です。
Q: Salesforce APIの利用制限はありますか? A: Enterprise Editionでは1日100,000リクエストから開始し、ライセンス数に応じて増加します。制限を超えた場合は追加APIコールを200~10,000回/日の単位で購入できます。Summer '24リリースのEvent Log File Browserで使用状況を監視できます。
Q: Salesforce APIでどのような統合が可能ですか? A: ERP、会計システム、基幹システムとのリアルタイムデータ同期、モバイルアプリ開発、自動ワークフロー、サードパーティアプリ統合などが可能です。DataLoaderはSOAP APIとBulk APIを自動切り替えしてデータインポートを実行します。
Q: API使用状況をどのように監視すべきですか? A: Summer '24リリースで追加されたEvent Log File Browserを使用し、API使用状況と使用バージョンを確認できます。Platform APIバージョン21.0~30.0は2025年夏に廃止予定のため、定期的なバージョン監視が必要です。
※この記事は2025年11月時点の情報です。API仕様やバージョン廃止スケジュールは変更される可能性があるため、最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。
