SaaS企業とは?ビジネスモデルの特徴と国内主要企業一覧

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

SaaS企業に興味があるけれど、何から理解すればいい?

B2B事業においてSaaSの存在感は年々高まっています。「SaaS企業との取引を検討している」「自社もSaaSビジネスへの参入を考えている」という方も多いのではないでしょうか。

しかし、SaaS企業のビジネスモデルや市場動向を正しく理解しないまま判断を進めると、期待した成果が得られないこともあります。この記事では、SaaS企業の定義から国内主要企業一覧、評価指標まで体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • SaaSはソフトウェアをインターネット経由で提供するクラウドサービスの一種
  • サブスクリプション型の収益モデルで、リカーリング収益が特徴
  • 国内SaaS市場は2024年に1.4兆円、2028年には2兆円に成長見込み
  • 売上高トップはエス・エム・エス、ラクス、OBCなど
  • ARR成長率やRule of 40%がSaaS企業の評価指標として重視される

SaaS企業とは:クラウド時代のソフトウェアビジネス

SaaSの定義と従来型ソフトウェアとの違い

SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをサービスプロバイダーのサーバー上で提供し、ユーザーがインターネット経由でアクセスできる形態を指します。SaaS企業は、この形態でソフトウェアサービスを提供する企業のことです。

従来型ソフトウェアとの主な違いは以下の通りです:

項目 従来型ソフトウェア SaaS
提供形態 パッケージ販売・ダウンロード インターネット経由で利用
料金体系 一括購入(買い切り) 月額・年額のサブスクリプション
インストール ユーザー側の端末・サーバーに必要 不要(ブラウザからアクセス)
アップデート ユーザー側で実施 提供側で自動的に実施
初期コスト 高い(ライセンス費用+導入費用) 低い(初月分の料金程度)

クラウド・PaaS・IaaSとの関係

SaaSはクラウドサービスの一種です。クラウドサービスには以下の3つの形態があります:

IaaS(Infrastructure as a Service): 仮想サーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラを提供。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどが代表例です。

PaaS(Platform as a Service): アプリケーション開発・実行のためのプラットフォームを提供。開発者がインフラを意識せずにアプリケーション開発に集中できます。

SaaS(Software as a Service): 完成したソフトウェアをサービスとして提供。ユーザーはすぐに利用を開始できます。

ユーザーから見ると、SaaSが最も抽象度が高く、すぐに業務に活用できる形態と言えます。

SaaSビジネスモデルの特徴と収益構造

サブスクリプション型の収益モデル

SaaS企業の最大の特徴は、サブスクリプション型(定額制)の収益モデルです。ユーザーは月額または年額の料金を支払い、継続的にサービスを利用します。

サブスクリプションモデルのメリット:

事業者側のメリット:

  • 収益の予測可能性が高い
  • 長期的な顧客関係を構築できる
  • アップセル・クロスセルの機会がある

ユーザー側のメリット:

  • 初期コストを抑えられる
  • 常に最新バージョンを利用できる
  • 不要になれば解約できる

フリーミアムモデルと顧客獲得戦略

多くのSaaS企業は「フリーミアムモデル」を採用しています。これは基本機能を無料で提供し、高度な機能を有料で提供するビジネスモデルです。

フリーミアムモデルの狙い:

  • 新規顧客獲得のハードルを下げる
  • サービスの価値を体験してもらう
  • 利用が定着した後に有料プランへ誘導

ただし、フリーミアムモデルは無料ユーザーのサポートコストがかかるため、有料転換率(コンバージョン率)の管理が重要です。

リカーリング収益とLTV(顧客生涯価値)

SaaS企業の収益を理解する上で重要な概念がリカーリング収益とLTV(顧客生涯価値)です。

リカーリング収益: 毎月・毎年繰り返し発生する収益のこと。解約率が低ければ、顧客数に比例して収益が積み上がっていきます。

LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値): 1顧客から生涯にわたって得られる収益の総額。計算式は一般的に以下の通りです:

LTV = 平均月額単価 × 平均継続月数

SaaS企業では「LTV > CAC(顧客獲得コスト)」であることが事業継続の条件とされています。一般的に「LTV ≧ CAC × 3」が健全な水準と言われています。

国内SaaS市場の規模と成長予測

国内SaaS市場の規模推移(2024年1.4兆円→2028年2兆円)

国内SaaS市場は急速に成長しています。調査によると、市場規模は以下のように推移しています:

市場規模
2024年 約1.4兆円
2028年(予測) 約2兆円

年平均成長率(CAGR)は10.9〜13%程度と推定されており、IT市場全体の成長率を大きく上回っています。

※市場規模の数値は調査機関・調査時点によって異なる場合があります。最新のデータは各調査会社のレポートをご確認ください。

成長を後押しする要因(DX推進・法改正・リモートワーク)

国内SaaS市場の成長を後押ししている主な要因は以下の通りです:

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進:

  • 企業のデジタル化投資の増加
  • 政府のDX推進施策・IT補助金

法改正への対応:

  • インボイス制度への対応
  • 電子帳簿保存法への対応
  • これらの法改正に対応するためのSaaS導入が増加

リモートワークの定着:

  • コロナ禍以降のリモートワーク普及
  • 場所を選ばず利用できるSaaSの需要増

中小企業のクラウドシフト:

  • オンプレミス(自社サーバー)からクラウドへの移行
  • 人手不足によるIT運用負担軽減のニーズ

国内主要SaaS企業一覧と各社の特徴

売上高上位企業(エス・エム・エス、ラクス、OBCなど)

国内SaaS企業の売上高上位企業(2024年時点の調査)は以下の通りです:

順位 企業名 主なサービス分野 売上高規模
1 エス・エム・エス(SMS) 医療・介護・ヘルスケア 約609億円
2 ラクス 経費精算・メール配信 上位
3 オービックビジネスコンサルタント(OBC) 会計・人事・給与 上位

※売上高はSaaS事業のみでなく全社売上の場合があります。最新の数値は各社の決算資料をご確認ください。

その他の主要SaaS企業(順不同):

  • freee(会計・人事労務)
  • Sansan(名刺管理・営業DX)
  • マネーフォワード(バックオフィスSaaS)
  • サイボウズ(グループウェア)
  • カオナビ(人材管理)
  • プラスアルファ・コンサルティング(営業支援・人材活用)
  • HENNGE(セキュリティ)
  • ユーザベース(経済情報)

各社とも特定の業務領域に強みを持ち、差別化を図っています。

注目のSaaSベンチャー・スタートアップ

国内では多くのSaaSベンチャー・スタートアップが成長を続けています。注目されている分野は以下の通りです:

バーティカルSaaS(業界特化型): 特定業界に特化したSaaS。医療、不動産、建設、飲食など、各業界の課題を深く理解したサービスが増加しています。

ホリゾンタルSaaS(業種横断型): 業種を問わず利用できるSaaS。バックオフィス業務、コミュニケーション、セキュリティなどの分野で成長企業が多く見られます。

2024年のIPO動向

2024年はSaaS企業のIPO(新規株式公開)が活発でした。調査によると、2024年には8社のSaaS企業がIPOを実施しています。

特に、IoTプラットフォームを提供するソラコムが時価総額約376億円でIPOを実施し、注目を集めました。

2024年のSaaS業界動向:

  • 8社がIPOを実施
  • ARR(年間経常収益)トップ企業が400億円超に
  • 資金調達総額は135.7億円

※IPO数や資金調達額は調査時点のデータです。

SaaS企業の評価指標と成功要因

ARR(年間経常収益)と成長率

ARR(Annual Recurring Revenue / 年間経常収益)は、SaaS企業の規模と成長性を測る重要な指標です。

ARRとは: サブスクリプション収益を年間ベースに換算した数値。MRR(月間経常収益)× 12で算出されます。

国内SaaS企業のARR動向: 調査によると、ARR100億円超の企業でも25%以上のCAGR(年平均成長率)を維持している企業があり、成長率の高さが特徴とされています。

Rule of 40%の考え方

Rule of 40%(ルール・オブ・フォーティ)は、SaaS企業の健全性を測る指標として広く使われています。

計算式: Rule of 40% = 売上成長率(%) + 営業利益率(%)

この合計が40%以上であれば、健全なSaaS企業と評価されます。

例:

  • 売上成長率30% + 営業利益率15% = 45%(健全)
  • 売上成長率50% + 営業利益率-5% = 45%(成長重視で健全)
  • 売上成長率10% + 営業利益率20% = 30%(改善の余地あり)

近年は成長率だけでなく、利益率とのバランスが取れた企業が高い評価を受ける傾向にあります。

成功企業に共通する要因

成長を続けるSaaS企業に共通する要因として、以下が挙げられます:

プロダクトの強み:

  • 顧客の課題を深く理解したサービス設計
  • 使いやすいUI/UX
  • 継続的なアップデートと機能改善

カスタマーサクセス:

  • 導入支援・オンボーディングの充実
  • 顧客の成功を支援する体制
  • 解約率(チャーンレート)の低減

データドリブンな経営:

  • ユーザーデータの収集・分析
  • データに基づいた意思決定
  • 継続的なA/Bテストと改善

スケーラブルな営業モデル:

  • インサイドセールスの活用
  • マーケティングオートメーションの導入
  • 効率的な顧客獲得プロセス

まとめ:SaaS企業との取引・参入を検討する際のポイント

SaaS企業は、サブスクリプション型のビジネスモデルで継続的な収益を生み出す仕組みを持っています。国内市場は2024年に1.4兆円規模となり、2028年には2兆円に達する見込みで、成長が続いています。

SaaS企業を理解するポイント:

  • サブスクリプション型収益で長期的な顧客関係を構築
  • ARR、Rule of 40%などの指標で成長性・健全性を評価
  • 業界特化型(バーティカル)と業種横断型(ホリゾンタル)の違い

SaaS企業との取引を検討する際:

  • 自社の課題に合ったサービスを選定
  • 料金体系と長期的なコストを確認
  • 導入実績・サポート体制を確認
  • 契約条件(最低契約期間、解約条件)を確認

SaaS事業への参入を検討する際:

  • ターゲット市場・顧客課題を明確にする
  • 差別化ポイントを定義する
  • 収益化までの期間とキャッシュフローを計画する
  • 顧客獲得コストとLTVのバランスを設計する

次のアクション:

  • 自社の目的(取引先選定/事業参入)を明確にする
  • 関心のある分野の主要企業を調査する
  • 必要に応じて、各企業の決算資料や公式サイトで最新情報を確認する

※この記事は2025年12月時点の情報に基づいています。市場規模や企業データは調査時点によって異なる場合があります。最新情報は各企業の公式サイトや決算資料をご確認ください。

よくある質問:

Q: SaaSとクラウドの違いは? A: クラウドはインターネット経由でIT資源を提供する形態の総称です。SaaSはクラウドの一種で、完成したソフトウェアをサービスとして提供する形態を指します。他にIaaS(インフラ提供)やPaaS(プラットフォーム提供)があります。

Q: SaaS企業の収益が安定している理由は? A: サブスクリプション型のビジネスモデルにより、毎月・毎年の定額収益(リカーリング収益)が発生するためです。解約率が低ければ、顧客数に比例して収益が積み上がります。ただし、初期段階ではキャッシュフローが限定的になる場合があります。

Q: 成長性の高いSaaS企業を見極めるには? A: ARR(年間経常収益)の成長率、Rule of 40%(成長率+利益率≧40%)、解約率(チャーンレート)、NRR(売上維持率)などの指標で評価するのが一般的です。近年は成長率だけでなく、利益率とのバランスも重視されています。

よくある質問

Q1SaaSとクラウドの違いは?

A1クラウドはインターネット経由でIT資源を提供する形態の総称です。SaaSはクラウドの一種で、完成したソフトウェアをサービスとして提供する形態を指します。他にIaaS(インフラ提供)やPaaS(プラットフォーム提供)があります。

Q2SaaS企業の収益が安定している理由は?

A2サブスクリプション型のビジネスモデルにより、毎月・毎年の定額収益(リカーリング収益)が発生するためです。解約率が低ければ、顧客数に比例して収益が積み上がります。ただし、初期段階ではキャッシュフローが限定的になる場合があります。

Q3成長性の高いSaaS企業を見極めるには?

A3ARR(年間経常収益)の成長率、Rule of 40%(成長率+利益率≧40%)、解約率(チャーンレート)、NRR(売上維持率)などの指標で評価するのが一般的です。近年は成長率だけでなく、利益率とのバランスも重視されています。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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