Pardot Account Engagementとは:BtoB向けMAツールの全貌
Salesforce製のマーケティングオートメーションツール「Pardot」が「Account Engagement」に名称変更されて以降、名前だけが独り歩きし、機能やメリットが分かりにくくなっているとの声が聞かれます。
B2B企業のマーケティング担当者にとって、MAツール選びは売上に直結する重要な判断です。「PardotとAccount Engagementは何が違うの?」「Marketing Cloudとはどう使い分けるの?」「料金はどれくらい?」といった疑問に、この記事では明確に回答します。
Salesforce公式情報と国内導入事例をもとに、Account Engagementの機能・料金・導入メリットを体系的に解説します。
この記事のポイント:
- PardotとAccount Engagementは名称変更のみで機能は同じ(2022年4月変更)
- Marketing CloudはBtoC向け、Account EngagementはBtoB向けと用途が明確に分かれる
- 料金は月額15万円(Growth)〜で年間契約が基本、初期費用は無料
- 国内MAツール市場でシェアトップクラス(2024年時点)
- 2024年アップデートでAI機能とData Cloud連携が大幅強化
1. Pardot Account Engagementとは:名称変更の経緯と位置づけ
(1) PardotからAccount Engagementへの名称変更
2022年4月、SalesforceはMAツール「Pardot」を「Marketing Cloud Account Engagement」に名称変更しました。機能自体に変更はなく、純粋なブランド統一が目的です。
正式名称と通称:
- 正式名称: Marketing Cloud Account Engagement
- 通称: Account Engagement(一般的にはこちらで呼ばれる)
- 旧名称: Pardot(2022年3月まで)
Salesforce公式ヘルプでも「Account Engagement」という名称で統一されており、今後新規導入する企業はこの名称で理解しておく必要があります。
(出典: Salesforce公式ヘルプ「Using Account Engagement with Salesforce」https://help.salesforce.com/s/articleView?id=mktg.pardot_sf_connector_using_pardot_parent.htm)
(2) Marketing CloudとAccount Engagementの違い(BtoB vs BtoC)
Salesforceには「Marketing Cloud」と「Account Engagement」という2つのマーケティングツールがあり、混同しやすいですが用途が明確に異なります。
Marketing Cloud:
- 対象: BtoC企業(消費者向けビジネス)
- 用途: 集客型マーケティング(メール配信、SNS広告、カスタマージャーニー管理)
- 特徴: 大量の個人顧客に対する一斉配信・パーソナライゼーション
Account Engagement:
- 対象: BtoB企業(法人向けビジネス)
- 用途: 商談型マーケティング(リード管理、スコアリング、営業連携)
- 特徴: 少数の企業顧客に対する関係構築・育成
(出典: frogwell「Account Engagement(旧:Pardot)とマーケティングクラウドは何が違うの?」https://frogwell.co.jp/blogs/marketingcloud/)
自社がBtoB企業であれば、Marketing CloudではなくAccount Engagementの導入を検討するのが適切です。
(3) 国内MAツール市場におけるシェアと位置づけ
矢野経済研究所の調査によると、国内のデジタルマーケティング市場は2024年に3,494億円規模、DMP/MA市場は2026年に865億円規模に達すると予測されています。
Account Engagementは国内MAツール市場でトップクラスのシェアを持つと言われています。特にSalesforceのCRMを既に利用している企業にとっては、連携のしやすさから第一候補となるケースが多いです。
(出典: 矢野経済研究所「国内のデジタルマーケティング市場に関する調査(2023年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3239)
競合ツールとしてはHubSpot、Marketo、SATORI等がありますが、Salesforce連携を重視するBtoB企業にとってAccount Engagementは有力な選択肢です。
2. Account Engagementの主要機能:Salesforce連携とMA機能
(1) Salesforce連携:CRMデータとマーケティングデータの一元管理
Account Engagement最大の強みは、Salesforce CRMとのネイティブ連携です。
連携のメリット:
- リード情報をCRMと双方向同期(リアルタイムまたは定期)
- 商談化したリードの追跡(マーケティング施策と成約の紐付け)
- 営業担当者がCRM画面から見込み顧客の行動履歴を確認可能
これにより、マーケティング部門が獲得したリードを営業部門がスムーズに引き継ぎ、リード獲得から商談化、成約までを一気通貫で管理できます。
(出典: Salesforce公式ヘルプ「Using Account Engagement with Salesforce」)
(2) スコアリング・グレーディング機能:見込み顧客の優先順位付け
Account Engagementには、リードの優先順位を自動的に判定する2つの機能があります。
スコアリング:
- 見込み顧客の行動(メール開封、Web閲覧、資料DL等)に点数を付けて関心度を数値化
- 例: メール開封+5点、LP訪問+10点、価格ページ閲覧+20点
グレーディング:
- 顧客の属性情報(企業規模、業種、役職等)から自社とのマッチ度を評価
- 例: 大企業A+、中堅企業B、小規模企業C
両者を組み合わせることで、「関心度が高く、自社とマッチする企業」を優先的に営業アプローチできます。
(出典: ワンマーケティング「Account Engagement(旧Pardot)とは?機能やメリット、使い方の手順を紹介」https://www.onemarketing.jp/contents/word-pardot/)
(3) Engagement Studio:マーケティング業務フローの自動化
Engagement Studioは、顧客の行動に応じた自動アクション(シナリオ)を設定する機能です。
活用例:
- 資料DL後、3日後に事例紹介メールを自動送信
- メール未開封の場合、1週間後にリマインドメール送信
- 価格ページ訪問者に営業担当者へ自動通知
手動で行われていた定型的な業務フローを自動化することで、オペレーションミスの防止と作業効率化を実現できます。
(出典: Yahoo! JAPAN Tech Blog「Salesforce Account EngagementをGitHubで管理できるようにする」https://techblog.yahoo.co.jp/entry/2023070330427430/)
(4) フォーム・ランディングページ作成機能
Account Engagementには、ランディングページやフォームの作成機能が標準搭載されています。
特徴:
- テンプレートを使えば専門知識がなくても作成可能
- フォーム入力情報を自動的にProspect(見込み顧客)レコードとして保存
- ABテスト機能で複数のLPを比較検証
迅速に顧客データを収集し、MAツール内で一元管理できる点が利点です。
(5) 2024年最新アップデート:生成AI機能とData Cloud連携
2024年のアップデートで、Account Engagementに大きな機能強化が行われました。
Spring '24リリース(2024年春):
- 生成AI(Pardot Einstein)によるランディングページ・フォーム・メール自動生成機能追加(ADVANCED/Premiumエディションのみ)
- Gmail/YahooのDKIM認証必須化対応(スパム対策)
Winter '25リリース(2024年後半):
- 重複レコード管理機能(Account Engagement Optimizer)を全エディションに追加
- Data Cloud連携強化(セグメント上限が5→25に増加、Growth/Plus)
(出典: Salesforce Ben「Spring '24 Release Highlights for Account Engagement」https://www.salesforceben.com/spring-24-release-highlights-for-account-engagement-pardot/、The Spot「Salesforce Winter '25 Highlights: Marketing Cloud Account Engagement」https://thespotforpardot.com/2024/08/16/salesforce-winter-25-highlights-marketing-cloud-account-engagement-pardot/)
これらのアップデートにより、データ品質の向上と生成AIによる業務効率化が期待できます。
3. エディション別料金プランと選び方
(1) 4つのエディション比較(Growth/Plus/Advanced/Premium)
Account Engagementには4つのエディションがあり、機能と料金が異なります。
| エディション | 月額料金(税抜) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Growth | 15万円〜 | 基本機能(スコアリング、メール配信、LP/フォーム作成) |
| Plus | 要問合せ | Growthの機能 + 高度なレポート |
| Advanced | 要問合せ | AI機能(Pardot Einstein)、Marketing Data Sharing |
| Premium | 要問合せ | Advancedの機能 + 専任サポート |
(出典: Salesforce公式「Marketing Cloud Account Engagementの価格」https://www.salesforce.com/jp/marketing/b2b-automation/pricing/)
※2024年12月時点の情報です。最新料金は公式サイトをご確認ください。
(2) 追加オプションと料金体系
基本エディションに加えて、以下の追加オプションがあります。
Sales Emails and Alert:
- 営業担当者が個別にメール送信できる機能
- 料金: 1ユーザーあたり月額6,000円(税抜)
- 注意: 利用ユーザー数が多いと追加費用がかさむ
年間契約:
- 基本的に年間契約が前提
- Growth(月額15万円)の場合、年間最低180万円のコストが発生
(3) 企業規模・目的別の推奨プラン
小規模企業(従業員50人未満、リード数月100件以下):
- Growth(月額15万円〜)で基本機能は十分
- まずは無料トライアルで操作性を確認するのが推奨
中堅企業(従業員50〜500人、リード数月100〜1,000件):
- Growth or Plus
- レポート機能を重視するならPlus以上
大企業(従業員500人以上、リード数月1,000件以上):
- Advanced or Premium
- AI機能(Pardot Einstein)やData Cloud連携を活用したい場合は必須
最大限活用するなら「ADVANCED」以上のエディションがおすすめです。重要機能(Pardot Einstein、Marketing Data Sharing)はADVANCED以上のみ利用可能です。
4. 導入メリットと活用事例:BtoB企業での実践
(1) リード管理の効率化と商談化率の向上
Account Engagement導入の主なメリットは以下の通りです。
メリット:
- リード管理の一元化(スプレッドシート管理からの脱却)
- スコアリング・グレーディングによる優先順位付け
- 営業部門とマーケティング部門のデータ共有
- マーケティング施策と成約の紐付け(ROI測定)
これにより、商談化率の向上やリード対応時間の短縮が期待できます。
(2) 国内企業の導入事例(LayerX、TalentX等)
Salesforce サクセスナビでは、国内企業の具体的な導入事例が紹介されています。
LayerX:
- Revenue全体を把握するためのデータ基盤としてAccount Engagementを活用
- リード獲得から成約までのプロセスを可視化
TalentX:
- マーケティング施策の効果測定を強化
- スコアリング機能で優先度の高いリードに集中
(出典: Salesforce サクセスナビ「Account Engagement活用事例特集」https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000642)
導入企業の規模・業種・目的は様々ですが、共通するのは「Salesforce CRMとの連携」を重視している点です。
(3) ROI試算のポイント
Account Engagement導入のROIは、以下の視点で試算します。
コスト:
- 年間ライセンス費用: 180万円〜(Growth)
- 導入支援費用: 数十万円〜(Salesforceパートナー経由の場合)
- 運用人件費: マーケティング担当者1名分
効果:
- リード対応時間の短縮(月○○時間削減)
- 商談化率の向上(○○%改善)
- 成約率の向上(マーケティング施策と営業連携の強化)
ROI回収期間は6ヶ月〜1年が一般的ですが、リード数が少ない場合は効果が限定的なため、導入前の試算が不可欠です。
5. 導入時の注意点とリスク
(1) 年間契約と初期コスト
Account Engagementは年間契約が基本となるため、初期費用は無料でも年間コストは最低180万円(Growth)から発生します。
導入前にチェックすべき点:
- 月間リード数(100件以上ならROI見込み)
- Salesforce CRM導入状況(未導入の場合は別途費用)
- 運用体制(マーケティング担当者の有無)
導入後すぐに解約すると、年間契約分の費用が無駄になるため、慎重な判断が求められます。
(2) Gmail/Yahooスパム対策(DKIM認証必須化)
2024年から、GmailとYahooのスパムフィルタリングが強化され、送信ドメインのDKIM認証が必須になりました。
対応が必要な設定:
- 送信ドメインのDKIM認証設定
- SPFレコードの設定
- DMARCポリシーの設定
未設定のままメール配信を行うと、到達率が大幅に低下する可能性があります。導入時にIT部門と連携して設定を完了させることが重要です。
(出典: Salesforce Ben「Spring '24 Release Highlights for Account Engagement」)
(3) 既存ツールとの連携と運用体制
Account Engagementは、Salesforce CRM以外のツールとも連携可能です(API連携)。
連携例:
- Google広告(広告キャンペーンデータとリードの紐付け)
- Webサイト(フォーム埋め込み、トラッキングコード設置)
- その他MAツール・SFAツール
ただし、連携設定には一定の技術知識が必要なため、社内にエンジニアがいない場合はSalesforceパートナー企業の支援を検討するのが現実的です。
運用体制としては、マーケティング担当者1名以上の専任配置が推奨されます。ツールを導入しても、運用できる人材がいなければ宝の持ち腐れになります。
6. まとめ:Account Engagementの導入判断基準
Account Engagement(旧Pardot)は、BtoB企業向けMAツールとして国内でトップクラスのシェアを持ち、Salesforce CRMとのネイティブ連携が最大の強みです。
導入を検討すべき企業:
- Salesforce CRMを既に利用している、または導入予定
- 月間リード数が100件以上
- マーケティング担当者が1名以上在籍
- 商談化率の向上を目指している
導入を見送るべき企業:
- 月間リード数が50件未満(スプレッドシート管理で十分)
- 年間180万円のコストが負担
- マーケティング専任担当者がいない
料金プランはGrowth(月額15万円〜)から始められますが、AI機能やData Cloud連携を活用するならAdvanced以上が推奨です。導入前に無料トライアルで実際の操作性を確認し、ROI試算を行うことが成功の鍵です。
次のアクション:
- Salesforce公式サイトで最新の料金・機能を確認する
- 無料トライアルで実際に操作性を試す
- 導入実績のある企業の事例を参考にする(Salesforce サクセスナビ等)
- 社内のリード数・運用体制を整理し、ROI試算を行う
自社に合ったMAツールで、リード管理の効率化と商談化率の向上を実現しましょう。
※この記事は2024年12月時点の情報です。料金・機能は変更される可能性があるため、導入検討時は公式サイトで最新情報をご確認ください。
