Salesforceのデータ分析、CRM AnalyticsとTableauどちらを選ぶべき?
Salesforceを導入している企業の多くが、データ分析・可視化ツールの選定で悩んでいます。「CRM Analytics(旧Einstein Analytics)とTableau、どちらを使うべきか?」「両方を連携させる方法は?」「コストや学習コストはどれくらい?」といった疑問は尽きません。
特に2019年にSalesforceがTableauを買収(157億ドル)して以降、両製品の位置づけや使い分けが複雑化しています。この記事では、中堅〜大企業の営業企画・経営企画担当者、データアナリスト向けに、CRM AnalyticsとTableauの違い・連携方法・選択基準を徹底解説します。
この記事のポイント:
- CRM AnalyticsはSalesforce統合分析、Tableauは汎用エンタープライズBIとして位置づけられる
- Tableauは多様なデータソース(Google Analytics、スプレッドシート等)との連携が可能
- 連携方法はOAuth認証・ダッシュボード埋め込み(LWC)・SSOで実現
- Salesforce API制限に注意が必要(同時接続数・総要求数の上限がある)
- Tableau Nextにより、Hyperforce基盤・Data Cloud統合・Agentforce AI連携が強化される見込み
1. SalesforceとTableauの連携が注目される理由
(1) Salesforce買収により実現した統合分析環境
2019年、SalesforceはTableauを157億ドルで買収しました。これにより、Salesforceユーザーは高度なビジュアライゼーション機能を持つTableauと、CRMデータに深く統合されたCRM Analyticsの両方を選択できるようになりました。
買収後、SalesforceはTableauの独立性を維持しつつ、連携機能を強化してきました。2024年には「Tableau Next」が発表され、Hyperforce基盤への移行・Data Cloud統合・Agentforce AI連携が計画されています。
(2) 営業・経営企画部門が抱えるデータ分析課題
営業企画・経営企画部門が抱える典型的な課題は以下の通りです:
データ分散の問題:
- SalesforceのCRMデータだけでなく、Google Analytics、マーケティングツール、スプレッドシート等、複数のデータソースが分散している
- データを統合して分析するには、手作業でのデータ抽出・加工が必要で、工数がかかる
可視化の限界:
- Salesforceの標準レポート・ダッシュボード機能では、複雑な分析や高度なビジュアライゼーションに限界がある
- 経営層への報告資料作成に時間がかかる
意思決定の遅れ:
- データが分散しているため、リアルタイムでの意思決定が困難
- 最新の経営情報を全社で共有する仕組みがない
CRM AnalyticsとTableauは、これらの課題を解決するための選択肢として注目されています。
2. CRM Analytics(旧Einstein Analytics)とTableauの基礎知識
(1) CRM Analyticsの特徴と位置づけ
CRM Analytics(旧名称: Einstein Analytics) は、SalesforceのCRMに深く統合された分析ツールです。主な特徴は以下の通りです:
Salesforce-nativeなインサイト:
- CRMデータ(商談、リード、顧客情報等)をリアルタイムで分析
- Salesforceの画面内で直接ダッシュボードを表示・操作可能
- Einstein AI(機械学習)機能により、予測分析・異常検知が可能
主なユースケース:
- 営業パイプライン分析(商談進捗、受注予測)
- リードスコアリング(見込み客の優先順位付け)
- 顧客セグメント分析(顧客属性別の売上分析)
メリット:
- Salesforceとの統合が容易(追加の認証設定不要)
- Salesforce標準オブジェクトをそのまま分析できる
- モバイルアプリでも利用可能
デメリット:
- 主にSalesforceデータの分析に特化(他のデータソース連携は限定的)
- ビジュアライゼーションの自由度がTableauに比べてやや低い
※CRM Analyticsの料金は変動するため、最新情報はSalesforce公式サイトでご確認ください。
(2) Tableauの特徴と位置づけ
Tableau は、汎用エンタープライズBIツールとして世界中で利用されているデータビジュアライゼーションプラットフォームです。主な特徴は以下の通りです:
多様なデータソース連携:
- Salesforce、Google Analytics、スプレッドシート、データベース(MySQL、PostgreSQL等)、クラウドストレージ等、数百種類のデータソースに対応
- 複数のデータソースを統合して分析可能
高度なビジュアライゼーション:
- ドラッグ&ドロップで直感的にダッシュボード作成
- インタラクティブなグラフ・チャートを作成可能
- カスタマイズ性が高い
主な製品エディション:
- Tableau Desktop: ローカル環境で分析・ダッシュボード作成
- Tableau Server: オンプレミス環境でのダッシュボード共有
- Tableau Online: クラウド環境でのダッシュボード共有
- Tableau Public: 無料版(公開ダッシュボードのみ)
メリット:
- Salesforce以外のデータも統合分析できる
- ビジュアライゼーションの自由度が非常に高い
- 大規模データの処理に強い
デメリット:
- 学習コストがかかる(特にデータビジュアライゼーション未経験者)
- ライセンス費用が別途必要
※Tableauの料金は製品エディションにより異なります。最新情報はTableau公式サイトでご確認ください。
(3) Tableau Nextによる進化の方向性
2024年、Salesforceは「Tableau Next」を発表しました。これは、Tableauの次期バージョンであり、以下の機能強化が計画されています:
Hyperforce基盤への移行:
- パブリッククラウド(AWS、Google Cloud、Azure)上で動作する次世代クラウド基盤
- スケーラビリティ・セキュリティの向上
Data Cloud統合:
- Salesforceのデータ統合プラットフォーム「Data Cloud」を統一データレイヤーとして活用
- 複数ソースのデータを効率的に統合・分析可能
Agentforce AI連携:
- SalesforceのAIエージェントスイート「Agentforce」と連携
- Agentic Analytics(AIエージェントが人間と協働してデータ分析を自動化)を実現
※Tableau Nextは現在発表段階です。詳細な仕様・リリース時期は公式発表をご確認ください。
3. CRM AnalyticsとTableauの違いと使い分け
(1) 機能面の比較(汎用BI vs Salesforce統合分析)
| 比較項目 | CRM Analytics | Tableau |
|---|---|---|
| 主な用途 | Salesforce CRMデータの分析 | 汎用BI(複数データソース統合分析) |
| データソース | 主にSalesforce(他ソース連携は限定的) | 数百種類のデータソースに対応 |
| ビジュアライゼーション | 標準的なグラフ・チャート | 高度で自由度の高いビジュアライゼーション |
| AI機能 | Einstein AI(予測分析・異常検知) | Tableau Pulse(AI駆動のインサイト発見) |
| 学習コスト | 比較的低い(Salesforce操作に慣れていれば) | 中〜高(データビジュアライゼーション経験が必要) |
| モバイル対応 | Salesforceモバイルアプリで利用可能 | Tableau Mobile(別途ダウンロード必要) |
(2) データソース連携の違い
CRM Analytics:
- Salesforce標準オブジェクト(商談、リード、取引先等)をそのまま分析可能
- カスタムオブジェクトも分析対象にできる
- 外部データソースとの連携は、Salesforce Connect等を経由する必要がある
Tableau:
- Salesforceコネクタを使用してOAuth認証で接続(Tableau Desktop 2020.4以降)
- Google Analytics、スプレッドシート、データベース、クラウドストレージ等、多様なデータソースに直接接続可能
- データブレンド機能により、複数ソースのデータを統合分析できる
(3) 企業規模・ユースケース別の選択基準
CRM Analyticsが適しているケース:
- 主にSalesforceデータの分析に特化したい
- 営業部門のパイプライン分析・予測分析が主な目的
- Salesforceとの統合を最優先したい
- 学習コストを抑えたい
Tableauが適しているケース:
- Salesforce以外のデータ(Google Analytics、マーケティングツール、スプレッドシート等)も統合分析したい
- 高度なビジュアライゼーション・カスタマイズが必要
- 経営ダッシュボード・全社横断的な分析基盤を構築したい
- データビジュアライゼーションの専門人材がいる、または育成できる
両方を併用するケース:
- CRM Analyticsで営業部門の日常的な分析を実施
- Tableauで経営層向けの全社ダッシュボードを作成
- データソースに応じて使い分ける
4. SalesforceとTableauの連携方法と実装手順
(1) OAuth認証によるデータ接続手順
Tableau Desktop 2020.4以降では、OAuth認証を使用してSalesforceに接続できます。これにより、ユーザー名・パスワード入力が不要になりました。
接続手順:
- Tableau Desktopを起動
- 「接続」メニューから「Salesforce」を選択
- 「OAuth認証」を選択し、Salesforceのログイン画面が表示される
- Salesforceの認証情報(メールアドレス・パスワード)を入力
- 接続が完了すると、Salesforceのオブジェクト(商談、リード等)が一覧表示される
- 分析したいオブジェクトを選択してダッシュボード作成を開始
(2) ダッシュボードの埋め込み(LWC活用)
Tableauのダッシュボードは、Lightning Web Component(LWC)を使用してSalesforceの画面に埋め込むことができます。
埋め込み手順:
- Tableau ServerまたはTableau Onlineでダッシュボードを公開
- Salesforceの設定画面で「Lightning アプリケーションビルダー」を開く
- LWCコンポーネントを作成し、Tableau埋め込み用のコードを記述
- ダッシュボードのURLを指定
- Salesforceのホーム画面・レコード詳細画面等に配置
これにより、Salesforceにログインすれば、Tableauダッシュボードもシームレスに閲覧できるようになります。
(3) SSO(シングルサインオン)の設定
SalesforceのSSO機能を利用すれば、Salesforceにログインするだけで、追加のTableau認証が不要になります。
SSO設定のメリット:
- ユーザーの利便性向上(認証情報を複数管理する必要がない)
- セキュリティ強化(認証を一元管理)
設定方法:
- Salesforce側でSSO設定(SAML認証)を有効化
- Tableau ServerまたはTableau OnlineでSAML認証を設定
- Salesforceのユーザー情報とTableauのユーザー情報を同期
詳細な設定手順は、Salesforce公式ドキュメント・Tableau公式ドキュメントをご確認ください。
(4) API制限と対策方法
重要な注意点:
Salesforceには、API要求数に制限があります:
制限の種類:
- 同時接続数の制限: 一度に接続できるAPI数に上限がある
- 総API要求数の制限: 24時間あたりの総API要求数に上限がある(エディション・ライセンス数により変動)
TableauでSalesforceに接続する際、これらの制限に達するとエラーが発生する可能性があります。
対策方法:
- 事前にSalesforceの設定画面で、自社のAPI制限値を確認する
- Tableauのデータ抽出機能を使用し、リアルタイム接続ではなく定期的なデータ抽出に切り替える
- API要求数を監視し、上限に近づいた場合はアラートを設定する
- 必要に応じて、Salesforceのエディションをアップグレードして制限値を引き上げる
5. 導入時のコストとリスク・注意点
(1) ライセンス費用の目安
CRM Analytics:
- ライセンス費用は変動するため、Salesforce営業に問い合わせて最新の見積もりを確認することを推奨
- 一般的には、ユーザー数・機能に応じて月額料金が設定される
Tableau:
- 製品エディション(Desktop、Server、Online等)により料金が異なる
- Desktop: 買い切りまたはサブスクリプション(年額)
- Server/Online: ユーザー数に応じた月額料金
- 価格は変動するため、Tableau公式サイトで最新情報を確認することを推奨
両方を導入する場合:
- CRM AnalyticsとTableauの両方のライセンスが必要
- 総コストを事前に見積もり、ROI(投資対効果)を評価することが重要
(2) 学習コスト・運用体制の整備
CRM Analytics:
- Salesforceの操作に慣れていれば、比較的短期間(1-2週間)で基本操作を習得可能
- 公式トレーニング・認定資格制度を活用することで学習効率を高められる
Tableau:
- データビジュアライゼーションの経験がある担当者なら1-2週間で基本操作を習得可能
- 未経験者は1-3ヶ月の研修期間が必要
- Tableau公式の無料トレーニング・認定資格制度を活用することで学習効率を高められる
運用体制:
- データアナリスト・BIエンジニアの配置(専任または兼任)
- ダッシュボードのメンテナンス・更新を定期的に実施する体制
- ユーザーからの問い合わせ対応窓口の設置
(3) API制限によるエラーリスク
前述の通り、SalesforceのAPI制限により、Tableau接続時にエラーが発生する可能性があります。
リスク軽減策:
- 無料トライアル期間中にAPI制限を確認し、自社の利用量で問題が発生しないか検証する
- データ抽出機能を活用して、リアルタイム接続の頻度を減らす
- API要求数を監視するダッシュボードを作成し、定期的に確認する
(4) Tableau Nextへの移行計画
Tableau Nextが正式リリースされた際、既存のTableau環境からの移行が必要になる可能性があります。
移行計画の考慮事項:
- Tableau Nextの詳細な仕様・リリース時期は公式発表を確認する
- 移行に伴うコスト・工数を事前に見積もる
- ダウンタイムを最小化する移行計画を策定する
※Tableau Nextは発表段階であり、詳細は今後の公式発表をご確認ください。
6. まとめ:目的別おすすめの選択肢
CRM AnalyticsとTableauは、それぞれ異なる強みを持つ分析ツールです。自社のニーズ・予算・運用体制に応じて最適な選択肢を選びましょう。
選択のポイント:
- Salesforceデータのみを分析したい → CRM Analyticsで十分
- 複数のデータソースを統合分析したい → Tableauが適している
- 高度なビジュアライゼーションが必要 → Tableauが適している
- 学習コストを抑えたい → CRM Analyticsが適している
- 両方を併用する → 用途別に使い分ける(営業部門はCRM Analytics、経営層はTableau等)
次のアクション:
- 自社の分析ニーズ・データソースを整理する
- CRM AnalyticsとTableauの無料トライアルで実際に操作性を試す
- API制限・ライセンス費用を確認し、ROIを評価する
- 導入実績のある企業の事例を参考にする
- 運用体制(データアナリスト配置・トレーニング計画)を整備する
自社に合った分析ツールで、データドリブンな意思決定を実現し、営業活動・経営活動の効率化を目指しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。料金・機能は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
