MAツールを導入したけれど、どう分析すればいいか分からない...
マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入したB2B企業の中で、「データは蓄積されているけれど、どう分析すればいいの?」「KPIをどう設定すべき?」と悩む方は少なくありません。
この記事では、MAツールの分析機能と効果測定の方法を解説します。分析できる5つの主要データ、KPI設計、PDCAサイクルの回し方、アトリビューション分析まで、実務に直結するノウハウをご紹介します。
この記事のポイント:
- MAツールで分析できる主なデータは、Webサイト行動履歴、メール開封率・クリック率、顧客属性データ、購買履歴、訪問企業情報の5つ
- KPIはSMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいて設定する
- シンプルなシナリオから始め、PDCAサイクルを回して徐々に複雑なものにしていくことが成功の鍵
- 2024-2025年はデータドリブンアトリビューション(機械学習で最適な貢献度を自動計算)が主流
- 複雑な分析にはTableauやLooker StudioなどのBIツールとの連携が有効
1. MAツールの分析機能とは?導入後の効果測定の重要性
MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入したものの、効果測定できていない企業が多いのが実態です。
(1) MAを導入しても効果測定できていない企業が多い実態
MAツールを導入した企業の多くが、以下の課題を抱えています。
よくある課題:
- データは蓄積されているが、どう分析すればいいか分からない
- KPIを設定していないため、施策の成功・失敗の判断ができない
- 導入初期から複雑なシナリオを構築し、管理・改善が難しくなっている
- レポート機能を使いこなせていない
KPIを設定しないと施策の成功・失敗の判断ができず、知見が蓄積されません。効果測定の仕組みを整えることが、MA活用の第一歩です。
(2) MA分析が重要な理由:データドリブンな意思決定
MA分析は、データに基づいた意思決定(データドリブンな意思決定)を実現するために重要です。
データドリブンな意思決定のメリット:
- 勘や経験だけでなく、データに基づいて施策を判断できる
- 効果の高い施策を特定し、リソースを集中できる
- 改善サイクルを高速化し、マーケティングROIを最大化できる
- チーム内での意思決定の納得感が高まる(「なんとなく」ではなく「データで示せる」)
MA市場規模は2026年に865億円に達すると予測されており、AIや機械学習で分析機能が高度化しています。
(3) MAツールのレポート・分析機能の概要
MAツールには、マーケティング活動を可視化するためのレポート・分析機能が搭載されています。
主な機能:
- ダッシュボード: KPIを一覧で確認できる画面
- メールレポート: 開封率、クリック率、配信停止率などの分析
- Webトラッキング: サイト訪問者の行動履歴を可視化
- リードスコアリング: 見込み客の購買意欲を数値化
- カスタムレポート: 独自の指標で分析
- データエクスポート: CSV形式でデータをダウンロードし、Excel・BIツールで分析
これらの機能を活用することで、マーケティング活動の効果を定量的に把握できます。
2. MAで分析できる5つの主要データ
MAツールで分析できる主なデータは、Webサイト行動履歴、メール開封率・クリック率、顧客属性データ、購買履歴、訪問企業情報の5つです。
(1) Webサイト行動履歴(訪問ページ、滞在時間、行動パターン)
分析できる情報:
- どのページを訪問したか
- 各ページの滞在時間
- 訪問回数・訪問頻度
- 訪問経路(検索エンジン、SNS、広告、直接流入)
- コンバージョンに至った行動パターン
活用例:
- 「価格ページを3回閲覧した」リードに対して、料金表PDFと導入事例を自動配信
- 「特定機能のページを閲覧した」リードに対して、その機能の詳細解説を配信
- 「ブログ記事を10記事以上閲覧した」リードをホットリードとして営業に通知
行動履歴を分析することで、リードの関心度や購買意欲を可視化できます。
(2) メール開封率・クリック率
分析できる情報:
- 開封率(メールを開封した割合)
- クリック率(メール内のリンクをクリックした割合)
- 配信停止率(配信停止を選択した割合)
- メール別の効果比較(件名・内容による差)
- 配信時間帯別の効果比較
目標値の例:
- メール開封率: 15〜25%(業界平均)
- メールクリック率: 2〜5%(業界平均)
- 配信停止率: 0.5%以下
活用例:
- 開封率が高いメールの件名パターンを分析し、次回配信に活用
- クリック率が低いメールのコンテンツを改善
- 配信時間帯を変更し、開封率を向上
メール効果を分析することで、配信コンテンツと配信タイミングを最適化できます。
(3) 顧客属性データ(企業規模、業種、役職等)
分析できる情報:
- 企業規模(従業員数、売上規模)
- 業種(製造業、IT業界、金融業等)
- 役職(経営層、マネージャー、現場担当者)
- 部門(営業、マーケティング、情報システム等)
- 地域(都道府県、海外拠点)
活用例:
- 大企業にはエンタープライズ向け機能を訴求、中小企業には低価格プランを訴求
- 製造業には製造業向け事例、IT業界にはIT向け事例を配信
- 経営層には経営視点の記事、現場担当者には実務Tipsを配信
属性データに基づくセグメンテーションにより、パーソナライズされたコンテンツ配信が可能になります。
(4) 購買履歴・商談履歴
分析できる情報:
- 過去の購買履歴(どの製品・サービスを購入したか)
- 商談履歴(提案内容、商談の進捗状況)
- 契約金額・契約期間
- アップセル・クロスセルの機会
活用例:
- 既存顧客に対して、利用中の製品に関連するアップグレードプランを提案
- 商談が停滞しているリードに対して、導入事例や成功体験を配信
- 契約更新時期が近づいた顧客に対して、更新案内とアップグレード提案を配信
購買履歴を分析することで、既存顧客へのアプローチを最適化し、LTV(顧客生涯価値)を最大化できます。
(5) 訪問企業情報(IPアドレスベースの企業特定)
分析できる情報:
- IPアドレスから訪問企業を特定
- 企業名、業種、企業規模
- 訪問ページ・閲覧履歴
- 複数回訪問している企業の特定
活用例:
- 特定の企業が複数回サイトを訪問している場合、営業担当者に通知
- 競合企業がサイトを訪問している場合、競合分析に活用
- 特定業種の企業が多く訪問しているページを分析し、コンテンツを強化
訪問企業情報により、まだリードとして獲得できていない潜在顧客を可視化できます。
3. MA運用における効果的なKPI設計
MA運用のKPI例として、営業へトスアップしたリード数、フォームからの新規リード獲得数、メール開封率・クリック率、商談数があります。
(1) KPIとKGIの違いと設定の考え方
KGI(Key Goal Indicator):
- 重要目標達成指標
- 組織やプロジェクトの最終目標を定量的に示す指標
- 例: 年間売上1億円、新規契約10件/月
KPI(Key Performance Indicator):
- 重要業績評価指標
- KGI達成のためのプロセス進捗を測る中間指標
- 例: 営業トスアップリード数、メール開封率、商談数
設定の考え方:
KGI: 年間売上1億円
↓
KPI: 月間商談数10件
↓
KPI: 月間ホットリード数50件
↓
KPI: 月間新規リード獲得数500件
↓
KPI: メール開封率20%
KGIから逆算してKPIを設定することで、施策の優先順位が明確になります。
(2) SMART原則に基づくKPI設定(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)
KPIはSMART原則に基づいて設定します。
SMART原則:
- Specific(具体的): 「リードを増やす」ではなく「月間新規リード獲得数500件」
- Measurable(測定可能): 定量的に測定できる指標
- Achievable(達成可能): 現実的に達成可能な目標値
- Relevant(関連性): ビジネス目標に関連した指標
- Time-bound(期限): 「いつまでに達成するか」を明確にする
悪い例:
- 「リードを増やす」(具体性・期限がない)
- 「顧客満足度を向上させる」(測定方法が不明確)
良い例:
- 「2025年Q1に月間新規リード獲得数を500件達成する」(SMART原則をすべて満たす)
- 「2025年3月末までにメール開封率を20%に向上させる」
(3) 具体的なKPI例:営業トスアップリード数、新規リード獲得数、メール開封率・クリック率、商談数
MA運用の主要KPI:
| KPI | 定義 | 目標値(例) |
|---|---|---|
| 新規リード獲得数 | フォーム送信・資料DL等で獲得したリード数 | 月間500件 |
| メール開封率 | メールを開封した割合 | 15〜25% |
| メールクリック率 | メール内のリンクをクリックした割合 | 2〜5% |
| LP CVR | ランディングページのコンバージョン率 | 5〜15% |
| 営業トスアップリード数 | 営業に引き渡したリード数(ホットリード) | 月間50件 |
| 商談数 | 営業が商談を実施した数 | 月間10件 |
| 成約率 | 商談から成約に至った割合 | 20〜30% |
注意点:
- 目標値は業界・企業規模・商材によって異なる
- 導入初期は低めの目標値を設定し、徐々に引き上げる
- 定期的に実績をレビューし、目標値を見直す
(4) KPI設定しないリスク:施策の成功・失敗の判断ができず知見が蓄積されない
KPIを設定しないと、以下のリスクがあります。
主なリスク:
- 施策の成功・失敗の判断ができない
- 「なんとなく効果がある気がする」という曖昧な評価になる
- 知見が蓄積されず、同じ失敗を繰り返す
- チーム内での意思決定が属人化する(担当者の勘に依存)
- 予算や人員の適切な配分ができない
KPI設定は、MA運用の成功に不可欠です。
4. MAの分析結果を活用したPDCAサイクルの回し方
MAの分析結果をどう活用すべきか。PDCAサイクルを回し、継続的に改善を実施します。
(1) シンプルなシナリオから始める
シンプルなシナリオから始め、徐々に複雑なものにしていくことが成功の鍵です。
導入初期(シンプルなシナリオ):
Day 1: ホワイトペーパーダウンロード
↓
Day 3: お礼メール + 関連記事紹介(自動配信)
↓
Day 7: 別のホワイトペーパー案内(自動配信)
中期(複雑化):
Day 1: ホワイトペーパーダウンロード
↓
[行動分岐]
- メール開封した → Day 5: ウェビナー案内
- メール開封しない → Day 7: リマインドメール
↓
[ウェビナー参加]
↓
Day 10: 録画動画 + 導入事例(自動配信)
導入初期から複雑なシナリオを構築すると管理・改善が難しくなります。まずはシンプルに始め、効果を確認しながら段階的に高度化します。
(2) データの正確性を保つための定期的なデータクリーニング
データの正確性が分析結果の信頼性を左右します。定期的なデータクリーニングが必須です。
データクリーニングの内容:
- 重複レコードの削除
- 不正確なメールアドレスの削除(バウンスメール、存在しないアドレス)
- 古いリードの整理(一定期間反応がないリードをアーカイブ)
- 属性データの更新(役職変更、企業規模変更等)
- テストデータの削除
クリーニングの頻度:
- 月次: 重複レコード削除、不正確なメールアドレス削除
- 四半期: 古いリードの整理、属性データ更新
- 半期: 全体的なデータ品質チェック
データクリーニングを怠ると、分析結果の信頼性が低下します。
(3) 分析結果に基づく改善施策の実施
分析結果に基づいて、具体的な改善施策を実施します。
改善例:
| 分析結果 | 改善施策 |
|---|---|
| メール開封率が低い(10%以下) | 件名を改善、配信時間帯を変更 |
| クリック率が低い(1%以下) | メール本文のCTAを明確化、リンク配置を改善 |
| LP CVRが低い(3%以下) | フォーム項目を削減、ファーストビューを改善 |
| 営業トスアップリードが少ない | リードスコアリングの閾値を見直し |
| 商談化率が低い(5%以下) | 営業に渡すリードの質を改善、トスアップタイミングを最適化 |
PDCAサイクル:
Plan(計画): KPIを設定し、施策を計画
↓
Do(実行): 施策を実施
↓
Check(評価): 分析結果を確認
↓
Act(改善): 改善施策を実施
↓
(再びPlanに戻る)
(4) KPIの定期的な見直し(ビジネスの成長や市場変化に対応)
KPIは固定ではなく、ビジネスの成長や市場変化に合わせて定期的に見直す必要があります。
見直しのタイミング:
- 四半期ごと(3ヶ月に1回)
- ビジネス目標が変更されたとき
- 市場環境が大きく変化したとき
- MA運用が成熟し、目標を上方修正するとき
見直しの例:
導入初期: 月間新規リード獲得数100件
↓
6ヶ月後: 月間新規リード獲得数300件(3倍)
↓
1年後: 月間新規リード獲得数500件(5倍)
ビジネスの成長に合わせてKPIを引き上げることで、継続的な改善を促進します。
5. アトリビューション分析と高度な分析手法
2024-2025年はデータドリブンアトリビューション(機械学習で最適な貢献度を自動計算)が主流になっています。
(1) アトリビューション分析とは:成果への各接点の貢献度を分析
アトリビューション分析は、成果に至る過程で各接点(メール、Web訪問、広告クリック等)がどの程度貢献したかを分析する手法です。間接効果の分析とも呼ばれます。
従来の課題:
- ラストクリック(最後に訪問したチャネル)のみを評価
- 初期接点(認知フェーズ)や中間接点(検討フェーズ)の貢献度が見えない
アトリビューション分析:
例: 成約に至るまでの接点
①検索エンジン → ②メール開封 → ③ウェビナー参加 → ④価格ページ訪問 → ⑤成約
従来(ラストクリック): ⑤価格ページのみを評価
アトリビューション分析: ①〜⑤すべての貢献度を評価
各接点の貢献度を可視化することで、マーケティング予算の最適配分が可能になります。
(2) データドリブンアトリビューション(2024-2025年の主流)
データドリブンアトリビューションは、機械学習で顧客行動と広告の相互関係を分析し、最適な貢献度を自動計算するモデルです。
従来のアトリビューションモデル:
- ラストクリック: 最後の接点に100%の貢献度
- ファーストクリック: 最初の接点に100%の貢献度
- 線形: すべての接点に均等に貢献度を配分
データドリブンアトリビューション:
- 機械学習で過去のデータを分析
- 成約に至ったパターンと至らなかったパターンを比較
- 各接点の実際の貢献度を自動計算
メリット:
- 手動でモデルを設計する必要がない
- データに基づいた客観的な評価
- 継続的にモデルが最適化される
(3) GA4でのアトリビューション設定(データドリブン、ラストクリック等)
GA4(Google Analytics 4)のアトリビューション設定で「データドリブン」「ラストクリック」「Googleの有料チャネル」から選択可能です。
GA4の設定方法:
1. GA4管理画面にアクセス
2. 「管理」→「アトリビューション設定」を選択
3. デフォルトのアトリビューションモデルを選択
- データドリブン(推奨)
- ラストクリック
- Googleの有料チャネル
4. レポートで各接点の貢献度を確認
注意点:
- データドリブンモデルは一定のデータ量(コンバージョン数)が必要
- データ量が少ない場合はラストクリックモデルが使用される
(4) BIツール(Tableau、Looker Studio)との連携による複雑な分析
複雑な分析にはTableauやLooker StudioなどのBIツールとの連携が有効です。
MAツールだけでは困難な分析:
- 複数指標の比較(メール開封率とLP CVRの相関分析)
- 差分計算(前月比、前年同月比)
- カスタムダッシュボードの作成
- 複数のデータソースの統合(MA + CRM + 広告管理ツール)
BIツールとの連携方法:
- MAツールからデータをCSVエクスポート
- BIツールにインポート
- カスタムダッシュボードを作成
- API連携で自動化(高度な運用)
主なBIツール:
- Tableau(高機能、有料)
- Looker Studio(Googleが提供、無料)
- Microsoft Power BI(Microsoftエコシステムと統合)
BIツール連携により、より深い分析とデータ活用が可能になります。
6. まとめ:MA分析で成果を最大化するために
MAツールの分析機能を活用することで、データドリブンな意思決定が可能になります。
主なポイント:
- MAで分析できる主要データは5つ:Webサイト行動履歴、メール開封率・クリック率、顧客属性データ、購買履歴、訪問企業情報
- KPIはSMART原則に基づいて設定し、定期的に見直す
- シンプルなシナリオから始め、PDCAサイクルを回して徐々に複雑化
- アトリビューション分析で各接点の貢献度を可視化
- 複雑な分析にはBIツールとの連携が有効
(1) データドリブンな意思決定の実践
次のアクション:
- MAツールのダッシュボードを確認し、現状のデータを把握する
- ビジネス目標(KGI)からKPIを逆算して設定する
- 週次・月次でKPIをレビューする会議を設定する
- 分析結果に基づいて改善施策を実施する
(2) シンプルから始めて段階的に高度化
推奨ステップ:
第1段階(導入初期):
- メール開封率・クリック率を測定
- シンプルなナーチャリングシナリオを構築
第2段階(3ヶ月後):
- Webサイト行動履歴の分析を開始
- リードスコアリングを導入
第3段階(6ヶ月後):
- アトリビューション分析を導入
- BIツール連携で高度な分析を実施
(3) ファーストパーティデータの活用強化(Cookie規制対応)
Cookie規制強化によりトラッキング精度に影響が出る可能性があり、ファーストパーティデータの活用が重要になっています。
ファーストパーティデータ:
- 自社が直接収集した顧客データ
- フォーム送信、資料ダウンロード、会員登録等で取得
- Cookie規制の影響を受けない
活用方法:
- コンテンツダウンロード時にメールアドレスを取得
- ウェビナー参加時に詳細な属性情報を取得
- MAツールで行動履歴を蓄積
ファーストパーティデータを充実させることで、Cookie規制後もマーケティング活動を継続できます。
まとめ:
MAツールの分析機能を活用し、データドリブンな意思決定を実践することで、マーケティングROIを最大化できます。シンプルなシナリオから始め、PDCAサイクルを回して徐々に高度化していきましょう。
