SaaS営業戦略の立て方|成長企業が実践する手法とKPI設計

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/15

SaaS営業で成果を上げたいけれど、どのような戦略を立てればいいか分からない

B2B SaaS企業の営業責任者の多くが、SaaS特有の営業プロセス構築やKPI設計に課題を抱えています。「従来の営業手法では成果が出ない」「解約率が高くてLTVが伸びない」「営業組織をどう設計すればいいか分からない」といった悩みを持つ担当者も多いでしょう。

この記事では、SaaS営業戦略の立て方、THE MODEL型組織の構築、重要なKPI設計を、成長企業の実践手法をもとに解説します。

この記事のポイント:

  • SaaS営業は「売って終わり」ではなく、継続利用とLTV最大化を重視
  • THE MODEL型組織(マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセス)が主流
  • 重要なKPIはMRR/ARR(成長)、CAC/LTV(効率)、Churn Rate(継続)の三つ
  • 顧客セグメント別にハイタッチ・ロータッチ・テックタッチで対応を変える
  • 日本のSaaS市場は2024年約1.2兆円に成長し、PLGとSLGのハイブリッド戦略が注目

1. SaaS営業戦略の重要性

SaaS営業戦略は、従来型ビジネスとは異なる視点が必要です。

(1) 日本のSaaS市場の成長(2024年約1.2兆円)

日本のSaaS市場は急成長を続けており、2024年には約1.2兆円に達しています。企業のクラウドシフトが加速し、SaaS比率は43.9%から56.2%に上昇しています。

(出典: CLF PARTNERS「SaaS企業の営業戦略ガイド|市場・立案方法・販売チャネルを解説」)

(2) サブスクリプションモデル特有の課題(継続率・LTV最大化)

SaaSビジネスはサブスクリプション型のため、「1回売って終わり」ではなく、継続利用を前提としたビジネスモデルです。そのため、以下の指標が重要になります:

重要指標:

  • 継続率(リテンション): 顧客が契約を継続する割合
  • 解約率(Churn Rate): 顧客が契約を解約する割合(2.0%以下が目安)
  • LTV(Lifetime Value): 顧客生涯価値

継続率を高め、LTVを最大化することがSaaS営業の最大の課題です。

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

2. SaaS営業の特徴と従来営業との違い

SaaS営業は、従来型の営業と大きく異なる特徴があります。

(1) 「売って終わり」ではなく継続利用を重視

従来型の営業では、契約を獲得すれば売上が確定します。しかし、SaaSでは契約後も顧客が継続利用してくれなければ、長期的な収益につながりません。

従来型営業 vs SaaS営業:

項目 従来型営業 SaaS営業
収益モデル 1回の売り切り 継続的なサブスクリプション
重要指標 受注数・受注額 MRR/ARR・Churn Rate・LTV
営業後の関与 限定的 カスタマーサクセスで継続支援

(出典: Magic Moment「SaaS 営業とは?売上を上げるために営業が心がけるポイントを徹底解説」)

(2) カスタマーサクセスの重要性

SaaSでは、カスタマーサクセス部門が顧客の成功を支援し、継続利用とLTV最大化を目指します。具体的な業務内容は以下の通りです:

カスタマーサクセスの主な業務:

  • オンボーディング支援(導入初期の活用促進)
  • 定期的なヘルスチェック(利用状況の確認)
  • 解約リスクの早期検知と対策
  • アップセル・クロスセルの提案

(出典: Salesforce「SaaSビジネスのカスタマーサクセスとは?重要視される理由や役割・業務内容を解説」)

(3) データドリブンな営業プロセス

SaaS営業では、各プロセスをKPIで測定し、データに基づいて改善を繰り返します。営業活動の可視化により、ボトルネックの特定と最適化が可能になります。

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

3. THE MODEL型組織の構築

THE MODEL型組織は、SaaS企業で広く採用されている営業組織モデルです。

(1) THE MODELとは(4部門分業体制)

THE MODELは、営業プロセスを4部門に分業化し、各プロセスをKPIで最適化する組織体制です。

THE MODELの4部門:

  1. マーケティング: リード獲得・育成
  2. インサイドセールス: 非対面でのリード育成・商談化
  3. フィールドセールス: 対面での商談・受注
  4. カスタマーサクセス: 顧客の成功支援・継続利用促進

(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)

(2) マーケティングとインサイドセールスの連携

マーケティングが獲得したリード(見込み客)を、インサイドセールスが電話・メール・チャットなどで育成し、受注確度が高い段階でフィールドセールスに引き渡します。

インサイドセールスの役割:

  • 見込み客のニーズをヒアリング
  • 製品デモやトライアルの案内
  • スコアリング(受注確度の評価)
  • フィールドセールスへのバトンタッチ

(出典: Magic Moment「SaaS のインサイドセールスの役割 効果を徹底的に高めるには?」)

(3) フィールドセールスとカスタマーサクセスの役割分担

フィールドセールスは対面で商談を行い、受注を獲得します。受注後は、カスタマーサクセスが顧客の成功を支援し、継続利用とアップセルを促進します。

フィールドセールスの役割:

  • 対面での商談・提案
  • 契約条件の交渉
  • 受注獲得

カスタマーサクセスの役割:

  • オンボーディング支援
  • 定期的な活用促進
  • 解約防止とLTV最大化

(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)

(4) 部門間連携の注意点

分業化により各部門が専門性を高める一方、部門間の連携不足で情報が分断されるリスクがあります。

注意点:

  • CRM/SFAツールでデータを一元管理し、部門間で共有
  • バトンタッチのプロセスを明確化(どの段階で次の部門に引き渡すか)
  • 部門間のKPIが部分最適にならないよう調整

(出典: TimeSkip「SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説」)

4. 重要なKPIと測定方法

SaaS営業では、以下のKPIを測定し、継続的に改善します。

(1) 成長指標(MRR、ARR)

MRR(Monthly Recurring Revenue):

  • 月次経常収益
  • 計算式: MRR = 顧客数 × 平均月額単価

ARR(Annual Recurring Revenue):

  • 年次経常収益
  • 計算式: ARR = MRR × 12

MRR/ARRの成長率が、SaaSビジネスの健全性を示します。

(出典: Onboarding「保存版【SaaSの重要KPIまとめ】SaaSの主要指標を解説」)

(2) 効率指標(CAC、LTV、LTV/CAC比率)

CAC(Customer Acquisition Cost):

  • 顧客獲得コスト
  • 計算式: CAC = マーケティング・営業コスト合計 ÷ 新規顧客数

LTV(Lifetime Value):

  • 顧客生涯価値
  • 計算式: LTV = 平均月額単価 × 平均継続月数

LTV/CAC比率:

  • 3倍以上が健全な目安
  • 計算式: LTV ÷ CAC

LTV/CAC比率が高いほど、効率的に収益を上げられています。

(出典: Onboarding「保存版【SaaSの重要KPIまとめ】SaaSの主要指標を解説」)

(3) 継続指標(Churn Rate、NPS)

Churn Rate(解約率):

  • 顧客が契約を解約する割合
  • 計算式: Churn Rate = 解約顧客数 ÷ 全顧客数
  • 目安: 2.0%以下

NPS(Net Promoter Score):

  • 顧客推奨度を測る指標
  • 0〜10点で「この製品を知人に勧めるか?」を質問し、9〜10点を推奨者、0〜6点を批判者として集計

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

(4) 部門別KPI設定のポイント

各部門に適切なKPIを設定し、全体最適を目指します。

部門別KPI例:

  • マーケティング: リード獲得数、リード獲得コスト
  • インサイドセールス: 商談化率、フィールドセールスへの引き渡し数
  • フィールドセールス: 受注率、受注額
  • カスタマーサクセス: Churn Rate、アップセル率、NPS

(出典: intra-mart「営業組織の作り方 ~「THE MODEL」に学ぶSaaS企業の組織づくり~」)

5. 顧客セグメント別の戦略

顧客の企業規模により、アプローチを変える必要があります。

(1) ハイタッチ戦略(大企業向け)

大企業向けには、手厚い営業・サポート体制を提供します。

ハイタッチの特徴:

  • 対面での商談・提案
  • 専任のカスタマーサクセス担当
  • カスタマイズ対応
  • 高単価・長期契約

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

(2) ロータッチ戦略(中堅企業向け)

中堅企業向けには、標準的な営業・サポート体制を提供します。

ロータッチの特徴:

  • インサイドセールス中心の非対面営業
  • グループでのオンボーディング
  • 標準パッケージの提供
  • 中単価・標準契約

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

(3) テックタッチ戦略(小規模企業向け)

小規模企業向けには、セルフサービス主体の体制を提供します。

テックタッチの特徴:

  • Webサイトからの自己登録
  • オンラインヘルプ・チュートリアル
  • チャットボットによる自動対応
  • 低単価・短期契約

(出典: CXin「SaaS企業に必要な営業戦略、スキルを徹底解説!」)

(4) PLGとSLGのハイブリッド戦略

2024年、PLG(プロダクト主導)とSLG(営業主導)の両方を組み合わせたハイブリッド戦略が注目されています。

PLG(Product-Led Growth):

  • 無料トライアルやフリーミアムでユーザーを獲得
  • プロダクトの価値を体験してもらい、有料化を促す

SLG(Sales-Led Growth):

  • 営業主導で商談を進め、受注を獲得
  • 大企業向けに適している

ハイブリッド戦略:

  • 小〜中規模顧客はPLGで獲得
  • 一定規模以上の顧客にはSLGでアプローチ

(出典: CLF PARTNERS「SaaS企業の営業戦略ガイド|市場・立案方法・販売チャネルを解説」)

6. まとめ:成功するSaaS営業戦略のポイント

SaaS営業戦略は、従来型営業とは異なるアプローチが必要です。継続利用を重視し、LTV最大化を目指す組織設計とKPI管理が成功の鍵です。

成功するSaaS営業戦略のポイント:

  • THE MODEL型組織で営業プロセスを分業化し、各部門をKPIで最適化
  • MRR/ARR(成長)、CAC/LTV(効率)、Churn Rate(継続)の三大KPIを測定
  • 顧客セグメント別にハイタッチ・ロータッチ・テックタッチで対応を変える
  • カスタマーサクセスで継続利用を支援し、解約率2.0%以下を目指す
  • PLGとSLGのハイブリッド戦略で幅広い顧客層にアプローチ

次のアクション:

  • 自社の顧客セグメント(大企業・中堅・小規模)を明確にする
  • 現在の営業組織がTHE MODELに適合しているか確認する
  • MRR、CAC、LTV、Churn RateなどのKPIを測定する仕組みを整える
  • カスタマーサクセスの体制を構築し、継続率を高める施策を実施する
  • PLGとSLGのどちらが自社に適しているかを検討する

自社に合ったSaaS営業戦略で、持続的な成長を実現しましょう。

よくある質問

Q1SaaS営業は従来の営業と何が違う?

A1サブスクリプションモデルのため「売って終わり」ではなく、継続利用を重視します。カスタマーサクセスによる顧客支援がLTVに直結し、解約率の低下が収益向上の鍵になります。

Q2THE MODELとは何?

A2マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門に分業化し、各プロセスをKPIで最適化する営業組織モデルです。営業効率を高め、各部門の専門性を向上させることができます。

Q3SaaSで最も重要なKPIは?

A3MRR/ARR(成長指標)、CAC/LTV(効率指標)、Churn Rate(継続指標)が三大KPIです。特にChurn Rate 2.0%以下が成功の目安とされており、継続率の高さがSaaSビジネスの健全性を示します。

Q4小規模SaaS企業でもTHE MODEL型組織は必要?

A4必ずしも必要ではありません。顧客数が少ない初期段階では1人が複数役割を兼務するケースが多いです。事業規模に応じて段階的に分業化を検討するのが現実的です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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