顧客のニーズをうまく引き出せず、提案が空回りしていませんか?
「商品説明はしっかりしているのに、なぜか受注につながらない」「顧客の本当の課題が見えてこない」——B2B企業の営業担当者の多くが、こうした悩みを抱えています。
実は、従来の「説明型営業」では、顧客の潜在的なニーズを引き出すことが難しいのです。顧客が自分の意思で「この商品が必要だ」と感じるためには、質問を通じて課題を深掘りする「質問型営業」が効果的です。
この記事では、質問型営業の実践法、SPIN話法などのフレームワーク、具体的な質問例を詳しく解説します。提案型営業の精度を上げたいB2B営業担当者の方に、実践的なヒントをお届けします。
この記事のポイント:
- 質問型営業は「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」の3つの言葉で顧客の欲求を高める手法
- SPIN話法は30年以上世界中で活用されている体系的な質問フレームワーク
- 「売ろう」から「役に立ちたい」へのマインド転換が営業のやりがいを向上させる
- 質問を繰り返して深掘りすることで、顧客の思いや困り事が手に取るように分かる
- スキル習得には継続的なトレーニングが必要で、一朝一夕では身につかない
質問型営業とは:説明型営業から質問型営業への転換
質問型営業は、従来の「説明型営業」とは異なるアプローチで顧客の課題を引き出す営業手法です。まず、その定義と説明型営業との違いを整理しましょう。
(1) 質問型営業の定義:青木毅氏が開発した営業手法(登録商標)
**質問型営業®**は、青木毅氏が開発した営業手法で、登録商標として保護されています。質問を通じて顧客の欲求を引き出し、顧客が自分の意思で購入するよう導くことが特徴です。
この手法の核となるのが、**「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」**の3つの言葉です。これらの質問を繰り返して深掘りすることで、顧客の思いや困り事、欲求が手に取るように分かるようになります。
青木毅氏の著書シリーズは国内外で累計20万部を突破し、約4万人の営業パーソンを指導した実績があり、多くの企業で導入されている営業手法です。
(参考: 青木毅の質問型営業®【公式】、type「『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』の著者が語る、営業が楽しくなくなる原因とは?」)
(2) 説明型営業との違い:「売ろう」から「役に立ちたい」へのマインド転換
説明型営業と質問型営業の最も大きな違いは、営業担当者のマインドセットです。
説明型営業:
- 商品やサービスを説明し、説得して販売する
- 「売ろう」とする営業スタイル
- 営業担当者が主導権を握り、一方的に情報を提供
- 顧客のニーズが顕在化していない場合は効果が薄い
質問型営業:
- 質問を通じて顧客の課題や欲求を引き出す
- 「役に立ちたい」とする営業スタイル
- 顧客が主体となり、自分の意思で購入を決める
- 潜在的なニーズを顕在化させることができる
「売ろう」とする営業と「役に立ちたい」とする営業では、やりがいは全く異なります。質問型営業は売り上げを伸ばすだけでなく、営業する側のやる気アップにもつながると言われています。
(参考: LB MEDIA「これからの時代は説明型営業から質問型営業へ!営業の仕事が楽しくなる理由とは」)
質問型営業のメリット・デメリット:顧客が自分の意思で購入する仕組み
(1) メリット:顧客の思いや困り事が手に取るように分かる、信頼関係構築、やりがい向上
質問型営業には、以下のようなメリットがあります:
顧客理解の深化:
- 質問を繰り返して深掘りすることで、顧客の思いや困り事、欲求が手に取るように分かる
- 顧客自身も気づいていなかった潜在的なニーズを顕在化できる
信頼関係の構築:
- 顧客の話を丁寧に聞く姿勢が、信頼関係の構築につながる
- 一方的に売り込むのではなく、顧客の課題解決に焦点を当てるため、好感を持たれやすい
顧客の自発的な購買:
- 各段階を「質問」によって進めることで、顧客が自分の意思で購入してくれるようになる
- 説得ではなく、納得してもらえるため、受注後のキャンセルやクレームが少ない
営業担当者のやりがい向上:
- 「売ろう」とする営業から「役に立ちたい」とする営業に転換することで、やりがいが大きく向上する
- 顧客から感謝される機会が増え、営業という仕事に対する満足度が高まる
(参考: コグニビジョン「コグニマガジン:質問型営業を取り入れて売り上げを伸ばそう」)
(2) デメリット:スキル習得に時間がかかる、継続的なトレーニングが必要
一方で、質問型営業には以下のような課題もあります:
スキル習得の難しさ:
- 質問型営業の習得には継続的なトレーニングが必要で、一朝一夕では身につかない
- 適切な質問をタイミングよく投げかけるには、経験と練習が求められる
「質問のための質問」になるリスク:
- 質問型営業は「質問のための質問」にならないよう、顧客の課題解決に焦点を当てることが重要
- 形だけの質問では、顧客に「尋問されている」と感じられる可能性がある
業種・商材による適用の難易度:
- すべての業種・商材に適しているわけではなく、自社の状況に合わせたカスタマイズが必要
- 特に、顧客の課題が明確でシンプルな商材の場合は、説明型営業の方が効率的な場合もある
(3) 質問型営業が適した業種・商材
質問型営業は、以下のような業種・商材で特に効果を発揮します:
- B2B複雑商材: 購買プロセスが複雑で、複数のステークホルダーが関与する
- SaaS・IT: 顧客の業務プロセス理解が必要で、課題の深掘りが重要
- コンサルティング: 顧客の課題発見と解決策提案が中核
- 高額商材: 顧客が慎重に検討する必要があり、納得感が重要
一方、日用品の小売営業など、シンプルな商材や短期決済型の営業では、説明型営業の方が適している場合もあります。
SPIN話法と3つの言葉:質問型営業のフレームワーク
質問型営業を実践する際、具体的なフレームワークを活用すると効果的です。代表的なものが「SPIN話法」と「3つの言葉」です。
(1) SPIN話法:Situation・Problem・Implication・Need payoffの4つの質問タイプ
SPIN話法は、1988年にNeil Rackhamが提唱した質問手法で、30年以上世界中で活用されています。行動心理学の要素が盛り込まれており、順序立てて質問することで顧客が自分の意思でサービスを検討・導入するよう導けます。
SPINは、以下の4つの質問タイプの頭文字です:
Situation Questions(状況質問):
- 顧客が置かれる状況や立場を把握するために行う質問
- 例: 「現在、営業チームは何名いらっしゃいますか?」「どのようなツールを使っていますか?」
Problem Questions(問題質問):
- 顧客の抱える課題を明確化する質問
- 例: 「営業活動で困っていることはありますか?」「顧客情報の管理で課題を感じることはありますか?」
Implication Questions(示唆質問):
- 課題の影響を掘り下げる質問
- 例: 「その課題が解決しない場合、どのような影響がありますか?」「営業チーム全体の生産性にも影響しますか?」
Need-payoff Questions(解決質問):
- 解決策の価値を認識してもらう質問
- 例: 「もし顧客情報を一元管理できれば、どのようなメリットがありますか?」「営業チームの生産性が30%向上したら、どう変わりますか?」
SPIN話法の順序(Situation→Problem→Implication→Need payoff)を守ることで、顧客が抱える潜在的なニーズを顕在化させることができます。
(参考: シェルパ「SPIN話法とは?効果や顧客に与える印象、4種類の質問内容まで徹底解説!」、GENIEE「SPIN営業とは?質問の目的と具体例を解説」)
(2) 3つの言葉:「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」で顧客の欲求を高める
青木毅氏の質問型営業®では、**「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」**の3つの言葉を活用します。
「たとえば?」(具体化の質問):
- 抽象的な話を具体的にする質問
- 例: 「営業効率化が必要とおっしゃいましたが、たとえばどのような場面で感じますか?」
「なぜ?」(理由・背景の質問):
- 顧客の考えや感情の背景を探る質問
- 例: 「なぜそのような課題が発生しているとお考えですか?」
「ということは?」(確認・要約の質問):
- 顧客の話を要約し、理解を確認する質問
- 例: 「ということは、営業チーム全体の標準化が最優先課題ということですね?」
これらの3つの言葉を、商談の流れ(現状→欲求→解決→欲求→提案)に沿って活用することで、顧客の欲求を段階的に高めていくことができます。
(3) SPIN話法と質問型営業の使い分け
SPIN話法と質問型営業(3つの言葉)は、どちらも質問を通じて顧客の課題を引き出す点は共通していますが、以下のような違いがあります:
SPIN話法:
- 体系的で学習しやすい
- 4つの質問タイプを順序立てて使う
- B2B複雑商材での活用が多い
質問型営業(3つの言葉):
- シンプルで実践しやすい
- 3つの言葉を柔軟に組み合わせる
- 幅広い業種・商材で活用できる
どちらか一方を選ぶのではなく、両方のフレームワークを理解し、状況に応じて使い分けることが効果的です。
実践ステップと具体的な質問例:商談の流れと質問設計
(1) 商談の流れ:現状→欲求→解決→欲求→提案
質問型営業の商談は、以下の流れで進めます:
1. 現状把握:
- 顧客の現状を理解するための質問(Situation Questions)
- 「たとえば?」で具体化
2. 欲求の引き出し:
- 顧客の課題や困り事を明確化する質問(Problem Questions)
- 「なぜ?」で背景を探る
3. 解決策のイメージ:
- 課題の影響を掘り下げる質問(Implication Questions)
- 「ということは?」で確認
4. 欲求の高まり:
- 解決策の価値を認識してもらう質問(Need-payoff Questions)
- 「たとえば?」で具体的なメリットをイメージさせる
5. 提案:
- 顧客の欲求が高まった段階で、解決策を提案
この流れを守ることで、顧客が自分の意思で「この商品が必要だ」と感じるようになります。
(2) Situation Questions(状況質問)の具体例
- 「現在、営業チームは何名で構成されていますか?」
- 「どのような顧客管理ツールを使っていますか?」
- 「営業プロセスはどのように設計されていますか?」
- 「新規開拓と既存深耕の比率はどれくらいですか?」
(3) Problem Questions(問題質問)の具体例
- 「営業活動で最も困っていることは何ですか?」
- 「顧客情報の管理で課題を感じることはありますか?」
- 「営業担当者間で情報共有はスムーズにできていますか?」
- 「受注率が伸び悩んでいる原因は何だとお考えですか?」
(4) Implication Questions(示唆質問)の具体例
- 「その課題が解決しない場合、どのような影響がありますか?」
- 「営業チーム全体の生産性にも影響していますか?」
- 「顧客満足度や解約率にも関係していますか?」
- 「競合他社との差別化にも影響しますか?」
(5) Need-payoff Questions(解決質問)の具体例
- 「もし顧客情報を一元管理できれば、どのようなメリットがありますか?」
- 「営業チームの生産性が30%向上したら、どのように変わりますか?」
- 「営業プロセスが標準化されれば、新人育成はどう変わりますか?」
- 「受注率が20%向上すれば、売上目標は達成できますか?」
(参考: makefri「すぐに使える営業質問例40選と、よい質問の9つの条件」、ダイヤモンド・オンライン「質問型営業最強フレーズ50」)
スキル習得のためのトレーニング方法:リモート時代の質問型営業
(1) ロールプレイング練習法
質問型営業のスキル習得には、ロールプレイング練習が効果的です。
練習方法:
- 営業担当者役と顧客役に分かれて商談をシミュレーション
- SPIN話法の4つの質問タイプを意識して進める
- 終了後、フィードバックを行い、改善点を明確化
- 定期的に実施し、習慣化する
(2) リモートでも結果の出る質問型営業のトレーニング
2024年現在、リモート営業でも結果の出る質問型営業のトレーニングプログラムが提供されています。
リモート時代のポイント:
- 画面越しでも伝わる「営業表現(顔・声・反応)」のトレーニング
- オンライン商談ツールの効果的な活用法
- 対面以上に質問力が重要になるため、10年先も使える営業表現を習得
(参考: BKS「リモートでも結果の出る質問型営業 ~10年先も使える営業表現(顔・声・反応)のトレーニング~」)
(3) トップセールスへの同行学習
社内のトップセールスに同行し、実際の商談を観察することで、多くの学びが得られます。
観察ポイント:
- どのタイミングでどのような質問をしているか
- 顧客の反応にどう対応しているか
- 商談の流れをどのようにコントロールしているか
(4) 研修・セミナーの活用(2024年の最新動向)
質問型営業の研修・セミナーを活用することで、体系的に学ぶことができます。
2024年7月には「質問型営業―お客様の課題を引き出し、見極め、提案し、『買ってもらう』営業のしかけ」というテーマのセミナーが開催されるなど、継続的に学習機会が提供されています。
(参考: 産創館「質問型営業―お客様の課題を引き出し、見極め、提案し、『買ってもらう』営業のしかけ」)
まとめ:営業が楽しくなる「役に立ちたい」マインドへの転換
質問型営業は、「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」の3つの言葉で顧客の欲求を高め、顧客が自分の意思で購入するよう導く営業手法です。説明型営業の「売ろう」とするマインドから、質問型営業の「役に立ちたい」とするマインドに転換することで、営業のやりがいが大きく向上します。
SPIN話法(Situation・Problem・Implication・Need payoff)は、30年以上世界中で活用されている体系的なフレームワークです。4つの質問タイプを順序立てて使うことで、顧客が抱える潜在的なニーズを顕在化させることができます。
質問を繰り返して深掘りすることで、顧客の思いや困り事が手に取るように分かるようになります。顧客が自分の意思で購入してくれるため、受注後のキャンセルやクレームが少なく、信頼関係の構築にもつながります。
次のアクション:
- SPIN話法の4つの質問タイプを理解し、具体例をリストアップする
- 「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」を日常の商談で意識的に使ってみる
- ロールプレイング練習を定期的に実施する
- トップセールスの商談に同行し、質問の仕方を観察する
- 研修・セミナーに参加し、体系的に学ぶ
ただし、スキル習得には継続的なトレーニングが必要で、一朝一夕では身につきません。「質問のための質問」にならないよう、常に顧客の課題解決に焦点を当てることが重要です。段階的に取り組み、自分のスタイルを確立していきましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。最新の研修プログラムやセミナー情報については、各種公式サイトをご確認ください。
