営業戦略を体系的に立案したいあなたへ
B2B企業の営業マネージャーや営業企画担当者として、「営業組織を拡大したいが、どう戦略を立てればいいか分からない」「市場環境が変化し、営業戦略の見直しが必要だが、どのフレームワークを使うべきか悩んでいる」といった課題に直面していませんか?
営業戦略の立案には、体系的なフレームワークを活用することで、効率的かつ論理的に分析・立案を進めることができます。しかし、多数のフレームワークが存在し、それぞれの目的や使い分けが不明確で、実際にどう活用すればいいか分からないという声も少なくありません。
この記事では、営業戦略の基本、立案の5-6ステップ、活用すべき主要フレームワーク10選、商談・ヒアリングで使えるフレームワーク、2024年のBtoB営業戦略トレンドまで詳しく解説します。
この記事のポイント:
- フレームワークを活用すれば、必要な情報を当てはめるだけで分析が容易になり、営業戦略の立案を効率化できる
- 3C分析(自社・顧客・競合)とSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)が基本、市場分析にはPEST分析、商談にはSPIN/BANTが有効
- SPIN営業は顧客の潜在ニーズを掘り起こすヒアリング手法、BANTは商談確度を測定するフレームワーク(併用が効果的)
- 営業戦略立案は5-6ステップで体系化:環境分析→ポジショニング→セグメンテーション→商品決定→戦術作成→PDCA
- 2024年のBtoB営業戦略では、顧客エンゲージメントとデータ駆動型営業が重視される
1. 営業戦略とは:営業戦略と営業戦術の違い
まず、営業戦略の定義と、営業戦術との違い、フレームワークを活用するメリットについて整理します。
(1) 営業戦略の定義と重要性
営業戦略とは、営業リソースを効率よく活用し、営業目標を実現する方策です。
営業戦略の重要性:
- 限られたリソースの最適配分: 人員、予算、時間などの限られたリソースをどこに集中させるかを明確にする
- 市場変化への対応: 市場動向、競合の動き、顧客ニーズの変化に柔軟に対応
- 営業組織の方向性統一: チーム全体で共通の目標・方針を共有し、一貫性のある営業活動を実現
営業戦略がない場合、場当たり的な営業活動になり、非効率で成果が上がりにくくなります。
(2) 営業戦略(何をするか)と営業戦術(どう実行するか)の違い
営業戦略と営業戦術は混同されやすいですが、明確な違いがあります。
営業戦略:
- 「何をするか」の方針: ターゲット市場の選定、ポジショニング、競合との差別化など大きな方向性を定める
- 長期的視点: 数ヶ月から数年単位の中長期的な方針
- 例: 「中小企業向けSaaSに特化する」「既存顧客のアップセルを強化する」
営業戦術:
- 「どう実行するか」の具体的行動: 戦略を実現するための具体的な営業活動
- 短期的視点: 日々の営業活動、月次・四半期の施策
- 例: 「テレアポで月100件アプローチ」「ウェビナーで月20件リード獲得」「SFAツールで商談進捗を可視化」
営業戦略が大きな方向性を示し、営業戦術がその実現手段を具体化する関係です。
(3) フレームワークを活用するメリット
フレームワークとは、**成功するための要素をまとめた型(枠組み)**です。
フレームワークを活用するメリット:
- 分析の効率化: 必要な情報を当てはめるだけで、体系的な分析が可能
- 論理的思考の促進: 思考の漏れや偏りを防ぎ、多角的な視点で分析
- チーム内での共通言語化: フレームワークを共有することで、議論がスムーズに
- 再現性の向上: 過去の成功パターンを型化し、再現しやすくする
ただし、フレームワークは思考の補助ツールであり、盲目的に当てはめるだけでは効果が出ません。自社の状況に合わせて柔軟に活用することが重要です。
2. 営業戦略立案の5-6ステップと全体プロセス
営業戦略の立案は、以下の5-6ステップで体系化できます。
(1) ステップ1:環境分析(市場・競合・自社リソース)
環境分析の目的:
- 市場動向、競合の状況、自社のリソースを把握し、戦略立案の基盤を固める
環境分析で使うフレームワーク:
- 3C分析: Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)を分析
- PEST分析: Political(政治)、Economic(経済)、Social(社会)、Technological(技術)の外部環境を分析
- SWOT分析: Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を整理
環境分析で明らかにすべきこと:
- 市場規模、成長率、トレンド
- 競合の数、シェア、強み・弱み
- 自社のリソース(人員、予算、技術、製品)
- 顧客のニーズ、購買プロセス、課題
(2) ステップ2:ポジショニング決定
ポジショニングの目的:
- 自社が市場でどのような立ち位置を取るかを明確にする
ポジショニング決定のポイント:
- 差別化: 競合とどう差別化するか(価格、品質、サービス、ニッチ市場等)
- 自社の強みを活かす: SWOT分析で特定した強みを最大限に活かす
- 顧客価値: 顧客にとっての価値を明確にする
ポジショニングの例:
- 「中小企業向けに低価格・使いやすいSaaSを提供」
- 「大企業向けに高機能・カスタマイズ可能なエンタープライズソリューションを提供」
(3) ステップ3:顧客セグメンテーション
顧客セグメンテーションの目的:
- 顧客を属性やニーズで分類し、ターゲット顧客を明確にする
顧客セグメンテーションの基準:
- 業種: 製造業、小売業、IT業界等
- 企業規模: 従業員数、売上高、資本金等
- 地域: 関東、関西、全国等
- ニーズ: コスト削減、業務効率化、売上拡大等
セグメンテーションのフレームワーク:
- パレトの法則(80:20の法則): 売上の80%は顧客の20%が生み出す。重要顧客に集中
- RFM分析: Recency(最終購買日)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)で顧客を分類
(4) ステップ4:商品・サービス決定
商品・サービス決定の目的:
- どの商品・サービスをどのターゲット顧客に提供するかを決定
商品・サービス決定のポイント:
- 顧客ニーズとのマッチ: ターゲット顧客のニーズに最も合う商品・サービスを選定
- 自社の強みを活かす: 自社が競争優位性を持つ商品・サービスに集中
- 収益性: 利益率が高い商品・サービスを優先
使用するフレームワーク:
- 4P分析: Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)
- VRIO分析: Value(経済価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織)で競争優位性を評価
(5) ステップ5:営業戦術作成
営業戦術作成の目的:
- 戦略を実現するための具体的な営業活動を設計
営業戦術の例:
- アプローチ方法: テレアポ、メール営業、フォーム営業、展示会、ウェビナー等
- ツール活用: SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)、MA(マーケティングオートメーション)
- 営業プロセス: リード獲得 → 商談 → 提案 → クロージング → フォローアップ
使用するフレームワーク:
- ロジックツリー: 課題を階層的に分解し、具体的な施策を導出
- 5W1H: Who(誰に)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)
(6) ステップ6:PDCA(継続的改善)
PDCAの目的:
- 営業戦略は立案後もPDCAを回し、市場変化に応じて柔軟に修正
PDCAサイクル:
- Plan(計画): 営業戦略・戦術を立案
- Do(実行): 営業活動を実行
- Check(評価): KPI(売上、商談数、成約率等)で進捗を測定
- Action(改善): 評価結果に基づき、戦略・戦術を修正
3. 戦略立案で活用する主要フレームワーク10選
BtoB営業戦略で活用頻度の高い主要フレームワーク10選を紹介します。
(1) 3C分析(Company/Customer/Competitor)
3C分析とは:
- Company(自社): 自社のリソース、強み、弱みを分析
- Customer(顧客): 顧客のニーズ、購買プロセス、市場規模を分析
- Competitor(競合): 競合の数、シェア、強み、弱みを分析
3C分析の活用法:
- 自社・顧客・競合を俯瞰し、自社の優位性を特定する
- 競合との差別化ポイントを明確にする
(2) SWOT分析(Strengths/Weaknesses/Opportunities/Threats)
SWOT分析とは:
- 内部環境: Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)
- 外部環境: Opportunities(機会)、Threats(脅威)
SWOT分析の活用法:
- 強みを活かして機会を捉える(SO戦略)
- 弱みを克服して機会を捉える(WO戦略)
- 強みを活かして脅威を回避する(ST戦略)
- 弱みと脅威を最小化する(WT戦略)
(3) 4P分析(Product/Price/Place/Promotion)
4P分析とは:
- Product(製品): 製品の機能、品質、デザイン
- Price(価格): 価格設定、値引き戦略
- Place(流通): 販売チャネル、流通経路
- Promotion(販促): 広告、PR、営業活動
4P分析の活用法:
- マーケティングミックスを最適化し、顧客価値を最大化
(4) PEST分析(Political/Economic/Social/Technological)
PEST分析とは:
- Political(政治): 法規制、政治的安定性
- Economic(経済): 経済成長率、為替レート、インフレ率
- Social(社会): 人口動態、ライフスタイル、価値観
- Technological(技術): 技術革新、デジタル化
PEST分析の活用法:
- 外部環境の変化を把握し、機会と脅威を特定
(5) ランチェスター戦略(弱者の差別化戦略)
ランチェスター戦略とは:
- 弱者の戦略: 局地戦・接近戦・一騎打ち(ニッチ市場に集中、顧客との密な関係構築)
- 強者の戦略: 広域戦・遠隔戦・確率戦(幅広い市場をカバー、物量で勝負)
ランチェスター戦略の活用法:
- 自社が弱者か強者かを見極め、適切な戦略を選択
(6) パレトの法則(80:20の法則)
パレトの法則とは:
- 売上の80%は顧客の20%が生み出すという経験則
パレトの法則の活用法:
- 重要顧客(売上の80%を生み出す上位20%)に営業リソースを集中
- 優先順位をつけ、効率的に営業活動を実施
(7) VRIO分析(Value/Rarity/Imitability/Organization)
VRIO分析とは:
- Value(経済価値): 顧客にとって価値があるか
- Rarity(希少性): 競合が持っていないか
- Imitability(模倣困難性): 競合が真似しにくいか
- Organization(組織): 組織として活用できるか
VRIO分析の活用法:
- 自社の競争優位性を評価し、差別化ポイントを特定
(8) バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは:
- 企業活動を主活動(購買・製造・販売・サービス)と支援活動(人事・技術・調達)に分解し、価値創造プロセスを分析
バリューチェーン分析の活用法:
- どの活動が価値を生み出しているかを特定し、強化すべき領域を明確化
(9) ポーターの5フォース分析
ポーターの5フォース分析とは:
- 新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力、既存競合の競争の5つの要因で業界の競争環境を分析
ポーターの5フォース分析の活用法:
- 業界の収益性と競争の激しさを把握し、参入・撤退の判断材料にする
(10) ロジックツリー
ロジックツリーとは:
- 課題を階層的に分解し、根本原因や具体的な施策を導出する手法
ロジックツリーの活用法:
- 「売上が伸びない」という課題を「新規顧客獲得不足」「既存顧客の解約」等に分解し、具体的な施策を検討
4. 商談・ヒアリングで活用するフレームワーク(SPIN・BANT等)
営業戦略の立案だけでなく、商談・ヒアリングの現場でも活用できるフレームワークがあります。
(1) SPIN営業(Situation/Problem/Implication/Need-Payoff)
SPIN営業とは:
- 顧客の潜在ニーズを掘り起こすヒアリング手法
SPINの4つの質問:
- Situation(状況質問): 顧客の現状を把握(「現在どのようなツールを使っていますか?」)
- Problem(問題質問): 顧客が抱える課題を明確化(「どのような課題がありますか?」)
- Implication(示唆質問): 課題が放置された場合の影響を認識させる(「その課題が解決しないと、どんな影響がありますか?」)
- Need-Payoff(必要性の解決質問): 解決策の価値を認識させる(「解決すると、どんなメリットがありますか?」)
SPIN営業の活用法:
- 顧客自身が気づいていない課題を引き出し、解決策を提案する
(2) BANT(Budget/Authority/Needs/Time frame)
BANTとは:
- 商談確度を測定するフレームワーク
BANTの4要素:
- Budget(予算): 導入予算があるか
- Authority(決裁権): 決裁権を持つ担当者と話せているか
- Needs(ニーズ): 明確なニーズがあるか
- Time frame(導入時期): 導入時期が決まっているか
BANTの活用法:
- 4要素を確認し、商談の優先順位を判断する
- すべて揃っている商談は確度が高く、優先的にリソースを投下
(3) SPINとBANTの使い分けと併用方法
使い分け:
- SPIN: 顧客のニーズ発見・深掘り(商談の初期段階)
- BANT: 商談確度測定(商談の中盤〜後半)
併用方法:
- SPINで顧客の課題を明確化
- BANTで予算・決裁権・導入時期を確認
- 提案に必要な情報を網羅的に収集
SPINとBANTを併用することで、効果的なヒアリングと商談確度の向上を実現できます。
5. 2024年のBtoB営業戦略トレンドと成功のポイント
2024年のBtoB営業戦略におけるトレンドと成功のポイントを解説します。
(1) 顧客エンゲージメント重視の戦略
顧客エンゲージメントとは:
- 顧客との継続的な関係構築と、顧客体験の向上
顧客エンゲージメント重視の戦略:
- パーソナライズ: 顧客ごとにカスタマイズした提案・コミュニケーション
- オムニチャネル: メール、電話、SNS、ウェビナー等、複数チャネルでの接点強化
- カスタマーサクセス: 導入後のフォローアップと成功支援
(2) データ駆動型営業の実践
データ駆動型営業とは:
- データ分析に基づく営業活動の最適化
データ駆動型営業の実践:
- SFA・CRM・MAツール活用: 営業活動のデータ化と可視化
- A/Bテスト: メールの件名、提案資料のデザイン等をテストし、最適化
- 予測分析: 過去のデータから成約確率を予測し、優先順位をつける
(3) 市場トレンド分析・競合分析・自社の強み理解の3大要素
2024年8月、SALES GOが営業戦略立案の3大要素を提示:
- 市場トレンド分析: 市場の成長性、顧客ニーズの変化を把握
- 競合分析: 競合の戦略、強み・弱みを分析
- 自社の強み・弱み理解: 自社のリソースと競争優位性を客観的に評価
この3大要素を押さえることで、効果的な営業戦略を立案できます。
6. まとめ:フレームワークを効果的に活用するために
営業戦略の立案には、体系的なフレームワークを活用することで、効率的かつ論理的に分析・立案を進めることができます。
フレームワークを効果的に活用するためのポイント:
- 目的を明確にする: 何を明らかにしたいかを起点に、フレームワークを選定
- 複数を組み合わせる: 3C分析とSWOT分析、SPINとBANTなど、複数を組み合わせて多角的に分析
- 柔軟に活用する: フレームワークは補助ツールであり、盲目的に当てはめない
- PDCAを回す: 営業戦略は立案後も継続的に改善
主要フレームワークのまとめ:
- 環境分析: 3C分析、SWOT分析、PEST分析
- ポジショニング・差別化: ランチェスター戦略、VRIO分析、ポーターの5フォース分析
- 商品・サービス決定: 4P分析、バリューチェーン分析
- 顧客セグメンテーション: パレトの法則
- 営業戦術: ロジックツリー、5W1H
- 商談・ヒアリング: SPIN営業、BANT
次のアクション:
- 3C分析とSWOT分析で自社の現状を把握する
- 営業戦略立案の5-6ステップに沿って、体系的に戦略を立案する
- SPIN営業とBANTを商談・ヒアリングで活用し、商談確度を向上させる
- データ駆動型営業を実践し、PDCAを回して継続的に改善する
営業戦略の立案は、フレームワークを活用することで効率化できますが、最も重要なのは「自社の状況に合わせて柔軟に活用すること」です。この記事を参考に、効果的な営業戦略を立案していきましょう。
※この記事は2024年時点の情報です。市場動向やトレンドは変更される可能性があるため、最新情報をご確認ください。
