SaaSとは何か、今さら聞けないけれど知っておきたい...
ビジネス現場でよく耳にする「SaaS」という言葉。クラウドサービスやサブスクリプションと関連があることは分かるものの、具体的に何を指すのか、どのようなメリットがあるのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、SaaSの基本概念から、PaaS・IaaSとの違い、導入メリット・デメリット、選定ポイントまでを体系的に解説します。BtoB企業の経営者・IT担当者がSaaSを活用する際に知っておくべき情報を押さえましょう。
この記事のポイント:
- SaaSは「Software as a Service」の略で、クラウド上のソフトウェアをインターネット経由で利用する形態
- 2024年の世界SaaS市場は約2,500億ドル、日本市場は2023年に1.4兆円、2028年には3兆円規模に成長予測
- 低コスト・迅速導入・保守不要がメリット、カスタマイズ制限・サービス終了リスクがデメリット
- PaaS・IaaSとの違いはサービス提供範囲(ソフトウェア vs 開発環境 vs インフラ)
- SaaS選定時は必要機能・セキュリティ・料金体系・ベンダー安定性を評価
1. SaaSとは何か?クラウド型ソフトウェアの基本
まず、SaaSの定義と基本概念を確認しましょう。
(1) SaaSの定義と読み方
SaaS(サース) は「Software as a Service」の略で、ベンダーがクラウド上でホストするソフトウェアをインターネット経由でユーザーが利用する形態です。従来型のソフトウェアのように、PCにインストールする必要がなく、Webブラウザやアプリからアクセスして利用します。
代表的なSaaSサービスには以下があります:
- 業務システム: Salesforce(CRM)、freee(会計ソフト)、SmartHR(人事・労務管理)
- コミュニケーション: Slack、Chatwork、Microsoft Teams
- プロジェクト管理: Asana、Trello、Backlog
- ファイル管理: Dropbox、Google Workspace、Box
(2) SaaSのビジネスモデル(サブスクリプション・MRR/ARR)
SaaSは月額や年額で定額料金を支払うサブスクリプション型のビジネスモデルが一般的です。これにより、ユーザーは初期費用を抑えて利用を開始でき、ベンダーは継続的な収益を得られます。
SaaS企業では以下の指標が重視されます:
- MRR(Monthly Recurring Revenue / 月次経常収益): 毎月の継続的な収益
- ARR(Annual Recurring Revenue / 年次経常収益): 年間の継続的な収益
- チャーンレート: 解約率(顧客がサービスを解約する割合)
(3) SaaS市場の現状と成長予測
SaaS市場は世界的に急速に成長しています:
世界市場:
- 2024年の市場規模は約2,472億ドル(Gartner)から2,662億ドル(Fortune Business Insights)と評価
- 2025年には約3,000億ドル規模へ成長する見込み
日本市場:
- 2023年に1.4兆円、2027年には2兆円超、2028年には3兆円規模に迫ると予測
- 年平均成長率(CAGR)は10.9-11%で拡大中
- 特に業務システム(ERP、会計ソフト、人事・給与管理)のCAGRは15.5%と非常に高い
2024年時点で生成AIの台頭によりSaaS市場は新たなステージに移行しており、AIを活用したSaaSサービスが増加しています。
2. SaaSの3つの特徴と従来型ソフトウェアとの違い
SaaSの主要な特徴を従来型ソフトウェアと比較しながら見ていきましょう。
(1) インターネット経由で即座に利用可能
SaaSはインターネット環境さえあれば、インストールや大規模な初期構築なしにすぐにサービスを開始できます。従来型ソフトウェアのように、PCごとにインストール作業を行う必要がなく、Webブラウザからアクセスするだけで利用可能です。
また、場所と時間を選ばず様々なデバイス(PC、タブレット、スマートフォン)からサービスを利用でき、デバイス故障時もクラウド上のデータは失われません。
(2) 月額・年額のサブスクリプション制
従来型の買い切りソフトウェアと異なり、SaaSは月額・年額のサブスクリプション制で、安い費用から導入できます。初期費用0円〜のサービスも多く、小規模企業でも導入しやすいのが特徴です。
利用者数や機能に応じて料金プランを選べるため、必要な分だけ支払うことができます。また、従量課金制のサービスもあり、利用量に応じて費用を調整できます。
(3) ベンダー側による自動保守・アップデート
システム保守やバージョンアップはベンダー側で行われるため、ユーザーは保守業務を意識せずに利用可能です。セキュリティパッチやバグ修正も自動的に適用され、常に最新の状態で利用できます。
従来型ソフトウェアでは、バージョンアップのたびに費用や手間がかかっていましたが、SaaSではその負担がありません。
3. PaaS・IaaSとの違い:サービス提供範囲で見る分類
クラウドサービスはSaaS以外に、PaaS・IaaSがあります。違いを理解しましょう。
(1) SaaS:ソフトウェアそのものを提供
SaaSは、ソフトウェアそのものをインターネット経由で提供します。ユーザーはソフトウェアの機能をそのまま利用でき、開発やインフラ管理は不要です。
具体例: Salesforce、freee、Slack、Dropbox
(2) PaaS:開発環境を提供
PaaS(パース / Platform as a Service) は、アプリケーション開発に必要な実行環境をインターネット経由で提供するサービスです。開発者は、サーバーやOSの管理をせずに、アプリケーション開発に集中できます。
具体例: Google App Engine、Microsoft Azure、Heroku
(3) IaaS:インフラを提供
IaaS(イアース / Infrastructure as a Service) は、サーバー・ストレージなどのインフラをインターネット経由で提供するサービスです。ユーザーは必要な分だけインフラを利用でき、柔軟にスケールアップ・ダウンできます。
具体例: Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azure
まとめ:
- SaaS: ソフトウェア利用(最も手軽)
- PaaS: 開発環境利用(アプリ開発者向け)
- IaaS: インフラ利用(最も柔軟、技術的知識が必要)
4. SaaS導入のメリット・デメリット
SaaS導入の具体的なメリットとデメリットを確認しましょう。
(1) メリット:低コスト・迅速導入・保守不要
SaaS導入の主なメリットは以下の通りです:
低コスト:
- 初期費用0円〜、月額数千円〜数十万円で始められる
- 従来型ソフトウェアの買い切りよりも初期投資が少ない
- インフラ構築や保守にかかる人件費が不要
迅速導入:
- アカウント登録後すぐに利用開始できる
- インストールや初期設定が不要
- 従来型ソフトウェアの導入には数週間〜数ヶ月かかるが、SaaSは数分〜数日で完了
保守不要:
- システム保守、バージョンアップ、セキュリティパッチ適用はベンダーが実施
- IT担当者の負担が大幅に軽減
場所を選ばない:
- インターネット環境があればどこからでもアクセス可能
- リモートワークやテレワークに最適
(2) デメリット:カスタマイズ制限・サービス終了リスク
SaaS導入には以下のデメリットもあります:
カスタマイズ制限:
- カスタマイズできる範囲が小さく、企業ごとに大幅なカスタマイズができない場合が多い
- 業務をアプリケーションに合わせる必要がある
ベンダー依存:
- ベンダーの都合でバージョンアップやメンテナンスが行われ、その間は利用が制限される場合がある
- サービスが将来的に提供終了となるリスクがある
セキュリティ懸念:
- データがクラウド上に保存されるため、不正アクセスなどセキュリティ対策に常に注意が必要
- 重要なデータを扱う場合は、ベンダーのセキュリティ対策を十分に確認する必要がある
インターネット依存:
- インターネット環境がないと利用できない
- 通信障害時にサービスが利用不可になる
(3) シングルテナントとマルチテナントの違い
SaaSには2つのデプロイ方式があります:
マルチテナント:
- 複数の企業が同じインフラを共有する形態
- コストが低い
- 多くのSaaSサービスがこの方式を採用
シングルテナント:
- 1社専用のインフラを利用する形態
- セキュリティが高い
- コストは高いが、金融機関や医療機関など高いセキュリティ要件がある企業向け
セキュリティとコストのトレードオフがあり、自社の要件に応じて選択する必要があります。
5. BtoB企業のSaaS選定:5つの評価ポイント
SaaSを選定する際の具体的なポイントを解説します。
(1) 自社の課題と必要機能の明確化
SaaS選定で最も重要なのは、自社の課題と必要機能を明確にすることです:
- 現状の課題は何か? (業務効率化、コスト削減、情報共有の改善など)
- どの業務を効率化したいか? (営業管理、会計、人事労務、プロジェクト管理など)
- 必須機能と優先度は? (最低限必要な機能と、あれば便利な機能を分ける)
過剰な機能を持つサービスを選ぶと、無駄なコストがかかり、操作も複雑になります。必要最低限の機能からスタートし、段階的に拡張するアプローチが推奨されます。
(2) セキュリティ要件の確認
取り扱うデータの機密性に応じて、セキュリティ要件を確認します:
- データの保存場所 (国内データセンターか、海外か)
- 暗号化の有無 (通信時・保存時の暗号化)
- アクセス制限 (IPアドレス制限、二段階認証など)
- セキュリティ認証 (ISO 27001、SOC 2などの取得状況)
特に金融、医療、人事などの機密情報を扱う場合は、シングルテナント型やプライベートクラウド型のSaaSを検討する必要があります。
(3) 料金体系(月額制・従量課金制)
料金体系を理解し、自社に合ったプランを選びます:
月額制:
- ユーザー数や機能に応じて定額料金
- 予算管理がしやすい
- 小規模プラン:月額数千円〜、大規模プラン:月額数十万円〜
従量課金制:
- 利用量(ストレージ、API呼び出し回数など)に応じて課金
- 使った分だけ支払うので無駄がない
- 利用量が急増すると費用も増加するため注意
無料トライアルを活用し、実際に操作性や機能を試してから導入を決定するのが推奨されます。
(4) ベンダーの安定性とサポート体制
ベンダーの安定性とサポート体制も重要な選定基準です:
ベンダーの安定性:
- 企業の財務状況や導入実績
- サービスの継続性(突然のサービス終了リスク)
- ユーザー数やシェア
サポート体制:
- 日本語サポートの有無
- サポート窓口(メール、電話、チャット)
- オンボーディング支援(初期設定・運用立ち上げ支援)
- ドキュメント・マニュアルの充実度
導入後のトラブルに迅速に対応できるサポート体制があるかを確認しましょう。
(5) よくある失敗例と対策
SaaS導入でよくある失敗例と対策を押さえておきましょう:
失敗例①:必要機能の不足
- 対策: 導入前に必要機能をリストアップし、デモやトライアルで確認
失敗例②:過剰機能による無駄なコスト
- 対策: 現場が使う機能を絞り、シンプルなプランを選ぶ
失敗例③:セキュリティ要件の未確認
- 対策: データの機密性を評価し、必要なセキュリティレベルを満たすサービスを選ぶ
失敗例④:ベンダーロックイン
- 対策: データのエクスポート機能、API連携の可否を確認し、将来の移行を見据える
6. まとめ:SaaS活用で押さえるべき3つのポイント
SaaSは、低コスト・迅速導入・保守不要という大きなメリットがあり、BtoB企業のデジタル化推進に欠かせない存在となっています。一方で、カスタマイズ制限やサービス終了リスクといったデメリットもあるため、慎重な選定が必要です。
SaaS活用で押さえるべき3つのポイント:
- 自社の課題と必要機能を明確にする - 過剰機能を避け、必要最低限の機能からスタート
- セキュリティ要件と料金体系を確認する - データの機密性に応じたセキュリティレベルを選択
- ベンダーの安定性とサポート体制を評価する - 導入後のトラブルに迅速に対応できるか確認
次のアクション:
- 自社の業務課題を整理し、解決したい課題を明確にする
- 複数のSaaSサービスを比較し、無料トライアルで試す
- 導入前にセキュリティ要件、料金体系、ベンダーの安定性を確認する
- 小規模プランから始め、効果を確認しながら段階的に拡張する
SaaS市場は今後も成長が続くと予測されており、AIを活用した新しいサービスも登場しています。自社に最適なSaaSを活用し、業務効率化とデジタル化を推進しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。SaaSサービスの機能や料金は変更される可能性があるため、最新情報は各公式サイトをご確認ください。
よくある質問:
Q: SaaSとPaaS、IaaSの違いは何ですか?
A: SaaSはソフトウェアそのものを提供、PaaSは開発環境を提供、IaaSはインフラ(サーバー・ストレージ)を提供します。サービス提供範囲の違いです。SaaSは最も手軽に利用でき、PaaSは開発者向け、IaaSは最も柔軟ですが技術的知識が必要です。
Q: SaaS導入にかかるコストは?
A: 月額数千円〜数十万円が一般的です。従量課金制の場合は利用量に応じて変動します。初期費用は0円〜が多く、従来型ソフトウェアの買い切り(数十万円〜数百万円)より低コストで始められます。
Q: SaaS導入でよくある失敗は?
A: 必要機能の不足、過剰機能による無駄なコスト、セキュリティ要件の未確認が代表的です。導入前に自社の課題と必要機能を明確にし、無料トライアルで実際に試すことが重要です。
Q: シングルテナントとマルチテナントの違いは?
A: シングルテナントは1社専用インフラでセキュリティが高い、マルチテナントは複数社で共有しコストが低いです。セキュリティとコストのトレードオフがあり、金融機関や医療機関などセキュリティ要件が高い企業はシングルテナント、一般企業はマルチテナントを選択することが多いです。
Q: SaaSのサービスが終了したらどうなる?
A: データ移行やサービス移行が必要になるリスクがあります。導入時にベンダーの安定性(企業の財務状況、導入実績)、データエクスポート機能、API連携の可否、代替サービスの有無を確認しましょう。大手ベンダーや導入実績が豊富なサービスは比較的安定しています。
