セールスファネルの作り方:5ステップで構築する実践ガイド

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/8

リードは獲得できているのに、なぜ受注につながらないのか

B2B企業の営業・マーケティング担当者が抱える共通の課題として、「リードは増えているが商談につながらない」「どのフェーズで離脱しているのか分からない」「営業とマーケの連携がうまくいかない」といった声があります。

これらの課題を解決する手段として有効なのが、セールスファネルの構築です。この記事では、セールスファネルの基本概念から、5ステップでの構築方法、各ステージのKPI設定、ボトルネック改善の手法まで実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • セールスファネルは潜在顧客が顧客化するまでの過程を可視化するモデル
  • TOFU/MOFU/BOFUの3段階構造で設計するのが基本
  • BtoBでは長い商談サイクルと複数関与者への対応が必要
  • KPI設定はKGI(最終目標)から逆算して各ステージに設定
  • 改善にはABテストとボトルネック特定が効果的

1. セールスファネルとは—なぜ今構築が必要なのか

セールスファネルとは、潜在顧客が顧客化するまでの過程を段階分けして示したモデルです。「見込み客を集める(集客)→価値提供(信頼構築)→商品を売る(販売)」という営業プロセスの流れを可視化します。

逆三角形の形状が漏斗(ファネル)に似ていることから、この名前が付けられています。各段階で一定数の離脱が発生するため、上部から下部に向かって人数が減っていく形になります。

セールスファネル構築のメリット:

  • 営業プロセス全体を可視化できる
  • 離脱率の高いフェーズ(ボトルネック)を特定できる
  • 各段階に適した施策を設計できる
  • マーケティングと営業の連携がスムーズになる
  • 売上予測の精度が向上する

特にBtoB企業では、リード獲得から受注までの商談サイクルが長く、複数の担当者が意思決定に関与するため、ファネルによる可視化の価値が大きくなります。

2. セールスファネルの基礎知識

(1) セールスファネルの定義と構造(TOFU/MOFU/BOFU)

セールスファネルは一般的に3つの段階で構成されます。

TOFU(Top of the Funnel):認知フェーズ 顧客が商品・サービスに初めて触れる段階です。まだ課題を明確に認識していないか、認識し始めたばかりの状態です。

  • 主な施策:ブログ記事、SNS投稿、広告、SEO対策
  • 目標:認知拡大、サイト訪問者の獲得

MOFU(Middle of the Funnel):検討フェーズ 商品・サービスを認知し関心を持っているが、購入を迷っている段階です。情報収集を行い、複数の選択肢を比較検討しています。

  • 主な施策:ホワイトペーパー、ウェビナー、メールマガジン
  • 目標:リード獲得、エンゲージメント向上

BOFU(Bottom of the Funnel):購入検討フェーズ 積極的に情報収集し、購入・契約を検討している最終段階です。具体的な商談や見積もり依頼が発生します。

  • 主な施策:製品デモ、個別相談、見積もり提示
  • 目標:商談化、受注獲得

(2) マーケティングファネルとの違い

セールスファネルと混同されやすいのがマーケティングファネルです。両者は対象とする領域が異なります。

項目 マーケティングファネル セールスファネル
対象領域 認知〜リード化 リード〜顧客化
主担当 マーケティング部門 営業部門
目標 リード獲得 受注獲得

実務上は、両者を1つの流れとして全体設計することが重要です。マーケティングで獲得したリードを営業に引き渡し、顧客化するまでを一貫したプロセスとして管理することで、効果が最大化されます。

(3) BtoB特有のファネル設計の特徴

BtoB企業のセールスファネルには、BtoCとは異なる特徴があります。

BtoB特有の特徴:

  • 検討期間が長い(数ヶ月〜1年以上)
  • 複数の部門・担当者が意思決定に関与する
  • 商材が高額で、稟議・承認プロセスがある
  • 営業によるフォローが必須

BtoBファネル設計のポイント:

  • 各段階での滞留期間を考慮する
  • 意思決定者と情報収集担当者の両方にアプローチする
  • 営業の各ステージにおける施策を明確化する
  • スコアリング基準を統一し、部署間でデータ連携する

3. セールスファネル構築の5ステップ

(1) 現状分析—顧客行動と転換率の把握

まず、現状の営業・マーケティング活動を分析し、顧客がどのような行動を取っているかを把握します。

分析すべき項目:

  • 流入経路別の訪問者数
  • リード獲得数と獲得経路
  • 商談化率と受注率
  • 各段階での滞留期間
  • 離脱が多いフェーズ

データ収集に使えるツール:

  • Googleアナリティクス(Webサイト分析)
  • CRM/SFA(商談・顧客データ)
  • MAツール(リード行動データ)

現状が見えていないと、どこを改善すべきか判断できません。まずはデータを集めることから始めます。

(2) ステージ定義—自社に合ったファネル段階の設計

現状分析をもとに、自社の顧客行動に合ったファネルの段階を定義します。

BtoBファネルの段階例:

  1. 認知:Webサイト訪問、広告クリック
  2. 興味:資料ダウンロード、ウェビナー参加
  3. 検討:問い合わせ、デモ依頼
  4. 商談:提案、見積もり提示
  5. 受注:契約、導入

注意点: 企業ごとに顧客化までのステップは異なります。他社事例をそのまま適用せず、自社の実態に合わせた設計が必要です。

(3) KPI設定—各ステージの目標数値設定

ファネルの各ステージにKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIはKGI(重要目標達成指標)から逆算して設定します。

KPI設定の考え方:

  1. 最終目標(KGI)を設定する(例:月間受注10件、売上1,000万円)
  2. 受注に必要な商談数を逆算する(受注率30%なら約34件)
  3. 商談に必要なリード数を逆算する(商談化率20%なら170件)
  4. リード獲得に必要な訪問者数を逆算する(CV率2%なら8,500人)

ステージ別KPI例:

ステージ KPI例
認知 訪問者数、インプレッション数
興味 リード獲得数、資料DL数
検討 問い合わせ数、デモ依頼数
商談 商談数、提案件数
受注 受注件数、売上金額

(4) 施策設計—段階別コンテンツ・アクションの準備

各ステージで顧客がどんな行動を取り、どんなニーズを抱えているかを把握し、それぞれに応えるコンテンツ・施策を用意します。

ステージ別施策例:

ステージ 顧客のニーズ 施策例
認知 課題を理解したい ブログ記事、SNS投稿、広告
興味 解決策を知りたい ホワイトペーパー、ウェビナー
検討 具体的に比較したい 事例紹介、製品デモ、比較表
商談 自社に合うか確認したい 個別提案、見積もり
受注 導入を決定したい 契約、導入支援

コンテンツ不足のままファネルを設計しても、各段階で顧客を進めることができません。事前にコンテンツを整備しておくことが重要です。

(5) 測定・改善—ABテストとボトルネック特定

ファネルを運用しながら、データを測定し、継続的に改善します。

改善手法:

ABテスト: ランディングページやフォームで2パターン用意し、効果を比較します。どちらがより高い転換率を実現できるかをデータで判断します。

ボトルネック特定: 離脱率が高いステージを特定し、そのステージに集中して改善します。

改善の優先順位:

  1. 離脱率が最も高いステージを特定
  2. そのステージのコンテンツ・導線を見直し
  3. ABテストで改善効果を検証
  4. 次のボトルネックに移る

注意点: 特定フェーズの改善に集中しすぎて、全体のビジネスゴール(KGI)を見失わないよう注意が必要です。

4. 各ステージのKPI設定と改善手法

(1) 認知段階のKPI(訪問者数・インプレッション)

認知段階では、まず存在を知ってもらうことが目標です。

主なKPI:

  • Webサイト訪問者数(UU)
  • 広告インプレッション数
  • SNSリーチ数
  • 検索順位・オーガニック流入数

改善施策:

  • SEO対策でオーガニック流入を増やす
  • 広告のターゲティングを最適化
  • SNS投稿の頻度・内容を改善

(2) 検討段階のKPI(リード数・資料DL数)

検討段階では、興味を持った訪問者をリードに転換することが目標です。

主なKPI:

  • リード獲得数
  • 資料ダウンロード数
  • ウェビナー参加数
  • メルマガ登録数
  • フォーム送信率(CVR)

改善施策:

  • ランディングページのABテスト
  • フォーム項目数の最適化
  • ホワイトペーパーの内容改善
  • CTA(行動喚起)の配置・文言最適化

(3) 購入検討段階のKPI(商談数・受注件数)

購入検討段階では、商談化と受注獲得が目標です。

主なKPI:

  • 問い合わせ数
  • 商談設定数
  • 提案件数
  • 受注件数・受注率
  • 平均受注単価

改善施策:

  • 営業フォローのスピード改善
  • 提案資料のブラッシュアップ
  • 事例紹介の充実
  • 競合との差別化ポイント明確化

(4) ボトルネック特定と転換率改善のポイント

ファネル全体を俯瞰し、最も改善効果が高いポイントに集中することが重要です。

ボトルネック特定の手順:

  1. 各ステージの転換率を算出
  2. 業界平均や自社過去データと比較
  3. 転換率が低いステージを特定
  4. そのステージの離脱理由を分析

転換率改善のチェックポイント:

  • コンテンツは顧客のニーズに応えているか
  • 次のステージへの導線は明確か
  • フォームの入力項目は適切か
  • レスポンス速度は十分か

5. ツール活用と運用のポイント

(1) CRM/SFA活用(Salesforce・HubSpot・Zoho CRM)

セールスファネルの管理には、CRM/SFAツールの活用が効果的です。

主要ツールの特徴:

ツール 特徴 価格帯
Salesforce 高機能・拡張性重視 月額3,000円〜/ユーザー
HubSpot オールインワン・使いやすさ 無料〜月額数万円
Zoho CRM コストパフォーマンス 月額1,680円〜/ユーザー

※料金は2024年11月時点の目安です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

CRM/SFAで管理できること:

  • 商談のステージ管理
  • 受注予測・売上見込み
  • 営業活動の可視化
  • 顧客情報の一元管理

(2) MAツールとの連携

マーケティングオートメーション(MA)ツールと連携することで、リード獲得から商談化までのプロセスを効率化できます。

連携のメリット:

  • リードスコアリングによるホットリード抽出
  • ナーチャリングメールの自動配信
  • Webトラッキングによる行動把握
  • マーケティングと営業のデータ統合

(3) 部署横断でのスコアリング基準統一

セールスファネルは、マーケティング部門と営業部門を跨ぐ活動です。効果的に運用するには、部署間でのルール統一が重要です。

統一すべき項目:

  • リードの定義(MQL、SQL)
  • スコアリング基準
  • リード引き渡しのタイミング
  • ステージの定義と判断基準

部署間で基準が異なると、「マーケティングが渡したリードを営業がフォローしない」「営業から見るとリードの質が低い」といった問題が発生します。

6. まとめ:BtoBに適したファネル構築のポイント

セールスファネルの構築は、B2B企業の営業プロセス改善に有効な手法です。以下のポイントを押さえて取り組むことが重要です。

構築成功のポイント:

  1. 現状のデータを分析してから設計を始める
  2. 自社の顧客行動に合ったステージを定義する
  3. KGIから逆算してKPIを設定する
  4. 各ステージに適したコンテンツを準備する
  5. 継続的に測定し、ABテストで改善する
  6. 部署横断でスコアリング基準を統一する

次のアクション:

  • 現状の流入経路別訪問者数・リード数・商談数を集計する
  • 自社に合ったファネルのステージを定義する
  • 各ステージのKPIと目標値を設定する
  • 不足しているコンテンツを洗い出す
  • CRM/SFAでファネル管理を始める

セールスファネルは「作って終わり」ではなく、継続的に改善していくものです。まずは現状を可視化することから始め、データに基づいた改善を積み重ねていきましょう。

よくある質問

Q1セールスファネルとマーケティングファネルの違いは何ですか?

A1マーケティングファネルは認知からリード化まで、セールスファネルはリードから顧客化までを対象とします。実務上は両者を1つの流れとして全体設計し、マーケティングと営業が連携することが重要です。

Q2各段階でどのようなKPIを設定すべきですか?

A2認知段階は訪問者数・インプレッション数、検討段階はリード獲得数・資料DL数、購入検討段階は商談数・受注件数・売上金額が一般的です。最終目標(KGI)から逆算して各ステージのKPIを設定します。

Q3ファネルの転換率を改善するにはどうすればよいですか?

A3ABテストでランディングページやフォームを最適化することが効果的です。まず離脱率の高いステージを特定し、そのステージのコンテンツや導線を重点的に改善します。

Q4どのツールを使えばファネル管理が効率化できますか?

A4CRM/SFA(Salesforce、HubSpot、Zoho CRM)で商談管理を行い、MAツールでリード育成を自動化します。両者を連携させることで、リード獲得から受注までを一元管理できます。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。