ROASとは?計算方法・目標設定・ROI/CPAとの違いを実務視点で解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/17

広告効果測定におけるROASの役割

B2Bデジタルプロダクト企業の広告運用において、「広告費をかけているが、本当に効果が出ているのか分からない」という悩みはよく聞かれます。限られた広告予算で最大の成果を出すには、費用対効果を正確に測定し、改善を繰り返すことが不可欠です。

その際に重要な指標の1つがROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)です。ROASを適切に測定・管理することで、広告費1円あたりの売上を可視化し、投資判断やチャネル最適化に活用できます。

本記事では、ROASの基礎知識から計算方法、ROI・CPAとの違い、目標設定の考え方、改善施策まで、実務に役立つ情報を体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • ROASは広告費に対する売上を測定する指標で、広告費1円あたりの売上が分かる
  • 計算式は「広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100(%)」
  • ROIは総合的投資対効果、CPAは顧客獲得単価で、ROASとは目的が異なる
  • 損益分岐点ROASを計算し、利益が出る最低ラインを把握する
  • CVR改善・ターゲティング最適化・クリエイティブ改善でROASを向上できる
  • ROAS改善のみを追求すると売上減少のリスクがある

ROASの基礎知識

(1) ROASとは何か(広告費用対効果)

ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費用対効果を測定する指標です。日本語では「ロアス」と読まれ、広告費に対してどれだけの売上が得られたかを示します。

ROASは、広告施策の効果を数値で可視化し、投資判断やチャネル最適化に活用されます。例えば、Google広告とMeta広告のROASを比較することで、どちらがより効率的かを判断できます。

(2) ROAS計算式(広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100)

ROASの計算式は以下の通りです:

ROAS(%)= 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100

計算例:

  • 広告費: 100万円
  • 広告経由の売上: 400万円
  • ROAS = 400万円 ÷ 100万円 × 100 = 400%

この場合、広告費1円あたり4円の売上が得られたことを意味します。

(3) ROASの読み方と解釈(200%、400%が意味すること)

ROASの数値が意味する内容を理解することが重要です。

ROAS 200%の場合:

  • 広告費1円あたり2円の売上
  • 例: 広告費100万円で売上200万円

ROAS 400%の場合:

  • 広告費1円あたり4円の売上
  • 例: 広告費100万円で売上400万円

ROAS 800%の場合:

  • 広告費1円あたり8円の売上
  • 例: 広告費100万円で売上800万円

ROASは高いほど広告効率が良いことを示します。ただし、ROASが高くても利益が出ているとは限らないため、後述する損益分岐点ROASの理解が重要です。

(出典: Salesforce「ROASとは?計算方法やROI・CPAとの違いをわかりやすく解説」、Adjust「What is return on ad spend (ROAS)?」)

(4) 業界別ROAS平均値(EC・不動産・金融等)

ROASの水準は業界や広告チャネルによって大きく異なります。

業界別ROAS平均値:

  • EC業界: 400-800%
  • 不動産・金融業界: 600-1200%
  • Google検索広告: 400-600%

2024年のデータ:

  • Google Ads(2024年6月)のメディアンROAS: 3.08(308%)
  • 一般的なベンチマーク: 4:1(400%)

ただし、業界や企業規模、扱う商材、利益率により大きく異なるため、他社や業界平均と単純比較せず、自社の利益率やコスト構造に基づいた目標設定が重要です。

(出典: Shirofune「ROASの目安や業界平均値、比較する際に見るべきポイントを解説」、Enhencer「Measuring Success with Google Ads ROAS in 2024」)

ROI・CPAとの違いと使い分け

ROASと混同されやすい指標に、ROI(投資対効果)とCPA(顧客獲得単価)があります。それぞれの違いと使い分けを理解することが重要です。

(1) ROASとROIの違い(広告費特化 vs 総合的投資対効果)

ROASとROIの違い:

項目 ROAS ROI
対象コスト 広告費のみ 広告費+人件費+システム費等
計算式 広告売上 ÷ 広告費 × 100 (売上 - コスト) ÷ コスト × 100
用途 短期の広告効果測定 事業全体の収益性評価

使い分け:

  • ROAS: 広告チャネル別の効率を比較する(Google広告 vs Meta広告等)
  • ROI: 広告施策全体が事業にどれだけ貢献したかを評価する

ROASは広告費用に特化した指標のため、より細かい施策の効果測定に適しています。一方、ROIは広告費以外のコストも含めた総合的な投資対効果を測定するため、経営判断に活用されます。

(出典: Salesforce「ROASとは?計算方法やROI・CPAとの違いをわかりやすく解説」、Sienca「ROAS(ロアス)とは?意味や計算方法、ROIとの違いをわかりやすく解説」)

(2) ROASとCPAの違い(売上重視 vs 獲得単価重視)

ROASとCPAの違い:

項目 ROAS CPA
測定内容 広告費に対する売上 1件のコンバージョン獲得コスト
計算式 広告売上 ÷ 広告費 × 100 広告費 ÷ コンバージョン数
良し悪しの判断 高いほど良い 低いほど良い
重視する要素 売上金額 獲得件数とコスト

計算例:

  • 広告費: 100万円
  • コンバージョン数: 50件
  • 広告経由の売上: 400万円

この場合:

  • ROAS = 400万円 ÷ 100万円 × 100 = 400%
  • CPA = 100万円 ÷ 50件 = 2万円/件

使い分け:

  • ROAS: 売上重視の施策評価(EC、不動産、金融等)
  • CPA: 獲得単価重視の施策評価(リード獲得、会員登録等)

ROASとCPAは補完関係にあり、両方を併用して評価するのが推奨されます。

(出典: Salesforce「ROASとは?計算方法やROI・CPAとの違いをわかりやすく解説」、Repro「ROASとは広告投資の費用対効果のこと CPAやROIとは違う」)

(3) 各指標の使い分けシーン

シーン別の使い分け:

  1. 広告チャネル最適化: ROAS(Google広告 vs Meta広告の比較)
  2. リード獲得施策: CPA(リード1件あたりのコスト管理)
  3. 事業全体の収益性: ROI(広告施策全体の投資対効果)
  4. 短期の施策改善: ROAS + CPA(両方を見ながら最適化)
  5. 長期の戦略評価: ROI(人件費・システム費を含めた総合評価)

(4) B2BマーケティングでのROAS活用(LTV考慮)

B2Bマーケティングでは、直接売上だけでなく、リード獲得後のLTV(顧客生涯価値)を考慮したROAS計算が重要です。

B2B向けROAS計算の考え方:

  1. リード1件あたりの期待売上を算出

    • 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価 × LTV倍率 = リード1件あたり期待売上
  2. ROAS計算

    • ROAS = (リード数 × リード1件あたり期待売上) ÷ 広告費 × 100

計算例:

  • リード数: 100件
  • 商談化率: 30%、受注率: 20%、平均受注単価: 100万円、LTV倍率: 3倍
  • リード1件あたり期待売上 = 30% × 20% × 100万円 × 3倍 = 18万円
  • 広告費: 300万円
  • ROAS = (100件 × 18万円) ÷ 300万円 × 100 = 600%

B2Bでは受注までのリードタイムが長いため、短期的なROASだけでなく、LTVを考慮した長期的な評価が推奨されます。

損益分岐点ROASと目標設定の考え方

ROASが高くても、利益が出ているとは限りません。損益分岐点ROASを理解し、適切な目標を設定することが重要です。

(1) 損益分岐点ROASとは(利益ゼロのライン)

損益分岐点ROASとは、広告費に対する売上が利益ゼロとなる状態のROASです。このラインを下回ると、売上があっても赤字になります。

例:

  • 販売単価: 10,000円
  • 原価: 6,000円
  • 粗利: 4,000円(粗利率40%)

この場合、広告費が粗利4,000円を超えると赤字になります。

(2) 損益分岐点ROASの計算方法(販売単価÷(販売単価-原価)×100)

損益分岐点ROASの計算式:

損益分岐点ROAS(%)= 販売単価 ÷ (販売単価 - 原価) × 100

計算例:

  • 販売単価: 10,000円
  • 原価: 6,000円
  • 損益分岐点ROAS = 10,000 ÷ (10,000 - 6,000) × 100 = 250%

この場合、ROAS 250%以上で利益が出始め、それを下回ると赤字になります。

(出典: Salesforce「ROASとは?計算方法やROI・CPAとの違いをわかりやすく解説」)

(3) 粗利率を考慮した目標ROAS設定

粗利率によって、必要なROASは大きく異なります。

粗利率別の損益分岐点ROAS:

粗利率 損益分岐点ROAS
20% 500%
30% 333%
40% 250%
50% 200%
60% 167%

粗利率が低い商材ほど、高いROASが必要になります。自社の粗利率を把握し、それに基づいた目標ROAS設定が重要です。

(4) ROAS目標値の目安(200%・300-500%・500%以上)

一般的なROAS目標値の目安:

  • 200%以上: 最低限望ましいライン(粗利率50%の場合の損益分岐点)
  • 300-500%: 健全ライン(広告費を回収し、利益も確保)
  • 500%以上: 効率的で優秀な水準

ただし、業界や商材、利益率により異なるため、自社の損益分岐点ROASを計算し、それを上回る目標を設定することが推奨されます。

(出典: Shirofune「ROASの目安や業界平均値、比較する際に見るべきポイントを解説」)

ROAS改善の具体的施策

ROASを改善するには、売上を増やすか、広告費を削減する(またはその両方)が基本です。以下、実務で効果的な施策を紹介します。

(1) CVR改善(LP最適化・CTA追加・入力フォーム簡素化)

CVR(コンバージョン率)を高めることで、同じ広告費でも売上が伸び、ROASが改善します。

CVR改善の施策:

  • LP(ランディングページ)リニューアル: ファーストビューの改善、ベネフィット明確化
  • CTA(Call To Action)の追加・最適化: ボタンの色・文言・配置を改善
  • 入力フォームの簡素化: 項目数削減、自動入力機能の追加
  • ページ速度改善: 読み込み時間を3秒以内に

期待効果: CVRが1.5%から2.0%に改善した場合、同じ広告費でも売上が1.33倍になり、ROASも同様に改善します。

(出典: CXin「ROASとは?計算方法やROIとの違い、改善のポイントを解説」、Prime Numbers「ROASが低いと売れていても赤字に!費用対効果を向上するための6つの秘策」)

(2) ターゲティング精度向上(無駄な広告費削減)

ターゲティングの精度を高めることで、無駄な広告費を削減し、より高い反応を得ることができます。

ターゲティング最適化の施策:

  • 除外キーワード設定: 関連性の低い検索クエリを除外
  • オーディエンスセグメント精緻化: 年齢・性別・興味関心・行動データで絞り込み
  • リマーケティング活用: 一度訪問したユーザーに再アプローチ
  • 地域・時間帯の最適化: 効果的な地域・時間帯に集中配信

(3) 広告クリエイティブ改善(A/Bテスト・短尺動画活用)

広告クリエイティブの改善により、クリック率やCVRが向上し、ROASが改善します。

クリエイティブ改善の施策:

  • A/Bテスト実施: 複数のクリエイティブを比較し、最も効果的なものを特定
  • 短尺動画活用: 2024年のトレンドとして、15秒の短尺動画がカルーセルより高いROASを記録(事例: カルーセル8倍 vs 短尺動画15倍)
  • UGC(User Generated Content)活用: 実際の顧客の声や写真を活用

(出典: Meta広告の事例データ)

(4) Target ROAS入札戦略(AI・機械学習活用)

2024年の主流トレンドとして、AI・機械学習を活用したTarget ROAS入札戦略があります。

Target ROASとは:

  • Google広告やMeta広告が提供する自動入札戦略
  • 目標ROASを設定すると、AIがコンバージョン価値を最適化
  • 手動調整から自動最適化へシフト

活用のポイント:

  • 過去30日間で30件以上のコンバージョンがあることが推奨
  • 初期設定は控えめな目標(現状の80-90%)から開始
  • 学習期間(2-4週間)を設けて様子を見る

(出典: DataFeedWatch「What is Target ROAS & How to Use it Properly in 2024」)

(5) リピート率・客単価向上

新規顧客獲得だけでなく、既存顧客のリピート率や客単価を向上させることで、広告経由の売上が増え、ROASが改善します。

施策:

  • リピート促進: メールマーケティング、リマインド施策
  • クロスセル・アップセル: 関連商品の提案、上位プランへの誘導
  • ロイヤルティプログラム: ポイント制度、会員特典

(6) ROAS改善の落とし穴(売上減少リスク)

ROAS改善のみを追求すると、売上減少につながるリスクがあります。

失敗事例:

  • 広告費を削減してROASは向上したが、売上全体が減少
  • 効率の悪い広告チャネルを停止したが、認知度が低下し、長期的に売上減少

注意点:

  • ROAS改善と売上成長のバランスを取る
  • 短期的なROAS最適化と長期的なブランド構築を両立
  • アトリビューション分析で、複数の広告接触がコンバージョンに与えた影響を正しく評価

(出典: Web担当者Forum「『ROAS改善→売上減少』失敗事例に学ぶ、ネット広告の正しいアトリビューション分析」)

まとめ:効果的なROAS管理のポイント

ROASは広告費用対効果を測定する重要な指標ですが、正しく理解し、適切に活用することが成果につながります。

重要なポイント:

  • ROASは広告費に対する売上を測定(計算式: 広告売上 ÷ 広告費 × 100)
  • ROIは総合的投資対効果、CPAは顧客獲得単価で、目的が異なる
  • 損益分岐点ROASを計算し、利益が出る最低ラインを把握する
  • 粗利率が低い商材ほど、高いROASが必要
  • CVR改善・ターゲティング最適化・クリエイティブ改善でROASを向上
  • Target ROAS入札戦略(AI活用)が2024年の主流
  • ROAS改善のみを追求すると売上減少のリスクがある

次のアクション:

  • 自社の粗利率を把握し、損益分岐点ROASを計算する
  • 現状のROASを測定し、業界平均や損益分岐点と比較する
  • CVR改善・ターゲティング最適化の優先施策を決定する
  • Target ROAS入札戦略の導入を検討する(コンバージョン30件以上/月が目安)
  • ROAS・CPA・ROIを併用して、多角的に広告効果を評価する

ROASは広告効果測定の重要な指標ですが、単独で見るのではなく、売上全体・利益・LTVなど、総合的に評価することが成功の鍵です。

よくある質問

Q1ROASとROIの違いは?

A1ROASは広告費用に特化した費用対効果で、広告費1円あたりの売上を測定します。ROIは広告費以外のコスト(人件費・システム費等)も含めた総合的な投資対効果を測定します。短期の広告効果測定にはROAS、事業全体の収益性評価にはROIを使用します。

Q2ROASとCPAの違いは?

A2ROASは広告費に対する売上を算出(高いほど良い)し、CPAは1件のコンバージョン獲得にかかった費用を算出(低いほど良い)します。ROASは売上重視、CPAは獲得単価重視の指標で、両方を併用して評価するのが推奨されます。

Q3ROASの適正値は?

A3一般的に200%以上が望ましく、300-500%が健全ライン、500%以上が優秀な水準とされます。ただし業界により異なり(EC: 400-800%、不動産・金融: 600-1200%)、自社の利益率に基づいた損益分岐点ROASを計算し、目標設定することが重要です。

Q4B2BでROASをどう活用する?

A4B2Bでは直接売上だけでなく、リード獲得後のLTV(顧客生涯価値)を考慮したROAS計算が重要です。商談化率・受注率・LTVを掛け合わせて、リード1件あたりの期待売上を算出し、広告費対効果を評価します。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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