市場セグメントとは?セグメンテーションの手法・基準・活用事例を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/19

新規事業やプロダクト開発で、どの顧客層をターゲットにすべきか分からない...

B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング担当者や事業企画担当者の多くが、「市場が広すぎて、どこから攻めればいいか分からない」「ターゲットを絞りたいが、セグメントの切り方が分からない」といった悩みを抱えています。

この記事では、市場を細分化する「市場セグメンテーション」の手法から基準、B2B企業特有の考え方まで、マーケティング戦略の第一歩を踏み出すための実践的な知識を分かりやすく解説します。

この記事のポイント:

  • 市場セグメンテーションは市場を細分化し、似た特性を持つ消費者のグループを作ること
  • 地理的・人口動態・心理的・行動的の4つの変数で市場を細分化する
  • B2Bでは企業規模・業種・従業員数・意思決定プロセスなどの企業属性で細分化
  • STP分析(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)の最初のステップ
  • 4Rの原則(優先順位・規模・到達可能性・測定可能性)でセグメントを評価

1. 市場セグメンテーションが求められる背景

(1) 顧客ニーズの多様化とマーケティング戦略の高度化

現代の市場では、顧客ニーズが多様化しています。かつては「万人向けの製品」が通用しましたが、価値観の多様化により、すべての顧客に同じアプローチをすることは非効率になっています。

2024年時点で、セグメンテーションを導入する企業が増加しており、顧客ニーズに合わせた細やかなマーケティング戦略が求められています。

市場セグメンテーションが必要な理由:

  • 顧客ごとに求める価値が異なる(低価格志向、高品質志向、利便性志向など)
  • すべての顧客に同じメッセージを送っても響かない
  • 限られたリソースを効果的に配分する必要がある

市場を細分化し、自社にとって最適なセグメントを選ぶことで、マーケティング施策の効率が向上します。

(2) リソース集中による施策効率化の必要性

B2Bデジタルプロダクト企業では、マーケティング予算や人員が限られています。すべての顧客層に均等にアプローチするのではなく、特定のセグメントにリソースを集中することで、施策の効果を最大化できます。

リソース集中のメリット:

  • 施策の優先順位が明確になる
  • 特定セグメントへの深い理解が進み、効果的な施策が打てる
  • 無駄な広告費やマーケティングコストを削減できる

市場セグメンテーションは、限られたリソースを最大限活用するための基本戦略です。

2. 市場セグメント・セグメンテーションの基礎知識

(1) セグメント・セグメンテーションの定義

セグメント(Segment):

市場を細分化して作られたグループのことです。似た特性を持つ消費者をまとめたものです。

セグメンテーション(Segmentation):

市場を細分化するプロセスのことです。市場全体を、共通の特性を持つグループに分けることを指します。

例えば、SaaS製品を提供する企業が市場を以下のようにセグメント化したとします。

セグメント化の例:

  • セグメントA: 従業員10名未満のスタートアップ企業
  • セグメントB: 従業員100〜500名の中堅企業
  • セグメントC: 従業員500名以上の大企業

これにより、各セグメントに合ったマーケティング施策を実施できます。

(出典: マクロミル「市場をセグメントに分ける重要性とは?」、2024年)

(2) STP分析におけるセグメンテーションの位置づけ

市場セグメンテーションは、STP分析の最初のステップです。

STP分析の3ステップ:

  1. Segmentation(セグメンテーション): 市場を細分化してグループを作る
  2. Targeting(ターゲティング): セグメントから狙うべき対象を選ぶ
  3. Positioning(ポジショニング): 自社の位置づけを明確にし、差別化する

セグメンテーションは、ターゲティング・ポジショニングの前提となる重要なステップです。

(出典: SATORI「セグメンテーションとは?やり方と活用事例」、2024年)

(3) セグメントとターゲットの違い

セグメントとターゲットは混同されやすいですが、以下のように異なります。

セグメント:

  • 市場を細分化して作られた「グループの分類」
  • 複数のセグメントが存在する(セグメントA、B、C...)

ターゲット:

  • セグメントの中から選んだ「狙うべき対象」
  • 自社がアプローチする優先順位の高いセグメント

例えば、先ほどのセグメントA・B・Cの中から、「セグメントB(中堅企業)を優先的にターゲットにする」と決定した場合、セグメントBがターゲットになります。

(出典: マテリアルデジタル「ターゲットとセグメントの定義・違い」、2024年)

3. セグメンテーションの4つの変数と基準

市場セグメンテーションには、一般的に4つの変数(基準)が使われます。

(1) 地理的変数(国・地域・都市規模等)

地理的変数は、地理的条件によって市場を細分化します。

地理的変数の例:

  • 国(日本、米国、欧州など)
  • 地域(関東、関西、九州など)
  • 都市規模(大都市、中都市、地方都市)
  • 気候(温暖、寒冷)

B2B SaaS企業では、「首都圏の企業」「地方の企業」などで細分化することがあります。

(2) 人口動態変数(年齢・性別・所得・職業等)

人口動態変数(デモグラフィック変数)は、客観的な属性によって市場を細分化します。

人口動態変数の例:

  • 年齢(20代、30代、40代など)
  • 性別(男性、女性)
  • 所得(年収300万円未満、300〜500万円、500万円以上)
  • 職業(経営者、会社員、自営業)
  • 学歴(高卒、大卒、大学院卒)

B2Cマーケティングで最もよく使われる変数です。

(3) 心理的変数(ライフスタイル・価値観・性格特性)

心理的変数(サイコグラフィック変数)は、ライフスタイルや価値観によって市場を細分化します。

心理的変数の例:

  • ライフスタイル(アクティブ、家庭重視、仕事重視)
  • 価値観(環境意識が高い、コスパ重視、ブランド志向)
  • 性格特性(リスク回避型、チャレンジ志向)

この変数は数値化が難しいですが、顧客の深い理解につながります。

(4) 行動的変数(購入頻度・利用状況等)

行動的変数は、購入行動や利用状況によって市場を細分化します。

行動的変数の例:

  • 購入頻度(初回購入、リピート購入、ヘビーユーザー)
  • 利用状況(日常利用、特別な機会のみ)
  • 購入タイミング(定期購入、不定期購入)
  • ロイヤルティ(ブランドロイヤルティが高い、低い)

デジタルマーケティングの進化により、行動的変数を活用したセグメンテーションが重視されています(2024年)。

4. B2B企業特有のセグメンテーション手法

(1) ファーモグラフィック変数(企業規模・業種・従業員数)

B2Bでは、企業属性(ファーモグラフィック変数)による細分化が重要です。

ファーモグラフィック変数の例:

  • 企業規模(売上高、資本金)
  • 従業員数(10名未満、10〜100名、100〜500名、500名以上)
  • 業種(製造業、IT・通信、金融、小売など)
  • 設立年数(スタートアップ、成長企業、成熟企業)

B2B SaaS企業では、「従業員100〜500名の中堅製造業」といった形でセグメント化することがあります。

(2) 組織的変数(意思決定プロセス・購買権限・購入歴)

B2Bでは、組織の意思決定プロセスや購買権限も重要な変数です。

組織的変数の例:

  • 意思決定プロセス(トップダウン型、ボトムアップ型)
  • 購買権限(現場担当者、部門長、経営層)
  • 購入歴(既存顧客、失注顧客、新規見込み客)
  • 社風(保守的、革新的、チャレンジ志向)

これらの変数を組み合わせることで、より精緻なセグメント化が可能になります。

(出典: 才流「セグメンテーションとは? BtoB事業で『売れるセグメント』を発見する方法」、2024年)

(3) B2BとB2Cのセグメンテーションの違い

B2BとB2Cでは、セグメント化の切り口が異なります。

B2C(個人向け):

  • 個人属性(年齢・性別・所得・ライフスタイル等)で細分化
  • 消費者個人の嗜好や行動パターンが中心

B2B(法人向け):

  • 企業属性(企業規模・業種・従業員数・意思決定プロセス等)で細分化
  • 企業単位で市場を捉えるため、より複雑な切り口が必要
  • 購買プロセスが長く、関与者が複数存在する

B2Bは企業単位で市場を細分化するため、B2Cよりも切り口が複雑です。

(出典: Medix「BtoBにおけるセグメンテーションとは?」、2024年)

5. セグメンテーション実践のステップと評価基準

(1) 既存顧客分析によるセグメント作成

セグメントを作成する際は、既存顧客の分析から始めるのが効果的です。

セグメント作成の手順:

  1. 既存顧客を一覧化: 受注顧客、失注顧客、滞留顧客をリストアップ
  2. 共通項をグループ化: 業種、企業規模、課題などの共通項を見つける
  3. セグメントに名前を付ける: 「中堅製造業セグメント」など分かりやすく命名
  4. 各セグメントの特徴を整理: 売上規模、受注率、課題などを整理

これにより、「どのセグメントが売れやすいか」「どのセグメントに注力すべきか」が明確になります。

(2) 4Rの原則によるセグメント評価

セグメントを評価する際は、「4R」の原則を活用します。

4Rの原則:

  1. Rank(優先順位): 自社にとって優先度が高いセグメントか
  2. Realistic Scale(規模): 十分な市場規模があるか(収益を見込めるか)
  3. Reach(到達可能性): アプローチできるセグメントか(広告・営業で接触可能か)
  4. Response(測定可能性): 効果測定が可能か(データが取得できるか)

この4つの基準を満たすセグメントを優先的にターゲットとして選定します。

(出典: 才流「セグメンテーションとは? BtoB事業で『売れるセグメント』を発見する方法」、2024年)

(3) セグメント見直しのタイミング

セグメントは一度作ったら終わりではなく、定期的な見直しが必要です。

見直しが必要なタイミング:

  • 市場環境が大きく変化した時(経済状況、競合の動向等)
  • 顧客ニーズが多様化した時
  • 自社のプロダクトや戦略が変わった時
  • セグメントごとの成果に大きな差が出た時

一般的には、年1回程度の見直しを行い、セグメントが実態に合っているかを確認することが推奨されます。

6. まとめ:効果的な市場セグメンテーションのポイント

市場セグメンテーションは、市場を細分化し、自社にとって最適な顧客層を見つけるための重要なプロセスです。地理的・人口動態・心理的・行動的の4つの変数を組み合わせ、B2B企業では企業属性や組織的変数も考慮してセグメントを作成します。

次のアクション:

  • 既存顧客を一覧化し、共通項をグループ化してセグメントを作成する
  • 4つの変数(地理的・人口動態・心理的・行動的)を組み合わせて細分化する
  • B2B企業では企業規模・業種・意思決定プロセスなどの企業属性も活用する
  • 4Rの原則でセグメントを評価し、優先順位を決める
  • 定期的にセグメントを見直し、実態に合わせて調整する

市場セグメンテーションを適切に行うことで、限られたリソースを最適な顧客層に集中でき、マーケティング施策の効率が大幅に向上します。

※この記事は2024年時点の情報です。市場環境や顧客ニーズは変化するため、定期的なセグメントの見直しが重要です。

よくある質問

Q1セグメントとターゲットの違いは何ですか?

A1セグメントは市場を細分化して作られた「グループの分類」、ターゲットはその中から選んだ「狙うべき対象」です。セグメンテーション(分類)→ターゲティング(選択)→ポジショニング(位置づけ)の順で実施するSTP分析の流れで理解するとよいでしょう。

Q2B2BとB2Cでセグメンテーションの方法は異なりますか?

A2はい、B2Cは個人属性(年齢・性別・所得等)で細分化するのに対し、B2Bは企業属性(企業規模・業種・従業員数・意思決定プロセス等)で細分化します。B2Bは企業単位で市場を捉えるため、より複雑な切り口が必要です。

Q3セグメントはいくつ作るのが適切ですか?

A3企業のリソースと市場の特性により異なりますが、一般的には3-5個程度が管理しやすいと言われています。セグメントを作りすぎると管理コストが増加し効果が薄れます。4Rの原則(優先順位・規模・到達可能性・測定可能性)で評価し、実行可能な数に絞ることが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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