SaaS企業とは?ビジネスモデル・成功事例・成長戦略を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/20

SaaS企業のビジネスモデルや成長戦略を理解したい...

SaaS(Software as a Service)という言葉は広く知られるようになりましたが、「SaaS企業とは具体的にどんなビジネスをしているのか?」「なぜ成長率が高いのか?」「日本のSaaS企業にはどのような特徴があるのか?」といった疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、SaaS企業の定義から、ビジネスモデルの特徴、主要指標、日本市場の動向、成長戦略まで、B2Bデジタルプロダクト企業の実務担当者が理解すべき情報を網羅的に解説します。

この記事のポイント:

  • SaaS企業はクラウド上でソフトウェアを提供し、サブスクリプション型で収益を得るビジネスモデル
  • 顧客獲得よりも顧客維持(リテンション)を重視することが長期的成功の鍵
  • 主要指標はARR(年次経常収益)、MRR(月次経常収益)、チャーンレート(解約率)、LTV(顧客生涯価値)
  • 2025年2月時点で日本のARRトップはラクス(400億円超)、ARR100億円超の企業は12社
  • SaaS市場は二極化が進んでおり、トップ層と中堅以下の成長率の差が拡大

1. SaaS企業とは?定義と特徴

(1) SaaS(Software as a Service)の定義

SaaS(Software as a Service、サース)とは、ソフトウェアの機能をインターネット経由でクラウド上から提供するサービスです。

SaaS企業 とは、このSaaSモデルでソフトウェアを提供し、収益を得ている企業のことを指します。

従来のソフトウェア企業がパッケージ(買い切り型)でソフトウェアを販売していたのに対し、SaaS企業はクラウド上にソフトウェアを展開し、Webブラウザや専用アプリを通じて提供します。

(2) 従来のパッケージ販売との違い

SaaSと従来のパッケージ販売の主な違いは以下の通りです。

項目 SaaS パッケージ販売
提供方法 クラウド上(インターネット経由) CD-ROM・ダウンロード(買い切り)
課金モデル サブスクリプション(月額・年額) 買い切り(一括購入)
初期費用 低い(無料〜数万円) 高い(数万円〜数百万円)
アップデート 自動・常に最新 手動・バージョンアップに追加費用
導入期間 すぐに利用開始できる インストール・設定が必要

ユーザー側は初期費用を抑えられ、常に最新のソフトウェア機能を使用できるため、SaaSモデルは急速に普及しています。

(3) サブスクリプションモデルとの関係

サブスクリプション(サブスク) とは、定額課金制のビジネスモデルです。

SaaS企業の多くはサブスクリプション型ビジネスモデルを採用しており、契約者数が増えれば安定した売上が見込めます。

ただし、SaaSとサブスクリプションは同義ではありません。

  • SaaS: クラウド上でソフトウェアを提供するサービス形態
  • サブスクリプション: 定額課金制の収益モデル

SaaS企業の大半はサブスクリプション型を採用していますが、一部には従量課金制や併用型もあります。

(4) ユーザー側のメリット(初期費用抑制・最新機能)

ユーザーがSaaSを利用するメリットは以下の通りです。

初期費用が低い:

  • パッケージ購入不要で、月額数千円〜数万円から利用可能
  • すぐに導入でき、試用期間(無料トライアル)があるケースも多い

常に最新機能が使える:

  • ソフトウェアのアップデートが自動で行われる
  • バージョンアップに追加費用がかからない

保守・運用の負担が少ない:

  • サーバー管理・セキュリティ対策は提供企業が担当
  • IT部門の負担を軽減できる

これらの特徴により、SaaSは中小企業からエンタープライズまで幅広く利用されています。

2. SaaSのビジネスモデルと収益構造

(1) サブスクリプション型収益モデル

SaaS企業の収益は、主にサブスクリプション(定額課金)によって構成されます。

収益の特徴:

  • 契約者数が増えるほど、安定した売上が積み上がる
  • 一度獲得した顧客が長期間契約を継続すれば、LTV(顧客生涯価値)が向上する

この収益構造により、SaaS企業は売上の予測がしやすく、成長戦略を立てやすいという特徴があります。

(2) 顧客獲得より顧客維持を重視する理由

SaaSのビジネスモデルは、顧客獲得よりも 顧客維持(リテンション) を重要視する必要があります。

その理由は以下の通りです。

顧客獲得コスト(CAC)の回収:

  • 新規顧客獲得には広告費・営業コストがかかる
  • 一般的に、顧客獲得コストを回収するには6ヶ月〜1年以上の継続が必要

解約率(チャーンレート)の影響:

  • 解約率が高いと、新規獲得しても売上が積み上がらない
  • 継続率を高めることが、長期的な収益拡大につながる

そのため、SaaS企業はカスタマーサクセス(顧客成功支援)に力を入れ、解約率を下げる施策を重視しています。

(3) スケーラビリティと安定収益の両立

SaaSビジネスモデルの最大の強みは、スケーラビリティ(拡張性)安定収益 の両立です。

スケーラビリティ:

  • クラウドインフラを活用することで、顧客数の増加に応じてシステムを柔軟に拡張できる
  • 物理的な製品・在庫管理が不要

安定収益:

  • サブスクリプションモデルにより、毎月・毎年の収益が予測しやすい
  • 契約更新率が高ければ、安定した収益基盤を構築できる

売上40億円を超えた企業でも平均成長率は40%と高く、SaaSビジネスの成長性が示されています。

(4) クラウドインフラの活用

SaaS企業は、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドインフラを活用してサービスを提供しています。

クラウド活用のメリット:

  • 初期投資を抑えられる(自社サーバーの購入・管理が不要)
  • 需要に応じて柔軟にサーバー容量を増減できる
  • グローバル展開がしやすい

AWSの公式ドキュメントでも、「SaaSはビジネスモデルである」と定義され、俊敏性と市場適応能力が重視されています。

3. SaaS企業の主要指標(ARR・MRR・チャーンレート)

SaaS企業の成長や健全性を測る主要指標を理解することが重要です。

(1) ARR(年次経常収益)とMRR(月次経常収益)

ARR(Annual Recurring Revenue):

  • 年次経常収益。サブスクリプションビジネスの年間収益を示す指標
  • 例:月額10万円のプランを契約している企業が100社あれば、ARRは1.2億円(10万円 × 12ヶ月 × 100社)

MRR(Monthly Recurring Revenue):

  • 月次経常収益。サブスクリプションビジネスの月間収益を示す指標
  • ARRをより短期で測定し、成長トレンドを把握するために活用される

ARRとMRRは、SaaS企業の成長スピードを測る最重要指標です。

(2) チャーンレート(解約率)の管理

チャーンレート(Churn Rate) とは、一定期間内に契約を解約した顧客の割合を示す指標です。

計算式:

チャーンレート(月次)= 当月解約数 ÷ 前月末の契約数 × 100

チャーンレートが高いと、新規獲得しても売上が積み上がらないため、SaaS企業にとって最重要管理指標のひとつです。

目安:

  • 年間チャーンレート10%以下が健全とされる
  • トップクラスのSaaS企業は年間5%以下を実現

(3) リテンション(顧客維持率)

リテンション(Retention) とは、既存顧客が継続して利用している割合を示す指標です。

計算式:

リテンション率 = (1 - チャーンレート)× 100

リテンション率が高いほど、既存顧客が長期間利用し続けていることを意味します。

(4) LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)

LTV(Lifetime Value):

  • 1顧客が契約期間中にもたらす総収益
  • 計算式:平均月額単価 × 平均契約期間(月)

CAC(Customer Acquisition Cost):

  • 顧客1人を獲得するのにかかったコスト
  • 計算式:マーケティング・営業コスト ÷ 新規獲得顧客数

健全な目安:

  • LTV / CAC 比率が3以上であれば健全とされる
  • 例:LTVが300万円、CACが100万円なら、LTV/CAC = 3

4. 日本のSaaS企業の現状と市場動向

(1) 売上高トップ企業(エス・エム・エス、ラクス、OBC、マネーフォワード)

2024年度の日本のSaaS企業売上高ランキングは以下の通りです。

順位 企業名 売上高 主要サービス
1位 エス・エム・エス 609.5億円 介護・医療業界向けSaaS
2位 ラクス 489億円 楽楽精算、楽楽明細など
3位 OBC 469.8億円 奉行シリーズ(会計・人事)
4位 マネーフォワード 403.6億円 クラウド会計・バックオフィスSaaS

これらの企業は、いずれもバーティカルSaaS(業界特化型)または水平SaaS(バックオフィス向け)で成功しています。

(2) ARRランキング(ラクス400億円超、100億円超は12社)

2025年2月時点のARR(年次経常収益)ランキングでは、以下のような状況です。

ARRトップ:

  • ラクス: 400億円超(トップ)
  • ARR100億円超の企業: 12社

ARRは、サブスクリプション型ビジネスの継続的な収益力を示す指標であり、SaaS企業の成長度を測る重要な指標です。

(3) 2024年の市場動向(二極化の進行、バーティカルSaaSの台頭)

2024年のSaaS市場では、以下の動向が見られます。

二極化の進行:

  • トップ層企業と中堅以下との成長率の差が拡大
  • 資金力・ブランド力のある企業が市場シェアを拡大

バーティカルSaaSの台頭:

  • 製造業、建設業、運輸業といった日本の基幹産業に挑戦するスタートアップが台頭
  • 業界特化型SaaSは、業務フローの深い理解により差別化しやすい

(4) IPO動向(2024年8件、ソラコム376億円)

2024年のSaaS企業のIPO件数は8件でした。

注目のIPO:

  • ソラコム: 公募価格ベースで時価総額376億円という規模で上場

SaaS企業のIPOは、市場の成長性と投資家の期待を示す指標のひとつです。

5. SaaS企業の成長戦略と成功要因

(1) 売上40億円超企業でも平均成長率40%の実態

SaaS企業は、売上規模が大きくなっても高い成長率を維持できる傾向があります。

実態:

  • 売上40億円を超えた企業でも、平均成長率は40%と高い
  • サブスクリプションモデルの積み上げ効果により、継続的な成長が期待できる

これは、従来のソフトウェア企業とは大きく異なる特徴です。

(2) 差別化と独自価値の確立

SaaS市場は競争が激しく、差別化や独自の価値提供が不可欠です。

差別化のポイント:

  • 機能の深さ: 特定業界・業務に特化した機能を提供
  • UI/UX: 使いやすさ・操作性で差別化
  • カスタマーサクセス: 顧客の成功を支援し、継続率を高める

(3) バーティカルSaaS(業界特化型)の戦略

バーティカルSaaS(Vertical SaaS) とは、特定業界・業種に特化したSaaSです。

メリット:

  • 業界固有の課題に深く対応できる
  • 競合が少なく、高い顧客満足度を得やすい

事例:

  • 製造業向けSaaS
  • 建設業向けSaaS
  • 運輸業向けSaaS

日本の基幹産業に挑戦するバーティカルSaaSスタートアップが増えています。

(4) スイングバイIPO(大手傘下成長後の上場)

スイングバイIPO とは、大手企業の傘下で成長した後にIPOする方式です。

メリット:

  • 大手企業の販売網・顧客基盤を活用できる
  • 資金力・ブランド力を背景に成長を加速できる

この戦略を採用するSaaS企業も増えています。

6. まとめ:SaaSビジネスの展望

SaaS企業は、クラウド上でソフトウェアを提供し、サブスクリプション型で収益を得るビジネスモデルです。

顧客獲得よりも顧客維持(リテンション)を重視することが長期的成功の鍵であり、ARR、MRR、チャーンレート、LTV、CACといった指標を管理することが重要です。

日本のSaaS市場は成長を続けていますが、二極化が進んでおり、トップ層企業と中堅以下の成長率の差が拡大しています。

次のアクション:

  • 自社のビジネスモデルがSaaSに適しているか検討する
  • ARR、チャーンレート、LTV/CAC比率などの指標を設定・測定する
  • バーティカルSaaSなど、差別化できる領域を探す
  • カスタマーサクセスの体制を整備し、継続率を高める

差別化と顧客維持に注力し、自社に最適なSaaS成長戦略を構築しましょう。

※この記事は2025年12月時点の情報です。最新の市場動向や企業情報は各種調査レポート・公式サイトをご確認ください。

よくある質問

Q1SaaS企業と従来のソフトウェア企業の違いは?

A1SaaSはクラウド上でソフトウェアを提供し、サブスクリプション型で課金します。従来型はパッケージ販売で買い切りです。SaaSは初期費用が低く、常に最新機能が使え、導入が迅速です。

Q2なぜSaaS企業は成長率が高いのか?

A2サブスクリプション型で安定収益が見込め、契約者数増加が直接売上増につながるためです。売上40億円超でも平均成長率40%と、スケーラビリティが高く、継続的な成長が期待できます。

Q3日本のSaaS企業でARRトップはどこ?

A32025年2月時点でラクスが400億円超でトップです。ARR100億円超の企業は12社あり、エス・エム・エス、マネーフォワード、freeeなどが上位にランクインしています。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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