SaaS営業で成果を上げたいけれど、どのような戦略を立てればいいか分からない
B2B SaaS企業の営業責任者の多くが、SaaS特有の営業プロセス構築やKPI設計に課題を抱えています。「従来の営業手法では成果が出ない」「解約率が高くてLTVが伸びない」「営業組織をどう設計すればいいか分からない」といった悩みを持つ担当者も多いでしょう。
この記事では、SaaS営業戦略の立て方、THE MODEL型組織の構築、重要なKPI設計を、成長企業の実践手法をもとに解説します。
この記事のポイント:
- SaaS営業は「売って終わり」ではなく、継続利用とLTV最大化を重視
- THE MODEL型組織(マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセス)が主流
- 重要なKPIはMRR/ARR(成長)、CAC/LTV(効率)、Churn Rate(継続)の三つ
- 顧客セグメント別にハイタッチ・ロータッチ・テックタッチで対応を変える
- 日本のSaaS市場は2024年約1.2兆円に成長し、PLGとSLGのハイブリッド戦略が注目
1. SaaS営業戦略の重要性
SaaS営業戦略は、従来型ビジネスとは異なる視点が必要です。
(1) 日本のSaaS市場の成長(2024年約1.2兆円)
日本のSaaS市場は急成長を続けており、2024年には約1.2兆円に達しています。企業のクラウドシフトが加速し、SaaS比率は43.9%から56.2%に上昇しています。
(出典: CLF PARTNERS「SaaS企業の営業戦略ガイド|市場・立案方法・販売チャネルを解説」)
(2) サブスクリプションモデル特有の課題(継続率・LTV最大化)
SaaSビジネスはサブスクリプション型のため、「1回売って終わり」ではなく、継続利用を前提としたビジネスモデルです。そのため、以下の指標が重要になります:
重要指標:
- 継続率(リテンション): 顧客が契約を継続する割合
- 解約率(Churn Rate): 顧客が契約を解約する割合(2.0%以下が目安)
- LTV(Lifetime Value): 顧客生涯価値
継続率を高め、LTVを最大化することがSaaS営業の最大の課題です。
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
2. SaaS営業の特徴と従来営業との違い
SaaS営業は、従来型の営業と大きく異なる特徴があります。
(1) 「売って終わり」ではなく継続利用を重視
従来型の営業では、契約を獲得すれば売上が確定します。しかし、SaaSでは契約後も顧客が継続利用してくれなければ、長期的な収益につながりません。
従来型営業 vs SaaS営業:
| 項目 | 従来型営業 | SaaS営業 |
|---|---|---|
| 収益モデル | 1回の売り切り | 継続的なサブスクリプション |
| 重要指標 | 受注数・受注額 | MRR/ARR・Churn Rate・LTV |
| 営業後の関与 | 限定的 | カスタマーサクセスで継続支援 |
(出典: Magic Moment「SaaS 営業とは?売上を上げるために営業が心がけるポイントを徹底解説」)
(2) カスタマーサクセスの重要性
SaaSでは、カスタマーサクセス部門が顧客の成功を支援し、継続利用とLTV最大化を目指します。具体的な業務内容は以下の通りです:
カスタマーサクセスの主な業務:
- オンボーディング支援(導入初期の活用促進)
- 定期的なヘルスチェック(利用状況の確認)
- 解約リスクの早期検知と対策
- アップセル・クロスセルの提案
(出典: Salesforce「SaaSビジネスのカスタマーサクセスとは?重要視される理由や役割・業務内容を解説」)
(3) データドリブンな営業プロセス
SaaS営業では、各プロセスをKPIで測定し、データに基づいて改善を繰り返します。営業活動の可視化により、ボトルネックの特定と最適化が可能になります。
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
3. THE MODEL型組織の構築
THE MODEL型組織は、SaaS企業で広く採用されている営業組織モデルです。
(1) THE MODELとは(4部門分業体制)
THE MODELは、営業プロセスを4部門に分業化し、各プロセスをKPIで最適化する組織体制です。
THE MODELの4部門:
- マーケティング: リード獲得・育成
- インサイドセールス: 非対面でのリード育成・商談化
- フィールドセールス: 対面での商談・受注
- カスタマーサクセス: 顧客の成功支援・継続利用促進
(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)
(2) マーケティングとインサイドセールスの連携
マーケティングが獲得したリード(見込み客)を、インサイドセールスが電話・メール・チャットなどで育成し、受注確度が高い段階でフィールドセールスに引き渡します。
インサイドセールスの役割:
- 見込み客のニーズをヒアリング
- 製品デモやトライアルの案内
- スコアリング(受注確度の評価)
- フィールドセールスへのバトンタッチ
(出典: Magic Moment「SaaS のインサイドセールスの役割 効果を徹底的に高めるには?」)
(3) フィールドセールスとカスタマーサクセスの役割分担
フィールドセールスは対面で商談を行い、受注を獲得します。受注後は、カスタマーサクセスが顧客の成功を支援し、継続利用とアップセルを促進します。
フィールドセールスの役割:
- 対面での商談・提案
- 契約条件の交渉
- 受注獲得
カスタマーサクセスの役割:
- オンボーディング支援
- 定期的な活用促進
- 解約防止とLTV最大化
(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)
(4) 部門間連携の注意点
分業化により各部門が専門性を高める一方、部門間の連携不足で情報が分断されるリスクがあります。
注意点:
- CRM/SFAツールでデータを一元管理し、部門間で共有
- バトンタッチのプロセスを明確化(どの段階で次の部門に引き渡すか)
- 部門間のKPIが部分最適にならないよう調整
(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)
4. 重要なKPIと測定方法
SaaS営業では、以下のKPIを測定し、継続的に改善します。
(1) 成長指標(MRR、ARR)
MRR(Monthly Recurring Revenue):
- 月次経常収益
- 計算式: MRR = 顧客数 × 平均月額単価
ARR(Annual Recurring Revenue):
- 年次経常収益
- 計算式: ARR = MRR × 12
MRR/ARRの成長率が、SaaSビジネスの健全性を示します。
(出典: Onboarding「保存版【SaaSの重要KPIまとめ】SaaSの主要指標を解説」)
(2) 効率指標(CAC、LTV、LTV/CAC比率)
CAC(Customer Acquisition Cost):
- 顧客獲得コスト
- 計算式: CAC = マーケティング・営業コスト合計 ÷ 新規顧客数
LTV(Lifetime Value):
- 顧客生涯価値
- 計算式: LTV = 平均月額単価 × 平均継続月数
LTV/CAC比率:
- 3倍以上が健全な目安
- 計算式: LTV ÷ CAC
LTV/CAC比率が高いほど、効率的に収益を上げられています。
(出典: Onboarding「保存版【SaaSの重要KPIまとめ】SaaSの主要指標を解説」)
(3) 継続指標(Churn Rate、NPS)
Churn Rate(解約率):
- 顧客が契約を解約する割合
- 計算式: Churn Rate = 解約顧客数 ÷ 全顧客数
- 目安: 2.0%以下
NPS(Net Promoter Score):
- 顧客推奨度を測る指標
- 0〜10点で「この製品を知人に勧めるか?」を質問し、9〜10点を推奨者、0〜6点を批判者として集計
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
(4) 部門別KPI設定のポイント
各部門に適切なKPIを設定し、全体最適を目指します。
部門別KPI例:
- マーケティング: リード獲得数、リード獲得コスト
- インサイドセールス: 商談化率、フィールドセールスへの引き渡し数
- フィールドセールス: 受注率、受注額
- カスタマーサクセス: Churn Rate、アップセル率、NPS
(出典: intra-mart「営業組織の作り方 ~「THE MODEL」に学ぶSaaS企業の組織づくり~」)
5. 顧客セグメント別の戦略
顧客の企業規模により、アプローチを変える必要があります。
(1) ハイタッチ戦略(大企業向け)
大企業向けには、手厚い営業・サポート体制を提供します。
ハイタッチの特徴:
- 対面での商談・提案
- 専任のカスタマーサクセス担当
- カスタマイズ対応
- 高単価・長期契約
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
(2) ロータッチ戦略(中堅企業向け)
中堅企業向けには、標準的な営業・サポート体制を提供します。
ロータッチの特徴:
- インサイドセールス中心の非対面営業
- グループでのオンボーディング
- 標準パッケージの提供
- 中単価・標準契約
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
(3) テックタッチ戦略(小規模企業向け)
小規模企業向けには、セルフサービス主体の体制を提供します。
テックタッチの特徴:
- Webサイトからの自己登録
- オンラインヘルプ・チュートリアル
- チャットボットによる自動対応
- 低単価・短期契約
(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)
(4) PLGとSLGのハイブリッド戦略
2024年、PLG(プロダクト主導)とSLG(営業主導)の両方を組み合わせたハイブリッド戦略が注目されています。
PLG(Product-Led Growth):
- 無料トライアルやフリーミアムでユーザーを獲得
- プロダクトの価値を体験してもらい、有料化を促す
SLG(Sales-Led Growth):
- 営業主導で商談を進め、受注を獲得
- 大企業向けに適している
ハイブリッド戦略:
- 小〜中規模顧客はPLGで獲得
- 一定規模以上の顧客にはSLGでアプローチ
(出典: CLF PARTNERS「SaaS企業の営業戦略ガイド|市場・立案方法・販売チャネルを解説」)
6. まとめ:成功するSaaS営業戦略のポイント
SaaS営業戦略は、従来型営業とは異なるアプローチが必要です。継続利用を重視し、LTV最大化を目指す組織設計とKPI管理が成功の鍵です。
成功するSaaS営業戦略のポイント:
- THE MODEL型組織で営業プロセスを分業化し、各部門をKPIで最適化
- MRR/ARR(成長)、CAC/LTV(効率)、Churn Rate(継続)の三大KPIを測定
- 顧客セグメント別にハイタッチ・ロータッチ・テックタッチで対応を変える
- カスタマーサクセスで継続利用を支援し、解約率2.0%以下を目指す
- PLGとSLGのハイブリッド戦略で幅広い顧客層にアプローチ
次のアクション:
- 自社の顧客セグメント(大企業・中堅・小規模)を明確にする
- 現在の営業組織がTHE MODELに適合しているか確認する
- MRR、CAC、LTV、Churn RateなどのKPIを測定する仕組みを整える
- カスタマーサクセスの体制を構築し、継続率を高める施策を実施する
- PLGとSLGのどちらが自社に適しているかを検討する
自社に合ったSaaS営業戦略で、持続的な成長を実現しましょう。
